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CASE:007 ナトリサマ 報告書

東京怪異捜査録 − 警視庁特対室CASE:XXX -

警視庁 特異事案対策室

特異事案報告書

───


【案件番号】

T-2013-19


【事案名称】

ナトリサマ


【分類】

神霊型五類 / 精神干渉型四類 / 認識改変型三類


【発生日】

2013年8月19日(特異事案対策室にて異常確認)


【発生地点】

東京都奥多摩地区 A市


───


1.概要


本事案は、A市に居住する特定の未成年者に対し、個人の名が改変される現象が発生したものである。名の変更は関係者全員の認識に影響を及ぼし、「変更後の名が元来のものであった」 という認識が確立されるとともに、変更前の名に関する記憶が完全に消失していた。


一方で、住民票・戸籍等の公的記録においては、改変前の名が保持されており、データの改変は確認されなかった。 しかしながら、関係者の認識において記録との不整合が発生しており、当該事案が社会的に及ぼす影響は深刻であると判断された。


調査の結果、当該現象はA市山間部に位置する旧祠(廃祠)周辺を基点として発生しており、当該地点において名称不明の神霊的存在が確認された。

また、発生地点周辺ではかつて「守名」と「真名」の風習・信仰があり、当事案に深く関係を示した。これは、幼き魂が"名を奪われること"を防ぐための習俗であり、本件の神霊もその役割を担っていたものと推察される。


───


2.初動報告


2013年8月19日、特異事案対策室 捜査官 蜘手創次郎が、SNS上に拡散された「ナトリサマ」に関する情報を精査中、A市において住民記録と関係者の認識に齟齬が生じている事象を確認した。独自調査の結果、住民票および公的記録と、関係者の認識との間に一貫した不整合が複数存在することが判明したため、通常の行政処理上の誤記ではなく、特異事案の可能性が高いと判断。


当該事案の影響範囲および発生条件の特定のため、特異事案対策室は捜査官 久世灯里、南雲美優を現地へ派遣し、調査を実施した。


───


3.発生条件


影響範囲はA市内の特定地域に限定される。

主に未成年者が対象となる。

影響を受けた者は、一定期間内に旧祠周辺に立ち入っている。

影響発生時、本人および関係者には一切の違和感が生じない。

記録との齟齬により外部からの指摘を受けた場合でも、影響を受けた関係者は違和感を覚えず、事実認識の改変が維持される。


───


4.特性


名の改変能力

未成年者に対し、新たな「守名」を付与し、元来の名を抹消する。

影響を受けた者および関係者の認識は即座に改変され、変更後の名が「本来のもの」として認識される。ただし、公的記録(住民票、戸籍等)に対する影響は確認されていない。


認識改変特性

影響を受けた者及びその関係者の、名の変化に関する疑問や矛盾を認識できなくなる。


精神干渉能力

神霊的存在は、対話時に「相手の自己認識を一時的に揺るがせる」 という能力を有することが確認された。これにより、名に関する問いを受けた際、対象者の意識が不安定となり、自己の名を一時的に認識できなくなる 事象が発生した。この影響を受けた捜査官(南雲美優)は、一時的に自己の名を認識できなくなる現象を経験した。これは、神霊の存在が相手の名の輪郭を揺るがせることに起因すると推察される。


影響範囲の限定性

祠(境界)周辺に限定されるが、影響を受けた者の移動に制限はない。


───


5.対処方法


敵対行動の必要性なし

当該神霊は敵対的意図を持たず、名の改変行為は未成年者の保護を目的としたものであった。そのため、制圧・封印等の措置は不要と判断。


交渉による解決

神霊に対し、「現代社会において真名を奪う脅威が消失したこと」および「名の改変がむしろ混乱を招くこと」を論理的に説明し、理解を得ることに成功。その結果、神霊は自発的に「名の改変行為の停止」を決定。影響を受けた未成年者の名は正常な形で復元された。


地域への対応策

地域史における重要な文化財として、祠の再評価を促進。地域住民の関心を維持し、神霊の孤立を防ぐことで、今後の特異事案発生を抑制する措置を講じる。


───


6.現在の状況

名の改変の影響は完全に解消

影響を受けた未成年者の名は、関係者の認識内でも復元され、社会的混乱の発生は確認されていない。ただし、影響範囲内の住民の間では、「名が一時的に変わっていた」という事実自体が認識から消失している。


神霊の活動の沈静化

祠に留まりつつも、名の改変の行為は停止。ただし、長期間の放置により再び孤立し、影響を及ぼす可能性があるため、定期的な監視が推奨される。


地域文化保全活動の開始

祠の修復・維持管理が地域住民により開始された。神霊が「本来の役割」に回帰し、今後の特異事案発生の可能性が低減することが期待される。


───


【報告書作成】

警視庁 特異事案対策室 捜査官 久世灯里


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