完璧王子様と呼ばれていた年上の幼馴染みに勝ち逃げされてから数年、再会した彼女がめちゃくちゃ綺麗な美女になってたんだけど!?
歳上の幼馴染みっていいよね
【2022/5/27追記】
日間現実世界恋愛ランキング1位になりました!
本当にありがとうございます!!!!
【2022/5/28追記】
ヒロイン視点始めました
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それはスポーツ推薦で受かった大学のバスケ部内で、居酒屋の大部屋を借りた新歓コンパに参加した時だった。
「やっほ。やっちゃん」
不意に懐かしくも妬ましいあだ名で呼ばれた。
声のした方へ顔を向けると、そこには思わず目を疑う程に綺麗な女性が居るではないか。
毛先が巻かれている艶やかな黒のセミロング、薄化粧でも映えるスッキリとした目鼻立ち、庇護欲を掻き立てられる華奢な体躯……如何にも男の好みを詰め合わせたかのような美女だ。
酎ハイの入ったグラスを片手に持ってることから、先輩なのは間違いない。
そんな女性が何故だか俺を感慨深そうに見つめていた。
普通なら喜ぶべきことだろうが、待ってほしい。
今、彼女は俺──東藤社をなんと呼んだ?
コンパ開始時に自己紹介したから、名前は知っていてもおかしくない。
しかし『やっちゃん』なんて呼ばれるような仲じゃないのは確かだ。
いや……そう呼ぶ人物に一人だけ心当たりがある。
でもソイツは目の前の女性とはあまりにも掛け離れていた。
だからこそ困惑で動揺してしまう。
「えっと……どちらさま?」
それでも美女に見つめられる気恥ずかしさから怖ず怖ずと聞き返すと、先輩はキョトンと目を丸くする。
しかしそれは一瞬だけで、すぐさま『ぷっ』っと小さく噴き出す。
手で口元を隠しつつ笑い声を抑える仕草がとてつもなく大人っぽい。
やがて笑い終えた女性は、苦笑しながらも口を開く。
「ひっどいなぁ~。自己紹介の時に言ってたでしょ? どうしても勝ちたいヤツが居るから、ウチの大学とバスケ部に入ったって。だから私がこうして隣に来たのに……」
「え……?」
少し拗ねるような物言いを可愛いと感じながらも、その言葉から戸惑ってしまう。
確かに俺は自己紹介の際にそう言った。
それでどうして先輩が俺の隣に来ることになるんだ?
「その……もしかして先輩は俺が勝ちたいヤツって誰か知ってるんですか?」
「うん。というか知ってるも何も、今まさに目の前にいるじゃない」
「は……?」
目の前にアイツがいる?
思わず会場内を見渡すが、どこにもアイツらしき人物は見当たらない。
ますます意味が分からずに困惑する俺に業を煮やしたのか、先輩に両頬を押さえられて強引に顔を合わせられる。
浮かべている笑みは、まるでサプライズが成功したかのような感じで……。
「私……じゃ分からないよね。うぅん──ボクが《《そう》》だよ。やっちゃん」
「ボク……って、あ、あぁっ!?」
咳払いをしてから女性らしい言葉を崩し、ボクと自称した先輩の笑顔を見て俺は背中にドッと冷や汗が溢れ出た。
記憶にあるアイツの顔と先輩の顔が重なり、あまりの変わりように堪らず驚愕の声を上げてしまう。
そのせいで周囲から注目されるが、そんなことは今の俺には些末でしかない。
何せ彼女が──いやコイツが誰なのかを俺はよく知っている。
西條琉華……俺の2歳年上の幼馴染みである女だ。
ようやく気付いてくれたことが嬉しいのか、琉華はニコッと笑みを浮かべる。
「久しぶりだね」
そして悲痛な表情を浮かべてさらに重ねる。
「それと、帰らないまま連絡もしないで……ゴメン」
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初めて会った時から、なんとなく気に入らない女だと感じていた。
公園で保育園の頃の友達とバスケで遊んでいた時だ。
確か『ボクも一緒にバスケしていい?』なんて言って混ざって来たんだっけ。
その頃から琉華は女子はおろか、男子より背がデカかったのは覚えている。
そして当時の俺は何も考えずに快諾し、手も足も出ないくらいに完敗させられてしまう。
負けたと理解した瞬間に泣いた。
人生で初めての敗北に、俺は途轍もない悔しさを感じたのだ。
以降も俺は琉華と公園で会う度にバスケで挑み続け、無様にも負け続けた。
コイツに勝ちたい。
そう思った俺はバスケクラブに通うことにした。
なお、琉華も同じ所に通っていたため、そこでも競争する羽目になったんだが。
何が気に入らないかって、負ける度にあーした方が良い、こーした方が良いとかアドバイスする余裕まであることだ。
しかもそれが的確で本当に上手くなるんだから、尚のこと腹立たしかった。
そんな琉華を同い年の男だと思ってたが、実際は年上の女だと知ったのは小学生になってからだ。
ぶっちゃけこの勘違いに関しては俺は悪くないと言いたい。
何せ琉華の一人称は『ボク』で話し方も男みたいだったし、髪は短かった上にスカートを履いてるとこも見たことがなかったんだ。
入学式後に会った琉華に何組かを尋ねたら、思い切り大笑いされてから明かされた。
『やっちゃん、ボクのこと男の子だと思ってんだ! あっははははははははは!!』
あぁ、今でも鮮明にヤツの笑った顔が思い出せる。
穴があったら入りたいくらいに恥ずかしかったぞコンチクショー……。
ちなみに『やっちゃん』とは琉華から付けられたあだ名だ。
男なのにちゃん付けなんてイヤだと反抗したが、またもバスケで負けたので渋々ながら認めざるを得なくなった。
琉華が女子と知った後だと、ちゃん付けがさらに屈辱的に聞こえて仕方が無い。
しかももっと腹の立つことがある。
──ピーッ!
『『『きゃああああああああっっ!!』』』
『西條さん、またシュート決めたーー!!』『カッコいいーー!』『付き合ってぇぇぇぇっ!!』
女子なのに女子にモテるんだよ、琉華のヤツ。
小学生の頃からバスケで活躍する琉華は有名で、短く切り揃えられた髪と切れ長ながらも涼しげな目元から、女子達には『王子様』と呼ばれていた。
運動だけじゃなくて勉強も出来るため、女子の人気を簡単に掻っ攫っていく始末だ。
天は二物どころか三物も四物も与えた才能の塊だった。
『勝負だ琉華ぁ! 今日こそお前に勝つ!』
『やっちゃん、今日もやるの?』
『この日のために特訓したんだ! だから勝つ!』
『昨日も勝負したばかりなんだけど……まぁいいや』
そんな琉華がとにかく気に入らなくて、俺はバスケで勝負を挑みまくった。
バスケ以外の競技でも勉強でも、ひたすらに琉華へ挑戦状を叩き付け続ける。
そして負けまくった。
『なんで勝てねぇんだよ……』
俺は小三で琉華が小五の頃、彼女のドライブで抜かれて敗北した俺は四つん這いになって項垂れていた。
もうホントになんなのコイツ?
俺、同じ学年の中で一番バスケが強いんだぞ?
なのに勝てるビジョンが全っ然見えねぇよ……。
俺には女子の声援が一つも来ないのに、琉華がワンアクション起こす度にキャーキャー聞こえるのも地味に腹立つわぁ……。
あ、そうだ。
『お前、髪伸ばしたりしねぇの?』
『え?』
我ながら狡い発想だが、琉華がもう少し女子らしくなれば良いのではと思って提案してみた。
その言葉に彼女は目を丸くして茫然とする。
ほんの数瞬だったが、琉華は目を逸らしながら右手で毛先をクルクルと弄り出す。
『やっちゃんは……女の子の髪は長い方が好きなの?』
『え、髪?』
『うん。ボクの髪も、長い方が良いと思う?』
『ん~……別にどっちでもいいや』
よく考えたら琉華が髪を伸ばしたくらいで、俺の勝てる要素が増える訳じゃない。
髪の長さなんかより、どうやって琉華にバスケで勝てるか考える方が大事だ。
『ふぅ~ん……やっちゃんのバカ』
『は? なんて言った』
『前より上手くなってるよって言ったの』
だが琉華が何やら呟いたが、小さい声だったので聞こえなかった。
聞き返すと、こちらを小馬鹿にするように頭を撫でてきやがる。
ぐぅおおおおコイツぅ……!
『撫でるな! 上手くなってるなら勝てるはずだろ!』
『やっちゃんが強くなる分だけ、ボクも強くなるから仕方ないねぇ』
二年のアドバンテージが縮まらねぇ……。
身長も全く追いつける気がしない。
小三の頃の琉華より低いって身体測定で分かった時、枕を涙で濡らしたくらいに悲しかったなぁ。
まぁ良い。
今日のところは負けを認めてやる。
だがなぁ……。
『くっそがぁぁぁぁ!! 次は負けないからなぁ! 首を洗って待っとけぇっ!』
『ふふっ、はいはい』
俺の負け犬の遠吠えに琉華は苦笑しながらも見送る。
こんな光景が続いたからか中学に上がった頃には琉華が完璧王子様と呼ばれる一方で、俺は子犬ちゃんとして彼女のファン達に敗北後は可愛がられるようになった。
構うと吠えるところが可愛いらしい。
解せぬ。
そういえば、クラスの男子から年上にモテる秘訣を聞かれたっけ。
『モテてねぇよ。明らかに愛玩動物扱いされてんじゃん』
そう返したらキレられた。
もっと解せない。
あぁ、あと琉華にもからかわれたこともあった。
確かその日の勝負に負けた後の帰り道だ。
『やっちゃん、モテモテだね?』
『琉華に比べたら閑古鳥も良いとこだろ』
『ボクの場合は女子同士だからノーカン。……もし、告白されたらどうする?』
『ん~~……よく分かんねぇ。んなことより琉華とバスケする方が良い』
『え……? でもやっちゃん、一回もボクに勝ったことないじゃん』
『傷口に塩塗りたくんなよ!?』
誰のせいだと思ってんだコラ。
『そう思うんならだったら勝たせろ』
『でも手加減したら怒るじゃん』
『そりゃ勝つなら本気でやった方が良いだろ』
『そうだけど……ボクと1on1で負け続けて、バスケがイヤにならないの?』
『はぁ?』
珍しく弱気な琉華の言葉に、無性にカチンって来たんだっけ。
今までの俺を見てたクセに何言ってんだコイツって本気で思ったね。
『何言ってんだお前』
あぁ声に出して言ってたわ、昔の俺。
でもその後に続けて言ったんだよな。
『琉華とやるバスケが楽しくなかったら、そもそも勝負を挑んだりしてねぇだろ』
『! ……やっちゃん、負けても楽しいの? 悔しくないの?』
『傷口に塩塗りたくるの止めろ。負けたら悔しいに決まってんだろ。でもそれ以上に……楽しいから、勝ちたいんだよ』
『……そっか』
俺の言葉を聞いた琉華は神妙に頷きながらも、どこか憑き物が落ちたみたいに小さく微笑んだ。
本当に……ほんっっっっとーにちょびっとだけだが……。
──その時の笑顔が可愛いと思ってしまった。
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琉華に勝負を挑んでは負け続ける。
俺が高一、琉華が高三になっても変わらない。
初めて出場した高校バスケのインターハイも、俺達は男バスと女バスでそれぞれ優勝した。
特に琉華にとってはこれ以上無い有終の美になったと思う。
一方で相変わらず、俺は身長も勉強も琉華にバスケも勝てないままだ。
それでもこの先も彼女に挑み続ける日常が続くと思っていたんだ。
『は……? 琉華が引っ越す?』
『そうよ? 知らなかったの?』
その終わりは母さんから伝えられた。
琉華が推薦合格した大学はスポーツに力を入れているらしい。
それ自体はおかしくない、彼女の夢はプロのバスケ選手になることなのだから。
だが俺達の住む場所だと通学が不便だから、高校卒業後には大学の近所へ引っ越して一人暮らしするという。
つまり……まだ高一である俺と離れることを意味している。
──ふざけんな。
そんな憤りに駆られるまま、家を飛び出して琉華の元へ向かう。
家が近いので程なくして顔を合わせた琉華は、初めて見るくらいに寂しげな面持ちを浮かべていた。
『お前……なんで黙ってた?』
『……ゴメン』
自分でも分かるくらいに低い声音での問い掛けに、琉華はただ目を伏せてそう言った。
違う。
俺が聞きたいのは謝罪の言葉なんかじゃない。
小学生から中学生に上がる時も、中学生から高校生に上がる時でも、琉華と通う学校が別になっていた。
その度に俺は勝ち逃げなんて許さないと、彼女の後を追い続けた。
琉華もそれを知っているから、放課後や休日も俺とバスケをしてくれたんだ。
でも……遠方の大学となるとそうもいかなくなる。
全く会えない訳じゃないだろうが、それでも今までみたいには出来ないだろう。
悔しさと寂しさが綯い交ぜになったまま、泣けば良いのか怒れば良いのか分からない。
言葉を失くして俯く俺の頭に、軽く何かがのし掛かる感覚がした。
よく知っている感触……琉華が頭に手を置いたのだと悟る。
負けた俺に対していっつもこうやるんだよなぁ……。
だから自分が惨めに思えてしまう。
こんな時くらい、胸を張って送り出せたら良かったのなんて。
そんな俺に向かって、琉華は言う。
『やっちゃん、いつもみたいに『勝ち逃げなんて許すか』って言わないの?』
『っ、無理に決まってんだろ……琉華に負けてる俺じゃ、お前と同じ大学なんて行ける訳がねぇっての……』
完璧王子なんて呼ばれてる琉華だから推薦合格できたんだ。
そんな彼女に負け続けてる俺じゃ、普通に受験したところで不合格になる。
浪人しても絶望的だ。
あまりに高い壁に挫けそうになっていた。
それでも琉華は無理して作った笑みのまま続ける。
『やっちゃんなら合格出来るよ』
『なんの根拠でそんなこと言うんだよ』
『やっちゃんのこと、一番近くで見て来たから』
『……!』
琉華の言葉に堪らず顔を上げる。
彼女の目は真剣そのもので、本気で俺が同じ大学に行けると信じているようだった。
あぁ、こんな時でも琉華には勝てないのか。
バカの一つ覚えで勝負に挑んでは負け続けるヤツのことを、彼女は誰よりも信頼してくれていたんだ。
なんだかしんみりしているのが……挫け掛けてるのが馬鹿馬鹿しくなってくる。
向けられた信頼に胸が熱くなって、堪えきれずに涙が出てしまう。
それに釣られるように琉華の目からも涙が流れ出した。
『やっちゃんが頑張れるように、約束する。──早く追い付いて、また勝負しに来てね。そうじゃないと一生勝てないままだよ?』
『……っ! 上等だ! ぜってぇに追い付いて、負かしてやる!!』
頭に乗せられた瑠華の手を払い、言ってやった。
『だから……俺に負けるまで誰にも負けんじゃねぇぞ、琉華ぁっ!』
『……うん! やっちゃんにも負けないけどね』
『おい!』
『ふふっ、あははははっ! ──待ってる』
『! ……おぅ』
何とも締まらない話だったが、俺達はそう約束した。
そうして数日後に高校を卒業した琉華は夢のために旅立つ。
寂しくないといえば嘘になる。
なんだかんだで幼馴染みだったのだから。
彼女が傍に居ない高校生活は、途端につまらなかった。
でも事此処に至ってようやく気付いたことがある。
俺は琉華のことが好きだ。
今まで胸に懐いていた反発心は、好きな子に見栄を張りたかっただけなのだと悟る。
再会してアイツに勝った時に、この気持ちを伝えてやろう。
だからしょぼくれてる暇なんてない。
俺は琉華と同じ大学に行くって決めたんだ。
琉華も連絡するし、時々帰って来ると言っていた。
だから大丈夫だ。
──そう思っていた。
琉華が引っ越してから半年が経った頃、突如として連絡が取れなくなり、地元にも帰って来なくなった。
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母さんや琉華のお母さんから、大学に通っているままなのは聞いていた。
頑なに現状の詳細を教えてくれなかったが……。
だからこそ、連絡も寄越さず帰って来ないことに憤慨していたわけだ。
死に物狂いで練習してスポーツ推薦で受かった俺は、再会したらまずは文句を言ってやろうとか考えてはいた。
だが……。
「……」
「……」
実際に顔を合わせると、用意していた言葉が何一つ浮かんで来なかった。
琉華の方も先の謝罪からずっとだんまりだ。
さっきの気安いトークは無理をしていたのだろうか?
一方で俺が黙ってるのは好きな子と再会して緊張してるから……だけじゃない。
琉華……なんかめちゃくちゃ綺麗になってるんだけど!?
お前、地元に居た頃はバスケ以外に興味ないからって、化粧とか服とか適当だったじゃねぇか!
髪も長いと面倒だってすぐに短くしてたのに、そんなオシャレに整えて……。
手放しに褒められるくらい綺麗なはずなのに、凄く……イヤな気持ちになる。
ひょっとして彼氏が出来たりした?
そんなに変わったのも、帰って来なかったのもそういう訳なんだろうか……?
もうそっちの方が気になって思考が纏まらないし、ぶっちゃけ彼氏がいるのか聞きたくて仕方が無い。
でも……もし居るって言われたら俺はどうしたら良いんだ?
「や──」
「おいおい新入生! お前、なに暗い顔してんだよー!」
「うわっ!?」
モヤモヤと悩んでいる俺に琉華が何か言おうとした瞬間、不意に後ろから誰かの腕が回される。
慌てて顔を見やれば、新歓コンパの音頭を取っていたバスケ部の部長の男性だった。
酔っ払ってるのか顔が赤いし、酒臭い。
突然絡みに動揺を隠せないでいると、部長が琉華を一瞥してから口を開く。
「運が良いなぁ新入生」
「運が良いって何が?」
「ばっかお前、彼女のこと知らないのか~? 西條琉華ちゃんって言えば、去年のミスコンで優勝したミス柚木大なんだぞ~?」
「ミスコン優勝!? マジで!?」
「う、うん……」
衝撃の情報を齎されて、思わず本人に確認すれば目を逸らしながらも肯定された。
琉華って高校の文化祭で、ミスターコンテストの方で優勝してたんだぞ……?
それがミスコンでもって……まぁ今の見た目なら納得しかないんだが。
でもこれって何気に知りたくない情報だったなぁ。
だってミスコン優勝者ってことは、狙う男も多いってことだろ?
競争率ヤバそう……俺の初恋の難易度、ドンドン跳ね上がっていくんだけど……。
ますます不安になってしまうが、続けられた言葉で簡単に吹き飛ばされることになる。
腕を回したままの部長が器用にビールを呷ってから、自慢気に語った。
「ウチの敏腕マネージャーでもある琉華ちゃんに話し掛けられるなんて、幸運以外何物でもないっしょ」
「あ……っ!」
「ぇ……?」
誇らしげに語られた内容に反し、俺は茫然としてしまう。
マネージャー?
プレイヤーじゃなくて?
それはつまり……今の琉華はもう、コートの上に立っていないことになる。
嘘だと思いたかった。
でも部長が俺に嘘を付く理由が無い。
何より……バツが悪そうな琉華の表情が真実だと物語っていた。
なんでだよ?
琉華は俺と同じくらいバスケが好きで、プロになるのが夢だって何度も言っていただろ?
そのために彼女はわざわざ地元から遠い柚木大を受けたはずなのに……。
どうしたって信じられなかった。
否定して欲しいのに琉華は何も言わないままだ。
あまりの衝撃の多さに、頭が痛くて仕方が無い。
酒なんて一滴も飲んでないのに吐きそうだ。
「おい、大丈夫か? 顔色が悪いぞ?」
「いえ……その……」
間近で俺を見ていた部長が心配から呼び掛けてくれるが、どう返せば良いのか分からない。
そんな時、不意に手を引かれたことで立ち上がらさせられる。
気付けば俺は琉華に肩を借りる姿勢になっていた。
「部長。彼、気分が悪いみたいなので私が送りますね」
「ぇ」
「え、お、おう……」
空いている手に自身と俺のカバンを持って、そそくさと店を後にする。
琉華は手慣れた様子でタクシーを呼び、二人で乗った俺達はまるで初対面みたいに移動中も言葉を交わさなかった。
=======
「好きなとこ座って良いよ」
「お、おぅ……」
タクシーに揺らされること数分、着いたのは琉華が借りている部屋があるマンションだった。
俺が借りている部屋が分からないから、自分のとこにしたとは聞かされている。
それにしたって、異性の部屋に入るのは忍びない気持ちになるのだが。
いやいや、いくら好きな子の部屋だからって今さら緊張するなよ、俺。
琉華の部屋くらい、小さい頃に何度も行ってたじゃねぇか。
……気持ちに気付いてから来るのは初めてだけどさ。
とりあえず無難にテーブル前の床に座っとこ。
それからキッチンに立つ琉華の後ろ姿を見やる。
その佇まいからしても、記憶にある琉華とは全く別人にしか見えない。
否応でも彼女の変化を突き付けられて、無性に苛立ちが募る。
勝負に負けた時の悔しさとは比べものにもならない重さだ。
──もしかしたら俺以外の誰かが来たりしたこともあったり……。
そこまで脳裏に過ったところで、慌てて頭を振り邪念を払う。
一人で考え込んでも悪い方にしかならない。
いっそ琉華に聞くのが手っ取り早いだろう。
頭ではそう理解していても、実行に移せない自分の弱さが恨めしくなる。
そうしている内に、琉華がカップを乗せたお盆を持って来た。
「はい、インスタントだけどカフェオレ入れたから」
「サンキュ……」
渡されたカップを受け取り、カフェオレを一口飲む。
コーヒーのほろ苦さとミルクの甘みが、なんだが今の自分を表しているような気がした。
対面に腰を降ろした琉華も自分の分のカフェオレを飲み始める。
そうして沈黙が続く中、ふと琉華が口を開く。
「やっちゃん、ちょっと見ない内にカッコ良くなったね?」
「……まぁ、大学生になったし。そういう琉華も、変わったな」
「色々、ね。高校で告白とかされなかった?」
「何度かはあったけど、バスケ優先だからって断った」
「……そっか」
幼馴染みなのに距離感を測るような話し方がもどかしい。
綺麗だって素直に褒められたら良かったが、どうにも照れくさくて遠回しになってしまう。
ちなみに告白を断った本当の理由は琉華が居るからだ。
琉華も告白されてそうだよなぁ。
ミスコン優勝したみたいだし、さぞモテそうだ。
俺は琉華が好きだけど、琉華は俺のことをどう思ってるんだろうか……。
いいや、それ以前にだ。
「……あのさ、琉華」
「なに……?」
俺は意を決して琉華に現状を尋ねることにした。
恋人の有無や綺麗になった理由も気になるが、何より先に知りたいと思ったことを。
「今は、バスケしてないのか?」
「っ……うん」
問い掛けに琉華は罪悪感からか悲痛な面持ちで肯定した。
堪らず息を詰まらせる俺に、彼女は悲しげな笑みを浮かべながら続ける。
「大学に来て五ヶ月くらいだったかな。練習中に左膝に激痛が走って転んだんだ」
「激痛って……」
「膝前十字靱帯の断裂」
「!」
俺も端くれながらプロを目指す身だ、琉華が負った怪我がどれだけ重いのか知っている。
スポーツをする以上、そういった怪我の知識を把握して予防する必要があるからだ。
琉華だって知らない訳がない。
特に靱帯は自然治癒が利かない部位だ。
一度切れたら手術しない限り、歩くことすらままならなくなる。
でも彼女は普通に歩けていた。
リハビリすれば復帰も出来るはずだ。
そんな淡い期待を懐いたのだが……。
「切れる前に不調があったのに、気のせいだって無視したせいで重傷化しちゃってね。手術とリハビリの甲斐あって日常生活に問題はないけど、前みたいにバスケは出来ないって言われたんだ……」
「そんな……」
「もう、目の前が真っ暗になった気分だったよ」
非情にも琉華はたった一度の怪我でバスケ生命を絶たれてしまった。
バスケが好きで強かった彼女が、その絶望的な現実を前にどれだけ辛い思いをしたのか計り知れない。
「……バスケ、好きだったもんな。じゃあ、連絡しなくなったり帰って来なかったのは……」
「うん、怪我でバスケが出来なくなったことを知られたくなかったから。お母さんとおばさんには秘密にして貰ってたんだ。その方がやっちゃんも練習や勉強に集中出来るかもって……」
「……」
開いた口が塞がらなかった。
でも琉華の懸念も尤もだ。
もし怪我のことを知っていたら、俺は琉華のことが心配で集中できなかったかもしれない。
なっさけねぇ……。
やっと追い付いたと思ったのに、結局琉華に助けられてんじゃねぇか。
こんなんじゃ到底勝てたなんて言えない。
それどころか……。
「もう、琉華とバスケ出来ないのかよ……」
「……」
漏れた呟きに琉華は何も返さない。
胸にぽっかりと穴が空いた気分だ。
思えば俺は琉華にバスケで負けたのが悔しくて、クラブに通ったりして本格的に取り組むようになった。
言わば彼女は俺の目標そのものだ。
だからこそ離れていてもキツい練習に耐えて、どんな試合でも諦めずに立ち向かってきた。
その支えが無くなった今、果たして前のようにバスケが出来るだろうか……?
そんな不安を感じていると、琉華が口を開く。
「ボクも……やっちゃんとまたバスケがしたかった……」
「琉華……」
「病院で復帰出来ないって聞かされた時ね、バスケが出来ないことよりプロになれないことよりも、やっちゃんと勝負するって約束が守れないことの方が恐かった……!」
「え……」
琉華の言葉に思わず目を見開いてしまう。
バスケや夢よりも、俺との約束が大事だなんて思わなかったからだ。
でもそう明かした琉華の表情は、今にも泣きそうなくらいに歯を食いしばっていた。
よく見ると左手で自分の足を叩いている。
それほどまでに、ちゃんとケアをしなかったことを悔いていた。
「大学を辞めようか何度も考えたよ。でも、それだけはダメだって思った。だってバスケも夢も諦めるしかなかったけど、やっちゃんからも逃げたらボクには何も残らないから……」
「……っ」
琉華の叫びを聞いた瞬間、俺は目を大きく見張るほどに心が震えた。
彼女はバスケ生命を絶たれる程の重傷を負ってなお、俺との約束のために待っててくれたんだ。
他の人のプレーを見るのも辛いはずなのに、マネージャーとして携わろうとしていた。
怪我だって口で言う程軽くなかったはずだ。
リハビリだって苦しかったに違いない。
それでも彼女は腐らずに足掻き続けたんだろう。
「なんで……」
だから分からなかった。
琉華にとって俺は、無謀な勝負を挑んで来る幼馴染み兼ライバルのはずだ。
そこまでして拘る理由がまるで浮かばなくて、疑問を声に出してしまう。
それを聞いた琉華は今にも泣きそうな顔で、けれども勇気を振り絞るように言った。
「──やっちゃんが……東藤社君が好き、だから」
「……はぁっ!?」
思いも寄らなかった告白を。
琉華が……俺のことを好き!?
オイ待てどういうことだ!?
まさか、両想いだったのか!?
あまりにも予想外な言葉に、嬉しさと驚きから頭の中がパニックになってしまう。
「ぇ、いゃ、る、琉華……? か、彼氏とか居るんじゃ?」
「居ないよ。付き合うのもキスするのも、最初から最後までやっちゃんとしたいもん」
「お……っ、その……いつから?」
動揺のあまり流暢とは言えないそれを聞いた琉華は、少しばかり照れくさそうに微笑みながら言う。
「初めて会った日の次の日、かな」
「え、早くね?」
今からざっと十二年以上も前だぞ?
俺の六倍も片想いしてたってこと?
思わず発した戸惑いの声に、琉華は顔を赤らめたまま四つん這いになって近付いて来る。
「だってあの頃の前後でボクとバスケしてくれたの、やっちゃんだけなんだもん……」
「いやいや俺だけじゃないだろ?」
「他の子はボクとバスケしても、負けてばっかでつまんないって辞めちゃうんだよ。でもやっちゃんは違った。いつもボクが勝っても、次は勝つって何回も来てくれて……だから好きになったの」
「お、おぉ……」
彼女から感じる圧に戦いて後退りしつつも頷く。
あんな負けず嫌いなクソガキが重ねた幾度もの敗北が、まさか琉華のハートを射止めていたとは……。
だがそうなると、ある疑問が浮かんでくる。
「そんなに好きだったら、なんで地元にいた時にアプローチとか告白とかしなかったんだよ?」
「そりゃ幼馴染みの関係を壊したくなかったからだし、ボクって高校卒業まで王子様みたいに振る舞ってたでしょ? そのイメージを崩す訳にはいかなかったから、告白とか我慢するしかなかったの」
「え、なんで……?」
「だって、そうしたら他の女の子から目を付けられないじゃん。そこはやっちゃんがバスケバカで良かったと思ってるよ」
「はぁっ!?」
サラッと語られた理由に驚きを隠せなかった。
あとさり気なくディスんな。
確かに琉華や周りからみればそうだったろうが、本人としては至って本気だったんだよ。
「でも久しぶりに会ったやっちゃんが凄くカッコ良くなってて、誰かに取られちゃう前に告白だけでもしたかったの」
「……」
開いた口が塞がらず、何も言葉が出てこない。
と、とにかく琉華が俺が好きなのは分かった……それも相当に。
まさか再会した当日に告白されるとは思わなかった。
ここまで想いを打ち明けてくれた琉華に対して、どう返すのが一番なのか。
その方法は考えるまでもない。
気付けば俺は彼女を抱き締めていた。
「や、やっちゃん……?」
腕の中で琉華が茫然としているが、構っている余裕がなかった。
何せ彼女の身体は本当に細くて、もう少しでも力を入れてしまえば容易く折れてしまいそうだ。
1on1をしていた頃はもっと大きく見えたのに、いざ触れたらこんなにもか細いんだなと妙なギャップを感じる。
同時に手放したく無いとも思ってしまう。
だからだろうか。
「──俺も……琉華が好きだ」
「え……っ!?」
今はただ彼女に想いを伝えたかった。
俺の唐突な告白に、琉華が驚きから全身を揺らしたのが分かる。
顔なんてもう真っ赤だ。
そりゃそうだろう。
久しぶりに会った幼馴染みに告白したら、告白し返されたら誰だって驚くに決まってる。
「や、やっちゃんが、ボクを……?」
「自覚したのは琉華が高校卒業してからだけど、多分もっと前から好きになってた」
「ホントに?」
「本気じゃなきゃ、ここまで追い掛けて来ねぇっつの」
「う、うん……」
信じられないのか重ねて本気か問う彼女に、これ以上無い本気の答えで返す。
反論する余地がなくなって、琉華に俺の気持ちが本物だと伝わったようだ。
「本当は琉華との1on1で勝てたら言うつもりだった」
「で、でもボク、バスケはもう……」
「分かってる。だからこれは俺の不戦勝だ」
「不戦勝?」
「そう。勝負が出来ないなら俺の勝ちってことだ」
「──ふふ、なにそれ……」
我ながら強引な屁理屈だが、そう言い訳をしてでも琉華に気持ちを伝えたかった。
むちゃくちゃな言い分なのは琉華も分かっているようだが、それよりもようやく心から笑ってくれたことが嬉しい。
女性らしい見た目になったことも相まって、笑顔の琉華はとてつもなく綺麗に映った。
しばらくして笑い終わった彼女が、頬を赤らめながら視線を右往左往させる。
「えっとそれじゃ……ボクとやっちゃんは、両想いってことだよね?」
「そ、そうだよ。で、返事は?」
改めて現状を口にする琉華に対し、照れ隠し気味に告白の答えを尋ねる。
そんな問いを投げ掛けられた彼女は、ムッと拗ねるように唇を尖らせてから言う。
「──答えなんて分かってるクセに。やっちゃんのイジワル」
そのまま琉華は顔を寄せて、俺とキスを交わした。
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翌日。
あれから琉華の家で一泊した俺は、付き合うことになった彼女と手を繋いで大学へ登校していた。
俺の右手を彼女の左手が握り、互いの指を絡ませる恋人繋ぎでだ。
流石に交際初日で一線を越えることはしなかったが、それでも今は幸せの絶頂にいると自負できる。
琉華への想いを自覚してから、こうなることをどれだけ望んだことか……。
長年の想いが実ったからなのか隣を歩く琉華も、とても幸せそうな笑みを浮かべ続けている。
「ふふっ。こうやって並んで歩くの久しぶりだけど、やっちゃんの顔を見上げるなんて変な感じだね。ボク、170はあるのに」
「180あるからな。俺も琉華を見下ろす感覚にまだ慣れねぇや」
そう……昨日は色々あって実感がなかったが、俺の身長はついに琉華を越えたのだ。
この光景を見るまで長かったなぁ……。
俺が五センチ伸びたのに、琉華から六センチ伸びたと聞かされた時は……もうねぇ。
まぁ実際に追い越した感想としては『こんなもんか』と、そこまで感動的という気持ちにはならなかった。
十中八九、琉華と恋人になった後だから衝撃が薄いだけだろう。
そんなことを考えている俺を余所に、琉華は少しだけ寂しそうに息を吐きながら言う。
「そっかぁ……もう身長じゃ勝てないね。つまりやっちゃんの勝ちだ」
「もっとバスケでズバッと勝ちたかったんだけどなぁ」
「勝ちは勝ちでしょ? まぁボクからしてみれば、やっちゃんに恋した時点で負けてたんだけど」
「先に好きになったからってことか?」
「そうそう」
言いたいことが伝わって嬉しいのか、琉華は笑顔で頷く。
つまり俺は彼女の初恋を奪って(?)、身長を越えて勝ったということか。
……なんだろう、フォローされたはずなのに釈然としない。
ま、まぁ今の俺は琉華と恋人なんだ。
これから負けず嫌いを発揮するのは試合の時だけで良い。
そう無理矢理に自分を納得させた。
そういえば大学が近付くにつれて、周囲の目が俺達に向けられる視線が多くなってる気がする。
あぁそうか、琉華ってミスコンで優勝したんだっけ。
それだけの実績の持ち主であれば、注目を浴びてもなにもおかしくない。
そんな彼女が男と手を繋いで歩いてたら尚更な。
色々と厄介事が増えそうだが、琉華と二人ならなんとかなるだろ。
「ふふっ凄い見られてるね」
「ミスコン優勝者が男連れだもんなぁ。そういや昨日の琉華って、自分のことを私とか言ってなかったか?」
「いつまでも『ボク』じゃ子供っぽいからね。やっちゃん的にはどっちの方が良いと思う?」
「う~ん……二人きりの時に『ボク』って言う方が良い」
「! ……分かった。じゃあそうする」
しばらく逡巡して浮かんだ答えを口にすると、琉華は嬉しそうにはにかみながら了承した。
我ながら情けない独占欲から出た気持ちなのだが、彼女は理解した上で聞き入れてくれたように思う。
しばらくして大学の正門を抜けた辺りで、横から『おーい』と明るい声音で呼び掛けられる。
琉華と揃って顔を向ければ、そこにはショートヘアの似合う活発そうな女性がいた。
「おっはよー、るるちー!」
「おはよう梨乃」
梨乃と呼ばれた女性は琉華の友達らしい。
彼女は挨拶してから、ジロジロと俺に目を向ける。
「ふむふむ、なるほどなるほど~……」
梨乃さんは何やら神妙に頷いてから、ニコッと琉華に笑みを向けて……。
「彼がるるちーの言ってた愛しの幼馴染み君なんだね! 見た感じ、ちゃんと付き合えたようで何より! いやぁ~新歓コンパで新入生をお持ち帰りしたって聞いた時はビックリしたよ~」
「してないからね!? 色々と話さなきゃいけないことがあっただけなんだから!」
なんかもの凄い話が広まってる……。
琉華が顔を真っ赤にして否定するが、何も知らない人から見れば確かにそう見られてもおかしくない。
にしたって飛躍が過ぎるが、昨日の新歓コンパに参加した誰かが広めたんだろう。
それだけ琉華が日頃から注目を集めている証左とも言える。
「でも本当に良かったね~。彼に好きになって貰うために、メイクとか服とか料理とかたくさん頑張ったからねぇ~~?」
「あうぅ~……」
ニヤニヤと下世話な笑みを浮かべる梨乃さんの言葉に、羞恥心が限界を迎えた琉華は空いている手で赤い顔を覆って黙り込んでしまう。
リハビリ以外にも重ねていた努力を知った俺も、そんな彼女に可愛いらしくいじらし過ぎる様子に悶絶を隠せない。
そっかぁ……今の琉華は全部俺のためだったんだなぁ……。
改めて実感すると、どうにも形容出来ない喜びが溢れて止まない。
なんというか、もう……。
「琉華」
「な、何……?」
彼女に一声掛けてから、俺は徐に左手を上げて言う。
「──今日は俺の負けで良いよ」
「まだなんの勝負もしてないのに!?」
降伏宣言に対し、琉華は動揺を露わにする。
でも仕方ないだろ。
「琉華が可愛過ぎて勝てる気がしない」
「うぅっ……」
別に可愛さで競うつもりはないが、逆立ちしても敵いそうに無い。
開き直った敗北理由を聞いた琉華は、上目遣いでジトーっと睨んで来る。
全く恐くないしむしろ可愛いし、頬が微妙に震えてることから嬉しそうなのは間違いない。
その表情を見て思う。
──やっぱ琉華には敵わないなぁ……。
でも今回の敗北は、悔しさを微塵も感じない。
逆に清々しい気持ちになったくらいだ。
俺の彼女はこんなにも可愛いのだと誇らしいのだから。
〈完〉
最後まで読んで下さってありがとうございました!
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