不屈のガイ、そして異変の始まり
時刻は深夜1時。ガイ達は付き添いの村人が待つ場所へと歩き出す。
木々がわずかに揺れる音が辺りの静けさを感じさせる。そして村の中央にある井戸に来たハツネ達は、少し小太りな男性と合流した。
「こ、こんばんは…………。私はパタと言います。よ、よろしくお願いします」
「こんばんは、パタさん。こちらこそ宜しくお願い致します」
「よろしくな、おっちゃん!」
ガイは緊張する様子もなく、真っ白な歯を見せてにこやかに笑った。
「ははははっ。…………よろしく」
少し不安げな様子を見せるパタ。そんなパタにハツネが
「パタさん、私達の側から離れないでくださいね。もし、モンスターが現れたら一目散に逃げてください。そして、宿屋に居るグレイヴさん達に知らせてください」
「は、はい。わかりました」
「そんじゃ、行こーぜ!何か、楽しくなってきた」
そう言ってガイは歩き出しその後をハツネとパタが追う。
「ガイ君、グレイヴさんも言っていたけど油断は禁物ですよ!いつどこでモンスターが現れるかわからないんですから」
「りょうかーい」
モンスターがいつ襲ってくるかもわからない状況の中、パタの持つ松明が小刻みに震える。
「大丈夫ですよ、パタさん。もう少しリラックスしてください。じゃないと、いざという時動けないですよ?」
「…………そ、そうですね。すみません」
「おっちゃん、そんな緊張すんなよ!何かあったら俺達が守ってやっからよ!」
「ガイ君はもう少し緊張感を持ってくれるとありがたいのですが…………」
ガイの余裕を見せる姿にハツネは苦笑いをするしかなかった。
順調に見回りを続けるガイ達一行。村の隅々まで調べ、何か昼間とは違う所が無いかを念入りに探す。
一通り見回り、三人は再び井戸の前へ戻って来た。
「さて、後は村の奥ですね。気を引き締めていきましょう」
「おう」「は、はい」
今度は、ハツネが前を行きガイがパタを守る形となる。村の奥は建物が無く、畑が一面に広がっている。畑の中央までやってきたハツネ。ガイとの距離は少し開き、ここでハツネが何かを感じ取る。
ハツネの足元で、土がわずかに震えた。
「………っ」
【ゴゴゴゴゴゴゴッ】
僅かに揺れる地面。ハツネはすぐにガイに呼びかける。
「………っ、来ます」
「えっ?」
【ゴゴゴゴゴゴッ】
地中を移動する何かは、ハツネの下を通りガイの居る方向へと向かう。そして、ガイの足元の土が突如盛り上がる。
「おわっ!」
ガイとパタは足元を取られ、その場に尻もちをつく。
「…………ははははっ」
地中を移動するモンスター。円を描くようにガイとパタが居る周辺の土が更に盛り上がる。
【ゴゴゴゴゴゴッ】
「なんだこれ!?」
そして、土が爆ぜモンスターが地上へと姿を現す。そのモンスターは、モグラの姿をしていた。
「グルルル………ゴガァッ」
「あわわわっ」
あまりにも巨大で、二本の手には巨大な爪がありカチカチッと指を鳴らし、腰を抜かしているパタを睨みつけるように見ている。あまりの恐怖でパタはその場から動けない。
「お、おい!おっちゃん平気か?」
「す、すまん。腰が抜けてしまった…………」
「クッ!」
「スキル、剣士の極意」
ガイはすぐさま固有スキルを使い、モンスターの敵視を自分の方に向けるように斬りかかる。
【ガキンッ】
しかし、モンスターは両手の爪でガイの攻撃を防ぐ。そんな様子を只々見守るしかなかったパタ。そしてハツネも…………
「…………え?」
あまりの一瞬の出来事に何も出来ないでいた。そしてガイが叫ぶ。
「ハツネさん、何か支援の札をくれ!今の俺じゃ、スキルを使っても倒せそうにもない…………」
あっけにとられていたハツネも、ガイの一言で現実へと引き戻される。
「は、はい!わかりました」
「神速符、鋭刃符」
ハツネは服の袖から二枚の無印の札を取り出しそれぞれに魔力を込めてガイに向かって投げる。札は光の軌跡を描きながらガイへと吸い込まれる。
「お、おぉ!スゲー、身体が軽くなったぞ!これなら………」
再び、ガイがモンスターに向かって斬りかかる。身軽になったガイは、左右に移動しながらモンスターをかく乱させる。
左右に飛び交うガイを見ながらモンスターは攻撃の瞬間を待つ。
そして、一気に距離を詰めて来たガイに対して一撃を食らわせようとするが、当たる直前でガイの姿が消える。
ガイは、モンスターの後ろへと回り込み背中を斬りつける。
【ザシュッ】
【グガガガァ………」
モンスターも直ぐに後ろに居るガイへと薙ぎ払いをする。
「う、うわっ!」
とっさに盾でガードするガイ。モンスターの重い一撃で吹き飛ばされるガイ。
「いてててっ。盾が無かったら死んでたな」
盾を見ると、少しへこんでいる。その威力を目の当たりにしたガイは苦笑いを浮かべる。
「ははははっ…………。マジかよ、これ鉄製だぞ」
「グルルルッ」
「おっちゃん!急いでメイ達を呼んできてくれ!今はあの二人の力が必要だ」
「あ、あぁ………わ、わかった。すぐに呼んでくる」
「頼んだぜおっちゃん!」
パタは走り出し、グレイヴ達にモンスターが現れたことを伝えに行った。
「ハツネさん、もう少し援護を頼む!今、おっちゃんがメイ達を呼びに行った!それまで何とかこの場をしのぐ!
「わ、わかりました!任せてください!」
「じゃ、いっちょいきますか!」
【ガキンッ】【ガキンッ】【ガキンッ】
ガイの怒涛の攻撃を防ぐモンスター。そこにハツネの攻撃も加わる。
「ガイ君!離れて!烈火符」
【ボ―ッン】
ハツネの叫びにガイはモンスターとの距離を置く。烈火の符は猛スピードで軌跡を描きモンスターに飛んでいく。そして、モンスターの胴体にあたり爆発する。
「す、すげー…………。なんて威力してんだよ」
モンスターの胴体は毛が焼かれ皮膚がむき出しになっていた。しかし、次の瞬間二人は自分の目を疑う事になる。




