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脳筋バカと、酔っ払い?!

「あぁ?……魔力?流す?……そんなの、俺もわかんねーよ?!」


あまりの発言?にアーテル君と、ラランジャ様のカトラリーがカチャンと音を出した。


厳密には、マナー違反だけど、そこは許してあげて欲しい。



私たち4人は、あれから一緒に夕食に行く事になったのだ。


アーテル君は散々嫌みっぽくルージュ様を責め……テストは自分で解く事と、紳士としてラランジャ様にもっと気遣う事を約束させた。……すると、ルージュ様がラランジャ様の食事のマナーが悪いのはどうなんだ?!と言いはじめ……なら4人で夕飯を食べてみようかという事になり、一緒に食堂に来たのだが……。


……。


ちなみに、ラランジャ様の食事のマナーは良くは無いが、そこまで悪くもなかった。


簡単に言うと、一口サイズがデカいのが問題だったのだ。


一口がデカイ為に、大口を開ける事になるし、小さくしか口を開けないと、口の周りを汚してしまう。……フォークからもポロリと落ちやすくて……それでちょっと見苦しくなってしまっていただけだった。


私がそれをアドバイスすると、ラランジャ様は「もう少し一口サイズを小さくしてみる!」と言ってくれた。……アーテル君の言うように、どうしたって無意識では一口サイズがデカくなってしまうかも知れないけれど、晩餐会などの緊張感がある場所なら、失敗は減るんじゃないかなって、私は思う。


……その後に、私が魔力を流すって感覚が分からないんだよねって話になって……。で、ルージュ様の爆弾発言が落ちてきたのだ。


「……えっと、ルージュ???じゃあ、今までどうやってやってきたんだ?」


「そうですよ?ルージュ様、わりと魔術も得意なんだって、いつも偉そうに教えてくれたよね?」


アーテル君とラランジャ様が、心底不思議そうにルージュ様に聞く。すると、ルージュ様は神妙な顔で答えた。


「……えー?……まあ、あれだ。実は、そんなの良く分からんから、魔法陣を手で温めてたんだ。……で、あったかくなったら、ポーンと投げる。加減は、簡単なやつなら、ちょっと温める。魔力がいるやつは、もっと温める。すごーく魔力を消費するやつは、しこたま温める。……そんな感じだな。」


……。

は……い???


「ルージュ様、温めるってのは、すごく参考になりました。でも、『ちょっと』とか『もっと』とか『しこたま』ってのがどのくらいの長さなのか、分からないんだけど……?」


あっためるってのは大ヒントだって思うよ?

でも、その時間の感覚って、人によるし……。


アーテル君とラランジャ様は、ポカンとしている。


「あ、だよなぁ……。そうだ。ジョーヌお前、ちょっと手を出せ。」


私が手を出すと、その手をギュッとルージュ様が握って、少しして、パッと離した。


「こんな感じが、『ちょっと』だな。水まきはこんなモンで良いだろ。」


……なるほど。確かに『ちょっと』だ。


「で、『もっと』がこれくらい。」


また私の手を握る。……ルージュ様の手は、剣術がお好きだと言っていただけあって、ゴツゴツとしてて硬い、大きな手だ。ギューッと握られてると、ちょっと痛い。


まだかなぁ?と思って、ルージュ様を見上げると、得意げな顔で見下される。


……それから少しして、パッと手が離れる。

感覚的に、1〜2分くらいかな???


「これが『もっと』って感じかな。で、次に『しこたま』ってーのが……。」


そう言って、ルージュ様がまたしても私の手を握ろうとすると、アーテル君がそれを遮る。


「ルージュ、もういい。……なんか、僕のジョーヌちゃんを、脳筋バカにあまり触って欲しくない。馬鹿がうつりそうだからね?!……それに、魔力を『しこたま』込める魔法陣なんて、1年生は習わないから、必要ないよ。」


アーテル君が、そう言うと、ルージュ様がせせら笑った。


「……あのさぁ、俺とジョーヌとリュイは同じ班で、もしもジョーヌが爆発なんかさせたら、1番被害を被る訳だ。だから教えてやってるだけだぞ?……なんかお前さ、シーニーみたいだな?ヤキモチか?……了見の狭い男はカッコ悪いよな?……そりゃー、ジョーヌも逃げたくなるわな。」


!!!


……ルージュ様、なんか完全に面白がってない?!いつも嫌味を食らってるからって、得意げにやり返してるよね、コレ???


ルージュ様にニッコリと笑いかけられ、思わず顔が引きつる。えーっと、逃げたくなるとか……よ、余計だって!


「どういう事?……ジョーヌちゃんが逃げるって?!」


「さあ?……俺は、ヤキモチは嫌われるぞって言いたかっただけ。そんなん一般論だろ?……ジョーヌが逃げて、アキシャル国に行くなんて話じゃねーぞ。……あっ!!!し、しまった……!!!……お、俺、そろそろ部屋に戻るわ。テストもやんなきゃだし。……じゃあ、また明日な!」


う、う、う、嘘?!

な、何でさっき3人で立てた計画、話しちゃうの?!……秘密って、コッソリ協力してくれるって話だったよね?!

ま、まさか、これが脳筋馬鹿クオリティ?!


『あっ!!!』って、私の方が、『あっ!!!』だよ???


焦ったようにルージュ様が席を立つと、ラランジャ様も慌てて席を立った。私は物凄く険しい顔でルージュ様を睨んでやったが、奴はこちらを見もしなかった。


「アーテル様、ジョーヌさん、私も部屋に帰るね?……ジョーヌさん、マナー教えてくれてありがとね?私で良かったら、教室でも話そ?……じゃあ、おやすみなさい!……待ってよ、ルージュ様!」


ラランジャ様はそう言うと、パタパタとルージュ様を追いかけて帰っていってしまった。


……。

……。


え、えーっと……。


無言のまま、アーテル君がナプキンで口を拭い、食事を終わらせる。……なんか、いたたまれないし、もはや、やましくて目が合わせられない。


変な汗がダラダラ出ている気がする。


「……僕たちも部屋に戻ろうか。」


アーテル君はそう言うと、ニッコリと微笑む。


「……えーっと……。私はちょっと、ゆっくりしてから帰ろうかなぁ……?お、お酒も飲めるみたいだし???」


「へぇ。ジョーヌちゃん、お酒なんて飲むんだ。……なら、部屋に用意させよっか?」


……嘘です。

お酒なんて飲んだ事ありません!!!


この国は16歳から飲酒可能なんだけど、我が家は父さんがべらぼうにお酒が弱くて、コップ一杯でもベロベロになっちゃうんだよね。……母さん、姉さん、兄さんはザル……いやワクらしいけど……私は父さんソックリだから、きっとダメだろうって言われてて……。


「部屋で飲もう?……逃亡計画についても明らかにしたいし。」


優しく腕を掴まれたが……何だろう、この有無を言わさぬ威圧感……さすが、王様の甥っ子って感じなのでしょうか?!


……あー!!!もー!!!

ルージュ様のおバカーーー!!!




◇◇◇




部屋に戻ると、アーテル君の部屋のリビングには既に数種類のワインが用意されていた。


……さすが、熟練メイド……抜かりが無さすぎじゃない?!


「赤ワインでも良いよね?」


「……えーっと……う、うん。」


トプトプとグラスにワインが注がれる。

見た目は……うん、葡萄ジュースだ。


差し出されたグラスを受け取り、おそるおそるコクリとひと口飲む。


!!!


……な、な、な、何これ?


マッズ!!!

苦い?渋い?何だこれ、モノすっごい変な味!!!


え?何でジュースのままにしとかないの???

葡萄ジュース美味しいよね?!……何で手間暇かけて、こんな不味くしたの???


グラスを持ったまま、無言で固まる。


「とっておきのワインなんだよ?ヴィンテージワインなんだ……。どうかな?」


どうかなって、聞かれても……正直言って、不味いです!!!葡萄ジュースが最高です!!!……な、なんて、言えないよね……。ヴィンテージって……なんか高そうだし。


私の横に座りアーテル君は美味しそうに、ワインを飲み干した。


「すごく飲み口が良いね?……円熟したまろやかな感じがまさにヴィンテージって感じだよね?……どんどん飲めちゃう。」


……えーと。まるで意味が分からない。

これのどこが飲み口が良いのだろう???……私的には葡萄ジュースの方がどんどん飲めちゃいますが?!


確認の為にもうひと口いただいてみる。

私の勘違いなのかな?お酒だって警戒しすぎたから、不味く感じたのかも???


……うん。……やっぱこれ、不味いよ。


飲み込むと、喉がカーッとして、なんだか胃がムワッとする味だ……。顔も熱いし、頭がもボワってする……。

 

「……で、逃亡計画なんだけど、実際、どう言う事なの?」


アーテルにニッコリ問い詰められて、私は慌ててもうひと口ワインを飲んだ。



◇◇◇



……なにこれ……フワフワする。

なんだかなにも考えられない……。


「なるほどー、卒業式のパーティーの最中に、2人に協力してもらって、ジョーヌちゃんはアキシャル国に逃げるのね?……へぇ……3人でそんな計画を立ててたんだ?」


「そーなんれす。……なのに、ルージュのやつ、べらべらと話して……。あやつは、おバカれす……。」


「じゃあ、僕は卒業パーティーの時に逃げられないように気をつけたら良いんだね?……まあ、まだ先の話だし、在学中に逃げないなら、とりあえず良かったよ。」


「……そーれすよ。逃げたら、家族がこの国にいれましぇんから、ジョーヌは、がんばるのれす……。」


もう、みんな話しちゃおう……。めんどうだ……。


「ジョーヌちゃん、もはやグダグダでデロデロだよ?」


「???だくだく?ろでろで???」


となりに、こてんと頭をもたげた。

いいとこに、いい高さの頭おきがある。


「ちょっとさ……ジョーヌちゃんお酒、弱すぎじゃない?」


「ジョーヌはぁ……弱すぎじゃないよ……?」


ぐらんぐらんする……。

横にあるあたたかいのに、もっと寄りかかろう……。


「……。なにこれ……ちょっと可愛いし……なんか楽しいかも。……あ!!!ジョーヌちゃん、『私はアーテル君から逃げずに結婚します。』って真似して言ってみて?」


???

ん、んー???まね?……いうの???


「わらしは、あーるらくんからぬげるにけこします???」


「……うーん……長いとグタグタすぎて、ダメかぁ。じゃ、『結婚します!』は、どうかな?」


「けこしましゅ!わどかな?」


いえた?!……いえたよ。


「……なんか得意げな顔だけど、まるで言えてないよ……。あ!じゃあさ、僕のこと『スキ』って言って?」


……?


「……きす……して???」


「……な、なるほど……。そ、そうきたか……。う、うーん???でもこれ、お酒抜けたら怒るか泣くんじゃない……?んー???……でも、もちろん、喜んで……!」


???


あたたかい感じと、大好きなチョコレートのあじがして、なんか……う……うまい……!これ……うま……。うま。


「!!!……んっ……!!!ちょ、ちょっと、ジョーヌちゃん?!……うっ……ん……ま、まって!!!……うぷっ……そんな……魔力、吸われたら……僕……んんっ……ちょっ……んっ……倒れちゃ……!!!」


……ぷはぁ……。ごちそーさま……。


何かが、どさっと、ゆかに落ちた音がしたけど、ジョーヌは知らないよ……。



このお話では16歳から飲酒が可能な国という設定の為、二人はお酒を飲んでいますが、現実ではお酒は20歳になってからですよ!

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