勇者はやるせない気持ちになる
古代のコロッセオにも似た作りの訓練場。外周は1階だけであってもそれなりの人数が観戦出来る。
アギト達は、観客席からティファの戦いの様子を見守っていた。そして、密かにドラゴンスケルトンにスキルを使ってステータスを見るアギト。
【ドラゴンスケルトン 得意技→ひっかく→尻尾攻撃→火炎球 性格→凶暴 弱点→打撃→爆発スキル】
「こりゃ、苦戦しそうだなぁ。」
「そうね。おそらくDランクのティファじゃ勝ち目なんてないでしょうね。」
「おいおい、平気なのか?死んだりしないんだろうなぁ?」
「そこに関しては平気よ。訓練場の4箇所にある水晶があるでしょ、あれに触れれば死なないは。訓練場を使って模擬戦を行う時には必ず水晶に触れるの。そうすれば、思う存分戦う事が出来るわけ。」
「なるほどね。だからエリスはそんなに余裕そうにしていたのか。」
「ちなみに何だが、ドラゴンスケルトンってどれぐらい強いんだ?」
「うーん。そうね、Aランク冒険者が数人で束になってかかれば倒せるぐらいかなっ。」
「って、おい!それじゃ、ティファがボコボコにされるだけじゃねーか!お前はそれでいいのかよ!?」
「勘違いしないで下さい、アギト様。これは、あくまでティファの強さを測る模擬戦です。それに、先程も言いましたがこの模擬戦ではティファ死にません。だから何も言わずに見ていてあげて下さい。」
「しかしだなぁ・・・・・。」
「アギト様、どうやら始まるみたいですよ!」
ティファが、近くの水晶に手をかざしたと同時にティファの体が一瞬、光のオーラで包まれる。
「よし!いつでもいいわよ!」
そして、審判役のユイの掛け声で模擬戦が始まる。
「では、始め!」
掛け声とともに、ティファは両手に剣を持ち二刀流の構えで一気にドラゴンスケルトンに駆け寄る。ドラゴンスケルトンは左前足で距離を詰めてきたティファに向けて引搔く。ティファはその攻撃を十字に剣を構え防御する。
防御をして怯んだティファにスケルトンドラゴンは、すぐに尻尾でティファに薙ぎ払いをする。
「クッ!」
間一髪で、ティファは剣で攻撃を受け止めるが薙ぎ払いの強さが異常で吹き飛ばされ、地面に転がる。
「ティファ!」
「ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ。平気です、アギトさん。」
「おいおい、やっぱりこんなの無謀すぎるだろ!すぐに止めさせろ!」
「アギト様、黙って見ていてください。」
「でも・・・・・・・・。」
「大丈夫です。まだまだやれます!ネロさん、続きをお願いします。」
「わかりました。では、気を取り直して再開いたします。」
再び、ティファの模擬戦が始まる。ティファは先ほどと同じくスケルトンドラゴンに向けて一気に直進する。すると、今度はいきなり尻尾の薙ぎ払いが来る。
その攻撃をティファは、更に態勢を低くして避ける。そして、スケルトンドラゴンの懐に潜り込み、右腕に装備している剣でスケルトンドラゴンの腹を攻撃する。
【ガキンッ】
ティファの攻撃は、ただ当たっただけでダメージはない。そんなティファをスケルトンドラゴンは右前足を振りかぶり、ティファを弾き飛ばす。
【ドンッ】
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」
もろにスケルトンドラゴンの攻撃を食らったティファは空中へと吹き飛ばされ、その隙をついてスケルトンドラゴンは尻尾でティファを地面に叩きつける。
「ぐはっ!」
いくら加護があるとはいえ、傷もつくし、痛みもある。ティファはDランクの冒険者で、何度もダンジョンやモンスターの討伐クエストはやっている。
が、ここまでの戦闘は初めてである。それもそうだ、クエストなどは普通、パーティ単位で行う事が基本。ソロで受けるのは、よっぽど自信がある者か、死に急ぐだけのバカな冒険者だけだ。
もちろんティファも例外ではない。クエストなどは、天使の宴の同じぐらいの冒険者と一緒に受けていた。
しかし、今回はAランク冒険者が数名で束にかかりやっと倒せるモンスターをティファ1人で相手にしている。
戦闘値は天と地の差だ。それでも諦めないティファ。その後も果敢に攻めるティファ。
攻撃の手を緩めず、何度も攻撃を与え、何度も吹き飛ばされを永遠に繰り返す。
隙をつき、前足を攻撃したり腹に攻撃したり、そう何度も。攻撃するたびにスケルトンドラゴンの硬さで手が痺れる。だがティファにはそんな事は関係ない。
この模擬戦で、自分自身の全力を見せエリスやユイを納得させる事だけを考え一心不乱に剣を振るう。
そして遂に、剣の方が耐えられなくなり、左手に握られていた剣が折れ、右手に握られている剣だけになる。
双剣士を目指す者にとって、片方の剣が折れるというのは致命的だ。剣術にも型という物が存在する。ずっと、双剣の型でやってきたティファにとっては、両手剣や、剣と盾を装備して1本の剣だけが頼りな戦い方を知らない。
それでもティファは戦い続ける。走り出し、スケルトンドラゴンの攻撃を避け、ティファの間合いに入ったとき、折れた左腕に握られている剣をスケルトンドラゴンに向かって投げる。
スケルトンドラゴンは飛んできた折れた剣を右前足で払いのけ突っ込んでくるティファに攻撃を仕掛けようとしたが、スケルトンドラゴンはティファを見失う。
そんなティファは、剣を投げた瞬間上空へと飛びスケルトンドラゴンの顔めがけ剣を振り下ろす。
【バキンッ】
スケルトンドラゴンの頭に剣が当たった瞬間、ティファの剣が音を立てて折れてしまう。空中に居るティファはなすすべなく無防備になり、そんなティファにスケルトンドラゴンは口から火炎球を放つ。
ティファはとっさに手を顔の前でクロスさせ火炎球をガードするがその勢いで後方に吹き飛ぶ。
火炎球を、もろに受けたティファは地面に落ち、動かなくなる。そして、再びスケルトンドラゴンはティファに向かって火炎球を放つ。
絶体絶命のティファ。しかしここで、見ていられなくなったアギトが、火炎球に向かって爆発矢を放つ。
火炎球は、爆発矢が当たり相殺される。
「エリス、もういいだろ。こんなの止めにしよう。」
今までエリスの事をエリスと呼び捨てにした事は無かったアギトだが、さすがに今回は頭に来ていてエリスの事を呼び捨てにしていた。
「そうですね。わかりました。これにて模擬戦を終了いたします。」
呆然と立ちすくむアギト。見ている先には全身やけどだらけのティファが倒れている。そして、エリスはいち早くティファのもとえと向かう。続けてアギトも駆け足でティファの元へと向かった。
「ティファ!大丈夫か!?しっかりしろ!」
アギトは、ティファを抱きかかえ立ち上がらせる。そして、空いている左手で回復軟膏Aを出した。それをティファに飲ませようとした時エリスがティファに話しかける。
「ティファ、これで分かったでしょ?今のあなたでは、話しにならないの」
「くっ!」
ティファは唇を噛み、悔しそうな顔をする。
「もし、あなたがこのままアギト様について行けば、あなたは必ずアギト様を殺すことになる。唯一、この世界で魔王を倒すことが出来る勇者をあなたの弱さで殺すことになる。この意味が分かる?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「はっきりいうは、あなたではアギト様の足手まといなの!」
「エリス!」
「アギト様は黙っていてください。これは、私達姉妹の問題・・・・・・・。いえ、世界の問題です。」
「チッ!」
「ティファ、姉として剣聖として言うは、アギト様の同行は認めません。あなたはここに残りなさい。いいわね!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「ティファ!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・わかりました。」
「ティファ・・・・・・・・・。」
アギトは、ティファの顔を撫でようとした。
が、
【パチンっ】
そんなアギトの手を払うティファ。アギトは呆然とした。いつものティファなら、「アギトさーん。もっと慰めてください。何なら、魔王を倒さずここで私と暮らしましょう!」ぐらい言ってくるのかと思ったが、ティファは予想外の行動に出た。
「もう、ほおっておいて。」
ティファは、アギトから離れ足を引きずりながら訓練場を後にした。
【職業紹介1】
【勇者】勇者は必ず、異世界から転生された者に与えられる職業。勇者のスキルは、転生される人物ごとに違う。アギトだけが特別で、今までの勇者は木製装備以外も装備出来た。その為、金属製の防具も装備可能。ただし、調合によるランクアップアイテムはアギトだけの特別な力。




