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泣き虫ジョーヌと、あざといローザ様?!

さっきから溜息が止まらないルージュ様を慰めながら連れて戻ると、アーテル君とリュイ様と一緒に、王子様とローザ様が居て、4人が談笑していた。


……なんとなく、近寄りがたい。


足を止めて、近づくのを躊躇っていると、隣にいたルージュ様が嬉しそうに言った。


「おお!ローザは今日も可愛いなぁ。なんて可憐なんだ……。」


今夜のローザ様は、濃いピンク色のプリンセスラインのドレスを着ていた。上半身は美しいレースがあしらわれたビスチェになっており、腰より少し上の位置から、幾重にも重ねたチュールスカートがふんわりと広がっていて……まさにお話の中に出て来るお姫様みたいな感じだ。


「アーテル君があげた、ラランジャのドレスだって、綺麗だったもん!」


うっとりと見惚れるルージュ様の態度になんだかカチンときて、思わず呟く。


確かに、さっきのサンプルドレス姿は、少しイマイチだったけど、ちゃんと仕立てたラランジャのドレス姿は、ローザ様にも負けないくらい素敵だった!!!


……まあ、それを見たからこそ、ルージュ様は焦ったのだろうけど……。


「あ。……えーっと……?……あ、ジョーヌもなかなか可愛いぞ!似合ってるな、そのドレス?!」


話をぶり返されて、まずいと思ったのか、ルージュ様が慌てて、とりなすようにそう言った。

……思い出したかのように褒められても、ちーっとも嬉しくないってば!!!


「まあ、コレ、お高いドレスですので!……ルージュ様が汚しちゃった、ラランジャのドレスもでしたけど!」


「なっ、なんだよ?いきなり???……確かにラランジャへの謝罪は失敗したけど、俺なりに謝ったつもりだし、なんで今さら不機嫌になるんだ?……さっきまで慰めてくれてたろ???」


……ええ、まあ。


だって一見、失敗に見えた謝罪だけど、ラランジャの様子から見る限り、惚れた弱みで、あれは完全に許してる。だから、最悪な亀裂は回避されただろうし、しっかり者のラランジャの事だ。一緒にいる班の男の子に、簡単に絆されたりはしないだろう。


だから、ラランジャに怒られて凹んでるダメ旦那なルージュ様を、慰めてあげていたんだけど……。


でもさ、なーに?……ローザ様を見るなり、そのデレデレ。

ラランジャの代わりに、ムカムカきちゃうんですけど、私!!!


「別に、不機嫌では無いです。」


「ジョーヌ???……あ!もしかしてあれか?ローザを可愛いって言ったから、ヤキモチなのか?!……しょーがないヤツだな。……ほら、お前の事も、可愛いって言ってやったろ?」


は、はあぁ?

な、なんて言い草なんですか、ルージュ様は?!


「確かにですね、ローザ様の事をルージュ様が可愛いっていうの、イライラしましたよ?!……ヤキモチって言われたら、そうなのかも知れません!だって、ラランジャには可愛いって言ってあげないのにって!……わ、私の事は……別に、義理で言わなくても平気です!」


「そ、その……。ラランジャの事は本当に反省してるんだ……。帰ったらまた謝るから、ジョーヌまで、もう怒るなよ。それにな、別にお前を義理で可愛いって言ったつもりじゃねーぞ?ま、怒ってると、まるで可愛くないけどな。お前は、愛嬌があるところが良いんだからな?……あっ!!!もしかして腹減ったのか?……よし、なんか食うもん持ってきてやるから、機嫌をなおせ?」


「ち、違いますよ!」


「まあまあ、そう恥ずかしがるな。肉だ。肉を食えば落ち着くぞ!」


ルージュ様はそう言うと、料理のあるテーブルへタタッと行ってしまった。


……。

……。


どうしよう。


ルージュ様も行っちゃったし、ここはやっぱりアーテル君と合流しないと不自然だよね。


……なんだか、行きたくないなぁ。


アーテル君からローザ様は要注意って言われてるし、ラランジャの話からも、ローザ様にはあまり好感を持てずにいる。妊婦ドレスの件もあるしね……。


「ジョーヌちゃん、おかえり。……どうだった?」


トボトボと近寄ると、アーテル君が気付いてくれ笑いかけてくれた。


「うーん。失敗かな。ルージュ様ってば、ラランジャを更に怒らせちゃったんだよ。でもまあ、誤解は解けたみたいだけど。」


「なら良かったのかな?」


「うん。そうだね。」


「あれ、ルージュは?」


「お肉を持ってくるって。」


私たちがそうやって話し込んでいると、ローザ様が可愛らしく首を傾げた。


「アーテル。……私が、お話に入れないわ。」


……。

……。


えーっと、私とアーテル君が話してる横で、ローザ様はリュイ様と王子様と別のお話で盛り上がってましたよね???……無理に私たちの話に入らなくても良いのでは?


「ごめんね、ローザ。こっちの話なんだ。」


アーテル君は笑いながら、やんわりと拒否してくれる。


「も~、なにそれ?!……ジョーヌさん、アーテルってば昔っから、いつも意地悪なのよ?……ジョーヌさんは苦労されてない?」


ローザ様はそう言って、何故かアーテル君の腕に絡みついた。


……え……っと……。


「だ、大丈夫です。……いつも良くしてくれています……。」


「ふふふ、そうなの?……アーテルって、深いお付き合いで無い方には、とっても愛想が良いものね?」


……。


……つ、つまり何ですか。私とアーテル君は付き合いが浅いので、アーテル君は本性を出してないと……そう言う意味なのでしょうか?


「あ!分かったわ!アーテルったら、やっと見つけた婚約者だからって、気を遣って無理してるのね?」


ローザ様は、アーテル君の腕に腕を絡めたまま、上目遣いで見上げると、イタズラっぽく笑った。

物凄く可愛い笑顔だ。


「ローザ、ちょっと止めてくれないかな?」


「ええっ?なにを?……あっ!やっと見つけた婚約者に、アーテルの本性をバラしたから、怒っちゃったの?ごめんね~?でも、ほら、アーテルは実は性格が悪いのよ~って教えてあげとかなきゃ~って思ったのよね、私。ほらぁ~、幼馴染ですし?」


……。


「ローザ……。別に僕が性格が悪い事は否定しないけど、別に僕はジョーヌちゃんに対して、無理しているつもりはないよ?」


「まぁ、アーテルったら……。彼女を逃がさないようにって、本当に必死なのね?……猫を被って優しくして、似合いもしない高価なドレスを贈って……。そうよねぇ~、シュバルツ公爵家としてもヴァイスのスペアとしても、いずれ結婚して子供を作らない訳にはいかないもの、我慢は必要よねぇ……。」


……。


「ちょっと?!ローザ?!……僕は別に、我慢なんて、そんなつもりは……!」


……。


私は、2人のやり取りを聞きながら、不思議と足元がグラグラとする感覚に包まれていた。


……私……勘違いしてたんだ……。


アーテル君は()を大切にしてくれてるから優しいんだっていつの間にか思っていた。


でも、アーテル君にとって大切なのは、貴族で魔力が高くて、結婚して子供を産んでくれる女の子なんだよね。……別に()だから大切って訳じゃない。


たまたまアーテル君にとって、都合がいい条件が揃っていたのが私だから、すごく大切にしてくれているんだ。……よく考えれば分かる事だ。特に可愛い訳でもない私なんかを、アーテル君みたいな素敵な男の子が、意味もなく大切にしてくれる訳がない。


……ローザ様が言うように、高価で素敵なドレスを贈ってもらっても、鏡の中の私は、ラランジャみたいに特別綺麗にはなってなかった。気になる胸元がいつもよりスッキリしてて、ドレスが素敵に見えたけど……。でも、それを着ているのは、やっぱり平凡で地味な顔の女の子……私でしかなかった。


……。


貴族は政略結婚が当たり前なんだもの、気持ちより条件ありき……なんだよね。

なに勘違いしてたんだろう……私……。


なんだか、心臓が絞られるように、ギューっと痛い……。


「お、おい!ジョーヌどうした?」


お肉を山盛りお皿に載せてきたルージュ様が、慌てて私に駆け寄って来る。


「……え?」


「お前、なんで泣いてるんだ?」


え……。私……泣いてたの……?


「おい、アーテル?!……なんでジョーヌを泣かせてるんだ?」


「え???……あ、あれ?ジョーヌちゃん???」


アーテル君が私に気付いて、ローザ様の腕を振り払おうとするが、ローザ様はその腕にしがみ付いて、離そうとはしなかった。


「ご……ごめんなさい。別に泣いてるつもり……なくって……。」


私は慌てて言った。


ショックではあったけど、まさか泣いてるなんて。

ドレス着たら泣きません!って戦闘可能メイドさんに誓ったのに……。

何やってるんだろう。私ってば涙腺弱すぎるよ……。


「……なあ、ローザ。アーテルとジョーヌは婚約しているんだぞ?婚約者の前で、ローザが腕を絡めたから、ジョーヌはショックを受けたんじゃないのか?」


「え???え???……ルージュ???私……???……私が悪いの?」


ローザ様は驚いた顔でルージュ様を見つめる。


「ああ。ジョーヌは男爵家の子だろ?……嫌だと思っても、格上のローザに『やめて!』とは言えなかったんじゃないか?……その、ローザは配慮に欠けていると俺は思う。」


ルージュ様は少し厳しい顔でそういうと、私に肉の乗ったお皿を渡し、話を続ける。


「……ほら、ジョーヌ泣くな。向こうで座って肉でも食おう?……さすがに、お前だって言いにくいよな?大好きなアーテルを取られたみたいで、悔しくっても。」


「ルージュ……。ま、待って?私、そんなつもりでは……。」


ローザ様は焦った様にルージュ様に言う。


「ローザ、そんなつもりでないなら、アーテルを離してやれ。……アーテルも行こう。ジョーヌが泣いているんだぞ?」


「ご、ごめんね、ジョーヌちゃん。僕、ローザの物言いにムッとしちゃって、ジョーヌちゃんが泣いてるのに気付かなかった……。その、悲しませるつもりじゃなかったんだよ?」


「え?あの。2人とも、ちょっと、待って?……私、本当にそんなつもりでは無かったのよ?……私が、少しスキンシップが多めなのは、ルージュもアーテルも子供の頃からで、知っているじゃない?!」


ローザ様が苛立つようにそう言うと、ルージュ様は溜息を吐いた。


「ああ、知っている。……でもジョーヌはそれを知らないのだから、ショックを受けたんじゃないか?……ローザもさ、そろそろ子供の頃の癖は抜いた方がいいと俺は思うぞ?誤解されたら困るだろ?……ほらジョーヌ、大好きなアーテルが来たぞ?」


ルージュ様はそう言うと、私とアーテル君の手を繋がせる。


「あ、あの?私……。別にローザ様との事で泣いたんじゃ……?!?!」


えっと、私……ものすごいヤキモチ妬いて、泣いちゃった事にされてない?!


別にローザ様がどうこうじゃなくて、アーテル君はやっぱり「私」じゃなくて「お嫁さん」だから大切にしてくれてるんだなって、当たり前のことに気付いて、勝手にショックを受けてただけでしてね???


「そう照れるな。お前らがバカップルなのは、よーく分かってるから、大丈夫だ。……ローザ、仲の良い婚約者に割って入るのは、マナー違反じゃないか?」


ルージュ様はそう言って、不満そうなローザ様をあしらう。


「ジョーヌちゃん、本当にごめんね?……いやぁ……、些細な事でヤキモチ妬いて泣いちゃうとか、ジョーヌちゃんて、なんだか可愛いなぁ……。」


アーテルは嬉しそうにそう言うと、私の手をギュっと掴んだ。

ルージュ様もニコニコとその様子を見ている。


……え、えっと……???


ふと、ローザ様の方を見つめると、ものすっごい怖い顔で私を睨んでいるみたいに見えたが、すぐに王子様とリュイ様が談笑する方へと行ってしまった。


い、今のは見間違い……ですよね?

わ、私……、ローザ様を怒らせたり……してないですよね???





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