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ジョーヌ、悲願達成?!

あれから……アーテル君はピタリと私の部屋に来なくなってしまった。


ちょっと……。

言い過ぎちゃったかも……。


テスト勉強しながら時に思い出して、後悔したけれど、アーテル君の婚約者として、相応しくなる為に頑張っているんだし、とりあえずは結果を出してから謝ろうと決め、私は黙々とテスト勉強に励んだ。


……。


そして……テストが終わり、とうとう結果発表の日がやって来た。




◇◇◇




!!!


う、うそ……!!!


「や、やった!!!やったよ!!!……アーテル君、私っ、5位だよ!!!」


掲示板を見つめ、私は跳ね上がって喜んだ。

私の隣でアーテル君が、ポカンと順位を眺めている。


やっぱり総合1位はアーテル君だ。2位に王子様で、3位がシーニー様という順位も不動。だけど、4位がヴィオレッタ様で、私が5位に食いこんでいた!!!


「え。……ジョーヌ……ちゃん……す、すごい……ね。」


「うん!寝なかったから!!!テスト前は1日3時間しか寝なかったから!!!しかも椅子でしか寝てないから!!!」


寝なかったアピールになっちゃうのを、許して欲しい。

つまり、そのくらい頑張って勉強したんだよって事だ!


「あー、だからクマが酷いんだ……。」


アーテル君がマジマジと私を眺める。


……い、いや、そんなにジッと見ないで???


多分、相当にボロボロだよ、私???


お風呂だって、眠気覚ましにザッとシャワーを浴びるくらいで、よく洗ってないし、下手したらちょっと臭いかも???


それを思い出し、私はちょっとだけアーテル君から離れた。……だって、好きな人に臭いって思われたくないしさ。


あ、そうだ!謝らなきゃ!!!


「あの……。アーテル君。テスト前は、ごめんね?私、あんまり寝てなくて、イライラしちゃってて、酷い事を言っちゃったよね……。……許してくれるかな?」


「いや……。あれは、僕の方が悪かったよね?僕が、ジョーヌちゃんにしつこくしすぎたのが悪かった。僕の方こそごめん。……それに、ドレスや冬休みの話も勝手に進めて……。」


「うううん。……ドレスは私の為にって、アーテル君が一生懸命に考えてくれてたのに、素っ気なくして、本当にごめんなさい。外交の話も、考えたくなくて先延ばししてしまって……。色々な方が関わる話だし、早くお返事すべきだったんだよね。私、我儘だったし、余裕がなさすぎで……。本当にごめんね。」


成績が悪いままでは、婚約破棄される可能性もあった訳で……外交なんかで、私が代理をつとめてよいのだろうか?なんてのを考えると、頭がグチャグチャになりそうだった……。だからその事は、一番考えたくなくて……。


それもあったから、国外に行く話をサラッと決めてしまったアーテル君に、ついカッとなって、酷い事を言ってしまったんだよね……。まあ、寝不足のイライラもあったけど。


頭を下げると、アーテル君がそっと手を握ってくれた。


「いや、そんな事ないよ。我儘は僕の方だ。謝るのも試験が終わったらって思っていたのに、先を越されちゃうし……情けないね、僕。……成績、素晴らしかったよ。すごく頑張っていたんだね。……なのに邪魔して、ごめん……。」


「へへへ……。じゃあ仲直りしてくれる?」


「うん。もちろんだよ!……それにしてもさ、ジョーヌちゃんがこんな上位に来るなんて、ビックリだよ。……僕、ヴァイス、シーニー、ルージュ、リュイ、ローザ、ヴィオレッタの7人は、幼少期から英才教育を受けてきてるんだ。だから、普通ならいくら頑張っても、8位が最高だって思ってた。この学年では8位でも、他の学年だとトップクラスの成績になると思うからさ……。なのに、5位に食い込んでくるとか……正直、すごく驚いちゃったよ。」


「……え。」


……ちょ、ちょっと待って……。

それ……私、良く分かってなかったかも。


「……え、英才教育???」


「あのさ、僕らは下手したら生まれた時から、魔術も礼法もやって来てるの。……ルージュだって、僕らの中では脳筋バカ扱いだけど、学年が違えばさ、首位にいてもおかしくない成績なんだよ?」


「そ、そうなの……???……でもさ、ラランジャは???ラランジャだって、貴族社会に連れて来られて数年だよね?それでもいつも10位より前にいるし、ルージュ様を抜いたりもしてるよ?」


「……ラランジャさんはさ、魔術に関しては天才型っていうか、センスや勘がいいし……。それに彼女はね、魔力の高さもだけど、知能の高さも買われて養子に入っているからね?」


?!?!?!


「あのさ……アーテル君?私ね、ずっと成績が真ん中にもなれずに悩んでいてね……?必死で頑張っても、手答えがあってもダメでさ、秀才キャラとは言い難いよなーって……。」


「えっと……?僕らの学年での真ん中は、他の学年だとトップクラスになると思うんだけど?……僕はジョーヌちゃんは頑張ってるし、凄いって、ずっと言ってきたよね?……それに、英才教育を受けてきたルージュやリュイと同じ班で、対等に学園祭で発表したり出来るって、それだけでも凄い子だなって、みんなからは思われていると思うけど???……今でも充分すぎるくらい、秀才キャラじゃないかな?」


……。


ここ数週間、私はお風呂にすら浸からず、椅子で寝て、最後はもう、オムツをしようかと真剣に悩むほどに時間を惜しんで勉強をしてきた。


も、もしかして、ここまで頑張らなくても、婚約破棄……されなかったって……事?!?!


え……!!!


なんか、ドッと疲れが出た気がする……。


「アーテル君。……私……なんか、すっごく疲れたよ。」


「あっ、そうだ!……テストも明けたし、仲直りもしたしさ、今夜はゆっくり部屋で夕食にしない?午後の授業が終わったら、明日はクリスマスパーティーがあるだけだしさ。……ここのところ僕、全然ジョーヌちゃんとゆっくり話す事も、スキンシップをはかる事も出来なくてさ、なんだか悲しかったんだよ。」


「……それはさ、私もだよ!」


私だってお勉強しながらより、アーテル君とお話しながらゆっくりと、ご飯食べたかったよ?


「ね、とりあえず仲直りのハグしてもいい???」


「うげっ!!!……それは……ダメ。」


「え、何で???」


アーテル君はショックを受けた顔で固まっている。


だ、だけどさ……お風呂にちゃんと入っていないから臭いかも……とは、さすがに言いたくないし、言えない。


「寮に帰って、お風呂に入って……それからがいい。それで、夕飯の後に、ゆっくりそういうコトしよう???」


髪もお湯で流しただけだったり、シャンプーも雑にしただけだ。ベタベタはしてないけど、頭皮は多分……いや、確実に臭いと思う。アーテル君は、抱きついてくると、私の頭に顔を埋める習性があるから、ここはなんとしても、乙女として回避せねば!!!


「えっと……夜に、ゆっくり……?」


「そう。ダメ???明日のパーティーは夕方からだし……今夜は、ずーっと一緒に……って、どうかな?」


ご飯を食べたら、サボっていたピラティスしてもいいし、アーテル君とおしゃべりしたり、カードゲームしたりして、ちょっと遊んだりもしたい!……ずーっとお勉強ばっかりだったから、ジョーヌは深刻なアーテル君不足だよ?


「今夜はずっと一緒に……。な、なるほど。……ダメではない。ものすごく、良い提案だと僕は思います!……今夜は寝かさないよ?って事でしょ?」


いやー……、さすがにアーテル君不足だとはいえ、徹夜で遊ぶ元気はないよ???


だけど、あまりにアーテル君が目を輝かせてそう言ったので、私もニコニコと頷いた。




◇◇◇




「奥様、お風呂を用意いたしました。」


学園から戻り、部屋で制服から着替えて、机からアーテル君の部屋に持って行くトランプを引っ張り出していると、アーテル君のところのメイドさんがやって来て、そう告げた。


「ありがとう。」


「いえ。アーテル様より、お支度を手伝うよう申し使っております。」


部屋で夕飯食べてゲームするだけなのに、いちいち大袈裟だなぁ。……そういうのは明日じゃないのかな???


でも、疲れてるから、お風呂を準備してくれたのは、嬉しい!


私はイソイソとバスルームに向かった。


……バスルームには、とても良い花の香りが充満している。


「うわぁ……。凄く良い香り……。」


「はい。お風呂に香油を入れてあります。アーテル様が是非にとおっしゃいまして。」


「……へえ?」


あ!

もしかして、ちょっと臭かったのかな、私……???


うげ……。それでの香油???


だとしたら、相当恥ずかしい……。

さっさと入って、よーく洗おう。


「ごゆっくりどうぞ。……お着替えはこちらに準備してあります。」


メイドさんはそう言うと、カゴに入ったバスローブみたいな物を脱衣所の棚に置いた。……えっと……これからご飯食べるのにバスローブって……???


「あのー。ご飯も食べますし、部屋着に着替えようかと?」


「お風呂上がりに、マッサージさせて頂きます。」


「えっと、それは、明日じゃないの?」


晩餐会とかパーティーの前にはマッサージとかされてるけど、今日はやらないよね???


「明日もですが、今夜も奥様を磨かせて下さい。」


「うーん……。」


せっかくノンビリ出来るのに、ゴリゴリ揉まれたくないよなぁ……。結構、痛いんだよねぇ、あれ。


「やらなきゃ、ダメ?」


「……ダメではないですが……。」


「ご飯も早めに食べて、アーテル君と早くゆっくりしたいの……だから、お願い!!!」


私がそう言うと、メイドさんは笑って頷いて「では、夕食を早めに準備させます。マッサージはやめましょうか……。アーテル様も、お待ちかねですしね。」と言ってくれた。



「ふはぁ……。すごく良い香り……。」


久しぶりに髪と体をゆっくりと丁寧に洗って、私はお風呂にトプンと浸かった。


きっともう臭くないはず!!!


お風呂はぬるめで良い香りがして、肩まで浸かると蕩ける様な気持ち良さだ。


……そのまま、ゆっくり目を閉じる。


はぁぁぁぁ……。良い気持ち……。

ぬるめなのも、この香りも本当にリラックスできる……。


それにしても疲れた……。


……。


こんなに、ゆっくりするの久しぶりだよ……。


……。


はあ……。


……。


ふう……。




◇◇◇




……?!?!


「……え?……あ、あれ???」


ハッとして目を開けると、私はパジャマ姿でベッドに寝かされていた。


えっと……???


しかも、なぜか窓の外が明るくなっている……。


私……お風呂に入っていたはずだったし、夜だったよね???


「ジョーヌちゃん、おはよう。」


目を開けてキョロキョロしていると、不機嫌そうな顔をしたアーテル君が寝室に入って来て、そう言った。


……だからさ、ノックって文化を知ってますか、アーテル君よ。


でも……『おはよう。』……って???

まさか、朝???


「アーテル君???……あの……私???」


「ジョーヌちゃんはね、お風呂で眠ってしまっていたそうだよ。いつまでも出てこないのを心配したメイドが見に行って、寝てるジョーヌちゃんを見つけたんだ。溺れなくて良かったよ。いくら揺すっても起きないから、メイドたちが着替えさせてベッドに運んだんだ。」


「ええっ?!……そ、それはご迷惑を……。それにアーテル君も、ごめんね?夕飯食べたらゲームしようって思ってたのに、すっぽかしちゃったんだよね……。トランプも用意してたのにな……。」


私はガックリしながら、アーテル君に謝った。


ふと見上げると、アーテル君が口に手を当てて、呆然と私を見ている。


「どうしたの?」


「い、いや。……トランプ……。……僕、誤解してた?また勝手に進めて、怒らせるとこだった?……でも、お風呂って言ってたし……。」


アーテル君は考え込みつつ、ブツブツと言っている。


「お風呂?……ああ!そうそう、香油ありがとうね?……もしかしなくても、私が臭かったから、メイドさんに頼んでくれたんでしょ?テスト前から、ちゃんとお風呂に入ってなかったからね。……アーテル君は気付いてたんだね?臭いって思われたら恥ずかしいから、お風呂に入ってからアーテル君のお部屋に遊びに行こうって思ってたんだけど、バレてたのかーって、ちょっと恥ずかしかったよ。」


「!!!……それで?……うわぁ、早まらなくて良かった……。ある意味セーフ……。」


「ん?早まるって、何を???……でもさぁ、私が寝ちゃったのって、あの香油のせいもあると思うよ?責任転嫁は良くないけどさ、あれ、安眠効果の高いラベンダーの香りだよね?……さすがに、眠くなってきちゃうってば。……ほら、まだ香りが体に残ってるよ?」


私はそう言って、まだ良い香りの残る腕をアーテル君に差し出し、ラベンダーの香りをアーテル君に嗅がせる。


確かに風呂で寝落ちは酷いですが、そんな香油をお風呂に入れるよう指示したアーテル君もちょっとは悪くない?……まあ、疲れを癒してくれる気だったのだろうけどさ。


「……え。僕がお願いしたのは、ムードを盛り上げるイランイランだったはず。くそっ、やっぱりジョーヌちゃんを寝落ちさせる気で、すり替えられたのか。学園じゃ、厳しいんだな……。今回は僕の誤解だし、ジョーヌちゃんもお疲れだったから、結果オーライだけど……。やっぱり冬休みに国外に出る時が、チャンスだよね……。なんとか戻れない所まで持って行かないと……。」


アーテル君は顔をしかめ、ブツブツと何か言っている。


「???……どうかした?」


「いや、こっちの話だよ。……さ、そろそろ朝食にしよう?ジョーヌちゃんは昨日は夕飯食べてないから、しっかりめに用意させてるんだ!」


アーテル君はそう言って、ニコニコと笑う。

だから私も頷いて、朝の支度に取り掛かった。





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