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両思いな、ふたり?!

「……ちょっと、ルージュ、どう言う事?!」


アーテル君の不機嫌そうな声が響くと、ルージュ様は驚いて、私をドサリと落とした。


「ア、アーテル!……そ、その。……ジョーヌは俺が?貰った???」


なんだろう、その疑問形。ちょっとイラっとしちゃいますよ。


「はぁ?……何でルージュがジョーヌちゃんを貰うの?……ジョーヌちゃん、大丈夫?」


アーテル君は、床に落とされた私を素早く助け起こすと、制服の埃をパンパンと払ってくれる。


「大丈夫。……なんか、ルージュ様は誤解してるんだよ。……アーテル君とラランジャが思い合ってて、私はお邪魔虫だから、貰ってくれるんだって。」


「……何でそうなったの。」


「ルージュ様の中で、ドレスをプレゼントする理由は脱がせる為らしい。ラランジャのドレスを脱がせたくて仕方ないから、アーテル君もそうだって……。」


私がそう言うと、ルージュ様はアワアワと慌てる。


「おい!ジョーヌ、ベラベラ喋るな!」


「喋るよ!いきなり潰されそうになって、ポイって放り出されたんだよ!……痛かったし、私、ルージュ様に怒ってますからね?!……アーテル君、聞いて?ルージュ様はね、口ではラランジャの恋を応援するとか言って、メソメソ泣いたんだよ?!」


「おいっ!!!ジョーヌ、マジで止めろ!!!」


ルージュ様が怒鳴ると、アーテル君は私を庇うように引き寄せて、ルージュ様を睨んだ。


「ルージュ、僕のジョーヌちゃんだ。……確かに、ルージュに無断でラランジャさんにドレスを贈ってしまった事は、申し訳なかったと思う。誤解させたなら、すまなかった。僕が軽率だった。……でも、普段のルージュの態度こそどうなんだ?ラランジャさんに、いつも冷たいだろ?だから、僕は日頃のお礼にと、ドレスを贈っても問題無いと思ってしまったんだ。……そんなにラランジャさんが大切なら、どうしていつも無下にするんだよ!」


「そっ、それは……!……それは……。ラランジャが、俺を好きじゃないのに、婚約してるからに決まっているだろ?!……あいつは、俺の父上に恩を感じて父上の為に、俺と婚約してくれているんだ!……だ、だから……。面白くねーし……そ、それに……。」


……。

……。


思わずアーテル君と顔を見合わせる。


めっちゃ拗れてますね、これ?!

……ルージュ様ってさ、ラランジャが大好きなんじゃん……。両思いってヤツですよね……。すれ違ってるけど。


「ルージュ。……ラランジャさんとちゃんと話し合え。……僕たちが言うべき事は何もない。……ジョーヌちゃん、帰ろう?ここから先は、ルージュとラランジャさんの問題だ、僕たちが口を挟んではいけないよ。」


……そう、だよね?


私たちがラランジャの気持ちをルージュ様に伝えるのも、ルージュ様の気持ちをラランジャに伝えるのも、なんか違うし変だよね……?


「うん。……ルージュ様……アーテル君が言うとおりだと思う。ラランジャと、ちゃんと話しなよ。」


「行こう、ジョーヌちゃん。……ルージュ、僕はジョーヌちゃんを手放す気はないよ。だから、大切にしようって思っている……ルージュも良く考えるんだね。」


アーテル君はそう言うと、私の手を引いて入り口へと向かう。


「おい!待てよ、アーテル……!……じゃあ、お前は?お前こそ、ジョーヌの気持ちをどう思っている?……ジョーヌはお前から逃げ出したがっていただろ?」


ルージュ様がズバリと言うから、なんだか決まり悪くて下を向いてしまう……。


「……そ、それは……。……。……だけどさ、だからって冷たくしたら、もっと嫌われたり、さらに逃げ出したくなるんじゃないかな?……一緒に居て欲しいから、優しくしよう、大切にしようっていう僕の行動って、間違ってる?」


「……そ、それは……。間違ってない……。そ、そう……だよ……な。」


「……。ジョーヌちゃん、行こう?……ルージュは馬鹿すぎて話にならない。」


アーテル君はルージュ様にそう冷たく言い放つと、私の手を強く掴み目を合わせる。


「ジョーヌちゃん。……僕はさ、ジョーヌちゃんと、ずっと一緒に居たいって思っている。……優しくしてるのは、そんな下心があるからかも?……でも、それって迷惑だったり、する?」


真剣にそう言われて、私は更にいたたまれなくなってしまった。


「あ、あの……。……や、優しくされるのは……迷惑じゃないよ。……そ、その。嬉しいし……。私も、アーテル君に優しくしたいって思う……。」


しどろもどろにそう答えると、アーテル君はフワリと笑ってくれて、なんだか嬉しさが込み上げてくる。


突然、「チッ」っという、ルージュ様の盛大な舌打ちが聞こえてきた。


「クソッ、いちいちイチャつくなよな!!!マジで今の俺には不快だ!!!」


本当に、今日のルージュ様って、気持ちの乱高下が激しすぎる……。




◇◇◇




「……ジョーヌちゃん……。」


「どうかした?」


寮まで歩きながら、アーテル君は私の手をギュッと握った。


「……僕は今、ものすごく反省している。」


「はあ。」


……何を反省してるんだろ???


「浮気って、ダメだね。」


「うん。それはダメに決まってるよね?」


「えーっと、決まってたんだ、それ???」


……???


どうしよう。さっきまでルージュ様が意味不明だったけど、今度はアーテル君が意味不明だよ。


「浮気して良いと思ってたって事?」


「んー……。貴族はさ、政略結婚が多いから、そういうのは割とお互い様で容認しあってるんだよね?うちの親もそんな感じだし?」


「な、なるほど???」


ラブラブ夫婦の我が家じゃ考えられないな……。


「だから、浮気するのはお互い様だろ?って思ってたんだよね?……ヴィオレッタも僕と婚約してたのに、シーニーと陰で付き合ってたしさ。……僕も好きにやらせて貰ってたけど。」


「なんか、割と最低な話な気がします……。」


「うん。僕も今はそう思う。……さっき、ルージュと抱き合ってるジョーヌちゃんを見て……。」


「いや、待って、アーテル君?……抱き合ってはないよね?確かにルージュ様にギューってされてたけど、感覚的には、泣く時に枕とか毛布をギューっとする感覚じゃなかった?」


話の腰を折る様で申し訳無いのですが、そこは訂正しちゃいますよ?


「まあ、そうだけど。……とにかく、浮気かなって一瞬だけど僕は思ってしまったんだ。……すごく嫌な気持ちになった。」


「……そっか。だとしたら、ごめん。嫌な気持ちにさせて。……でもね、アーテル君、私は浮気しないと思うんだよね?なんか、そういうの出来る気がしないもん。」


「ん。……じゃあ、僕もしない。…………………………多分。」


アーテル君はそう言って、優しく笑いかけてくれた。


……ん???


「えっと……今さ、多分って言った?」


「ほら、何事も確実って事は無いだろ?……善処はするけど、やむを得ず的な場合もある気がして……???」


……そうやって、逃げ道をちゃーんと用意するあたり、やっぱりアーテル君は詐欺師だって思うんだよね?


「じゃあ、私も多分しない!」


「え。ジョーヌちゃんはダメ。」


アーテル君が不服そうに言う。


「なんで?」


「ん?……向いてないから?」


「向き不向きってあるの?」


「多分ある。……だからダメ。……ジョーヌちゃんは浮気したら、絶対に本気になっちゃうタイプだもん。だからダメ。」


うーん。そう言われるとそんな気もする???……そもそもが、そんな器用なタイプじゃないもんなぁ……。


「じゃあ、分かった。私は浮気はしません!!!……で、アーテル君がもし浮気したらハリセンボン飲ませる事にする!」


「それってさ、針、千本じゃないの?」


「そうかもだけど、フグの方を飲んでいただきます。」


「ええっ……。フグは嫌だな。毒もあるんだよね。なにより生臭そう。丸呑みって事?あんなデカいのイケるかなぁ?」


「もちろん丸呑みだよ!……そのくらいジョーヌが怒るって事だからね?!」


「そっか……じゃあ、気をつけるね、僕。」


私たちは、そうやって下らない話をしながら寮へと戻って行った。




◇◇◇




翌日。


早朝から、メイドさんにパーティーの準備と称して、色々とされた。……アレだ。晩餐会の時の再現ですよ。


今回は暴れず大人しくされるがままにしていた。


だって、戦闘可能メイドだもの。

逆らったらダメですって。


「アーテル君、終わったよー。」


ドレスを着せてもらい、アーテル君の部屋に行くと、アーテル君は見慣れない箱を持って、それをジッと見つめていた。


着替えも済んでおり、相変わらず、すごいイケメンぶりを発揮している。ドレスアップしてると、思わずウッとなるよねぇ……。


「あ、ジョーヌちゃん。……ん。そのドレス、すごく似合っているよ。素敵だね?」


私に気付くと箱をテーブルに置き、笑いかけてくれる。


「ありがとう、アーテル君もすごーくカッコイイよ?」


「そっか。それは良かった。ありがとね?……さあ、ネックレスを僕につけさせて?」


アーテル君はそう言うと、金庫から出してきたギラギラのネックレスをつけてくれる。前回よりスムーズなのに、なんだかドキドキが前より酷い気がするんだけど……???


「……それから、コレも……。」


そう言って、アーテル君が差し出したのは、さっきアーテル君が見ていた箱だ。少し古いが、皮張りで高級感のある、手のひらサイズの小さな宝石箱に見える。


開けると、ネックレスとお揃いのイヤリングが入っていた。


「え……これ?」


「我が家にも、それと同じデザインのイヤリングがあるって前に言ったよね?……この前の休暇の時に持ってきたんだよ……。」


アーテル君はそう言うと、イヤリングも取り出して、付けてくれた。なんだかちょっとくすぐったいし、ムズムズするなあ。


「あ、ありがとう。お借りしても良いの?……お母様のかな?」


昔に流行ったデザインだという、このネックレスと同じだという事は、昔からアーテル君の家にあったんだよね、これ???


「う、うーん?……誰のだろ、コレ???……母のものかも知れないけど、父のものかも???もはや、僕のものでも良い気もするし、結婚したらジョーヌちゃんにあげる事になると思うよ?ネックレスとお揃いになるしさ……?」


……うーん???


つまりはコレも、誰も見向きもしないかった、コスチュームジュエリーという事なのかな???


「ま、とにかくそれはジョーヌちゃんに身に付けて欲しくて持って来たんだ!……うん、よく似合ってる。」


「そうかなぁ?」


ギラギラで、地味顔なジョーヌは負けてる感がすごいのですが???


「……そろそろ会場に行こう?あれから、ルージュ達がどうなったか気にならない?」


アーテル君がそう言って悪戯っぽく笑ったので、私もコクコクと頷いて、会場へと向かう事にした。


確かに、あれからルージュ様とラランジャ……どうなったんだろう?両思いっぽかったし……話し合ったら、気持ちは通じ合ったよね?!


「ふふふっ、ラブラブカップルの誕生かなぁ?」


「……さあ?……ラランジャさんはともかく、相手がルージュだしね?」


アーテル君が苦笑混じりにそう言う。


……。


う、うーん。……い、言えてる。






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