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ウサギと、ハト事件?!

「ちょ、ちょっとコレ、早く解いてくださいよ!……普通の耳とウサギの耳、両方あると変な聞こえ方してて、すごーく気持ち悪いんです!!!」


「いやいや、ジョーヌさんのウサミミはまだ可愛いよ?!それよか僕の鼻コブの方がやばいでしょ?ねえ、ルージュ、はやく解いてよ?!」


私たちが喚くと、ルージュ様は急いで魔術書のページをめくった。しばらく本を確認した後にヘラッとした笑顔を浮かべて顔を上げる。


「す、すまない。……解き方は……ない。数分から数日で戻るそうだ。……うわぁー……2人ともカワイイー……。」


「「はあっ?!数分から数日?!」」


思わずリュイ様とハモる。……数分から数日って……幅が広すぎない?!


「ひどいよ!鼻コブとか、笑われるだろ、これ?!」


「……テープでも貼ればいいと、思う。」


ルージュ様が引き攣った顔で答える。


「貼っても隠れないよ!立体なんだぞ?!」


「わ、私は4カ所から音が聞こえるから、なんだか気分が悪くなってきました……。頭が混乱してます。」


「ジョーヌは人耳の方に耳栓するんだな……。ウサミミは可愛いなぁ。コスプレだと思えば!」


「ルージュ!!!さっきからさ、他人事すぎるよ!!!」

「そうですっ!!!言い出しっぺのくせに、何も食らって無いなんて、ズルい!!!」


あまりにイラっときたので、私も慌てて魔法陣を真似して書き、ルージュ様に投げつけてやった。


ボフンとなって……ルージュ様は……あれ?変わらない?


「あ、あれ???」


「ルージュ、変化ないの???」


「……。」


ルージュ様は何も言わなかった。


「あ!まさか、ウサギになる魔術を使ったんですけど、目が赤くなっただけとか?……ルージュ様はもともと赤目だし、分からないのかも???」


「あ、そうかな?……ねぇ、ルージュ……見え方が変になってるの???」


私たちが尋ねるが、ルージュ様は変な顔をして首を傾げている。


……。

……。


「……生えたみたいだ。」


「「え。」」


「……どうやら俺はシッポが生えたみたいだ。尻に違和感がある。」


……。


シ、シッポ……。


ルージュ様が立ち上がり後ろを向く。

……なんかズボンごしに、お尻の上の方が所がこんもりとなっていて……うん、変な感じだ。


「……ヤバいな、それ。」


リュイ様もそう思ったのか、顔をヒクつかせる。


「おい、リュイ。パンツ脱ぐからどんな感じか見てくれよ。」


「はぁっ?!ヤダよ!!!絶対に嫌だ!!!」


「じゃあ、ジョーヌ、ちょっと見てくれないか?どーなってんだ、これ?」


「嫌です!私、ルージュ様のお尻なんか見たくないです!」


「あー……大丈夫だ、上の方だけだし、俺は気にしない。」


ルージュ様は爽やかにニッコリ笑ってそう言うが、気にするから!……私が無理だから!


「ちょっと、ルージュ、何考えてるんだよ!女性に失礼だろ?」


「ならリュイが見ろよ!」


「嫌だ!ルージュの尻なんか見ない!」


「ほら、そしたらジョーヌしか居ないだろ?自分じゃ確認できねーんだからさ。どんな感じで繋がってんのか、気になるだろ?なんか動かせるんだぞ?」


そう言ってまた後ろを向くと、ルージュ様のズボンが、モゾモゾと動いている。


ひ、ひえっ……なんか変テコすぎて、目眩がしそう。


「嫌ですうっ!絶対に見ませんからっ!!!リュイ様が見て下さいよ!!!」


「ヤダよ!なんか汚い気がするもん!」


「失礼だな!俺は美尻だぞ?!鍛えてるからな?!」


私たちがそうしてギャーギャー騒いでいると、不意に背後に人の気配がした。


「ねぇ……。君たち、図書館で騒いだらダメだよ?」


……私たち3人が振り返った先には、呆れた顔のアーテル君と王子様とシーニー様が居た。




◇◇◇




「ほう。……それで失敗して、そんな事になったと。」


王子様が私たち3人をギロリと睨む。

私のウサミミは怖くて後にペタンと倒れてしまった。……勝手に動いちゃうんだな、コレ……。


「3人ともどうするおつもりですか?……ルージュとリュイはヴァイスの側近なのですよ。その様な姿でウロつかれては、さすがに困ります。」


シーニー様も冷たく言い放つ。


「あのーいいか?シーニー……シッポを見てくれ。……どんな感じか気になるんだ。」


どーしてもお尻を見せたい?シッポを確認したい?ルージュ様が、空気も読まずにシーニー様にそう言うと、シーニー様は片眉をピクリと動かした。


「……そちらの物陰で確認しましょう。」


2人は本棚の影に隠れてゴソゴソと始まった。

見えないが音はしっかり聞こえてる。ウサミミもあるしね……。


「……シーニーどうだ?」


「そうですね。尾てい骨と繋がっているみたいです。しっかりと付いてますね。シッポの部分だけ被毛があります。体温も感じますね……あたたかい。血が巡っているのでしょうね。」


「んんんっ……!!!……い、痛い?!つ、強く掴むなよ!!!」


「へぇ……。なるほど、痛覚もあるんですね。……無理に取るのはやめた方が良さそうですね。……って、動くんですね、これ。へえ……なかなか興味深い……。」


「だから、ちょ、ちょっと……なんか、よせっ!そんな触るな……!……ああんっ……。」


……。

……。

……。


ルージュ様が変な声を出したのが聞こえ、王子様は渋い顔でゴホンと咳払いをした。


「……と、とにかく、お前たちは、術が解けるまで外出禁止だ。出来るだけ他の奴らとも会うな。側近がこんなみっともない姿など、笑いのネタにされる。……リュイは私と来い。私の部屋で謹慎してもらおう。……ルージュはシーニーだ。……ジョーヌは……お前はどうでもいいが、2人と同じ班だしその耳だ。2人が登校しなきゃ何かあったと思われるだろう。……したがって、お前もしばらく謹慎だ。アーテルが責任持って見ろ。いいか、3人とも部屋から出るなよ!不便かあれば私かシーニーかアーテルに言え!……分かったな!」


私とリュイ様は項垂れて、「ハイ……。」と小さな声で頷いた。


「ええっ!!!俺、シーニーは嫌だな!リュイ変われよ!俺がヴァイスんとこ行くわ!」


物陰から出てきたルージュ様が言う。

まだズボンをガサゴソしており、チラッとパンツが見えた。……女の子がいるんだから、気を遣って欲しい。


……あ、尻を見てくれとか頼む時点で、ルージュ様には無理か……。


「……ルージュ。私がリュイが良いんだ。リュイはお前みたいにガサツじゃなくて、本でも読ませておけば、大人しくしてるからな。……シーニーが嫌ならアーテルに頼むんだ。1匹も2匹も同じだろう。」


王子様は苦虫を噛み潰したような顔でそう言った。


「んー。ヴァイス?僕もルージュは嫌かな?こんなの、僕のジョーヌちゃんと置いておけないよ。……ガサツがうつると困るからね?」


「……あの。……私も嫌なのですが……。」


シーニー様も控えめに嫌だと主張する。


「お前は……仕方ないだろ。……尻を見たんだ、責任を取れ。」


「そうだね。シーニーは責任とらなきゃ。ルージュを喘がせちゃってたし……。」


シーニー様は眉根を寄せて、溜息を吐いた。

……冷たそうに見えるが、意外とアーテル君の班では1番の苦労人かも知れない……。


「ルージュ、行きましょう。私が面倒見ます……。」


「ええっ!……嫌だよ!お前のトコなんか行かねー!……ラランジャだ!ラランジャを呼んで来てくれ!……あいつは口もかたいし、シーニーよかマシだ。」


「ルージュはさぁ、いつもラランジャさんを邪険にしてるのに、イザってなると頼るよね?!……シーニー悪いけど、ラランジャさんを呼んできてあげて。……シーニーも嫌だろ?ルージュの世話なんてさ。」


アーテル君が呆れたようにシーニー様にそう言うと、シーニー様は頷いてすぐにラランジャを呼びに出て行った。


……ふーん。


何だかんだ言っても、ルージュ様ってラランジャが嫌いって訳じゃないのね?

……困ったら頼りにするくらい、信頼はしてるって事かぁ……。


少しして、ラランジャがシーニー様に連れられてやってくると、私たち3人を見て、ちょっとだけ笑った。


やっぱりヘンテコだよね……。


気が利くラランジャは、シーニー様から話を聞いて、ショッピングエリアに寄ってストールを買ってきてくれたらしく、私は頭に、リュイ様は顔に、ルージュ様は腰に巻いた。


「これで、とりあえず寮までは誰にも見られずに戻れるよね!安物だけど、3人にプレゼントするよ。」


「ラランジャありがとう!ウサミミ隠れるし、可愛いね、これ!」


ラランジャが買って来てくれたのは、赤系のチェック柄のストールで、3人ともお揃いだが、制服にも似合いそうだし、男女どちらでも使えそうなデザインの物だった。


「どーいたしまして。3人ともなかなかお似合いだよ?……高級品じゃないけど、その後も使ってくれたら嬉しい。」


「うん、使う!ウサミミ無くなっても使うよ!ありがとうね!」


「そうだな、ラランジャにしては趣味がいい。俺も使ってやる。」


「ルージュは赤系なら何でも良いんだろ?……ラランジャさん、ありがとう。僕も使わせてもらうね?」


私たちは思わぬプレゼントに、嬉しくなってそう言うと、王子様は鼻でフフンと笑いながら言った。


「お揃いのストールとか、いかにも三馬鹿って感じだな。」


なんだよ、それっ!王子様っ!感じ悪っ!!!


……でも。


魔術が解けて学園に戻ると、私達がお揃いストールをしているのに気付いた他の生徒たちの間で、班ごとにお揃いのマフラーやストールをつけるのが大流行した。


すると、王子様もシーニー様とアーテル君にお揃いのマフラーを買って来て押し付けたらしく、アーテル君が苦笑しながら見せに来たのだ。


……白っぽくてキラキラした繊維が織り込まれた、やたらとケバいマフラーは……王子様にしか似合わなそうで……。うん……そういう一方的な感じ、ローザ様とある意味お似合いかもね?!って、私たちは陰で笑った。


ちなみにアーテル君もだけど、シーニー様ですらそのマフラーを巻いているのは一度も見かけなかった。……シーニー様は王子様には従順なのかと思いきや、実はそうでも無いらしい……。嫌なことは嫌って言うのね……。


そうそう……。ウサミミは取れるのに3日もかかったんだよね……。


その間、「ウサギは寂しいと死ぬらしい。」とどこからか聞きつけたアーテル君とメイドさん達によって、私は厳戒態勢の中、飼育?される事になる……。


「アーテル君?あ、あの……一人で寝れますよ?」


「いや、目が覚めて一人だど寂しくて死ぬかもだろ?僕らが交代で、ずっと見張っておくからね?」


私のベッドの脇に椅子を持ってきて、アーテル君はそう言った。


アーテル君とメイドさん達に交代で見守られながら眠るとか、お風呂もトイレもメイドさんが付いてくるとか……とにかく私は、ものすごくストレスな3日間を過ごしたのでした……。



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