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キラキラ王子ヴァイスの憂鬱◆ヴァイス視点◆

久しぶりに8時台に更新できました!


ある意味下品な回。王子様視点なのに、すみません。

そういうつもりで読んで下さい……。

2学期から行かねばならない留学のメンバーが仮決定されたという知らせが来て、私は素案を見て固まってしまった。


どうして、シーニーからルージュに変更になっているんだ?!

もう1人のメンバーであるラランジャ・オランジェ……この子はまだ良い。


自ら志願してくれたし、アーテルからの推薦もあった。

メッキと言われる子ではあるが、優秀だし良く気が利く子なのは知っている。一緒に来てくれたら、生活面などで、色々とフォローしてもらえるだろう。


しかし……。ルージュ……お前はナシだ。

シーニーに頼んだ筈なのに……よりにもよって、なんでお前なんだ?!?!


私は何度もその通知を見返して……溜息を吐いた。


シーニーがダメならリュイだろ。

……リュイもダメなら、まだアーテルの方がマシな気がする。


私は、ルージュが苦手……なのだ。



ルージュが苦手な件については、ルージュとの出会いから語らねばならない。


私、アーテル、シーニー、ルージュ、リュイ、ローザにヴィオレッタの7人は幼馴染ではあるのだが、一番古い付き合いなのが、アーテルとルージュなのだ。


最初に友人兼学友として、共に切磋琢磨しろと連れて来られたのがこの2人だ。


アーテルは従兄だからもちろんなのだが、ルージュは叔父であるグライス先生が親しくしていた騎士団長の息子で、同学年という事で、他のメンバーよりも早く連れて来られた。グライス先生が、私達3人に魔術を教える事になったというのも、あるのだろう。


ちなみに、シーニーとリュイには別の師が付いていた。ローザとヴィオレッタにもそれぞれ別の先生がいたらしい。幼少期の女の子は魔力が安定しにくいので、先生が個別に付く事が多いそうだ。


……。


アーテルとの出会いは……まあ、普通だった。

黒い髪と黒い目の、綺麗な顔の頭の良さそうな子だな……って印象くらいしか無い。


しかし……ルージュはまるで違った。


その日、私達は王宮の中庭で顔合わせをしたのだが、アーテルがソツなく挨拶をする横で、ルージュは……水たまりで跳ねていた。


私はその光景に、思わず卒倒しそうになった。


間違えて汚してしまうなら分かる。何故、わざわざ泥に飛び込んで、綺麗なお洋服を汚さねばならないのだろうか?……この子は一体何をしたいんだと真剣に思った。


なぜなら、姉様方は絶対にそんな事などしないし、ちょっとした泥跳ねすら嫌がるからだ。


その行動は、あまりにも理解しがたかった……。


だが、ルージュの逸話はそれだけでは無いのだ。子供の頃のルージュは草を食ったりもしていた。


『何でそんな事をするんだ?!』と聞いたら、『食えたらお得だろ?』などと言っていて、私の頭は疑問符だらけになっていた。


そして思った。

ロッソ家が金に困っている様には見えないから、興味本位で口に入れているのだ。赤ん坊みたいに……!きっと『おままごと』の一種なのだろうと。


なのにアーテルは、ゲラゲラ笑って、カエルのタマゴを「黒イクラ」なんて言ってバケツにすくってルージュに渡したのだ。


私は焦ってそれを叩き落とした。


だって、赤ん坊が口に入れたら大変だろう?!姉様方と遊ぶ『おままごと』で、赤ん坊は庇護の対象だ。……カエルのタマゴなどを与えてはいけない。


『ルージュが食べてしまったら、どうする気なんだ、アーテル!「おままごと」だからって、そんなのはよせ!』私がそう言って怒鳴ると、ルージュが『はあ?……男同士で「おままごと」なんかしねーよ?それにさ、さすがに俺だってカエルのタマゴなんか食わねーよ!』などと言って、2人は爆笑し……居た堪れなくなったのは、良い?思い出だ……。


そして、成長してからも、ルージュへの驚きは変わらなかった。


後から加わった幼馴染の他の男性メンバーは、真面目で面倒見が良いシーニー、人当たりがソフトで穏やかなリュイ……みんな、品が良い奴らだった。


しかし、ルージュは違う。

何と言うか……圧倒的に下品でガサツ、なのだ。


年ごろになって男同士で集まれば、私たちとて軽い下ネタを話す事もある。


だが、ルージュの下ネタは、酷いものなのだ。


エロい方面ならまだ良い。あいつが大好きなのは……本当のシモの話しだ。どうしてそれで爆笑できるのか、私には意味が分からない。思い出してみても、ルージュは昔からこの手の話が大好きなのだ。


確かに、エロい話は姉様方も嫌がるだろう……。


だが、男性だけではなく、女性だって密かに興味はあると聞くし、女性同士ではそんな話をする事もあるという。つまり、こちらは男女ともに気にはなる話ではあるのだ。


だが……姉様方はシモの話など、病気でもなければ絶対にしないし、興味などまるでないし、まして笑う事もない。……確実にそれらは軽蔑される話題だろう。


姉様方が全て正しいとは思わないが、これに関しては、私は姉様方と同意見だ。


ルージュがいかにデカい排泄物を出したかと言う武勇伝?をリアルに語られても……返答に困るし、そんなの、知りたくもないのが普通では無いのだろうか???


しかし、そんなルージュの話を聞いて、アーテルやリュイは笑うし、シーニーも苦笑まじりだがやっぱり笑う。


……面白いと思えない私がおかしいのだろうか???


そうそう、『お前もケツ毛って生えてるのか?』とか、聞かれて返答に困った事もある。


アーテルがゲラゲラ笑って、『多分、ヴァイスはいっぱい生えてるよ!』なんて答えるから、思わず『見た事もない癖に、勝手に決めつけるな!』と怒鳴ったら、ルージュに『それなら見せてみろ!』追いかけられた。


私は……内心でドン引きだった。


どうして、そんな事をしたいのか、意味が分からない。

可愛い女の子の話題は大好きだし、男性に興味がある訳でもないのに、何故私の尻を見ようとするのか、意味不明すぎるし……正直、怖かった。


ルージュは良いヤツだとは思う。

側近として信頼しているし、頼りにもしている。

だが、私にはどうしてもあのノリが理解できない……。


だから、私はルージュが苦手なのだ。



「……シーニー、何故ルージュなんだ。」


私は耐えかねて、シーニーを呼び出して聞いた。


「ルージュ曰く、私がヴァイスの世話を焼きすぎると。……確かに言われてみますと、せっかくの学園生活なのに、ヴァイスは私とばかり行動しています。ルージュの言うように、王子としてでなく、ヴァイスとしてもう少し振る舞う機会があるべきなのでしょう……。」


……ルージュはああ見えて、良く人を見ていると思う。


私があまり他の生徒と関わらないのを見ていたのか。


だが、やはり私はいずれ王となる身。特定の者と親しくすべきではないと思うのだが……。


「しかし……この国の王子である以上、その意識はなくなりはしない。」


「ええ。ですので、留学は良い機会になると。」


「それは……そうかも知れないが……。」


留学先のアキシャル国の王立学院では、セキュリティの関係上、他の生徒達には身分を明かさない事になっている。


確かに……王子ではなく、私として振る舞える良い機会ではあるが……。


……。


「ルージュは、ラランジャ嬢が行くから私と同行したいだけだろう?」


「……まあ、それもあるでしょうね。」


私は思わず溜息を吐いた。


ラランジャ嬢は、ルージュが数年前にとあるパーティーで一目惚れした、メッキのご令嬢だ。


……野心家の下位貴族が、魔力が高く優秀な庶民の女の子を買ってきて、仕込んで上位貴族とのコネ作りに嫁がせる事は、残念な事だが、割とよくある話で、それゆえにそういう子たちは、メッキと蔑まれている。


ラランジャ嬢は、買われた家で虐待まがいの事をされており、それに気付いたルージュが、父親に進言して助け出したのが彼女なのだ。


感謝した彼女は、婚約者が居なかったルージュの婚約者となり大層ルージュを慕っているのだが、ルージュは途端に彼女を邪険にする様になってしまったのだ。 


それについても、私には理解できない。


「あの2人は、何故上手く行かない???……ルージュはラランジャ嬢に一目惚れしたのだよな?ラランジャ嬢もルージュを慕っているだろう?……邪険にするから飽きたのかと思えば、ラランジャ嬢に嫌われたと凹んだり、今回のように留学について行きたがったり、支離滅裂だ。」


「まあ、照れやら、つまらない男のプライドやらで素直になれないだけですよ。……ヴァイスが取り持ってやれば良いのではないですか?」


「私がか???……まあ、機会があれば考えよう。」


なんだか、ますます留学が気が重くなっていく。


私が取り持つなど、できる気がしない。……そもそも、私自身が自分の婚約者と上手く行っていないのだから……。


私はローザの事を考え、頭を横に振った。


「ヴァイス、どうされましたか?」


「いや……私も自分の婚約者、ローザの事を考えていた。留学すると、彼女を置いて行く事になるなぁ、と。」


「そう……ですか。離れがたい気持ちは分かります。」


シーニーはそう言って笑みを浮かべる。


……シーニーなら、そうなのだろう。


どこが良いのか理解に苦しむが、シーニーは婚約者のヴィオレッタを心底愛しているから。……もしかしたら、シーニーはヴィオレッタと離れがたくて、留学をルージュに譲ったのかも知れない。


……みんな婚約者と仲が良くて、羨ましい限りだ。


ルージュとシーニーはこんなだし、アーテルもジョーヌに夢中だ。……リュイの新しい婚約者は子供だが、元婚約者と離別をしたばかりのリュイには、それがちょうど良いらしく、微笑ましい手紙をやり取りして、癒されている。


一方の私は……。


そう考えて、私は思考を止めた。


そうだ……立場から解放される留学は、ローザとの関係を見直す、良い機会になるかも知れない。


「シーニー、悪いがローザも一緒に留学に行けないものだろうか?」


私がそう言うと、シーニーは「確認してみましょう。」……そう言って席を立った。









【解説&設定】


ヴァイス→お姉様方に囲まれてて、女性ばかりの中で可愛がられて育ってます。その為、感覚が女性的。汚いのとか下品なのは大嫌いで、やや神経質。


ルージュ→早くに母親は死去。父親と部下である騎士達(男性ばかり。)に可愛がられて育ってます。ガサツで下品だが、大らかなタイプ。


アーテル・リュイ→ひとりっ子で両親が仲良くないので使用人である乳母に育てられてますが、周りには男性もいたので、まあ普通。感覚はややヴァイス寄り。


シーニー→両親の仲が良く、一番普通な育ち方をしています。父親はヤンデレ気味で病弱な母親を溺愛してます。弟がいるので、実は感覚はルージュ寄り。父親譲りのヤンデレと長男気質で、手間がかかる奴のお世話に喜びを感じるダメ人間製造機。


ちなみにラランジャが気が利くのは、養子に来る前は、両親の仕事を手伝ったり、沢山いる弟や妹のお世話をしてきたからと言う設定です。


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