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女子会と、秘めた思い?!

「おじゃましまーす。わぁ、ジョーヌの部屋ってこんななんだ?……アーテル様とは、やっぱり別々に住んでるんだね?」


ラランジャは部屋に入ってくるなり、私の部屋を見渡して言った。アーテル君とルージュ様とリュイ様がこの大雨の中、お花摘みに行ったので、私はルージュ様に言われたように、ラランジャをお茶に誘ってみたのだ。


ちなみに昨晩、アーテル君はショッピングエリアで買ってきたカッパに、ものすごい複雑な魔法陣を夜中までかけて書いていた。その上、出かける直前に、私から魔力までドーピングして「僕は一日中サラサラで快適だよ!髪の毛一本も濡らさないからね?!」と、爽やかに出発していった……。私の方は魔力だけなく、またしても色々と持ってかれたので、まるで爽やかとは言えません。……朝から濃すぎるよ、アーテル君!!!


「そりゃー、そうだよ。……それに、一緒に住んでる婚約者なんて、本当にいるの?」


「あー。……確かに。みんな行き来はしてるだろうけど、完全に一緒のとこはあんまり無いかも。……ヴァイス殿下とローザ様のとこなんかは、やっぱり将来の王様と王妃様でしょ?節度を持って付き合ってるって感じなんだよね?」


「へぇー!そうなんだ?」


さすが、ラランジャ。ローザ様やヴィオレッタ様と仲良くしていただけの事はある。……王子様とその婚約者のお話を聞けるのは、ちょっとワクワクしちゃうかも。


「あ!……でも、あれだ。ヴィオレッタ様とシーニー様んとこは一緒に住んでると思うよ?この前、お茶会に呼ばれたんだけどヴィオレッタ様の部屋、何もなくてさ……。自分ではシーニー様とは住んでないって言ってたけど、嘘だと思う。」


「へえ……。そうなんだ?仲が良いの?」


アーテル君の話ではシーニー様はヤンデレだからヴィオレッタ様は逃げたいんじゃない?って事だったけど???


「さ、さあ???……ヴィオレッタ様ってイマイチ良く分からない人だからさ。……あ、これ可愛いー!」


ラランジャはそう言うと、私が棚に飾っている猫の置物を手にとった。陶器で出来ていて、三毛と茶トラの猫が一緒にベンチに座っているデザインのものだ。


「それ、兄さんがくれたの。可愛いでしょ?家で飼ってる猫のリッチーとエイミに似てるから、学園に持って行ったらって。」


「へぇ、ジョーヌの家は猫飼ってるんだ?」


ラランジャのカップにお茶を注ぐ。兄さん程ではないけど、私が淹れたお茶もなかなかなんだよ?


「うん。アーテル君もなんだって。……魔獣で、しゃべる猫らしいけど。」


「あ、お茶、ありがとう。……ええっ!すごい!魔獣ってめっちゃ高価なんだよね?それをペットにするなんて、さすが公爵様のお家だー。」


ラランジャはソファーに座ると、私の淹れたお茶を美味しそうに飲んでくれた。


「いや、拾ったみたいよ。なんか庭にいたらしい。」


「何それ?!魔獣って、そんなフラフラしてるの?!……私的には猫より犬派だから、しゃべる犬が庭にいたら絶対に捕まえるわ!」


ラランジャがそう言ったので、私は昨日対岸の街で見たカタコトで話す犬の魔獣の話をした。


「ええっ!!!その犬、すごい可愛いね!!!」


「でしょ?アーテル君も悶えてたよ。」


そうやってベラベラと下らない話をしていると、メイドさんがケーキやら軽食やらが載ったワゴンを運んで来てくれた。ラランジャとお茶するって言ったら、アーテル君が「女子会楽しんで」って頼んでおいてくれたのだ。


「奥様、お菓子とお料理をお持ちしました。こちらに置かせていただきます。」


「ありがとう。」


「隣の部屋におりますので、何かございましたらお呼びください。」


メイドさんは微笑を浮かべて一礼すると、アーテル君の部屋に戻っていった。


……。


え、えっと……。


「へぇ、ジョーヌ、『奥様』なんだ?」


「!!!……お、おかしいよね?!」


「いやぁ?別に?」


「嘘、ラランジャなんか薄笑いだよ?!も、もう!せっかく持ってきてくれたんだし、食べよう?!」


私達は、ケーキやお菓子、ちょっとした軽食なんかも食べつつ、色々な話に花を咲かせた。





「そう言えば、ラランジャってルージュ様のお父様に恩があるって言ってたけど、どういう事なの?」


ふと、この前ラランジャが言っていた事を思い出し、聞いてみる。ルージュ様とは上手くいってないけど、ルージュ様のお父様に恩があるから頑張るみたいな事を言っていたのが、チョット気になっていたのだ。


無理に婚約させられているなら、相談にくらいは乗れるかも知れない……。何か少しでも出来る事があれば、力になりたいって思ったのだ。


「あー。……あのね……私、魔力の高さから、最初は今の家じゃない別の家に養子に入ったんだけど、あんまり上手くいってなかったんだよね。なかなか、街とか貴族の生活に馴染めないって言うの?……私ね、元々がすごい田舎で暮らしてて、あまりお金持ちの家でもなかったからさ、マナーも言葉遣いも悪くてさ。養父母も、もっと簡単に仕込めるって思ってたらしくてさ、段々と扱いが酷くなっていっちゃって……。ちゃんと出来ないと、ご飯も貰えなかったり、叩かれたり……。」


「そ、そんな……。」


あまりにも勝手で酷い話に、言葉が出なくなる。


「家族は、貴族の養子になったら私が幸せになれると思って送り出してくれたし、支度金も、たくさん貰ってしまったみたいだから、誰にも言えなくて……。でもある時、養父母の家でパーティーがあって、そこにルージュ様のお父様がいらして、私の境遇に気付いて下さったの。……うちの子はガサツだから、きっとこの子はピッタリだって言って、そこは子爵家だったから、お付き合いの深いオランジュ伯爵家に養子に出してからお嫁さんにするってテイで、私を助け出してくれたのよ。」


「今のご家族、オランジュ伯爵様は、大丈夫だったの?!もう酷い事はされてない?!」


「うん!すごく優しいご夫婦で、かなりのお年なんだけど、私の事もとっても可愛がってくれてるよ!私もお2人が大好きで、本当の親みたいに思ってる。……ルージュ様のお父様は、『あの話は君を助ける為だから気にしなくて良いんだよ。好きな人のお嫁さんになりなね?』って言ってくれたけど、ルージュ様にお嫁さんがいなくて悩んでらしたのは本当だし、年をとっている父様と母様を安心させる為にも、私から『ルージュ様の婚約者になりたいです。』ってお願いしたんだ。……ま、肝心のルージュ様とは、まるで上手く行ってないんだけどね。」


ラランジャはハハハって笑って、お茶を飲み干した。


「そ、そんな事があったんだ……。つらい話を聞かせてくれてありがとね?……で、でも、ラランジャ……大変だったね、つらかったよね……。うっ、ううう……。」


「え?!ちょ、ちょっと!ジョーヌ、大袈裟だよ?!そんないきなり泣かないでよ!!これさ、結構みんな知ってる話だからね?!……確かにね、最初は辛かったけど、今は幸せだし、本当に大丈夫なんだからね?!」


私がベソベソと泣いてしまったので、ラランジャが慌ててそう言って、私の肩を揺らす。


「でっ、でも……。オランジュ伯爵家のお父様とお母様と、ルージュ様のお父様の為に、無理してルージュ様と婚約してるんでしょ……?」


私がそう言うと、ラランジャは目を見開き固まった。


「え……えっと……。ジョーヌからは、そう見える?」


「へ?違うの???」


ラランジャの顔を見つめると、みるみるうちに赤くなっていく。


あ、あれ……???


「……わ、私……好きなの。ルージュ様が。……私の様子が変だって、最初に気づいたのはルージュ様なのよ。軽い気持ちだったんだと思うんだけど、パーティーで話しかけてくれて。……でも、あまりに怯えてるみたいだから、何かおかしいって思ったらしくて……それをお父様に言って下さったのよ。……だ、たからね、私にとってはね、あんなだけど王子様なの!」


!!!


「し、下着でウロついてても?!」


思わず、真っ赤な顔のラランジャを覗き込んでしまった。

あれは、王子様ってより下町のお父様では?!


「そ、そう。笑って?……ダラシなくてガサツで、私なんかお嫌いかもだけど、ルージュ様が好きなのよ、私!!!……だから、頑張ってローザ様やヴィオレッタ様とも付き合ってきたの。無理に会話に入っていったりね……。少しでも上手くやったら、いつかルージュ様のお役に立てるかもって……。だって、将来のお妃様と宰相様の奥様になる訳でしょ。だ、だから……。」


「それで、ラランジャは、下着姿の王子様の為に、将来まで考えて、あんなに頑張ってたって事なの?!」


あの怖そうなヴィオレッタ様や、アーテル君曰く性格の悪いローザ様と頑張って仲良くなろうとしてたのは、その為だったの?!……晩餐会のあの様子を見る限り、すごく嫌な思いをする事だってあった筈だよね?それでも、食いついていってたのは、全てルージュ様の為って事?!


……ラランジャ、す、凄いよ!!!……まさにそれは愛だって!!!


「……そっ、そうだよ!か、勝手にだけど、ルージュ様との将来を考えて頑張ってました!!!自分の為だけなら、そんな頑張れないって……。本当に私にとってルージュ様は、スッゴく素敵な王子様なんだよ?!……てかさ、ジョーヌも結構な煽りキャラだったんだね。さすがの『奥様』ぶりで驚きだよ?!アーテル様と、本当にお似合いだね?!」


「えっ?!……煽ってないよ?!煽ってません!ちょっとビックリしちゃって、つ、つい。それにね、ラランジャって凄いなって、本当に感心してたんだよ?……私だったら好きな人の為に、そこまで頑張れるかなぁーって。」


「ふーん。そう言うジョーヌこそ、どうなの?……本当のとこ、ジョーヌはアーテル様をどう思っているの???3年で婚約を解消して逃げるって、本当なの???」


ラランジャがズイッと私に迫る。


「え、えっと……私は……。そのつもりだよ?……アーテル君の事は嫌いでは無いし、はずみで婚約はしちゃったけど、そもそもさ、出会ったばかりだし、結婚とか本当にピンと来ないんだって……。」


「でも、それってつまり、今の話で、これからは分からないって事だよね?……今後はピンと来ちゃうかも知れないって事だよね?だってまだ3年もあるんだよ?今から絶対に、確実に、まるであり得ないって、ジョーヌは神様に誓えるの?そこまでアーテル様はナシなの?」


責め立てるように言われ、思わず仰反る。


「え……。そ、それは……た、確かに神様に誓う程のナシではないけどさ……。」


「じゃあさ、そのうちで良いから、ピンと来て?!私、ジョーヌがアーテル様の奥様になってくれたら、すんごく嬉しい!!!アーテル様は王子様の補佐に就かれるだろうし、ジョーヌがずっと一緒なら心強いもん!!!ローザ様やヴィオレッタ様に無理に媚びなくても良いし!!!」


「え……?」


ラランジャの言いたい事は分かるけど……。


思わずフリーズしていると、私の背後から声が聞こえてきた。


「全くその通りだね、ラランジャさん。……君の為にも、頑張って僕はジョーヌちゃんをその気にさせないとだね?……ラランジャさんは、僕に協力してくれる?」


いつの間にか帰宅していたらしいアーテル君が、宣言どおりに髪の一房すら濡らした様子もなく、微笑みながら答える。


「はい、アーテル様!!!是非、お力にならせて下さい!!!」


ラランジャは嬉しそうにアーテル君を見つめて、コクコクと頷いた。


……あ、あれ?

学園ではじめて出来た女友達に浮かれていたはずが……何故かアーテル君の味方?が増えちゃってる?!?!






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