探し物と失くしたもの
「おかあさん あれはどこ?」
あっくんはいつもさがしものをしています。
「おかあさん ぼくのうさたん どこにいったの?」
「テーブルのしたにいたわよ。あそんだらかたずけようね」
「うん わかったー」
あっくんはいつもこんなへんじをします。
「おかあさん ぼくのゴレンジマン どこにいったの?」
「テレビのうしろにいたわよ。あそんだらかたずけようね。」
「うん わかったー」
きょうもあっくんのへんじはおなじです。
「おかあさん ぼくのしょうぼうしゃ どこにいったの?」
「みてないわよ。さがしてみたら?」
「うん わかったー」
でもあっくんはさがしません。ほかのおもちゃであそんでいます。
そしてまたつぎのひ。
「おかあさん ぼくのしょべるかー どこにいったの?」
「みてないわよ。さがしてみたら?」
「うん わかったー」
やはりあっくんはさがしません。ほかのおもちゃであそんでいます。
さらにつぎのひ。
「おかあさん ぼくのおもちゃ どこにあるのー?」
「みてないわよ。さがしてみた?」
「さがしたけど みつからないよー」
あっくんはさがしてなんかいません。
「そう みつからないの。じゃあおもちゃであそべないわね」
いつものおもちゃばこはからっぽです。あっくんはなきそうです。いつもはここにだいすきなおもちゃがたくさんはいっているのに。
それでもあっくんはさがそうとしません。まっていればいつかおもちゃばこがもとどおりになるとおもってるからです。
でもつぎのひになってもおもちゃばこはからっぽのままです。
「おかあさん ぼくのおもちゃ どこにあるのー?」
あっくんはないています。
「みてないわよ。さがしてみた?」
「さがしたけど なかった」
もちろんあっくんはさがしてなんかいません。もとどおりになるのをまってるだけです。
そしてまたつぎのひ。
「おかあさん ぼくのおもちゃ どこー?」
へんじがありません。
「おかあさん どこー?」
「おかあさん どこー?」
ルート①
ふとおもちゃばこをみるとなにかがみえます。さっきまでなにもなかったとおもったのに。
「おもちゃもどってきたのかな」
あっくんはおもちゃばこをのぞいてみました。みなれないにんぎょうがひとつはいっていました。
よくみるとそれはさっきまでいたおかあさんにそっくりでした。
©︎石江京子氏