不穏な空気と、ただ一つのミス
ガイ達は、村長宅に入り早速村の状況を聞いた。
「なぁ、じいちゃん。募集の内容を見た限りじゃ畑が荒らされてるって話だけだよ、どこの畑だ?見た感じだと、荒らされている様子はなかったけど」
「確かに、入り口付近の畑は平気じゃ。しかし、村の裏手にある畑のうち一つが何者かの手によって荒らされているんだ。実際、見てもらった方のが良いじゃろ」
そう言うと、村長は立ち上がりガイ達をその畑へと案内する。
「ついて来るのじゃ」
五人は外へ出て、荒らされている畑へと向かう。そして、ガイ達四人が目にした光景はというと、その畑は他の畑と比べて異様なまでに変わり果てたすがたをしていた。
地面は高く盛り上がっている所もあれば、深くへこんでいる所もあり、果樹の苗木は切り倒され、苗が無惨な状態になり作物があちらこちらに散らばっていた。
「………酷いな」
グレイヴが、辺りを見渡して言うと
「ここだけ何が起こっているのでしょうか………」
ハツネは、畑へと入り落ちている果樹や野菜を手に取り確認する。
「ただ単に、食べてるという事は無さそうですね。どちらかと言うと、土の中で暴れているという印象です」
「じいちゃん、これっていつ起こったんだ?」
「四日ぐらい前じゃな。朝、起きたら村人の一人が血相かいてワシの所に相談しに来たんじゃ」
ハツネは眉間にしわを寄せながら答えた。
「朝起きて見に行ったらこうなっていたと?では、すくなくとも前日の夜から夜中にかけての出来事ですね」
「そうなのじゃ。村の周りは、モンスターも出るので夜の外出はなるべく控えるよう村の者には伝えており、荒らされている所を見た者は居ないのじゃよ」
「では、夜中は私達が交代で村の警備に当たります。もちろん、昼間に現れればその時は対処いたしますので安心してください。いいですよねグレイヴさん?」
「あぁ………」
「では、村の中からも一人ご一緒させましょう。モンスターが現れた時にいち早く知らせるために」
「ありがとうございます」
【その晩】
「…………よし。では、まずは俺とメイで見回りをするとしよう」
「は、はい。よろしくお願いいたします」
「そんな緊張しなくても平気だメイ。必ず俺が守る。安心しろ」
「ありがとうございます」
「では、行くぞ!」
グレイヴとメイは村の宿から出て見回りの準備を始める。するとそこへ村長が言っていた村人の男性が合流する。
「こ、こんばんは。私はダンテと申します、よろしくお願いいたします」
ダンテは、やや緊張気味にグレイヴ達に挨拶をする。
「そう緊張するな………。大丈夫だ、俺がまとめて守って見せる」
グレイヴはダンテの肩に手をのせて安心させる。
「大丈夫です、私達に任せておいてください。念のため、ダンテさんは私の側から離れないでください」
「わ、わかりました………」
遠くで狼であろう遠吠えが聞こえる。
早速、グレイヴ達は村の入口へと向かう。
「ここから見て回り、最後に被害のあった畑へと向かおう」
グレイヴは辺りを見渡した後、荒らされた畑の方向を指さす。
「わかりました」
「メイは、ダンテさんと一緒に後ろからついて来てくれ。俺が先頭を歩く」
「「はい」」
メイとダンテは、グレイヴから少し離れ辺りを警戒しながらついて行く。
村の外には人影が無く、静寂が辺りを包む。
見回りを始めて数十分。これと言って特に変わったことは無い。
「何も変わった様子はありませんね」
「あぁ………」
メイは手にしている杖を握りなおし、辺りを見渡す。
三人は村人の家の周りや、他の畑を見て回った後、先日荒らされた畑へとやってきた。これと言って変わりもなくしばらく辺りを警戒する。
「気を付けろ。いつモンスターが現れるかわからん」
「は、はい」
しかし、時間だけが過ぎていきモンスターの現れる気配はなかった。仕方なく、3人はハツネ達のいる宿へと戻ることにした。
【ゴゴゴゴゴッ】
「………………」
ダンテは立ち止まり、僅かに音が聞こえた後方をみる。ダンテのすぐ前を歩いていたメイがダンテに話しかける。
「………どうかしましたか!?」
「い、いえ。何でもありません。行きましょう」
確かに僅かだが音が聞こえた。しかし、ダンテは騎士でも冒険者でもなくただの村人だ。『音がした』との報告をグレイヴ達にしなかった。後にこの事で、後半の見張りのメンバーガイとハツネを危険にさらすこととなる。
ダンテは小さく首を振った。
「……………気のせい、ですよね」
そう呟き、何も言わずに歩き出した。
無事にガイ達の待つ宿屋へと戻って来たグレイヴとメイ。そこには、見張りの準備を済ませたガイとハツネが待っていた。
「おっさん、メイ、お疲れー!どうだった?」
「特に異常はなかった………」
「そっか!じゃ、俺達の時に現れるかもな!何か、ワクワクしてきた!」
「もう、お兄ちゃん!遊びじゃないんだよ、もっと気を引き締めてよ!」
「余裕、余裕!」
「ガイ………。油断は禁物だ。時にその油断が命取りになる」
「分かってるって!んじゃ、行こうぜハツネさん!」
「はい」
「ハツネさん、お兄ちゃんをよろしくお願いします」
「うん」
「じゃ、そう言う事だから行ってくるぜ!」
「行ってきます」
こうして、ガイとハツネは宿屋を後にし、新たな村人と合流する。




