温かな家
「着いたぞ。ここが俺の家だ」
アギト達はステラ達姉妹を助けた後、怪我の治療をするために一度大輔の家へとやってきた。
「………おぉ。ここが髭のおじさんの家」
「おぉ!ここがひげのおうち!」
「誰が髭のおじさんだ!それにルナ、変に略して髭だけって、俺にはちゃんと竜崎大輔という名前がある!」
「大輔さん、竜崎っていうんですね」
「あれ、話してなかったか?」
「初耳です」
「まぁ、今まで通り大輔とでも呼んでくれ」
「わかりました」
「んじゃ、入るか」
「えぇ、そうですね」
大輔の家は、鍛冶屋も併用しており、入り口は正面と裏手の勝手口の2つだ。今回は、正面の鍛冶屋の入り口から入った。入り口を入ればそこは色々な武器や農具が置いてある。
【ガチャ】
「帰ったぞ!」
「いらっ………何だお父さんか。お帰り」
「何だ、その露骨にがっかりする感じは…………」
「別に。珍しくお客さんかなって思っただけよ」
店のカウンターには店番をしている雫がいた。いつも通り、大輔の店は客が少なくカウンターにすわり暇そうにしている。
「…………おぉ。武器がいっぱい」
「おぉ!なんかいっぱいある!」
ステラは落ち着いた雰囲気で店の中を見渡す。ルナは武器や農具を目にしてテンションが上がり、店の中を駆けずり回る。
「え!?」
二人を見た雫が目を丸くする。そしてすぐに雫は
「お母さーん!お父さんが浮気して他の女の子供連れてきたー!」
「ちょっ、おい!待て、雫!」
「………これが修羅場ってやつ。南無」
「しゅらば!しゅらば!アギト、しゅらば!」
「何で俺なの?修羅場は髭のおじさんだぞ!?」
「あぁ、そっか!ひげ、しゅらば!」
「お前等、誰のせいだと思ってる!」
すると奥から、包丁片手に愛華が現れる。愛華のおでこには青筋がくっきりとわかるぐらいたっていて、包丁を持っている手は震えていた。
「おかえり、あなた?それで、何か言い残したことはある?」
「えっ!?こわっ!愛華、違うんだこれは…………」
「何が違うって言うの?」
「こ、これはだな…………」
ここで、面白がってステラとルナが大輔に追い打ちをかける。
「………パパ、この女の人は誰?」
「てめー、ステラ!」
「おぉ!パパ、ママのほかにもママがいたの?」
「………ッ、ルナまで何て事を言いやがる」
「ふーん、そう………。離婚ね」
「ちょっ!」
すると、ここでアギトが見かねて大輔に助け舟を出す。
「ステラ、ルナ!いい加減にしろ!」
殺気を少し込めてアギトはステラとルナを交互に見る。
【ビクンッ】
「………ヒッ!」
「……ヒック………ヒック…………う………うぅ…………うわぁぁぁん!ママァ!」
アギトのあまりの怖さに、ステラは血の気が引きルナは大泣きをしてしまう。
「あっ!しまった」
「あー!アギトさん子供泣かした!いけないんだ!」
「ち、違う、これは…………」
「うわぁぁぁぁぁぁぁん」
ルナは泣きながらアギトの足にしがみつく。まるで離れたくないと言わんばかりに力強く。
「あぁ。ごめんよ、ルナ。ちょっと怖かったよな。ごめん、ごめん、よし、よし!」
アギトは足にしがみつくルナの頭を優しくなで抱き上げる。
「………うぅ…………う………ぅ」
「あらあら。ごめんなさいね、お嬢ちゃん。悪気は無かったのよ?よし、よし」
アギトに続き、愛華もルナの頭を撫でる。すると大輔が
「ステラ、悪いことをしたら何て言うか知ってるか?」
「…………ごめんなさい」
「ぅ………う………ごめんなさい。ひげさん」
「髭さん!?ま、まぁいいか…………。これからは悪い事するんじゃないぞ!」
「………うん」
「うん」
「よーし、じゃ、まずはステラの傷の手当でもするか!愛華、薬箱持ってきてくれ!」
「はーい!」
「あっ!それならいいもの持ってます!」
「いい物とは何だ、アギト?」
「これです」
アギトはアイテムボックスから、回復軟膏Aを出した。
「これなら、2~3日で完治しますよ!」
「これは何だ?見るからに軟膏に見えるが…………」
「これは、俺が作った回復軟膏です。勇者の俺にしか作れない代物です」
「………アギト勇者なの?」
「あぁ、俺はステラ達と同じ世界から来た人間だ。そしてこの世界では勇者だ!」
「おぉ!アギトはゆうしゃ!ゆうしゃアギト!かっこいい!」
「そうだぞ!俺はカッコいいんだ!でも、みんなには内緒だぞ!」
「…………何で内緒?」
「ん!?それはな、俺が勇者だとバレると色々問題があるんだ」
「…………わかった。ルナも内緒」
「うん!アギト、ゆうしゃ!ないしょ!ないしょだよ!わかった?ひげ!ないしょだよ!」
「なっ!」
「もはや、大輔さんの呼び方髭で確定してる」
「アギト!お前からもどうにか言えよ!」
「もう、手遅れかと…………」
「………たぶん無理」
「ステラまで…………」
「おぉ、ひげがこまってる」
「お前のせいだ!」
「わー!ひげがおこった!にげろー!」
「ま、待てこのやろー!」
「ははははっ。大輔さんにもすっかり懐いてる」
アギトは苦笑いをしながら二人を見つめる。
「………アギトほどではない」
「それもどうかと思うんだがな…………。さてと、ステラ傷口を見せてみろ」
ステラの傷口に回復軟膏Aを塗っていくアギト。すると、アギトの魔力が宿った軟膏が、ステラの肌に吸い込まれるように消えていく。
「よし、これで平気だ」
「………すごい。痛みが一瞬で消えた。これが勇者の力」
そして、ここでアギトはずっと気になっていた事への答えを知る。そう、それはステラとルナの職業だ。この世界では、生まれ持った自分の職業という物がある。
そして、この世界に転生された二人も例外ではない。
【スキル 調べる】
アギトはステラに対してスキルを使った。そして、明らかになったステラの職業はと言うと
【星 8歳 女】
【職業:拳王】
【状態:良】
【死に至る可能性:✖】
【冒険者ランク:F】
【所属クラン:無】
【固有スキル:武神の瞬き】
(拳王!?何だそれ!?格闘技の類でも習っていたのか?)
「なぁ、ステラ?」
「………何?」
「お前、元の世界で何か習い事していたか?」
「………空手」
(やはりそうか)
「………でも、習い事をしていたのは私だけ。ママはルナには何もやらせてなかった。」
「なぜ?」
「…………わからない。でも、あの子は昔から少し変わっていた」
「と言うと?」
「………あの子はいつも一人で遊んでいた。でも、その遊び相手がいつも自分の影だった。私も、ルナが影とまるでおしゃべりをしているかのように話している所を何度か見てる」
「影と遊ぶか…………」
そして、ここでアギトはルナを呼ぶ。
「おーい、ルナちょっとこっちへ来てくれ!」
アギトに呼ばれ、大輔とじゃれていたルナは一目散にアギトの元へと来る。
「ひげ!アギトがよんでるからいくね。ばいばい」
「だから、髭はやめろー!」
【タッタタタタタッ】
「きたよ、アギト!…………だっこ!」
「はいはい、抱っこね!よいしょっと」
アギトはルナを抱っこしたついでにスキルを使う。
【スキル 調べる】
【月 8歳 女】
【職業:シャドウ・ランサー】
【状態:良】
【死に至る可能性:✖】
【冒険者ランク:F】
【所属クラン:無】
【固有スキル:双影の共鳴】
(ルナはシャドウ・ランサーか。シャドウ・ランサーとはどんな職業だ?シャドウは影で、ランサーだから槍を得意とする職業か?)
「なぁ、ステラ!転生された時、ルナと二人きりだったのか?」
「………違う。ママとルナと私でお出かけしてた。その時、突然眠くなったと思ったら、次の瞬間ルナとここにいた」
「お母さんは?」
「………わからない。一緒に居たのはルナだけ」
「…………そうか」
「ママにあいたい…………」
突然抱っこされたルナが悲しげにアギトに言った。
「大丈夫だルナ!必ず俺がルナのママに会わせてやる!なんてったって、俺は勇者だからな!出来ない事は何もないんだぞ!」
「アギトゆうしゃ!アギトつよい!なんでもできる!」
「そうだ!何でも出来るぞ!だから、もうちょっと我慢してくれ!」
「うん!ルナ、いいこにしてママをまってる!」
「よし!いい子だなルナは!」
「ルナいいこ!だからあたまなでなでして!」
「よーし!それっ!」
アギトはルナの頭をわしゃわしゃと撫でる。
「アギト、くすぐったい」
「まだまだ!」
ルナは母親に会えないにも関わらず、満面の笑みで笑っていた。
「………アギト、ありがとう。ルナが笑っている所久しぶりに見れた。感謝」
「おう!なら、お前もだステラ!」
アギトはルナを下ろし、今度はステラの頭も撫でる。
ステラもまんざらでもなさそうな笑みを浮かべていた。そんな様子に愛華が
「アギト君、だいぶ慣れているわね」
「そうだね。あー、私の頭も撫でてくれないかな…………」
「なら、お願いしてみたら?もしかしたら撫でてもらえるかもよ?」
「なっ!い、いいわよ別に!結婚したらいっぱい撫でてもらうんだから!」
「うふふふっ。そう」
「な、何よ、お母さん!?」
「別に…………ふふっ」
「おーい。みんな、俺も居るんだが忘れてないよな?お父さん寂しくて泣いちゃうぞ!?」
「あ!そーいえば居たね、お父さん!」
「ひどっ!」
「「「はははははっ」」」
こうして、ステラとルナの職業も分かり、今後どうするかをこの後決めるのであった。




