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ラランジャ、留学を決意する?!

「……え。アキシャル国と交換留学?」


授業が始まって数日が過ぎた昼休みに、アーテル君とランチを食べていると、ラランジャがチラシを持ってやって来た。

……どうやら2学期の間だけ、アキシャル国への短期留学生を各学年から3名ほど募集するらしい。


「うん。……そうらしいよ。アキシャル国って、いろいろ進んでる代わりに、魔術が廃れてるでしょう?うちの国は魔術に頼ってるせいか、イマイチ遅れてるし……。だから、交換留学させようって事になったみたい。2学期の間だけだから、超短期の留学になるけどね?……それで、希望者を募っているんだって。」


「ああ、国王が直々に主催するヤツか……。アキシャル国は大国だから、うちとしては仲良くしたいんだよね?……魔術がさかんな国は珍しいし、魔術学園の生徒を送り込んで、存在感をアピールしたいんじゃない?……確か、ヴァイスが行くのは決まってたはずだよ?多分、側近のシーニーあたりも行くだろうから、僕らの学年は実質はあと1人かな……?」


アーテル君はチラシを眺めながら、そう言った。


へえ……そうなんだ……。


交換留学する先は、アキシャル国の王立学院だ。

私が行きたかった、薬師を養成している学校でもある。


「ジョーヌは希望者する?……行きたかったんだよね?この、学校。」


「……う、うーん。……アキシャル国ってさ、父さん母さんのルーツだから、一度行ってみたかったけれど、今は薬師を目指してないし、そもそも短期じゃ薬師になるのは無理だと思うんだよね?……それに卒業までに、治療の魔術はモノにしたいから……あんまり、そそらないなぁ?」


ラランジャに尋ねられて、そう答えると、アーテル君がちょっと嬉しそうに聞いてきた。


「え?……ジョーヌちゃん、アキシャル国に行くのやめたの?」


「やめたって言うか……。治療の魔術が出来れば、お薬はいらないかなぁ……って。いやね、我が家的には治療できる魔術師さんは、ライバルみたいな感じなんだけどさ、お薬より効くじゃない?……だからもう、留学とかいいかなーって思ってるんだよね?」


「……あ、そう。僕と結婚する気で、やめてくれたのかと思った……。ちょっとガッカリかな?……僕はジョーヌちゃんが、好きだから、そうだったらすごく嬉しいのに……。」


アーテル君はそう言って、サッと顔を赤らめた。

詐欺師とは演技力もすごいらしい……。


「今の私は治療の魔術に夢中だし、治療の魔術は学年末にある認定試験に受からないとだから、留学してる暇はないよ。……あっ!そうだった!……アーテル君、私も好きだよ?!」


私とアーテル君が話していると、ラランジャが「ふへぁ〜。」と、ヘンテコな溜息を吐いた。


「ねえ、何でイチイチ愛の告白を挟むの?マイブーム的なもの?……それとも私に見せつけてますか???」


「……ラランジャさん、これはジョーヌちゃんがお嫁さんになる為に必要な事なんだ。好きって言えば言うほど、好きになる……暗示みたいなモンで、お互いにYESを言わせ合って、目指せレッツ両思い!って作戦なんだよね?」


アーテル君がこうなった経緯を説明すると、ラランジャは首を横に振った。


「暗示ですか……。アーテル様は相変わらず、斜め上をいきますね……。ジョーヌはさ……それ、もう慣れちゃったの?」


「う……うん……。」


最初はさ、居た堪れない程に照れまくったが、愛の告白も四六時中されていれぱ、段々と慣れてしまうもので……。


今や挨拶代わり???


……うーん???


これで本当に良いのかな???

アーテル君って、本当に暗示にかかってくれてる???


「……前から思ってたんだけど、ジョーヌってさ、適応能力が高すぎるよね?……意外とどこでもやってけるタイプなのかも。」


「そ、そうかな???」


あれ、私ってばラランジャに褒められてる???

なんだか、ちょっと嬉しくて私はエヘヘと照れ笑いを浮かべた。


「え?……それはダメ。ジョーヌちゃんは何処かでやってかないで、僕とやって行こう???……まあ、適応能力高すぎは否定しないけど。……ジョーヌちゃんて、何でもすぐに慣れちゃうからさ……。」


アーテル君はそう言って、深い溜息を吐く。


「そうみたいですね……。アーテル様の方が慣れない感じですね。」


「ん……。そりゃ、さすがに照れるよね?」


「……策士、策に溺れる……そんな雰囲気なのでしょうか。ジョーヌの適応能力が高いのも考えモンですね。……それはさて置き、私、この留学生に希望を出してみようと思うんですよね?」


ラランジャはそう言って手を伸ばして、アーテル君からチラシを受け取る。


「「え……?」」


私とアーテル君は、ポカンとラランジャを見つめた。


ラランジャは、留学とか、あまり興味が無いタイプかと思ってたけど……???


「……私って……結局はメッキじゃない?……学園で必死になって頑張っても、やっぱり言う人からは言われるんだよね。……だから、これで良いのかなって、考えちゃってて……。」


「ラランジャさん、それは僻みとか妬みで言ってるだけじゃないかな?……君はどんどん洗練されて来てるし、ジョーヌちゃんが体験学習した時も、色々とフォローしてくれたよね……?マナーも、申し分ないし……。そいつらは、優秀な君を僻んでいるだけだよ。」


「そうだよ!ラランジャはさ、メッキじゃないよ!だって剥がれないもの!!!」


ヴィオレッタ様みたいに……!!!……とは、さすがに言えない。


ラランジャは、アーテル君の言うように、学園生活を送って貴族の子たちと交流したり、社交界で経験を積んだりするうちに、どんどん洗練されていった。

……本当に生粋のご令嬢と並んでも遜色無い程に……。


体験学習の時も、私が『これで大丈夫かな?』って分からなくなってビクビクしてる時に、何度も助けてくれた。


「でも、いくら頑張っても、メッキはメッキ……なんだよね?……私が養子なのは変わらない事実だし。」


「ラランジャ……。」

「ラランジャさん。」


「2人とも、そんな顔しないで???……それは事実だし、意地悪を言ってくる人は、絶対に居なくならないの。だから私が言われるのは平気なんだ。……だけどね、私と結婚したルージュ様や、いつか生まれてくるかも知れない子供まで、そんな事を言われて馬鹿にされるのは嫌だなぁって思うから……それで、留学してみようって……。」


ラランジャは淡々とそう言って、チラシを見つめた。


「これって、国王による鳴り物入りの企画なんでしょ?……交換留学を期に、アキシャル国との仲が深まれば、短期であれ、先駆けて留学していたアドバンテージは大きいと思うんだよね?……きっと、親善大使扱いしてもらえる。そうしたら、ジョーヌの側近にもますます相応しいってなるし、そうなれば誰も表だって悪くは言えないわ。」


「ちょ、ちょっと待って?!……わざわざラランジャが留学してもさ、私がアーテル君と結婚すると決まった訳じゃないんだよ?!……それに、なんでアキシャル国の親善大使だと、相応しいってなるの???」


ラランジャって天才だからだろうか?

理論が突飛すぎてついて行けないよ???


アーテル君は未来の大公様だ。実質、将来はこの国のNo.2になる。……もし、私がアーテル君と結婚したら、大公夫人って事になるから、その側近を悪く言うのは出来ない……ってのは、まあ分かる。


でも、何でそこにアキシャル国が絡んで来るんだろう?


「……ジョーヌ、深い事は気にしないで。留学経験が大切って事よ。」


「ん……。そうだね。アキシャル国は大国だから、そこと繋がりがある人は大切にしたいって事だよ。ね、ラランジャさん?」


「はい。……それに、ヴァイス殿下も行かれるでしょう?同行して、もしもお役に立てれば、ジョーヌがアーテル様のお嫁さんにならなかったとしても、ヴァイス殿下に重用してもらえるかも知れない。……私、気を利かせるのはちょっと自信があるしね?!」


そ、それはそうかもだけど……。


「そうだね。……僕的には、ジョーヌちゃんを絶対にお嫁さんにする気だけど、ヴァイスで保険をかけとくのは賢いかもね。……それに、ヴァイスは立場上、弱みを見せられない所があるから、口に出さないでフォローしてくれるラランジャさんが一緒だと、助かるだろうしね。……シーニーも側近としてのフォローは上手いけど、生活面では女性の細かな気遣いがあると、ありがたいと思うよ。……あ、僕からも推薦してみようか?」


「ありがとうございます、アーテル様!」


「ん。……その代わり、ジョーヌちゃんが僕の奥さんになったら、その気遣いをジョーヌちゃんに、よろしくね?」


「もちろんです!!!」


何だかどんどん話が決まっちゃう……。

2人って、意外に息ぴったりなんだよね?天才型同士で気が合うって言うのかな……?!


で、でも!!!


「ちょ、ちょっと待ってよ、ラランジャ。ルージュ様は?……ちゃんと、ルージュ様は相談したの?!」


ラランジャは、ルージュ様が大好きで、その為に行動している割に、その辺は言葉足らずなのだ。ルージュ様がぶっきらぼうで話を良く聞かないから、余計にそうなってる。……それもあるせいか、2人は両思いなのに、イマイチ進展していない。


「うん、したよ?……ルージュ様には相談した。……結婚して、ルージュ様や子供を馬鹿にされるのは絶対に嫌だから、アキシャル国に留学したいって話したの。」


「そ、それで……?」


「もちろん、反対されたわよ。『俺が、そんな事は絶対に言わせないし、もし言われたとしても、俺は気にしない!だから、行くな!』って。……でもさ、たった数ヶ月よ?それでルージュ様や子供を中傷から守れるようになるなら、行くのが良いに決まっているじゃない?……ルージュ様は単純だから、よく分かってないのよ。」


……え、えーと……これは拗れる系では???


「まあ、それはそうだね。ルージュはラランジャさんと違って、思慮深くないから、心配して反対してるだけだろうね?……でも、なんか意外だな?ジョーヌちゃんの口ぶりだと、なんだかジョーヌちゃんも、ラランジャさんが留学するのに反対みたいに感じるけど?」


「私は、留学するのは良い経験になるだろうし、アキシャル国は平和な国だと聞くから、留学そのものは心配はないと思ってるよ!……でもね、ルージュ様とちゃんと話して決めるべきだって思うの!……反対してるから止めなよって事じゃなくて、婚約者なんだから、ちゃんと説得して理解してもらってから決めないとダメって言いたいの!!!」


短い間ではあるけれど、離れ離れになっちゃうし、そこはやっぱり2人で良く話し合うべきじゃないかな?ルージュ様とラランジャ、2人の将来の為なら、なおの事……!


「……えーっと?ジョーヌ???……アーテル様という立派な婚約者がいながら、アキシャル国に留学しようとしてたジョーヌには、言われたくないかも???」


「全くその通りだね、ラランジャさん。それに、ラランジャさんは側近になる決意までしてくれているのに、肝心のジョーヌちゃんがまだ僕のお嫁さんになるのを悩んでいるなんて……おかしな話しだよ。」


いやいや、おかしくないよ?!

……それに、何で私が責められるのかな?


確かにそんな事もありましたが、今やジョーヌは改心?しましたからね?!?!


私は盛り上がっている2人をよそに、お節介ながら後でルージュ様と話そうと心に決めた。








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