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ジョーヌ、お節介をやく?!

授業が終わると、私はルージュ様を確保して、いつも水やりをしている花壇に向かった。


「おい、ジョーヌ、何だよ?……花壇に水は朝のうちにもうやったろ?……花の手入れをするならリュイも呼ぼうぜ?」


「水やりは口実です。……実は、ルージュ様と2人でお話ししたかったので……。」


私は辺りを見回し、人がいない事を確認すると、そう切り出した。


「なんだ?愛の告白か。……とうとうジョーヌは俺に惚れてしまったのか……。……すまない。俺にはラランジャという美人で気の利く素晴らしい婚約者がいて、愛しているからジョーヌの気持ちは残念だが、受け取れない。」


……。


勝手に決めつけて、勝手に失恋させないでくれませんかっ!……地味にイラッときます。


「違います!!!……ルージュ様に告白するのに2人きりになった訳じゃありません。その、相談って言いますか……。」


「え?相談?……アーテルと喧嘩でもしたのか?そうだなぁ……。仲直りしたいなら、乳でも揉ませてやれば良いんじゃないか?速攻でご機嫌になるぞ。男なんてのは、女の子の胸を揉むだけで幸せになれる、しょうもない生き物だからな。……そもそも、ジョーヌは良いモノをお持ちだし?」


ルージュ様はそう言って、私の胸元に視線を送った。

……最低です。


ラランジャが会話を諦めて、勝手に色々と話を進めちゃう気持ちが、ちょっと分かった気がするよ!!!


「揉ませませんよ!!!……そもそも、アーテル君はしょうもない生き物なんかじゃありませんし!」


「いやいや、アーテルだって男だ。しょうもないに決まってるだろ?……だから、ちょっとくらい揉ませてやれって。別に減るもんじゃねーだろ?……それによ、肩なら揉まれたいんだろ?この間、肩こりが酷いからマッサージ受けたいってリュイと話してたよな?……肩が良いなら、胸だって良いだろ。繋がってるよな?」


「そういう問題じゃありませんって!」


どーしてそうなるのよ、ルージュ様っ!!!

そんなんだから、ラランジャと両思いになれないんだよ?!なんて言うのかな、圧倒的なデリカシー不足だよ!


「……あ!もしかして、ジョーヌは恥ずかしいのか?それならアレだ『上半身をマッサージしてぇーん?』みたいに、ソフトに甘えて言ってみたら良いんじゃないか?……うむ。我ながら紳士的で完璧なアドバイスだな……。」


どこに紳士がいるのでしょうか。

少なくとも目の前にいるルージュ様は違うと思います……!


「マッサージとか、そいう下ネタ系の話はいいんですっ!」


「マッサージは下ネタじゃねーだろ?……そもそもジョーヌとリュイが、対岸の街にマッサージ店がオープンしたから行ってみたいとか騒いでいたんじゃねーかよ!」


「それはそうですけど……。」


だってさ、肩こりって、本当に辛いんですからね?


私もだが、リュイ様も酷い肩こりらしく、酷いと頭痛までするそうで、私とリュイ様は肩こり解消ネタや、マッサージグッズの話題なんかで盛り上がる事が多かった。


そして先日、対岸の街に『肩もみ庵』というマッサージ店がオープンしたらしく、行きたいねって話していたのだ。

ルージュ様は肩こりってナニ???ってタイプらしく、肩を揉まれる気持ち良さが、理解出来ないらしい。


「まあ、アレだ。リュイは本当は目が悪いのに、見てくれを気にしてか眼鏡をかけねーから凝るんだよ。……ジョーヌは……デカいからな……。」


「!!!……違います!私も疲れ目です!もう、胸から離れましょう?……私は、ラランジャの事を話に来たんです。お昼に聞いて……2学期にアキシャル国に留学したいって!」


「……その話か……。」


ルージュ様はそう言うと、ニヤニヤ顔を引っ込め、花壇の側にあるベンチに座ろうと私を促した。



「ラランジャは将来、私の側近になるのに、何故かアキシャル国に行くのが有利だって思ってて……。」


「まあ、それはそうだろな。」


「???……何でですか?」


「それは……気にするな。……アレだ。お前の両親がアキシャル国の生まれだから、イメージ的なもんだ。」


私って、そんなにアキシャル国のイメージあるのかな?


……まあ、良いや……。


「それで、アーテル君と結婚した私の側近になって、メッキって悪く言わせないって。……留学する王子様のフォローもしておけば、私とアーテル君が結婚しなくても、王子様が重用してくれるかもしれないから、行きたいって……。アーテル君まで『良い考えだし僕からも推薦するよ!』とか言っちゃってて……。でも、ルージュ様は反対してるんだよね?」


「ああ、まあな。……俺はラランジャがメッキだろうが、何だろうが気になんかしない。言いたいヤツには言わしときゃ良い……。……しかし……本気で行く気なのか、アイツ。そんなつまらない事の為に、何ヶ月も遠い国へか?」


やっぱりルージュ様は不満顔だ……。


だよね。


ルージュ様は気にしないって言ったら、そんな事は本当に気になんてしないのだ。ラランジャがメッキって言われても、『それが何だ?』としか思わないのだろう。


そう、問題はココ、だよね?!


「……ラランジャは賢いから、すごく先まで考えているんです。ルージュ様と結婚して、その子供まで馬鹿にされるかもって心配してるんですよ。」


「そう言えば、ラランジャが、そんな事を言ってたな……。」


「ルージュ様が良くても、2人の子供はどうなんでしょう?どんな性格の子が授かるか分からないのですよ?……大人しかったり、繊細な子なら悲しむのでは???」


私がそう言うと、ルージュ様は「うーむ?」と考え込んでくれた。


「確かに……俺は気にしねーけど、自分の子供がつまらん事で傷付けられんのは、腹立つな……。」


「そうですよね!」


良かった!

ルージュ様に、ラランジャの懸念事項がちゃんと伝わった!


これで、ラランジャが留学しても揉めたり拗れたりしないはず!!!


「うん。……反対してたけど、ラランジャの気持ちが分かった気がする。アイツ、子供好きだし、そういうの嫌なんだろうな……。よし、そうしたら俺、ちょっと話してくるわ!……シーニーと!!!」


……え???


「なっ、何でシーニー様???」


話すなら、ラランジャでは?!


「シーニーが留学に行くんだよ。ヴァイスの付き添いでな。……だから代わってくれって言ってくる。ラランジャは美人だし、アキシャル国の奴らだって、惚れるかも知れないだろ?ヴァイスは結構な我儘男だし、手助けしてやらねーとな!……だから、俺が行く。俺らの未来の子供の為にやる事なんだからさ?」


……そ、そっかな???


ルージュ様が行って、ラランジャの手助けになんか……なるのかな?!?!


シーニー様は紳士で細かな事にまで気が付くし、王子様の扱いにも慣れている。気が利く2人が協力し合えば、王子様にとっては快適だろうし、シーニー様もラランジャも負担が少ない気がする。


……シーニー様はお願いすれば、ルージュ様の婚約者であるラランジャに変な虫が付かないよう、見てくれるだろうし、そもそもラランジャはしっかり者だ。そう簡単にルージュ様への気持ちは揺らがないと思うんだよね???


「えーと、ルージュ様が行く必要はないのでは?」


「何でだよ。俺が嫁と協力して、未来の子供を守るって、アツいだろ???」


「アツい……ですけど。」


何か……余計なお節介をしてしまった気がしてならない。


「ヴァイスはよ、あー見えて末っ子長男だから、甘えた所があるんだよ。勉強は得意だけど、何ていうか少し現実離れしてるトコあるしな。……細かい事はシーニーに頼りっきりで、それが当たり前だと思ってんだ。多分だが、ヴァイスは食券の買い方も知らねーぞ?」


「え?」


食券って、カフェで使うヤツだよね?

職員室の一角にある窓口で買ってくるヤツ???


「それだけじゃない。あいつ、ペンやノートすら自分で買った事なんて無いはずだ。……『シーニー、ノートが切れたのだが、用意してくれ。』なんて、頼むのを見たのは一度じゃねぇかんな。……ヴァイスの『お買い物』は、部屋に商品を見せに来てくれるのを手に取るのをソレだって思ってるんだよ。」


「え、え、え???……そ、そうなんですか?」


「買い物なんかは例だ。他にも色々あるんだぞ?……せっかく学園生活して、王族としてじゃなく、ヴァイスとしてみんなに混じって暮らせるのに、そういうのはしねーで、雑務はみんなシーニー頼みなんだよ。……シーニーは……手がかかるヤツの世話を焼くのが好きだろ?ヴィオレッタなんかもそうだ。ヤンデレなオカン属性なんだよ。……俺は少し、ヴァイスにはシーニー断ちが必要だと思う。」


……た、確かに。


それじゃ、王子様が皆んなに混じって学園生活を送っている意味が減るかも。……普通の人がしている暮らしを体験させたいから、王族なのにこの学園に来てるってのもあるのだろうし……。


「話すのも、俺らばっかだ。……もちろん、側近として変なヤツを近づけないようにしなきゃならねーが、もう少しくらいクラスのヤツらと話しても良いだろ。……いつもヴァイスはシーニーにべったりで、幼馴染の俺たちとしか話してねーだろ?……今やアーテルの方がマシだよな。クラスのヤツに勉強を教えてやったりしてるし……。……このままじゃ、せっかくの学園生活がもったいなくないか???」


「言われてみると……王子様がクラスの子と、軽い話をしてるのすら見たこと無いかも……!」


「ああ。……変なヤツに取り込まれたら困るから、俺たちが脇は固めてる。だけど、クラスのヤツと話すのくらいはしても問題ないんだ。だけどヴァイスはそれもしないで、ツンと澄ましてる。……そして、クラスのヤツに用事がある時はシーニーに言わせるんだ……。なんかさ、ダメだろ?」


……う、うーん???


王子様!!!って感じではあるけど、確かに……ちょっとくらい学生らしく暮らしても良いかもって気はするかな?


「だからさ、この留学を機会にヴァイスにはシーニー断ちをさせ、俺は頼れる男として、ラランジャを助けて惚れさせる。……なあ、ジョーヌ、素晴らしいアイディアだろ?」


……そう……かも???


私は一抹の不安を覚えつつ、ルージュ様の言葉に頷いた。







時間は不定期ですが、土日は更新予定です!

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アーテルの元婚約者、ヴィオレッタが主人公の前日譚はこちら↓↓↓
短編「悪役令嬢に転生したけど、心は入れ替えねーよ。だってヒロイン、マジムカつく!」
もし気になりましたら、こちらもよろしくお願いします!
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