巫女は守られる意味をまだ知らない
【翌日】
ガイ達四人は冒険者ギルドで待ち合わせをしていた。
「おっ、いたいた!おーい、おっさーん!」
「こら!お兄ちゃん!おっさんじゃなくてグレイヴさんでしょ!何度言えばわかるのよ!」
「だってよ………」
「別にかまわん。好きなように呼んでくれ。」
「い、いや。そういうわけには」
「ほらー、おっさんが良いって言ってんだからいいじゃんかよ!ケチケチうるせーな、メイは!」
【ゴンッ】
「いってーな!なにすんだよ」
「お兄ちゃんが言う事聞かないからでしょ!」
「まぁ、今のはガイ君が悪いかな。昨日、散々メイさんに言われたばかりなのに………」
「ハツネさんまでメイの味方して………」
「何よ!もう一度ぶたれたいの?」
「い、いえ。結構です。」
「すみません、グレイヴさん。お見苦しい所を見せてしまって。」
「………気にするな。で、今日はどうする?」
「そうですね、何かクエスト行きましょう!まぁ、森が立ち入り禁止だから限られたクエストしかないと思いますけど。」
「よーし、じゃ早速向かおうぜ!」
「まったく、お兄ちゃんは調子が良いんだから。」
「まぁ、ガイ君はあれぐらい元気でいいんじゃないかしら?」
「ダメですよ、ハツネさん!お兄ちゃんを甘やかすと、直ぐ図に乗るんですから!」
「………仲が良いんだな。」
「そうですか?まぁ、ずっと一緒にいますからね。」
「………そうか。ところで、ずっと疑問に思っていたんだが」
「ん?」
「両親は二人が冒険者になることを認めているのか?冒険者にしては若すぎると思ってな。」
「………両親は二人とも死にました。」
「昔、村が襲われて………その時に。」
「そうか」
グレイヴは、それ以上何も聞かなかった。
「………ならば」
「お前達は、もう失う必要はない」
「………俺が守る」
「必ず」
「おーい、何やってんだよ!早くクエスト見ようぜ!」
ガイが、冒険者ギルドの中から手を振る。
「行きましょう!グレイヴさん」
「………あぁ」
メイは、ガイの元へと走り出す。その後にハツネとグレイヴも続く。
「お兄ちゃん、勝手に受けないでよね!」
「分かってるって!」
四人は掲示板の前に立つ。
無数の依頼書が所狭しと貼られていた。
薬草採取、荷物運搬、護衛任務――。
その中で、ガイの視線が一枚の依頼書で止まる。
【農作物被害の原因調査】
「おっ、これいいじゃん!俺たち向きじゃね?」
メイはクエストの張り紙の内容を確認する。紙にはこう書かれていた。
『村の畑は土は深く抉られ、まるで何かが掘り起こしたような跡が残っている。
作物も単に食われたというより、“引き裂かれた”ように散乱していた。』
「………これ、普通の動物の仕業じゃないよね」
「………あぁ」
グレイヴが低く呟く。
「足跡の深さが異常だ。普通の動物ではない可能性がある」
ハツネが恐る恐る答える。
「………魔物?」
「まだ、そうだとは言い切れないが、恐らくな。」
「上等じゃねーか!人様の食いもんに手を出すとは良い度胸してやがる!」
「お兄ちゃん、そんな簡単に考えないでよ!どんな魔物がいるかわからないんだよ?それこそ私たちじゃ手に負えないかもしれないんだから!」
「んなことは、わかってるよ!油断するなって事だろ?大丈夫、上手くやるさ!」
(はぁ………。本当にわかってるのかなぁ。)
そんな事を思っているメイだが、ガイは依頼書を取り、早速クエストを受注しにカウンターへと向かった。
「ちょ、ちょっとお兄ちゃん!」
「すんませーん!この依頼受けたいんですけど!」
カウンターの男性がガイを見る。少し考え、男は尋ねた。
「一人で受けるのか?」
「いや、四人だ!あそこにいる三人と俺で受けたいんだ!俺と、あそこのちっちゃい奴はEランクの冒険者」
「誰がちっちゃいのだ!」
ガイは、男に冒険者の証を見せる。
「なるほど。わかりました、受理いたしましょう。くれぐれもお気を付けて。」
ガイは、メイ達の所に戻り
「オッケーだってよ!早速向かおうぜ!」
ニヤニヤして外へと走っていくガイをよそにメイは呆れていた。
「まったくもう………」
「おーい、早くいこぜ!」
「わかってるわよ!では行きましょう、ハツネさんグレイヴさん」
「はい」
「うむ」
メイ達三人もガイの後を追い、ギルドを出た。
村に到着した四人は早速依頼主の村長を探し始める。そして、畑を耕している男性に声を掛けるガイ。
「すんませーん!クエストの依頼で来た冒険者なんだけど、村長さんってどこっすか?」
「お兄ちゃん、言い方!」
男性は、四人を見た。そして、ガイではなく――グレイヴを見た。
「あそこが村長の家だ。」
「おい!聞いてるのは俺だぞ?何でグレイヴのおっさんに話しかけてんだよ!」
【ゴンッ】
「いい加減にして!お兄ちゃんがそんなんだから相手にされないのよ!………本当に嫌になる」
メイの声は、怒りというより――失望に近かった。
男性にお礼を言い、四人は村長の家へと向かった。
「んだよ、あのおっさん!納得いかねーな!」
「まだ言ってるの?お兄ちゃんは、本当にどうしようもないね………」
「けどよ………」
「うるさい………少し黙って」
グレイヴは冷静に二人の後に続き、ハツネは苦笑いをしながらついて行く。そして、村長の家の前に着くと
「すんませーん!村長、いる?」
「馬鹿なの?お兄ちゃん!」
メイはすぐにガイの頭を小突いた。
「すみません。村長さんはいらっしゃいますでしょうか?依頼を受けて参りました冒険者です」
すると、家の中から足音が近づき、ゆっくりと扉が開いた。
中から現れたのは、白髪混じりの初老の男性だった。
「ほら見ろ、いるじゃねーか」
「言い方の問題なの!」
「わしがこの村の村長だが、おぬしらはどなたじゃ?」
グレイヴは何も言わず、村長と家の周囲を静かに観察していた。
「すみません、私たちは依頼を受けて伺った冒険者です。」
「おぉ、そうだったか。狭いですが、どうぞお入りください」
「失礼します」
ガイ達四人は、詳しい話を聞くべく村長の家の中に入っていった。




