表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/124

魔王の花嫁は、それに相応しく邪悪?!

「……なあ、班の出しもの、どうするよ?ヴァイスに大人しく楽器でもやっとけって、ドヤされちまったぞ?」


ルージュ様が深刻な顔でそう切り出した。


「まあね……確かにこの間のウサギとハトは、側近として大失敗だったよね……。」


リュイ様も困った顔でそう言う。


「でも、楽器が出来ないから、変わった魔術をやろうって話だったじゃないですか?……どーしたら良いんですか?!?!」


謹慎明けに、私たち3人はまた集まって、班の出し物について、相談しているのだ。


「ヴァイスのところは、アーテルもいるし、すごい魔術をやるつもりらしいよ。……どうやら花を降らせるんだって。ヴァイスの部屋で謹慎している時に、チラッと聞いた。」


「派手だし、すげーな……。」


ルージュ様が目を丸くする。


「アーテルが花を出して、ヴァイスとシーニーで舞上げて降らせるって計画らしいよ。中庭全体に降らせるのに、量を計算してた。」


へえぇ……。ぜったいに見に行こう!

きっと素敵だ!!!


「……しっかし……。俺らはどーするよ?ラランジャんとこは、異国の舞をやるらしーぜ。あいつ、リズム感いいし、運動神経もいいかんな。……ずっと練習してたぞ?衣装も凝ってるらしーぜ……?」


ルージュ様はそう言うと、体をクネクネさせた。

ラランジャさんのやる踊りの真似?らしい。なんだかちょっとエキゾチックで、カッコいい動きだ。


うわぁ……!それも見てみたいな。

ラランジャは手足が長いから踊りが映えそうだよねぇ……。


「……もうさ、僕たちは模型作ろうよ。学園の模型。僕たち何も出来ないし、地味であまり評価されないけど仕方ないって……。僕さ、器用さには自信あるし……。」


リュイ様が投げやりに言った。


「ならさ、ショボい基礎魔術でも披露する方がマシじゃねーか?」


「ええっ?!……それ、恥ずかし過ぎない?何の工夫も無いしさ、頑張った感もゼロだよね?……精巧に作れば模型の方が評価されるって……地味だけど。」


う、うーん……。


「それはそうだけど……ヴァイスの側近なのに、地味すぎねーか?」


2人はそのまま黙ってしまった。


でもなぁ、派手にアピールできる楽器やダンスは出来ないし……。


これじゃ、答えが出ないよねぇ。


ん……?!

そうだ……。


「あ、あのっ、学園を魔物が襲ってる模型にしましょうよ!!!」


私は良いアイディアが閃き、2人にそう提案する。


「……さすが、アーテルの嫁。めっちゃ邪悪だね。」

「ああ、魔王より魔王だな。学園への恨みが凄い。」


「ちょ、ちょっと、違いますって!!!……あの、ですね。魔物に襲われそうな学園を私たちが、ショボい魔術で守るってストーリーで、模型に魔術をプラスするんです。……ルージュ様が火で魔物を燃やして、私が学園は燃えないようにすぐに水で消火して、リュイ様が魔物の残骸を吹き飛ばす……。どうです?パフォーマンスできるし、ストーリーもあるから、見応えもありますよね?……ただの展示より良くないですか?」


「「!!!」」


「すごいな!ジョーヌ、お前、天才だな!!!」

「それ、いいね。ショボいけどショボく見えない!」


……そんな訳で、私たちは模型作りをする事になった。




◇◇◇




「ところで、剣術の対戦はどーなってるんだ、ジョーヌは?騎士団との練習試合があるだろ?」


放課後、コツコツと3人で学園の模型を作りながら、ルージュ様が私に聞いた。


「……それがね、騎士団に断られちゃったんです。」


あまりの内容に、リュイ様がカシャンとハサミを落とした。


「ええっ?!断られた?!……そんな事、あるの???」


「う、うん。あるんですね、コレが。……剣術の先生によると、私が下手な上に女の子だから、誰も相手をするのが嫌なんですって……。勝っても女の子相手じゃカッコ悪いし、下手すぎる私に負けるのも騎士団としては困っちゃうんですって……。」


「「あー……。」」


まあ、言われてみるとその通りで……。


今までは女の子でも剣術を嗜んでいて、上手い子しかいなかったから、多少手加減しつつ、肉迫した試合に見せて、勝たせてあげていたらしい。


でも……まあ、ね……私の場合、下手すぎて、それもね〜って感じなのだそうだ。確かにド素人に負ける騎士団も、ド素人を負かす騎士団も、どっちもカッコ悪すぎる。


騎士様は街のヒーローだもんねぇ……。


「じゃあ、出ないのか?」


「あ、いえ……。単位の関係で出ない訳にもいかないらしくて……。」


「えっ?じゃあさ、どうするの?!」


……はあ、言いたくないな。


……。


ギリギリまで黙ってるつもりだったし、アーテル君にも言ってないんだけど……。


「……あ、あのね……。騎士団のマスコットキャラの、キーシー君と戦うんです。……私もキーシー君もハリボテの剣で戦うから、危なくないし、王子様たちの試合前の客寄せと余興になるからって言われてて……。すごく嫌だけど、単位は欲しいし……。」


キーシー君とは、いわゆる着ぐるみだ。騎士団のお祭りなんかに登場する、犬で鎧を着ていてハリボテの剣を持っていて、ちょっとお茶目な動きをするピエロ的な役割のやつだ。


「はあっ?!……キーシー君と戦うのか?!……ある意味すごいな、それ!……花形騎士と戦うヴァイスを食っちまいそうだな。」


「う、うん。……僕もそう思う。ヴァイスとイケメン騎士の出来試合より、キーシー君vsジョーヌさんのガチンコ泥試合が見たいよ……!どうせヴァイスが勝つって決まってるし、どっちが勝つか分からないジョーヌさんの試合の方が、気になるし笑えそう。」


……。

……。


ええ……。なにその笑えそうって……。更に嫌なんだけど。


「おっ!そうだ。キーシーの弱点はシッポの設定だから、そこを狙え?」


「シッポ?」


「そうなんだよ、キーシーはシッポを触られると『ああんっ!』っなっちゃう、お決まりのお色気設定があるんだよね?」


ええっ……。何それ。

可愛い犬のマスコットにお色気ぶち込むとか……どうなの?


「でもな、それが、めっちゃウケるんだ!」


「……この間のルージュ様みたいですね?シーニー様にシッポ触られてアンアン言ってましたもんね。ウケるってか、引きましたけど……。」


「ジョーヌさん……さすがアーテルの婚約者だ。なかなか君も煽るよねぇ……。」


リュイ様は感心した様に言う。


いやいや、そんなつもりでは……。


「あ……あれは、しょーがねーだろ?不意打ちだったんだよ!……と、とにかく!ジョーヌは、キーシー君をアンアン言わせて勝て!絶対に笑えるからな!……キーシー君の弱点を容赦なく攻める……さすが、アーテルの婚約者!邪悪すぎる(笑)ってな!」


……。


ええっと……。


秀才キャラはほど遠いのに、面白キャラは良いとこまで来てそうで……なんか辛い。




◇◇◇

 



そんなこんなで、学園祭がやって来た。


「つまらない……。父さんも母さんも見に来てくれてるのに、会えないなんて。ガッカリだよ。」


「仕方ないよ。今日の僕たちは、やる事が多いんだから。……警備の問題もあるしね?昔、学園祭の混乱で誘拐騒ぎが何度もあったからなんだ。……きっとご両親は君の活躍をちゃんと見ていて下さるって。」


朝食をアーテル君と部屋でいただきながら、不満を呟くと嗜められた。


そう、せっかくの学園祭は、両親が見に来てくれても、会ったりは出来ないんだって……。


……まあね、人出もすごいし、学園にいる=貴族の子供だけだから、どさくさに紛れて攫われたりってのを防ぐ為に、観覧できるとこと、私たちが動くエリアがキッチリ仕切られていて、面会も禁止なんだってさ。


まあ、色々とやる事もあるから、どうせゆっくり話したり出来ないのだけど、それでも「チェッ」って感じだよ……。


「よーし!舞台から父さんと母さんを探そう……。」


「緊張してそれどころじゃないんじゃない?」


「あっ!確かに……!」


アーテル君はそう言うとクスクスと笑った。


「僕も見に行くね?」


「私もアーテル君の試合と出し物、見に行くよ!……お花を降らせるんでしょ?楽しみにしてるね?」


「あははは。楽しみにしてて?変な格好はさせられちゃうんだけどさ……。でも!ジョーヌちゃんをイメージした黄色いお花を沢山出すからね!……剣術の試合も絶対に勝つよ!だから、ジョーヌちゃんも、頑張ってね?」


「うん、私も頑張る!……あっ、で、でも。剣術の試合は見に来なくていいよ?……たいした試合にはならないから……。」


結局、アーテル君にはキーシー君と試合する事を言い出せていないのだ。だって、公爵家のお嫁さんが面白キャラってのはダメだって言ってたし……。


「ええっ、何で?絶対に見に行くよ?……ヴァイスの前哨戦だろ?みんな見に行く試合だしさ。」


「はひっ?!……えっ?……そうなの???」


「当たり前だろ?王子様vs騎士団一の花形騎士はメインイベントじゃないか?だから、前哨戦があるんだよ。……最初は僕が前哨戦をやるはずだったのに、ジョーヌちゃんに代わったから、何をするんだろうって楽しみにしてたんだ。……最後の試合に向けて席取りがてら楽しむ、みんな見に来る試合の一つだよ?……『魔術あり』とかでやるの?」


え、ええ……?!


私の試合……そ、そんな感じなの?!


剣術の試合は、数が多いから複数を同時進行でやると聞いていた。もちろんメインの王子様だけは単独だって知ってたけど……。わ、私の試合も単独だったのーーー?!


完全にピエロ役じゃないですかっ?!先生っ!!!

……こんなのやらせといて、成績悪く付けたら、絶対に許さないですよ、私っ?!


……。


だ、だけど……とうしよう。

アーテル君に何て言えば……。


「あ、あの……。」


「ん?……ちょっとだけ、僕の魔力持ってく?……今日はいっぱい使うから、沢山はあげられないけど、少しなら大丈夫だよ?」


アーテル君が顔を近づけてきたので、グイッと押す。


「魔術は使わないから、大丈夫です!!!……そ、それに、ルージュ様から弱点は聞いているんで、そこを狙えばイイ感じなんだよね……?ある意味、出来試合みたいなモンかも???」


ううう……。キーシー君をアンアン言わせて勝つつもりなんて……言えない……。


「へえ……。的を狙うとかなのかな?」


アーテル君が目を輝かせて私に聞いた。


「あははは。……ま、的のようで的ではないよーな……あの……。」


だっ、ダメっ……!

期待のこもった目でこっち見ないで……。


ひえ……ん。

やっぱり、言えないよ……。


「お、お楽しみに……。」


私が消え入りそうな声でそう言うと、何も知らないアーテル君は、素敵な笑顔を投げかけてくれた。


う……。ま、眩しいよぉ……。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アーテルの元婚約者、ヴィオレッタが主人公の前日譚はこちら↓↓↓
短編「悪役令嬢に転生したけど、心は入れ替えねーよ。だってヒロイン、マジムカつく!」
もし気になりましたら、こちらもよろしくお願いします!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ