勇者は誤解される
ティファを救ってから1週間が経った。アギトは目的地ヴィータにいた。そして、最悪の状況に陥っていた。
「お、俺達は見たんだ!こいつが、無理やりティファにキスをして、上半身の服を脱がして体を触っている所を」
「そうよ、ティファが私達を逃してくれたあと、これじゃダメだと思い現場に戻って見たらこいつがそんな事をしていたのよ。気持ち悪いったらありゃしない。私がされてたら、自殺していたわよ。」
「サブリーダ、こいつはただじゃ済まされないことをしたんだ!生かしておくわけにはいきませんよ!こいつを殺してその首をエリスさんに差し出しましょう」
「あぁ。そうだな。目を覚まさないティファに対し手を出したことを後悔させてやる。」
なぜ、アギトはこんな状況なのか・・・・・。
【1時間前】
アギトは、いつも通り素材集め終えてヴィータに戻り、広場で薬を調合していた時、そこに、ティファとパーティを組んでいた3人と、ティファのクランに所属するサブリーダの男が現れた。
「この男です!ティファに手を出したのは!」
要らぬ濡れ衣を着せられたアギト。説明しても誰もアギトの言葉を信用しない。信じるのは、同じクランメンバーの言葉ばかりだ。
そして、アギトは4人から暴行を受けている最中だ。
「死ね!貴様など生きている価値なしだ!」
「クソっ!信じてくれ!俺はティファを助けただけだ!」
「まだ言うか!この外道が!」
サブリーダのカイトがその拳でアギトを殴る。
【バキッ】
アギトの顔から嫌な音が聞こえる。顔の骨が折れる音だ。
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」
「まだまだ!」
更にアギトを殴り続けるカイト。腹、顔、全身に至るまで殴るカイト。
広場では他の冒険者も居たが、誰も助ける者は居なかった。ヴィータで最も大きなクランの美少女ティファに手を出したのだから。
野次馬も次第に声をあげる。
「やっちまえ!」
「俺達のティファちゃんに手を出した報いを受けろ」
「死ね!クソやろー!」
「ティファちゃんがどんな気持ちだったか考えろ!下衆野郎が!」
「何で、お前なんかがティファちゃんのファーストキスを奪ってんだ!それはカイトさんの物だったんだぞ!」
「そうだ!貴様が、私のティファのファーストキスを奪ったのだ!死んで詫びろ!」
理不尽にもほどがあるとアギトは思っていた。あの状況だと、どう考えても死んでいたティファ。それを助けたら、一部始終を戻ってきたパーティメンバーに見られ、告発された事。
誰も自分の話しを聞いてくれない。街の人たちも全てアギトが悪いと思い込んでいる。
殴られ続けて、意識が飛びそうな中必死に逃げるアギト。フラフラになりながらも意識だけは飛ばしてはダメだと思った。
ここで気絶したら、確実に殺されると分かっていたからだ。しかし、
「ま、待て!逃げられると思っているのか!やれ、エマ、ジェニス!」
エマと呼ばれる魔法使いの女は、火の魔法を放ち逃げるアギトの背中に命中させる。狩人のジェニスも弓でアギトの足を狙い歩く事を困難にさせた。
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
そして、アギトはその場に倒れ込み意識を手放した。
「ど・・・・どうして・・・・こんな・・・・・・・・」
「やっと、気絶したか。こいつをエリスの所に連れて行け!」
そして、アギトはエリスの居るクランの屋敷に捕らわれた。
その頃、ティファの部屋では、
「う・・・・うん。こ・・ここは・・・私の部屋?はっ!そうだ、私は確かエマとジェニスとトーマスに囮にされて死ぬところだったんだ。でも確か、誰かが私を助けてくれた・・。名前が出てこない。顔は薄っすら覚えているけど。」
ティファは、あの時薄れゆく意識の中ではっきりと、声とその顔を見ていた。命の恩人のことを。そして、
「誰か、居ないの!?誰か来て!」
ティファは大声で部屋の中から叫んだ。そして、その声を一人のクランメンバーが聞き駆けつけた。
「おぉ、ティファ様!遂にお目覚めになられたのですね!良かった!もう、一週間も寝ていたのですよ!」
「一週間!?そんなに!?お姉ちゃんは何処?お姉ちゃんに話さないといけないことがあるの!私を助けてくれた方の事を!」
「ティファ様を助けた?あぁ、ジェニスとエマとトーマスですね!あの3人がティファさんを抱えて、キリス街から連絡をくれて、カイト様が迎えに行ったのですよ!あの3人には、後日エリス様から褒美が出されるとか!実に素晴らしい3人です!」
「はぁ!?」
この男は何を言っているのかティファにはわからなかった。ジェニス達は、自分を囮にして一目散に逃げて行ったことは覚えている。
そして、助けてくれたのは自分よりも少し年上の男性だって事も。
「それと、ティファの体を目当てでキスをしたり体を触った男は既に捕まえており、今エリス様直々に拷問をしている真っ最中です。もぅ、それはそれはお怒りになったエリス様は凄くて今にもその男は死にそうですよ!よく、死なずに堪えているの不思議なくらいです。」
「何て事をしてるのよ、あなた達!その人こそ、私を助けてくれた恩人なのよ!!!お姉ちゃんは今何処に居るのよ!止めさせないと、あの方が死んでしまう!言いなさい、お姉ちゃんは今何処に居るの?」
「え・・・・、えっと地下の拷問部屋ですが・・・・。」
ティファは急いで拷問部屋がある地下へと駆け出した。このままでは、命の恩人が死んでしまう。それだけは許されない事。けしてあってはならない事。
そして、ティファは拷問部屋とたどり着き、扉の目の前に居る男達に話しをする。
「今すぐ、私をその中へ入れなさい!命令よ!」
「いや、しかしエリス様からは誰も居れるなと。」
「早くしなさい!死にたいの?」
「ですが・・・・・・・。少々酷い光景でしてティファ様が見るには・・・・。」
「いいから!早く!」
怒りをあらわにして、見張りに強い口調で言う。渋々扉のドアを開ける門番。そして、拷問部屋の中を見たティファは絶句する。
部屋の中には、両手を鎖で繋がれつるされて、身体は火傷や傷だらけのアギトが居た。
そして、エリスとカイト、それからジェニス達の姿がそこにはあった。そして、
「ティファ!?目を覚ましたのか?良かった。お姉ちゃんがどれだけ心配したことか。」
ティファを抱きしめるエリス。エリスに抱きしめられ涙を流すティファ。だがしかし、その涙は抱きしめられてうれしい涙ではなく、助けてくれた恩人が無残な姿であったことに対してだ。
「ど・・・・・どうして・・・・。どうして・・こんな事を・・」
ティファは泣きながらつぶやく。
「ティファ。もう安心よ、あなたを苦しめた男は時期に死ぬわ。だから、これ以上はここに居てはダメ。部屋に戻りなさい。」
「そうだよ、ティファ。この男の始末は、このカイトにお任せください。必ずや、ティファしたことを後悔させてやります。」
膝から崩れ落ちるティファ。顔がぐしゃぐしゃになるぐらい泣き始めて言う。
「ち・・・・違うの・・・・。この人は・・・私を助けてくれた人なの。」
「!?」
そこに居たエリス、カイト、数名のクランメンバーは、ティファは何を言っているんだ?と言う顔でお互いを見た。そして、エリスが続けて話す。
「何を言っているんだティファ?そうか、起きたばかりでこんな光景を目にして混乱してるんだね。」
ティファが目を覚ましたことで、バツが悪くなったジェニスが話し始める。
「ティ、ティファ様!これは違うのです・・・・・。」
「黙りなさい!この外道が!私を囮にして一目散に逃げたくせに!」
「え!?ティファ?どういうこと?」
「どうもこうも無いわよ!私達は、モンスターに囲まれて、助からないと分かればトーマスが私に毒針をさし、動けない私を囮にして逃げたのよ!そしたら、そこに居る男性に、助けられたの!彼は、木刀と弓だけでボロボロになりながらも、モンスターを相手にして、私を助けてくれたのよ!」
「しかし、ジェニスの話しだとティファはこの男に乱暴されたとか?」
「違う!確かに、キスをされたし体を触られた。けど、それはモンスターの攻撃で指一本動かせない状況で、私に薬を飲ませてくれて、傷薬を体に塗ってくれただけ!それだけの事!私からお願いしたのよ!だから、その人は何も悪くないのよ!」
「ジェニス、本当なの?返答次第じゃただじゃ済まないわよ?」
「え・・・?い・・いや・そ・・・そんな事は・・・。そうか、ティファ様は混乱なさってるのですね!あの時の嫌な記憶を自ら心にしまい込んで。」
「黙れ!そして、今すぐ彼を解放しなさい!早く!」
カイトがアギトを下ろし鎖を外す。辛うじて意識があるあるアギト。ティファはすぐさまアギトに駆け寄る。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。辛かったですよね。私のせいで本当にごめんなさい。」
必死に謝り、アギトに手を差し伸べるティファだったが、
「俺に触るな。クソが。」
ティファの手を払いのけるアギト。そして立ち上がりその場を後にするアギト。
「待ってください、何処に行くのですか?せめて治療だけでもさせてください。」
ティファはアギトの手を掴み出ていくのをやめさせる。そんなアギトは、ティファの手を振り解き、
「もう、俺に構うな。」
アギトは、拷問部屋のドアを開けティファ達の前から立ち去った。
【人物紹介3】
名前→ティファ 職業→見習い剣士 冒険者ランク→F アギトとの出会い→モンスターに襲われていた所をアギトに助けられる 武器→バスターソード(片手でも両手でも持てる長さの剣) 年齢→15歳 性別→女 身長→157cm 体重→43kg 髪→薄いピンクでセミロング スキル→二刀流 クラン→現時点では不明 その他→剣聖エリスの妹。双剣士を目指している。回避型の前衛。バスターソード2本持ち。アギトに助けられてから恋に落ち、アギトが初恋の相手。アギトに異常なくらい執着している。アギト以外の男は男として見ていない。アギトの帰還に手を貸すが本当は残ってもらいたいと考えている。




