14話・坊ちゃん
「そう言えば、ノースデン山に石工が向かって行方不明になっている。ロージイ、何か聞いてないか?」
「石工? もしかしたら……?」
「どうした?」
「我らの住まいを脅かしている者達は、石の扱いに長けているような気がましたのじゃ。その石工かも知れませぬ」
「……! その件も調べてみよう。ロージイ、私達はこれからノースデン山に向かうところだ。一緒に来るか?」
「いえ。わしは先に戻るとします」
話はきな臭い感じになって来た。行方知れずと思われていた石工が、ノースデン山に不法侵入しているかも知れないなんて。
ロージイはアコダの掌から飛び降りると、ピューっと口笛を吹いた。すると黒い影のような物が視界に入ったと思ったら、ロージイの前にハヤブサがいた。驚いた。
「それではまた。お先にですじゃ。坊ちゃん」
「だから、坊ちゃんと言うな」
ロージイは、「ほ──っほっほ」と、特徴的な笑いをその場に残し、ハヤブサの背に飛び乗ると、行ってしまった。風のように軽くあっという間のことで、瞬きする間もなかった。
「小人さんて凄いのですね。ハヤブサを自由自在に操れるなんて」
「いや、それはあいつだけだ。他の者はせいぜいカラスに乗るぐらいで」
カラスに乗るだけでもすごいと思う。小人って侮れない相手のようだ。それにしても話を聞いていると、ノアールとロージイは単なる知り合いの域を超えているような気がする。
「ノアールさんは、ロージイさんと随分と親しいのですね」
「ロージイは、俺にとって育ての親……、いや、爺やみたいな存在だったから」
ノアールは一人称を「俺」と、変えていた。恐らく無意識だろう。それだけロージイには心を開いているようにも思えた。ノアールはロージイのことを祖父のように思っているようだった。一見、微笑ましくも思える。それと同時にノアールの家庭事情が気になった。私は彼のことについてあまり良く知らない。
知っていることと言えば、彼は女王陛下直属の捜査官クリュサオルであり、どこかの貴族の子息であるという事と、若き実業家ということぐらい。
ノアールがあまり自分自身のことを語らないせいもあると思うが、自分から聞こうとも思わなかった。
──ノームのロージイさんが育ての親? じゃあ、彼の親はどんな人? まさか育児放棄されて育った?
何だか彼が不憫に思えてきた。その思いが顔に現れていたのか、ノアールからどうした? と、聞かれた。
「いえ、ちょっと考え事を。でも、凄いですね。ロージイさんは。ハヤブサを乗り回すなんて。皆さん、ノームはそうなのですか?」
「ロージイだけだ。他のノームはせいぜい猫や、カラスに乗るぐらいだ」
何てことないようにノアールは言うが、それでも凄いと思う。猫やカラスに乗るノーム。一度は見てみたい。童話に出てくるような挿絵みたいな光景がそこにはあるに違いない。
「ノームが随分と気に入ったみたいだな」
「はい。可愛いです」
ノアールがボソッと、「俺にも関心持ってくれたらいいのにな」なんて呟いていたことを私は知らない。何故かアコダ夫妻がニヤニヤしていたような気がした。




