悪役な令嬢ヴィオレッタの考察◇ヴィオレッタ視点◇
更新遅くなりました!
しかも短いです。ごめんなさい!
部屋に戻った私とアーテルは、至急で作戦会議に移った。
「アーテル、思った以上にジョーヌはお酒が弱くてビックリなんだけど?……弱いっていったって……あれ、ほぼジュースよ?」
「……ん?それが可愛いんだよ?馬車でもクッタクタでさ、シーニーさえ睨んでなきゃ、お持ち帰りしたかったくらいだったよ……。ヴィオレッタとは体質からいって、可愛さのデキが違うんだよねぇ……。君って、いくらでも飲めるウワバミなんでしょう?」
……クソ、いちいちムカつく男だな!!!
「……。まあ良いわ。そろそろ夜這いに行きましょう?」
私は既に書いてある魔法陣を取り出して、確認の為にアーテルに見せる。間違ってる気はしないけど、ダブルチェックは必要よね?
アーテルは暫く私が書いた魔法陣を眺めると、「僕ならここはこうするね。」などと言い始めた。
「あのさ、魔法陣なんて、使えれば問題無いわよね?!」
「はあっ?!無駄は省いた方が効率的だって、アドバイスしてあげてるんだろ?!ヴィオレッタってさ、素直さがないから、可愛げってモノをまるで感じないよ。」
「余計なお世話よ!!!別にアーテルに可愛いなんて思っていただかなくて結構よ。……それにね、私はアーテルの可愛い『ジョーヌちゃん』みたいに、アーテル好みに仕込まれていませんからっ!!!」
私はアーテルを睨みながらそう言って、魔法陣をその手から奪い返す。ホント、クソムカつく……。
「ええっ!!!分かる???……ジョーヌちゃんにはさぁ、僕の好みばかり、教えてあげてるんだよねぇ……。」
嬉しそうにそう言って目を細めたアーテルを、私は気持ち悪いモノを見るような目で見つめた。
……貴族社会も魔術も何も、知らなかったジョーヌに、手取り足取り教えて、自分の好み仕込んで育て上げるとか……お前は光源氏かよ!!!ジョーヌが紫の上なんかい!!!……紫って言ったら私なんだぞ!!!……まあ、アーテルの好みになんかなりたくもないがなっ!!!
……と、心の中で突っ込むが、残念ながらこの世界では源氏物語を知る奴は居ない。こちらの世界には、微妙に向こうの知識が混ざっているので、風習や古い言い伝えなんかが使われていたりはするが、紫式部はこの世界に居なかった。
……だから黙っているしか無いけど……。
でもっ!!!アーテル……無茶苦茶、キモいっ!!!
よく分かってない上に、妙に素直なジョーヌの事だ。
アーテルが教えた事をハイ、ハイと素直に聞いて、言われるがままに身につけて行ったんたろう……。
そりゃあ、自分好みに育てた女の子だもの、可愛いに決まってますよね?!?!
それにあの胸……。
あれは良いモノだった……。
私は手に残った感触を思い出し、手をニギニギさせながら、帰りの船でもうひと揉みさせていただこうと心に決めた。
「……ねえ、ヴィオレッタ、変な事を考えてないよね?」
「え?」
「まさか、また僕のジョーヌちゃんの胸を、どさくさに紛れて揉む気なんじゃない?」
「……。別にアーテルのモノじゃないわよね?あれはジョーヌのモノよ?ジョーヌが良いと言うなら、私が触っても良いじゃない。……アーテルの許可は必要なくってよ?」
アーテルはムッとした顔で私を睨む。
……てか、私といる時のアーテルは、この顔がデフォルトだけど。
「どうせ、上手いこと言って、ジョーヌちゃんを騙して触る気なんだろ?……最低だよ。」
「はあ?……私はアーテルみたいにジョーヌを騙したりしません!!!正々堂々と『揉ませろ!』とか、『触らせて!』とかって言ってますぅ!!!……それにね、夜這いする方が、圧倒的に最低だと思うけど?!……無理矢理に既成事実を作ろうとしてる男に、最低とか言われたくないんですけど。」
「違うって!既成事実じゃない!!!僕らは『旅の思い出』を作るだけだよ!……それに、無理矢理にならないよう、いい感じに誘導するから大丈夫なんだ……!」
いやいや、『旅の思い出』とか、よくもまあ綺麗に言ったモンだな。……そもそも『いい感じに誘導する』とか、明らかに大丈夫じゃねーだろ、ソレ。
「……ますます最低。なんか一緒に行って、アーテルに加担する気がなくなって来たわ。」
私がそう言うと、アーテルが焦った様な声を上げる。
「ちょっと待ってよ!……でもね、ヴィオレッタ?君こそ大丈夫なの?!」
「……なにがよ。」
「さっき、ロビーでジョーヌちゃんたちと別れた時……シーニーは、酔っ払ったジョーヌちゃんを支えながら部屋に戻ったんだよ?……シーニーもかなり酔ってたからね、アレ?」
そりゃ、そうだろ。
襲いに行くのに、たくさん飲ませたんだもの……。
「だから、それがなんなの?」
「シーニーが支えてる腕に、ジョーヌちゃんの胸が当たってたかも?……シーニーだってさ、あれはクラッときちゃうんじゃない?」
!!!
目を見開き、アーテルを見つめる。
……シラフでかつ女の私すら、あれは良かった。……シーニーだって酔っ払っていたら、揉みたくなる可能性は非常に高いのでは無いだろうか?……登山家とはそこに山があるから登るのだという。つまり……そこに胸があったら、揉むのでは無いだろうか?!
「急ぎましょう、アーテル!!!……『旅の思い出』とやらは、急速に必要だわ!」
「ん、そうだよね!……えっとね、この魔法陣の有効時間は10分間なんだ。発動させると僕たちの存在感が極めて希薄になる。僕らの寝室の外と部屋の外には護衛がいるから、ジョーヌちゃん達の部屋もそうなってると思うんだ。……つまり、10分以内に僕はジョーヌちゃんの寝室に、ヴィオレッタはシーニーの寝室に忍び込まなきゃいけないって事になる……。分かった?」
「分かったわ。……ねえ、帰りはどうするの?……この陣をまた書くのは大変よね?もう一枚書いてから行く?」
「はあ?そんなの必要ないよ。……朝まで一緒に決まってるだろ?甘い夜明けを過ごすのも『旅の思い出』の醍醐味のうちだからね?……それに、バレてシーニーが騒いで怒ったところで、起こってしまった事は覆せない。つまり、開き直ればいいだけだろ?」
本当にコイツ……最低だな。
……私といい勝負かも知れない。
あ!!!
だから、決定的に気が合わなかったのか?!
私とアーテルは、お互い自分のベッドに枕を入れて、まるで布団に潜り込んで寝ているように偽装すると、魔法陣を発動させ、2人の部屋へと急いだ。




