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学園祭が終わり、テストがはじまる?!

学園祭がまた今年もやって来て、それが終わったらテスト期間に突入だ。


……私はハアッと溜息を吐いた。



学園祭は今年もなかなか上手く行った。


私たちは、またしても模型と魔術を組み合わせて、去年よりストーリーを重視したお芝居仕立てにして上演し、かなりの観客を集めたし、評価もすごく良かった。


……少しの間、元気が無かったリュイ様だけど、新たな婚約者が出来てからは、ちょっとだけ復活し、またしても素晴らしい模型作りに精力的に取り組んでくれたおかげもあると思う。


リュイ様の新しい婚約者は、まだ11歳の女の子らしく、「婚約者ってより妹が出来たみたいだよ……。」って苦笑していたけれど、その子もお手紙を書くのが好きらしく、頻繁に手紙のやりとりはしているそうだ。


特に、時々その子が描いてくる下手っぴなイラストがお気に入りらしく、この間「リュイ様」をモデルに書いたというイラストを見せてもらったけど……ものすごい画伯ぶりに、ルージュ様と、ひとしきり笑わせてもらった。(申し訳ないけど、さすがに顔から手が生えてるのは、笑っちゃうよ……。)リュイ様曰く、幼いのもあるかもなんだけれど、ちょっと天然気味の子だそうで、お手紙も話がなんだかズレてて、笑える感じなんだって。


もちろん、リュイ様に複雑な気持ちが無くなった訳じゃないと思うけれど……。


アーテル君とルージュ様に言わせると、前の婚約者は、とても大人しくて物静かタイプだったそう。でも、今度の婚約者は元気いっぱいの明るい女の子らしく……まるでタイプが違うし、相手が子供すぎるから、冷たくする事が出来ないのも、ある意味で良いんじゃないか?って言ってた。


いくらまだ、前の婚約者が好きでも……やっぱり、リュイ様にはちゃんと奥さんと幸せを目指して欲しいなって、庶民感覚な私としては思ってしまうのだ。だから、どうなるかは分からないけれど……私的には、いつか今の婚約者が大人になった時に……リュイ様がちゃんと彼女を大切な女性だって思えれば良いんじゃ無いかって思ってる。


……あ、そうそう。

学園祭の話だったのに、だいぶ脱線しちゃったよね。


……またしてもね、キーシー君とジョーヌの泥試合は大ウケしたよ。もはや、王子様と花形騎士の試合より観客が多くて盛り上がっていたらしい。(観客席にいたラランジャ談。)今年はヒミツ君がジョーヌの味方の『おしゃべり猫』として、私のピンチに乱入して、キーシー君のシッポに齧り付いてアンアン言わせて、そりゃーもう、大爆笑だったんだよね。


なんかさ……ジョーヌは完全なお笑いキャラだよ……。



そんな訳で、学園祭は大成功?で終わり、後はテストを残すだけなのだが……。まあ一応、その後にクリスマスパーティもあるけどさ……。


私は羽ペンを机に置いて突っ伏した。


どうしよう……。


2年生の2学期……つまり学園生活の折り返し地点までやって来たのに、一向に秀才キャラになれていないのですが?!


実は1学期の成績は総合で12位だった……。


かなり頑張ったし、騎士団のお祭りにも行ったのに……この成績って、どうなの?!ずーっと、真ん中である10位にすらなれずにいるんだけど?!


なんてったって、魔術と礼法の壁が厚い……。

私が頑張っても、周りも頑張ってるんだから、結局は上に行けない。


それに治療の魔術にハマって夢中でやっていたら、逆に普通の魔術の魔法陣が意味不明に思えてくる逆転現象まで起きているし……はあ、どうしよう。


どうしようって考えても、やるしか無いんだけどさぁ……。


私は分厚い教科書をペラペラとめくって、またしても溜息を吐いた。


「……ジョーヌちゃん、真っ暗だね?」


アーテル君がいつものごとく勝手に私の勉強部屋にやって来て、背後から声をかけてくる。アーテル君……ノックって文化を知ってるかい?


それにしても……万年トップは余裕ですね……。


「だってテストだよ?元気なんか出ないよ。」


「でも、終わったら素敵なクリスマスパーティがあるよね?ジョーヌちゃんのドレス、注文しなきゃね?……僕、すっごく楽しみにしてるんだ!……それにさ、冬も体験学習するでしょ?」


「ええっ?!……しないよ?」


「えーっ、しようよ?……今回さ、少し離れた国で国王の代替わりがあってさ、新しい王様が就任されるんだ。それに僕とジョーヌちゃんで行ってくれたら助かるって言われてるんだよね?……ほら年末は国内の社交が忙しいから、王様やヴァイスは、日数がかる外交には行けないらしくて、困っているんだよ。」


……う、うーん……。

夏よりも冬のこの時期、イベントが多くて大変だってのは聞いてるし……困ってるんなら、お役に立ちたい気はするけど……。


「ねえ、お願い!……今回は、ジョーヌちゃんと僕なら、向こうに少しゆっくり滞在できるんだ。そうすると、国内の公務や社交は免除されるしさ……。ヴァイスと僕で行くなら、超強行日程になっちゃうと思う。きっと僕かヴァイスが倒れる羽目になるよ……。」


「で、でも……。」


「本来なら、こういう場合は僕の父が代理で出るべきなんだ。でも、我が家は破綻してるから、無理で……。グライス先生でも良いんだけど、独身だし……。やっぱり夫婦じゃないと、他の国へは体面が悪いから。……ね、シュバルツ家の若奥様として、お願いします!」


「若奥様……。」


アーテル君の言葉がドンッと胃にのしかかる。


だって、このままじゃ絶対に「若奥様」になんて、なれないもん……!!!


そもそも、アーテル君の話だと、しがない男爵令嬢な私だけど、成績が良くて優秀なら、お嫁さんに相応しいってなるとの事だった。なのに、私はいまだに秀才キャラとは言い難くて、どちらかといえば、お笑いキャラ???


とにかく、優秀にならないと、私とアーテル君はまるで釣り合わないってなっちゃうのだ!!!

……そうすると結婚どころか、婚約すら破棄になるかも?!


う、うわ……。どうしよう!


夏休みの体験学習では、あっちこっちで「私たち婚約者でーす!」ってのをアピールしてきちゃった訳で……。このままじゃ、ジョーヌは「頭が悪くて婚約破棄された男爵令嬢」の名を欲しいままにしちゃうのではないかな?!?!


さ、さすがに……それは……嫌。


ガン無視男爵に続き、ガン無視男爵家の馬鹿令嬢って渾名が付けられてしまう案件だよ!!!


それになにより、成績ごとき(いや、ごときじゃないから苦労してるのだけど!)でアーテル君と永遠にお別れしなきゃならないとか、悲しすぎる。リュイ様たちみたいに、どうしようも無い事なら諦めるしかないけれど、頑張ってどうにかなるなら、とりあえず頑張りたい……!!!


「ジョーヌちゃん?……なんか真っ青になってるけど、大丈夫???」


「大丈夫じゃないよ、アーテル君。……私、テストに集中したいから、暫く勝手に部屋に来ないでもらえるかな?」


「えっ?!」


「分からない所は聞きに行くかも知れないけど、ちょっとね、集中したいの。」


私はアーテル君をキッと見つめて言った。


お勉強を教えてもらえるのはありがたいが、アーテル君は割に脱線しがちなのだ。……お茶飲もうとか、ちょっとのんびりしようとか、睡眠不足は体に悪いよとか……そんな事を言って、チョイチョイ誘惑してくるんだよね。


「えっと……ジョーヌちゃん???……クリスマスパーティのドレスは?……冬休みはどうするの?」


「アーテル君。今の私に、そんな先の事まで考える余裕は無いよ。……ドレスはもう、面倒だから適当に買うんでいいし、他の国に行く話は、テストが終わったら考える。……それじゃ間に合わないかな?」


「い、いや。外交の件の返事は、まだまだ先でも大丈夫だけど……。」


「なら、後にしてもいいよね?……それから、しばらく夕食も部屋で食べるつもり。だから、またね?」


言うだけ言うと、渋るアーテル君の背中を押して部屋の外へと追いやる。


くっ……!!!

王子様並みにヨレヨレになるくらい、やってやろーじゃないの!!!


私はそう決意し、羽ペンを握った。




◇◇◇




「ほら、ジョーヌちゃん、この生地も素敵だと思うんだよね?でも、ジョーヌちゃんの髪色なら、こっちもアリかなぁって。……冬休みに国外に外交に出る時の衣装もお願いしておきたいから、両方とも仕立てちゃう???……あ、そうだ。移動の時用に、楽なのにキチンと見えるワンピースも仕立てておきたいな……。イーリス、それもお願い出来るかな?」


「ええ、勿論です。……そうですね……。そうなりますと、こちらの生地もおすすめです。シワになりにくくキチンと見えますが着心地が良いんですよ。最近、発売されたもので……。」


……どうして、こうなっちゃうの?!


私の目の前ではアーテル君と仕立て屋のご主人のイーリスさんが、私の衣装の打ち合わせに勤しんでいる。


「……アーテル君、大事な話があるって……。……衣装の打ち合わせだったの?」


「もちろん、そうだよ?……ジョーヌちゃんは何でも良いって言ったから、デザインも僕が決めてイーリスにお願いしておいたんだよ。……型紙が違うから、少しは採寸しないとダメだろ?……それに生地は、肌色や顔に合わせて映えるかを見てから決めたくてさ。」


「ええ、そうですね。……奥様のお顔に映えるかは、実際に合わせて見る方が、私も良いと思いますよ。」


……すごく大切な話があるからって……どうしても、ちょっとだけ良いかな?って呼び出されて来たら、これ?!


テストは明後日からなんだよ?

追い込みなのに……!!!


思わずイライラしてしまうが、イーリスさんの手前、苛立つ事も出来ずに、されるがまま採寸される。似たような色の生地を何枚も顔の下に当てて、アーテル君とイーリスさんが、あーだこーだ悩んで決めてゆく……。


な、何でアーテル君は、私のお勉強の邪魔するのかな???


そういえば、昨日もそうだった。


部屋でひたすらに頭に詰め込んでいたら、アーテル君がやって来て、疲れてるんじゃない?とか、ちょっと休憩しよう?とか、マッサージしてあげようか?とか……全部断ったけど、しつこく粘って、追い払うのに苦労したんだっけ。


アーテル君とイーリスさんは、ゆっくりとお茶をいただきながら、ドレスの打ち合わせをし(私のドレスだもの、中座する訳にもいかない!)……イーリスさんが帰った後に、私は完全に膨れっ面になっていた。


「うわっ!!!……ジョーヌちゃん?酷い顔になってるよ?!」


「うるさいな!……私もう、部屋に戻るよ!」


冷たく言い放ち、部屋に戻ろうとすると、アーテル君に腕を掴まれた。


「ご、ごめん、すごく怒ってる???……僕、何か気に障る事を言った???ドレス、嬉しくないの???」


嬉しくない訳じゃない。女の子だもの、素敵なドレスを提案されたらワクワクしますよ。


……こんなに追い込まれたテスト前じゃなければだけどね?!


「私、勉強で忙しいって言ったよね?……それに、冬休みに一緒に国外に行くってのだって、まだ考えさせてって言ったよ?!テストが終わってからでも、返事は間に合うんじゃなかったの???……どうして、もう行く事になってるのかな?!」


テスト前の不安定な感じとか、睡眠不足のイライラで怒りが収めらずに、アーテル君に怒鳴る様に言い募る。


「アーテル君ってさ、何でも勝手にいつも自分のペースで話を進めてさ、私は流されるばっかりじゃない!……あのさ、私だって意思があるし、嫌って事だってあるんだよ!アーテル君の都合の良いコマじゃないよ!……私が自分のペースで集中したり、考えたりしたいって、どうして分かってくれないかな?!……もう、放っておいてよ!!!」


「……ジョーヌ……ちゃん?……ご、ごめん。僕……。」


「離して!……昨日だって、邪魔されて、ムカムカしてたの!……もう話したくない!」


私がそう言って、アーテル君の手を乱暴に振り払うと、呆然とした顔をするアーテル君を残して、私は部屋に戻って行った。







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― 新着の感想 ―
[一言] 明けましておめでとうございます。 今年もご活躍を期待しております。 アーテル君が邪険にされたり凹まされたりするとなんだか楽しい。 ジョーヌちゃんだっていつまでもしてやられるばかりではないの…
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