勇者は見習い剣士を助ける
ハツネと別れ、次の街に向かうアギト。女神様から貰った小さな地図には、いくつかの街が記載されていた。その中でも1番近い大都市ヴィータを目指している。
道中、魔物を狩って素材を集め、回復薬の元となる草や木の実を集めていた。そしてそれらをハツネから貰った薬研と乳鉢で色々な薬を作った。
【回復軟膏A 中度の切り傷、擦り傷、火傷、挫創、咬傷を回復させる。長期保存✖ 売値2万ゴールド】
「よし!これで、切り傷なども回復できるようになった。回復スキルが使えない俺には必要不可欠だったからな。しっかしだ、武器が無いのが辛いな。」
アギトはヴィータへと向かう途中に街に寄った時、武器屋にも顔を出した。いくら何でも、木の棒だけじゃ敵を倒すのには時間がかかる。
アキサリ草を見つけに行った時に、ハツネに包丁を借りたが1本角ラビットの毛皮が固すぎて、包丁では1撃で刃こぼれしてしまったからだ。
そんなこんなで、武器屋で武器を見ていたのだが。
【木刀 攻撃力5 装備〇 特殊効果✖ 買値900ゴールド 売値300ゴールド】
【鉄ナイフ 攻撃力6 装備〇 特殊効果✖ 買値1200 売値400ゴールド】
【鉄の剣 攻撃力10 装備✖ 特殊効果✖ 買値3000ゴールド 売値1000ゴールド】
【鋼の剣 攻撃力25 装備✖ 特殊効果✖ 買値9000ゴールド 売値3000ゴールド】
【鉄の斧 攻撃力13 装備✖ 特殊効果✖ 買値4500ゴールド 売値1500ゴールド】
【木の弓 攻撃力5 装備〇 特殊効果✖ 買値1500ゴールド 売値500】
【鉄の弓 攻撃力9 装備✖ 特殊効果✖ 買値2400ゴールド 売値800ゴールド】
【木の矢 攻撃力2 装備〇 特殊効果✖ 買値30ゴールド 売値10ゴールド】
【鉄の矢 攻撃力5 装備✖ 特殊効果✖ 買値90ゴールド 売値30ゴールド】
「どうやら、俺は武器らしいものは鉄製以上の物が装備できないみたいだ。だが、包丁は使えたぞ?なぜだ?武器と認識されないのか?
だが、木製の武器だけでどうやって魔王を倒せと。こんなの無理ゲーだろ、女神様。」
勇者のくせに、木製の武器しか装備できない。何とも酷い話しだ。オリハルコン装備や伝説級の装備が出来るのが勇者ってもんだろ。そう思うアギトであった。
防具の方も、鉄製の装備以上は出来ないので、こちらも布製が限界だ。
だが、布製の防具なら伝説級の防具はあるはずとアギトは睨んでおり、それを見つけなければ話にならないと思った。
仕方なく、木刀数本と、木の弓、木の矢数十本、素材解体の為に鉄ナイフ、何の効果も無く防御力がほんのちょっとだけ上がるコートを買った。
【布のコート 防御力3 装備〇 特殊効果✖ 買値900ゴールド 売値300ゴールド】
こうして、必要な装備を整えヴィータに向かっていたのだが、その道中で1つのパーティを見かけた。
見た所、編成は剣士とみられる少女、狩人とみられる男性、魔術師の女性、荷物持ちのサポータの男性の4人パーティだ。
そのパーティは、魔物と戦闘していた。パーティはずいぶんとボロボロになり、魔物達にすっかり囲まれていた。
剣士の少女の剣は折れ、狩人の男性は矢が無くなったのか小さなナイフを片手に持ち、魔術師の女性は魔力を使い果たしたのか、息を切らして立っているのがやっとの状態。サポータの男性は、攻撃手段をもってなくただ立ちすくむだけであった。
モンスターはというと、1本角ラビットが数体、キラービーが数体、毒イモムシが数体。
決して強くはない魔物だが、辺りに散らばる魔物の死体を見る限り、相当な数を相手にしていたに違いない。そして、今の状況に陥ったのである。
アギトは冷静に、モンスターにスキルを使う。
【スキル 調べる】
【キラービー 得意技→痺れ針を刺す 性格→危害を加える物には凶暴 弱点→打撃→火、水、雷 魔石→〇】
【毒イモムシ 得意技→毒煙を吐く 性格→穏やか 弱点→斬撃→火 魔石→〇】
「中々、厄介だな。あの状態で倒せるのか?まぁ、流石に逃げるか。あの状態で戦いを続けるのは悪手だしな。さてと、少し見守るか。俺にはあの数じゃ、どうする事も出来ないしな。せめて鉄製の武器があればなんとかなると思うが。」
そう、アギトは木製の武器しか持っておらず、倒せなくはないが、モンスター1体倒すだけでも相当時間がかかる。なので、あのパーティがどう出るか見ていた。
逃げるなら、そのまま見送り、戦うなら加勢しようと。しかし、パーティの1人がここでとんでもない行動に出る。サポータの男性だ。バックから何かを出した。アギトはそれを見逃さず、すぐさまスキルを使う。
【毒針 攻撃力1 装備✖ 特殊効果→対象を毒にさせる。買値6000ゴールド 売値2000ゴールド】
「何をしようって言うんだ・・・・・まさか。」
サポータの男性は発狂しながら剣士の少女に近づく。
「嫌だ――――――――!死にたくない!」
突然発狂したサポータを全員が見た。誰も声を上げずその行動を見守っていた。そして、サポータの男性は剣士の少女に毒針を刺した。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
突然腹部に毒針を刺された少女が悲鳴をあげた。少女の顔がみるみる青ざめていく。
「てめー!何やってやがる!?気でも狂ったか!?」
「ふふふふふふふっ!何やってやがるだと?そんなの決まってるじゃないか!俺達が助かるには、こいつを囮にして俺達は逃げるんだ!どうせ誰も見ていないし、エリスには不慮の事故でこいつが俺達を逃したと伝えればそれで済むことだ。皆が口裏を合わせればいいだけの事だ。」
「た、確かに。そうすれば私達は助かる。それに、こいつは前から気に食わなかったのよ!クランマスターの妹で、顔やスタイルが良いってだけで特別扱いさせて。そもそも、何で私達がこんな性格ブスのおもりをしなきゃならないのよ!」
「そ、それもそうだ。俺達だってここで死ぬわけにはいかない。なら、皆が口裏合わせれば済む話だ。どうせ、このままだとみんな死んでしまう。なら、俺達だけでも助かる可能性がある方法に掛けるしかない。」
「き、決まりだ。じゃ、とっとと逃げるぞ!」
「おう!」「えぇ!」
「ま・・・・まって・・・見捨てないで・・・お願いします。」
パーティの3人は少女の言葉に耳もかさずに足早に立ち去っていく。
「そ・・・・・そんな・・・なんでこんな・・・・・」
「やりやがった、あの糞野郎ども!何で、よりにもよって一番幼い女の子を囮にする。クソが!」
男達が逃げた後、モンスターは一斉に剣士の少女に攻撃を仕掛ける。1本角ラビットは、その角で少女の腹部を刺し、キラービーは痺れ針で少女の体を刺し、毒イモムシは辺りに毒をまき散らす。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」
「痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、」
「助けてお姉ちゃん!お姉ちゃん、助けて!誰か助けて!」
アギトはすぐさま弓を構え、一番厄介な毒イモムシに矢を放つ。そして、すぐさまアイテムボックスから解毒薬Aを飲む。これで、少しの間毒と麻痺の耐性が上がる。
「くそがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
アギトは走り出し、木刀を両手に持ち二刀流の構えでモンスター達を攻撃する。
しかし、中々仕留めきれない。刃物であれば余裕なのだが、殺傷力のない木製の武器では斬撃ではなく打撃になってしまうからだ。
少女は薄れる意識の中ではっきり見ていた。1人の青年が今自分の前で必死に戦っている姿を。殺傷力の無い木刀2本で戦う姿。
そして、いくつもの傷を負っていく姿。
少女から見たその姿はまるで勇者そのものだった。傷だらけになり勇敢に魔物と戦う彼。
白馬の王子様が助けに来てくれたと思った。
この人は、自分を囮にして一目散に逃げて行ったクランのメンバーとは天と地の差だと。木刀が折れても、攻撃の手を緩めず諦めない姿。
少女は一瞬にして恋に落ちた。恋に落ちてしまったのだ、名前も知らない少し年上の青年に。
やがて、アギトはすべてのモンスターを倒した。全身血だらけになり、いつ倒れてもおかしくない姿でただそこに立っていた。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。ざまぁ見ろ、クソモンスターども。」
アギトは振り返り、倒れている剣士の少女を抱きかかえ、木を背に座らせる。
「大丈夫か?もう安心だ、モンスターは倒した。後は今から君を回復させる。少し待っててくれ。」
少女は思った。
(何で、この人は自分から回復しないんだろう。あなたの方が重症なのに。それに、今すぐこの場から逃げたほうがいいのに、なぜ見捨てて逃げないんだろう。)
【スキル 調べる】
【ティファ 職業→見習い剣士 状態→毒、麻痺、擦り傷、切り傷、打撲、刺傷 死に至る可能性◎ 即刻治療が必要】
「ティファ・・・。そのままでいい、聞いてくれ。無理に話そうとするな。相槌さえうってくれればそれでいい。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
【コクリッ】
ティファは、薄れゆく意識の中言葉を発することが出来ず、頷いた。
「助かりたいか?」
【コクリッ】
「そうか。では、手足は動くか?」
【ブンッブンッ】
小さく左右に首をふるティファ。
「そうか。じゃ、自分で薬は飲めそうか?」
【ブンッブンッ】
再び左右に首を振るティファ。
「マジか。」
【コクリッ】
「じゃ、今からする事を許してくれ。もし、嫌だったらティファのお姉さんのクランマスターエリスとやらに言ってくれ。どんな罰でも受けよう。今からする事は、君を助けるために仕方なくすることだ。決して下心があるわけではない。その事だけ了承してくれ。」
【コクリッ】
「よし、では始める。」
アギトは砕いた解毒薬Aと大地の水を自分の口に含み、ティファに口づけをして飲ませる。
「う・・・うぅん・・・・・・」
ティファはいやらし声を漏らしアギトから口移しで解毒薬Aを飲む。
「これで、時期に毒と痺れは回復するだろう。だがしかし、傷の方は直接これを患部に塗るしかない。血が止まらない以上、これ以上の出血は命にかかわる。だから恥ずかしいと思うが、服を脱がして直接俺がこの軟膏傷薬A塗る。いいな?」
ティファは顔を赤らめて小さく頷く。
【コクリッ】
そして、アギトはティファの上半身の服を脱がせて1本角ラビットの角が貫通した腹部、毒針を刺された所に回復軟膏A塗っていく。その他の切り傷、擦り傷の所にも。
打撲した足には添え木をして固定させる。
そしてすべての治療を終えたアギトは、自分の着ていたコートをティファに羽織らせる。
「よし、これで大丈夫だ。よく頑張ったな。」
ティファは、涙を流しながら頷く。まだ、毒と麻痺の影響でうまくしゃべれない。だが、感謝はしていた。絶望的な状況から自分は助かったのだと。
「近くの村まで連れて行き、そこで迎えをよこさせる。それまでの辛抱だ。」
アギトはティファをおぶり、最寄りの街までティファを届けた。そして、そこにあったギルドで事情を説明してすぐに迎えを寄こすようクランに掛け合ってくれた。
こうして、アギトは1人の少女を救うことに成功した。だが、この事で後に大問題となるのであった。
【アイテム紹介2】
【回復軟膏A】効果→中度の切り傷、擦り傷、火傷、挫創、咬傷を回復させる。特徴→長期保存✖ その他→売値2万ゴールド アギトのみ調合可能




