12話・ノースデン山には何があるの?
行方不明となった石工は12人。ノアールと私で手分けして、それぞれの家族に聞いて回ることにした。私が聞きに行った石工達6人には特に変わったことはなさそうだった。ただ、皆に共通することは、ノースデン山に行くと言っていなくなったことだ。
「こっちはノースデン山に行くと言ったきり、出かけて行って帰って来なくなったと聞いたが、そっちはどうだった?」
「全く同じです。何も出なかったです」
食堂で夕食を取りながら四人で報告会となった。席はノアールとアコダが隣同士に座り、テーブルを挟んでその向かい側に私とカルロッタが着いていた。今夜のメニューはカルロッタと二人で作った野菜と鶏肉の入った煮込みシチュー。素材を生かしブイヨンで味付けしただけのシンプルなものだけど、美味しくできたと思う。それを目の前のノアールは品よく味わうように口にし、その隣ではアコダがガツガツ食していた。文句が出ないと言うことは美味しいと、思ってくれているのだろう。
ノアールに聞かれて、何も収穫のなかったことを言えばそうか……と、彼はテーブルの上で肘をつき、その上に顎を載せてため息を漏らした。
「ノアールさま。お行儀が悪いですよ」
「ああ。済まない」
私の隣の席についているカルロッタに指摘され、慌ててノアールは肘をついた手を戻した。
「問題はそのノースデン山は現在、アイオライト公爵家の私有地となっていて、公爵家からの許可がないと入れないようになっている。そこへどうして12名もの石工が向かったのか? 謎だ」
ノアールがため息を漏らす。彼としては石工達がノースデン山を目指した理由を、家族から聞き出せたらと思っていたのに違いない。私もそう思っていたが、目ぼしい情報はなかった。石工の家族たちも、本人がノースデン山に行くと言い出した時に、「あそこはお貴族様の私有地だ。勝手に入れば処罰される」と必死に止めたが、翌日、気が付けば姿を消していたと言っていた。
「誰かに唆された? またはアイオライト公爵家から実は許可をもらった?」
「あり得ないな。彼らは恐らく無許可だ」
頭の中を整理しようと呟いていたら、ノアールにご丁寧にも指摘を受けた。
平民にとってお貴族さまは、自分達とは住む世界の違う人々。絶対に逆らってはいけない相手で、まして無断で公爵家所有の山に入り込むなんて、普通ならあり得ないことだ。それならどうして石工達はその山に行くなんて言ったのだろう?
「ノースデン山に一体、何があるの? 皆、その山に行くと言って姿を消すなんて。目的は何? そこに石工達の気を惹くものがある?」
12人の石工が、貴族所有の山へ処罰も恐れず向かう理由は? 謎が深まるばかりだ。
「明日、ノースデン山を調べてみよう」
「えっ? 入っても良いの?」
「公爵に許可はもらっている」
ノースデン山はアイオライト公爵家の所有で、勝手に入ることは出来ないと聞いたばかりだから、許可をいつの間にもらったのかと驚いた。考えてみれば陛下から王命が下った時点で、許可されていたに違いない。ノアールは女王陛下直属の調査官クリュサオルだから。
謎が膨らむ話題で締めくくった食事の後、食べた後の食器を流しへと運び、洗おうとしていたら「手伝うよ」と、声がかかった。王都でも私が食後の後片付けをしていると、ノアールが率先して手伝ってくれていた。ノアールが申し訳なさそうに言ってきた。
「誕生祭は、ちょっとしか楽しめなくて済まなかった」
「仕方ありませんよ。お仕事ですから。でも、来年、機会があったらまた連れて行ってくださいね」
「勿論。今度は三日間、楽しもう」
そう言って微笑むノアールに、心がざわついた。




