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勇者に転生したがスキル【調べる】しか使えず、全然強くないけど、頼れる仲間と魔王を倒します!  作者: 雨のち晴れ
巫女ハツネ編

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巫女は初クエストをこなす

3人は、討伐対象のいると思われる森に着いた。


街道の喧騒は背後に消え、木々のざわめきと湿った土の匂いだけが残る。


「・・・静かだな」


ガイが小声で言う。


「何か不気味だね。」


メイは、手にしている杖を強く握りなおす。


「2人も、気を抜くなよ。」


「うん。」「はい。」


(私にとっては初めての実践・・・胸の鼓動が止まらない。大丈夫、落ち着いて・・・。)


その時。


ぬちゃり、と湿った音がした。


3人は同時に音のした方を見る。


木陰から、半透明の青い塊がゆっくり這い出てくる。


「・・・・来たな。」


【ゴクリッ】


ハツネは緊張した面持ちで唾を飲む。自分が居た村の近くでもモンスターは出る。現に、母親の薬草を採取していた時もモンスターを見たことはある。その時は、なるべく音を立てずにやり過ごしていた。


「メイ、いつも通りにやるぞ。」


「うん、任せて!ハツネさん、加護をお願いしてもいいですか?」


「え?あ、はい。」


ハツネは袖の中から何も書かれていない札を2枚滑らせる。


指先がわずかに震えているのが、自分でもわかる。


(落ち着いて私!大丈夫、きっと上手くいく。)


深呼吸をして自分を落ち着かせる。そして、意識を札へと集中させる。


すると―――


真っ白だった札の表面に、淡い光と共に文字が浮かび上がった。


「加護符――!」


加護符は宙に浮かび、光の軌跡(きせき)を描きながらガイとメイの胸元へと吸い込まれ2人は一瞬光に包まれた。


「おお、これがハツネさんの札の力か!力が湧いてくる!」


「―――あたたかい」


「よし、行くぞ!」


ガイは剣と盾を構えスライムに特攻をかける。


【ザシュッ】


「よし!」


スライムの一部がガイの斬撃によって切り落とされ、スライムの動きが止まる。


「メイ、今だ!」


「うん、ファイアボール」


メイの放ったファイアボールがスライムの体を蒸発させる。やがて、身体が覆ってた核がむき出しになりそこにガイが剣を刺す。スライムが消滅し、魔石だけがその場に残った。


だが、スライムは次々に現れる。のそっとゆっくり3人を取り囲む形で。


「お兄ちゃん・・・。」


「チッ!」


ハツネは戸惑う。数体しかいないと思われたスライムが赤や青そして黄色の違いで十体ほどいるこの現状に。


「・・・なんでこんなにいるの。」


「考えたって仕方ねー、全て倒すのみ!」


再びガイが切り込む・・・が、


スライム達は一斉に3人に飛び掛かる。


「なっ!」


ガイは、飛び掛かってきたスライムを盾で殴り弾き飛ばす。

メイは魔法で飛んできたスライムの軌道を変える。しかしハツネは、一瞬の出来事で対応が遅れる。


ハツネの目の前で、赤いスライムが跳ねた。


(速い―――――)


そう認識した瞬間には、もう遅かった。


「きゃぁぁぁ」


一匹の赤いスライムがハツネに体当たりして、足に絡みつく。そしてスライムは自らの体内温度を上げる。


【ジュゥゥゥゥ】


スライムに絡みつかれたハツネの足は音を立てて見る見るうちに爛れていく。


「痛い、痛い、痛い。」


「ハツネさん!」


ガイが直ぐにハツネに絡みついたスライムを切り刻む。


「メイ、周りのスライム達を頼む!」


「うん」


メイは、魔法で他のスライム達を牽制する。


【ザシュ】【ザシュ】【ザシュ】


ハツネに絡みついていたスライムの核があらわになり、ガイが剣を突き刺す。核が割れスライムの姿が無くなる。


「大丈夫か、ハツネさん」


「う、うん。」


ガイはスライムが絡みついていたハツネの足を見る。ハツネは、スカートを履いていたため地肌にスライムの攻撃があたり火傷を負っていたのを確認する。


ガイは周囲のスライムを睨みつけ、歯を食いしばる


「メイ、ここは一回退くぞ!分が悪すぎる!」


迷いはなかった。


ハツネを守る。それが最優先だった。


「うん!」


ガイはハツネを背負い、メイはガイの後ろから後方のスライムを攻撃しつつその場を後にする。ハツネは思う


(私のせいで・・・。守る側なのに私は守られてる。二人なら余裕だったはず・・・私が居たから・・・。)


ガイがハツネを背負い森の外へと逃げる。


メイが必死に魔法を撃っている。


二人も自分を守る為に戦っている。


(私が二人の足手まといに・・・)


唇を強く噛みしめる。


悔しさで、涙が滲んだ。


やがて、森を抜け草原へとやってきた。スライム達が追って来ないと確認してガイはハツネを下ろす。


「メイ、回復軟膏Aはあるか?」


「うん、ちょっと待ってて」


二人の事を大切に思うアギトは餞別(せんべつ)としてメイに渡していたのだ。直ぐにメイはハツネの足に回復軟膏Aを塗る。


「これで、大丈夫!この薬は凄いんですよ!火傷の跡も綺麗さっぱり無くなるんですから。」


「これって・・・」


「回復軟膏Aですか?これはアギトさんが作った薬です!私も以前、全身に酷い火傷を負ったのですがこの薬のおかげで跡が残らず元通りです!あ!この事は内緒ですよ?」


「え、えぇ」


「しっかし、何であんなにスライム達がいたんだ?あいつら群れで行動しないだろ?」


「そうだね。単独で行動するからFランククエストなのに」


「何かがおかしい・・・。」


「ごめんなさい。私が弱いばかりに・・・。」


「別に気にすることじゃないさ。俺達だってそうだったんだから。初のモンスターとの戦いなんてこんなもんさ!」


「そうですよ!私達のほうが酷かったもんですよ!スライム一匹にだいぶ苦戦したんですから。」


「メイなんか、『魔法が当たらない』って、泣き始める始末だったし。」


「うるさいよ、お兄ちゃん!お兄ちゃんだって、動きの遅いスライムに空振りばっかりだったじゃない!」


「なんだと・・・!」


「なによ!」


ガイとメイはお互いを睨み始める。


「ふふふふっ。」


二人の言い合いを見て、ハツネは思わず笑ってしまう。


「なんだよ、ハツネさん」


「いえ、ごめんなさい。とても二人が仲が良かったので、つい笑ってしまいました。」


「アギトさんにも昔、言われた気がする・・・。」


「迷惑をおかけしました。ですが、次はうまくやります!」


「徐々に慣れて行けばいいんじゃないか?別に慌てる事じゃないし」


「そうですよ!経験を積んでいけばそのうちうまくやれますよ!私達がそうだったように。」


「は、はい!」


「じゃ、一回ギルドに戻るか。クエストは失敗したが、この異常事態をギルドに伝えないと。」


「そうだね。何か予期せぬことが起こってるかもしれないし。」


こうして、クエストには失敗したが3人がこの報告をしたおかげで、この先何人もの新人冒険者の命を救うこととなった。


この日、ハツネは初めて知った。


冒険者とは、守られるだけでは務まらないということを。

【モンスター紹介】

【スライム】

・レッドスライム:火属性のスライム。対象に絡みつき、自身の体内温度を上昇させその部位を火傷させる。

・ブルースライム:氷属性のスライム。対象に絡みつき、自身の体内温度を氷点下まで下げその部位を凍傷させる。

・イエロースライム:雷属性のスライム。対象に絡みつき、自身の体から電流を流し、その者を感電させる。

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