勇者は無理やりクランを結成させられる
アギトの職業が勇者だと知って周りの冒険者含め、ギルドの職員も絶叫した。
「何だと!あいつが勇者?」
「渚ちゃん、何かの間違いでは?」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!勇者様だって!私とパーティ組んでくださーい!何なら、結婚してください!」
「私も!彼氏絶賛募集中です!」
ギルドの中が渚の一言で滅茶苦茶になる。それもそのはず、誰しもが憧れる職業。勇者ってだけで神に祭り上げられ、性別の違う者達からは好意を寄せられ、魔王を倒した後の生活が何不自由なくおくれるからである。
「そ、そんな・・・・。すみませんアギトさん。もう一度水晶に手をかざしていただけますか?もしかしたら誤作動かと。」
アギトは渋々もう一度水晶に手をかざした。
「本当に勇者だ・・・・・。」
これで、アギトの職業が確定した。周りの冒険者はドン引きしていた。まさか、魔王を倒す存在の勇者が目の前に居るからだ。
そして、冒険者達は一斉に声を上げた。先ほどの罵声とは打って変わって歓声へと・・・・・。
「すげ――――――――!マジかよ!」
「兄ちゃん、これからも俺と仲良くしようぜ!」
「俺のパーティに入ってくれ!頼む、この通り!」
「お兄さん、私と2人でパーティ組んで下さい!」
「おい、俺らはどうなるんだ!ヒーラーが居なくなったら俺達のパーティ壊滅だぞ!」
「そんなの知らないわよ!別の子探したら?あんた、昔から女たらしで気に食わなかったのよ!」
「何だと!?お前こそ、そこらの男をホイホイ食ってるじゃねーか!」
「あなたよりマシだからよ!」
益々事が大きくなる。パーティに誘うだけならまだしも、今のパーティを抜けてでもアギトとパーティを組もうとする者まで現れる。
収集が効かなくなり、アギトはギルドを後にすることにした。
「すみません、冒険者の証はまた後日取りに来るので今日はこの辺で失礼します。では・・・・。」
「あ、あぁ、ちょっと、アギトさん!この後の私とのデートは!?」
「また今度お願いします!さようなら」
一目散に逃げるアギト。今までに無いくらいの全速力で。
「あ――――――――!もう!失敗した!せめて、ティファかエリス様と来ればよかった。クソ――――――――!」
アギトは一度宿屋に戻る事にした。部屋に置いてきたコートを持ってくるためだ。部屋に着くとコートを着て、フードを深くかぶる。そして、再び街に戻っていった。
「さてと、次はどうするかな。とりあえず街中をブラブラするか。」
何か必要な物はないかと街を見て回る事にした。そして、1軒の道具屋を見かけ中に入る。
「いらっしゃいませー!どうぞ手に取ってみてください!」
とても丁寧な接客をする男性。アギトはお言葉に甘えて、店内の物を手に取り見て回る。
「うーん。この札は何だ?」
アギトは手に取った複数の札を調べてみた。
【スキル 調べる】
【火の札 魔力を込めると3秒後に炎が発生する 買値900ゴールド 売値300ゴールド】
【水の札 魔力を込めると3秒後に水が発生する 買値900ゴールド 売値300ゴールド】
【雷の札 魔力を込めると3秒後に稲妻が発生する 対象は数秒痺れる 買値2400ゴールド 売値 800ゴールド】
【冷気の札 魔力を込めると3秒後に辺り一面冷気が発生する 買値3000ゴールド 売値1000ゴールド】
【爆発の札 魔力を込めると3秒後に小さく爆発する 対象は火傷を負う 買値3000ゴールド 売値1000ゴールド】
【ただの札 属性を記入することで様々な効果を得る ※ただし、記入する時は多少の魔力を使う。記入する属性によって消費する魔力は異なる 買値90ゴールド 売値30ゴールド】
「なるほど。これは便利だ。こいつさえあれば俺も少しは戦える。」
アギトはその後も使えそうな物を色々見て回り、自分が必要な物を買った。アギトが買ったものは、
属性札をそれぞれ1枚ずつとただの札150枚、空瓶20個、オイル20リットル、筆、墨、ショートボウ1個、小さな木の矢200本、竹の水筒1個。これで全財産をほぼ使い切る。
「こりゃ、今日は飯抜きかな。トホホ・・・・・・。」
そしてさっそく宿屋へと戻り、ただの札に属性を記入する。しかし、アギトは魔力量が極端に少なく各属性札を5枚ずつ書いた所で力尽きる。
「今日はもう寝よう。明日はギルドに行って冒険者の証を受け取ってその後エリス様の所に行くか。」
【翌日】
アギトは、朝一でギルドに行った。フードを深くかぶり、顔バレ対策も万全と思ったのが間違いだった。
ギルドの扉を開けて中に入ったはいいが、真っ先に渚がアギトの存在に気が付き大声で、
「あー!アギトさん!来てくださったのですね!出来てますよ、冒険者の証!」
速攻でバレるアギト。そして渚の視力を疑うアギト。アギトと聞き周りの冒険者も反応した。
「お!来た来た!おーい、勇者様!一緒にクエスト行こうぜ!しょうがねーから俺達が手伝ってやるよ!」
「何よあんた!勇者様に対して何でそんなに上からなのよ!失礼でしょ、雑魚冒険者!」
「なんだと、コラぁ!」
「何よ!やろっての?相手になろうじゃない!」
「上等だ!表出ろ、このアマ!」
昨日と同じで、速攻で喧嘩を始める冒険者達。アギトは見なかった振りをして渚の所に行く。
「こちらになります。はい、どうぞ!」
「ありがとうございます。」
「冒険者の説明は必要ですか?この私が、夜通しで教えますが?」
「何で夜通し・・・・。いえ、結構です。知り合いから教わっているので。では、これで!」
「えぇ、もう帰っちゃうんですか?クエストは受けないんですか?」
「今日は、少し行きたいところがあるので、また今度受けに来ます。」
「わかりました!その時は是非、私にお声かけ下さい!顧客が増えれば、お給料もアップするので!」
「そうなんですか?だとしたら、渚さんは相当稼いでるのでは?」
「はい、このギルドではぶっちぎりの1位です。」
「そうですよね。お綺麗ですし、人気ありますもんね。」
「そ、そんな、お綺麗だなんて・・・・・・。結婚してください!お願いします!この通りです。」
「では、さようなら」
「あーん、アギト様~」
そして、アギトは次の目的地エリスの屋敷に向かった。門の前には見張りの兵士が2名いた。
「これはこれは、アギト様おはようございます。でも、なぜにそんな疲れた顔をしておられるのですか?」
アギトは兵士2人に昨日の事と今朝の出来事を話した。
「はははははははははっ!それは大変でしたね。まぁ、この街じゃ3番目に人気の女性ですからね!ちなみに、1番人気はティファ様で2番目はエリス様です。」
「マジかよ。ティファが1番人気。」
「はい、街中でティファ様と2人きりで歩いてなんかいると殺されかねないですよ。はははははははっ」
「そんな脅しいらないよ・・・・・。」
「ではでは、どうぞお入りください。」
「ありがとう。」
アギトが庭を歩いていると、すれ違うメイドや若い冒険者の女性は目がハートマークになっていた。男性陣からは特に何もなかった。
流石はエリスのクランメンバーだ。僻む者などいなく、尊敬の眼差しを向ける者もいた。
そして屋敷の中に入って、エリスかティファが居ないかキョロキョロしていると、この前案内してくれたメイドが声を掛けてきた。
「アギト様、お待ちしておりました。エリス様の元へとご案内いたします。」
「うわっ!ビックリした!いつからそこに居たんですか?」
「最初からですよ?」
「あ、そ、そうだったんですね。まるで気配が無かったから。ごめんなさい。案内お願いいたします。」
「はい、喜んで。それと、そんなかしこまらないでください。」
「しかし、自分は部外者ですし。」
「そんな事ありませんよ!?エリス様もティファ様も、アギト様を気に入っております。なので、部外者ではありません。」
「そう言ってもらえると救われます。」
「ふふふっ。エリス様のおっしゃる通り面白い方ですね。」
「そりゃどうも。」
「ささ、こちらです。」
アギトはエリスが居る部屋へと案内された。そして中に入りエリスと話し始めた。
「この前はどうもすみませんでした。その後ティファはどうですか?」
「あの日こそ取り乱していましたが、今はもう平気ですよ。至って元気です。」
「それは良かった。それよりティファは今何処に?」
「多分、外で剣の訓練をしているかと。何を思ったのか、昨日から急に訓練を始めたんです。」
「そうなんですね。」
すると、勢いよく部屋のドアが開かれティファが入ってくる。
【ドンッ】
「お姉ちゃん、アギトさんが来てるって本当!?」
「えぇ、本当よ。だから落ち着きなさい。」
「何処!?何処に、私のアギトさんは居るの?」
「ほらね、いつも通りでしょ?」
「そうですね。いつもティファですね。」
「ああああああああああああああ!アギトさん、いつからそこに?」
「ん?初めから居たけど!?」
「不覚。私ともあろうことがアギトさんに気が付かなかったとは・・・・・・。結婚してお詫びします。」
「ティファ?だから、何でそうなる?」
「そうなるのが運命だからです!」
「なるほど。」
「あぁ!今、遂に納得してくれましたね?やったー!」
「いや、これは呆れであってだな・・・・。」
「私はそうは捉えません!」
「ふふふふふふっ。相変わらず2人は仲が良いのですね!」
「当然です!」
「それはそうと、アギト様何かお話しがあったのでは?」
「はい、本日は明日にでもこの街を離れようかと思いあいさつに参りました。」
「「「!!!」」」
突然のアギトの発言により、この部屋に居るティファ、エリス、メイド服を着た女性が驚く。
「それはまたとても急な話しですね?」
「すみません。色々悩んだ結果なのです。」
「そうでしたか。深くは聞きませんがもう少しゆっくりしてみては?私達は、まだティファを助けてもらったお礼も出来てませんし。」
「お礼なら結構です。元々受け取るつもりもなかったので。」
するとここでティファが、
「決めた!」
「!?」
「何を決めたの、ティファ?」
「私、このクラン【エンジェル・バンクウェト(天使の宴)】を抜けて、アギトと一緒に新しいクラン【ヴレイブ・ハート(勇敢な心)】を結成する!」
「「「はぁ!?」」」
【クラン紹介1】
【ブレイブハート】ティファの提案でアギトが作ったギルド。リーダーがアギト。ザブリーダがティファで結成される。名前はティファが決め、魔王を倒す勇敢な心の持ち主が集まるようにとつけた。ティファが密かにこの大陸で最大規模のクランにしようとしている。後にそれが現実となり、大陸最大のクランが誕生する。




