粉砕される盾、そして謎の精霊師
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、」
急いでグレイヴ達の居る宿屋まで戻るパタ。遠くで松明の小さな光が近づいてくるのを、村の小さな監視塔にいた男が見つける。
「おーい、どうした?」
「た、大変だ!モ、モンスターが現れた!急いで皆に知らせてくれ………」
「何だって!?わ、わかった!」
監視塔の男は急いで緊急時に鳴らす鐘を叩いた。
【カンッ、カンッ、カンッ、カンッ】
すると次々に民家の灯りがつきはじめる。そして、グレイヴとメイも慌てて外に出てパタから事情を確認する。
「どうした………?モンスターが現れたのか?」
「は、はい!巨大なモグラみたいモンスターが………」
「行きましょう、グレイヴさん!」
「あぁ」
「パタさんは、村の人に出歩かないでくださいと伝えてください。モンスターは私達が対処いたします」
「えぇ、わ、わかりました。どうかお気をつけて。」
その頃、ガイとハツネは異様な光景を目の当たりにしていた。
【シュウゥゥッ】
「おい、おい、おい、こんなのありかよ!」
「な、何てことなの……………」
なんと、ハツネの烈火符を食らった場所が見る見るうちに回復していく。
【グガガガァ】
「モグラ野郎、調子に乗りやがって」
「ガイ君、気を付けてください!どんな攻撃をしてくるかわかりません」
次の瞬間、モグラは二人から距離をとるため大きく後ろへとジャンプした。そして、着地と同時に勢いよく穴を掘る。
【ゴゴゴゴッ】
「あっ!こ、こら、逃げるな!」
「ガイ君、ダメです!」
ハツネの言葉に耳もかさずモンスターの元へと走り出すガイ。しかし、モンスターの方が早く、もう一歩のところでその姿が消えた。
「クソッ、潜りやがった…………」
地面を蹴り、苛立ちを見せるガイ。
「ガイ君、油断はダメです!何処から現れるかわかりません」
「あぁ、わかってる」
ガイは盾を前に構え、ハツネは二枚の札を手にする。そして、魔力を込め、術を発動する。
「灯明符」「心眼符」
灯明符はハツネの上空に上がり、札の効果で辺りが明るく照らされた。そして、心眼符は前線に居るガイの胸元に吸い込まれ、ガイは五感が研ぎ澄まされた。
僅かな音がガイの前方から聞こえ、ガイはその方向へ向き盾を構えた。その時
【ガサッガサッ】
【ヒュッ】
「!?」
【ガキンッ】
ガイの構えていた盾に、とてつもないスピードで飛んできた石が当たる。
【ヒュッ、ヒュッ、ヒュッ】
【ガキンッ、ガキンッ、ガキンッ】
「くそ!これじゃ、身動きがとれねぇ!ハツネさん、どうにかならねーか」
「すみません。私の術じゃどうしようも………。せめて石が飛んでくる方向の木さえなければ。」
「なら、私が木をなぎ倒しましょう。」
「え!?」
突如ハツネの後ろから聞いたことの無い女性の声がした。
「シルフィー、いくわよ!」
すると、女性の横にいた手のひらサイズの妖精だろうか、全身に淡い緑色のオーラに包まれる。
「旋風連斬」
シルフィーは、女性の掛け声と共に無数の斬撃を石の飛んでくる方向へと飛ばす。
【ヒュゥゥゥ――――ズバァッ!!】
【ドサァァァッ、ドザッ、ドザッ】
「す、すげー…………。何だよ今の技」
「あの数の木を一瞬で…………」
妖精の放った斬撃により、木々が倒れモンスターが姿を現す。
【グガガガァァァ】
「今です!モンスターに攻撃を。私も精霊術で援護します」
「は、はい。ガイ君、モンスターに攻撃を仕掛けてください!また潜られたら厄介です!私達も援護しますから!」
「お、おうよ!」
「行くぜぇ、クソモグラ!」
ガイはモンスターへと駆け出し斬りかかる。
「うおぉぉぉぉ」
「烈火符!」
「シルフィー、旋風連斬」
【ザシュッ】【ボンッ】【ザァッン】
ガイがモンスターの足元を攻撃し、ハツネの炎と精霊師の風が胴体へ突き刺さる。
【グガガガァァァァァ】
「よし!」
モンスターは三人の攻撃により態勢を大きく崩す。
「一気に畳み掛けます!」
ハツネはそう言って札を出し、魔力を込めようとした時
【グギャァァァァァァァ】
「…………クッ」
「………み、耳が」
「何よ……これ」
三人はその場に跪き、耳をおさえる。そして、モンスターの一番近くに居たガイは耳にはおろか、視界にも影響が出る。
「うぅ………ぅう…………ク…………クソ」
【グガガガァ】
モンスターはガイめがけ突進する。三半規管が全てやられたガイはモンスターの攻撃をガードすることが出来ず、まともに食らってしまう。
【ボキッ、ボキッ、ボキッ】
ガイの胸で嫌な音が鳴り響きそのまま吹き飛ばされる。
「ぐぁぁぁぁぁ」
「ガ………ガイ君」
ハツネも精霊師も、目が回ってしまいうまく起き上がれない。そして、ガイを吹き飛ばしたあとそのままの勢いでモンスターはハツネ達の元へ向かい二人をまとめて吹き飛ばす………はずだったが、
「シールドバッシュ」
ここでグレイヴとメイが三人の元へ到着する。
【ド――ッン】
グレイヴのスキルによりモンスターは攻撃出来ず、後ろへと吹き飛ばされる。
「サンダーボルト」
【ドゴ――ッン】
メイはハツネ達に近寄り声を掛ける。
「お二人とも、大丈夫ですか?」
「え、えぇ。なんとか…………」
「た、助かったわ」
「それよりガイ君が」
メイは、遠くに横たわるガイを見た。動く気配がないガイ。
「グレイヴさん、兄さんは私が見ます。モンスターの方をお願いできますか?」
「任せろ」
メイはガイの方へ、グレイヴは大楯を構えモンスターへと近づいていく。
「兄さん、大丈夫ですか?」
「メ、メイか…………。わりぃドジった」
「兄さん、今はそんな事より手当てを。歩けますか?」
「あぁ、何とか…………。いてててっ」
メイはガイに肩を貸し、二人はゆっくりとハツネの元へと向かう。
「メイちゃん、ガイ君をこちらに」
ハツネは怪我をしたガイの治療を始める。幸い肋骨が数本折れている程度で、命に別状はない。すぐに回生符で治療を始める。
「とりあえず、一先ずはこれで大丈夫。でも、肋骨は折れたままだからここから動かないでください。」
「クソッ」
ガイは唇を噛みしめ悔しがる。
「ハツネさん、兄さんをお願いします。私はグレイヴさんとあのモンスターをどうにかしてきます。」
「私も行くわ!シルフィーは何ともないしまだ戦える」
「お姉さんは?」
「私は精霊師のレーナ。この子は風の精霊シルフィー、よろしくね!」
【ヒュゥゥゥゥ】
シルフィーはメイの周りを縦横無尽に飛び回る。
「か、可愛い…………」
「ふふふっ。ありがと」
「わ、私はメイ。見習い魔法使いです。よろしくお願いします」
「私はハツネ。職業は巫女です。よろしくお願いします」
「巫女?巫女なんて職業この世界にも存在したの?」
「この世界?」
「いえ、何でもないわ。じゃ、メイさん行きましょう!」
「はい!」
メイとレーナは急ぎグレイヴの元へと走り出した。




