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進言できる人、それを受け止められる人?!

そんなこんなでガーデンパーティーの当日はやって来た。

アーテル君のエスコートで会場に入ると、受付をお手伝いしているラランジャと目が合い、お互いに苦笑する。


私もだけど……ラランジャもこのドレス……絶望的に似合ってない。


私とは違って美人でスレンダーなラランジャだが、ドレスの甘すぎるラブリーな雰囲気が大人っぽい顔立ちのラランジャには、ちぐはぐな印象で、かつ身長が高めの彼女の背の高さを存分に引き立ててしまっていて……ラブリータワーとでも言うべきか……うん、残念な雰囲気だ。……まぁ、今日も私は安定の妊婦だけどね。ちなみに、余興の『かくれんぼ』を想定し、靴はローヒールを選択中だ。ますますもって妊婦だよ……。


美醜以前に、すげー人を選ぶデザインだよね、コレ……。

ほんと、ローザ様の性格の悪さが透けて見えるわぁ……。


シーニー様に連行されるようにやってきたヴィオレッタ様も不機嫌な顔で、全くお似合いになっていなかった。あれだけの美女でも、系統が違いすぎるとさすがに無理なんですね……。顔がケバいのに、ブリブリドレスなのが、無理して若作りしてるオバチャンぽい感じになっちゃってて、可哀想だ。


クラスの他の女の子も、あまり似合っているとは言い難く、やっぱり微妙な顔をしていた。


そんな中、登場したローザ様だけは、もちろん凄くお似合いで、ご自分でご用意されたらしい生花の花冠と相まって、本当の花の妖精みたいだった……。そして、そのお姿に、ほとんどの男子生徒が見惚れている様子は……まぁ、ラランジャやヴィオレッタ様でなくとも、女子生徒全員にけっこうなイラつきを覚えさせた。


……ないわぁ、それ。


「ジョーヌちゃん、冷えない?ジャケット貸そうか???」


軽くイラつく目線をローザ様にこっそりと送っていると、アーテル君に声をかけられた。


……たしかに、ちょと肌寒いかも???

ありがたくアーテル君のジャケットを借りて羽織らせてもらう。絶望的に似合わないドレスも少しは隠れるしね……。


「よ。ジョーヌ。アーテル。来たな!」


私達を見つけてルージュ様が走り寄ってくると、アーテル君は私の手をギュッと握った。


「あ。……ルージュ……。その……。……ジョーヌちゃんの事、怪我させないでって、ほかの奴に頼んでくれてありがとう。……それに、あの時、『僕には人望がない。』って言ってくれて……ありがとう。……悔しかったけど、おかげで僕は色々と気付けた。」


あの日から、アーテル君はちょっとだけ変わった。


クラスメイトにも、親切にしてもらったら、ちゃんとお礼を言うとか、自分も少しだけ親切にするとか……本当に些細で当たり前な事だけど……。分からないって人を、馬鹿にするように笑うのを止めたり、少しマイルドな言い方をしたり、ちょっとって言えばちょっとだけど、でもアーテル君なりには頑張っているんだと思う。


それでも、やっぱり幼馴染組には、そうそう態度を変えられないらしく、ルージュ様やリュイ様には同じような態度だった。


でも……今日はルージュ様に会ったら、お礼を言うって決めてきたのだ。

今朝のランニングの時に相談され、「なら頑張ろう?私も一緒にいてあげるから!」って私は言ったのだ。


繋いでるアーテル君の手が微かに震えてる。


「!!!……別に、アーテルの為じゃねーし。全部ジョーヌの為だよ。算術、教えてもらってるしな!!!」


ルージュ様は少し赤くなってそっけなく答えた。


「でも、そうやって……ルージュはちゃんと進言できる。ガサツで遠慮ない奴って思ってたけどさ、そういう事が出来る奴ってそうはいないんだ……。普通は耳ざわりが良い事ばっかしか言わないから。……ルージュは、ヴァイスの側近に相応しいって、僕は思うよ。……そういうの、言ってくれる奴がいないと、気付けない事ってあるから……。今までの僕みたいにね……。」


アーテル君はルージュ様をしっかりと見つめて、そう語る。


「……し、知らねーよ。……ちゃんと聞けるかって資質もあんだろ、そんなの!聞けなきゃただの暴言だ。……俺がガサツで遠慮ねーのは事実だしよ。……もいい、アーテルにそんな事を言われるとなんか尻がムズ痒いわ。止め、止めだ!……お、おい、ジョーヌ。そういえば、その格好、マジで妊婦ぽいな。アーテルのジャケット着てると、お前ら妊婦とその体調に気遣う夫にしか見えねえぞ???」


降って湧いた私への暴言に、私は思わずジャケットを慌てて脱いでアーテル君に押し返す。


なんか……ちょっとだけ、アーテル君とルージュ様のやり取りに感動しかけた、私の気持ちを返してっ!!!


「暴言!暴言ですよ、ルージュ様?!ルージュ様はやっぱりガサツな遠慮なしって、私は思います!どうやら、私には、その言葉を受け止める資質はありません!!!」


思わずルージュ様に食ってかかると、ルージュ様はニマニマと笑って肩を竦めた。


「なんだよ、褒めてんだぞ?」


ど、どこが?!


「そうだよ、ジョーヌちゃん?……ルージュは褒めてくれてると僕も思うよ?……『今日も君たちは仲が良いね』って意味だって。」


「ああ。もちろん、そうだ。」


それ、どんな意訳よーーーっ!!!




◇◇◇



パーティーが始まって程なくして、ローザ様が司会で『かくれんぼ』の余興の説明を始めると、男子生徒からのチラチラと刺さる視線を感じる様になる。


もちろん、「いつもアーテル君に独占されてるジョーヌちゃんを捕まえて一日だけでもパートナーとして過ごしたい。」なんて甘い視線ではない!「あいつが獲物か。絶対に捕まえて褒賞ゲットだぜっ!」っていうギラギラした視線だ。


なんだか嫌な汗が流れてきましたよ……。


ローザ様の説明によると、かくれんぼタイムは30分。女の子たちが10分間で隠れて、残りの20分間が男の子達の捜索タイムになるそうで、時間を知らせる鐘を鳴らすから、見つけられなかった子は時間が来たら戻ってきてねって事だった。


つまり……20分間隠れきれば……面倒事から逃げ切れるって事だよね。……とは言え、男の子は全部で13人いる。アーテル君になら見つかってもいいから、正確には敵は12人って事かぁ。……正直、隠れきれる自信がない。


ローザ様の掛け声で男の子達が一時的に室内に入ると、女の子だけの隠れんぼタイムに突入だ。……10分しかないから、急がないと!!!


「ジョーヌ、どこに隠れるの?」


私がオロオロしていると、ラランジャが声をかけてくれる。


「……分からない。でも中庭は広いし、会場からは離れようかな?」


チラリと見ると、ヴィオレッタ様はやる気無さそうにテーブルの下に入っていった。


「でも、ローザ様はバラ園のガゼボに隠れる?って言ってたわよ?だからそっちは行かない方がいいよ。」


……隠れるって言うか、ガゼボに優雅に座ってるんだろうな……。


「ラランジャはどうするの?」


「私かぁ。……誰にも見つけて貰えないのも寂しいから、石像の影にでも立ってよーかなぁって。どーせ、ルージュ様は『ジョーヌ狩り』でしょ?なんか貰える!ってはしゃいでたし……。それに、ジョーヌが見つからなくても、私を探してくれるとは思えないしさ。……じゃ、私は行くね?……ジョーヌ、田舎育ちの私的にはね、茂ってる木の中とかがオススメだよ〜?」


ラランジャはそう言うと、石像のある庭の方へ行ってしまった。


……なる程、木の中は確かに見つかりにくいかも。


でもなぁ、木登りなんて出来ないんだよなぁ。庶民とは言え、都会生まれの都会育ちですし???


キョロキョロと木を見回しなごら中庭を歩く。


綺麗にカットされた植木は密度が高すぎて、中には入れそうにないしなぁ……。どうしよう???


ふと、背の高い草花で覆われてた花壇の奥に、丸い庭木があるのを見つけ、ガサゴソと花を掻き分けて入り込み、中を覗いてみる。……思ったよりスペースがあって、入れそうだ!


よし……ここにしよう!


怖いので木の根元に寄り添うようにして、しゃがむ。

手前に花壇があったし、木の中だし、登らなくても見つかりにくいはず!


ドキドキしながら座っていると、捜索タイム開始の鐘の音が聞こえてきた。


……誰かが歩き回る音がする。


この場所からは見えないし、覗き見る勇気もないが、花壇の向こうにある通路を人が行き来する音が聞こえて、怖くて吐きそうだ。……お願い……気付かないで……。


知らない声で「いた?」とか「いないね?」という会話が聞こえてくる。……私……もとい褒賞を探してるのだろう。


ジッとしていると、足音は去って行った。


「ふう。」


安堵の息が漏れると……それと同時にガサガサっと手前の花壇を掻き分けて入ってくる音が聞こえ、身を固くする。


!!!


見つかってしまう!!!


木の幹に体を寄せて、息を殺す。

そっとそちらを伺うと、新緑の瞳と目が合った。


「……ジョーヌさん……みつけた。」


「……リュイ、様……。」


……。


リュイ様は曖昧な笑顔を浮かべて手を差し出した。私は諦めて、その手に震える手を重ねる。


「……。ごめんね。……もう少し、ここにいようか。……まだ時間が残ってるし。」


「……ありがとう、ございます。」


リュイ様と並んで木の下でしゃがむ。

私が怖がっているから、落ち着くまでこうしていてくれる気なのだろう……。


「……よく分かりましたね?」


「花壇に足跡が付いてたんだ。」


そ、そっか……。まるでダメダメだな、私……。


「……ねえ、ジョーヌさん。アーテルは本気で変わろうとしてるの?さっき、ルージュから少し話を聞いたんだ……。」


「はい。……このままじゃダメだって言ってました。学園にいる間に少しずつでも変わりたいって。……まだまだ時間はかかるかもですけど、変わりたいって本気で思ってるのは確かですよ。アーテル君なりにだけど、頑張ってます!さっきだって、ルージュ様に頑張ってお礼を言いました。手、繋いでたんですけど、ちょっと震えてて……。」


私がそう言うと、リュイ様が優しく笑う。


「……そっか。……ルージュは……ああ見えてね、昔からアーテル推しなんだよね……。アーテルに傾くかもな……。」


「え……?」


リュイ様の言葉に、思わずその顔を覗き込む。


「推し???傾く???」


「これ、秘密だよ。……僕とルージュとシーニーはね、正確には王子様の側近では無くて、()()()()の側近なんだ……。僕たちはね、一緒に育ちながら、次の国王を補佐し、時に励まし時には諫めて、正しく導いていくのが使命なんだよ。そして、そうなるようにと育てられてきた。」


リュイ様は静かに言葉を続ける。


「この国に王子様はヴァイスひとりだ。……周りはそれをずっと気にしてきている。……だって、まだ未熟なヴァイスには、王たる資質が備わっているか、分からないだろう?僕たちが、まだ未熟な側近だからってのもあるしね?……だから、その答えが出るのはまだまだ先になるだろうね……。でも、もし……ヴァイスが王として相応しく無いと分かったら……?……ねえ、どうしたら良いと思う?……彼をお飾りにする?それとも、もっと()()()()に挿げ替える???」


……。


「リュ……リュイ……様?」


「難しい問題だよね?……さ、そろそろ行こうか。……ヴァイスの所に君を連れて行かないと。僕は()()……次の王はヴァイスだと思っているからね?」


リュイ様はそう言って笑うと、私を外へと促した。




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