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アーテル君の笑顔は、本物か?!

夕飯の時に、アーテル君は王子様とシーニー様と同じ班で、すごい嫌だって事と、アーテル君たちの班のボランティアは、図書館の本の整理をするって事を話してくれた。


本の整理も魔術でするの?って聞いたら、それは普通に手でやるらしい。……実際は、司書さんが何人も居てちゃんと管理されてるので、たまに図書館に行って本をパラパラと見てくるだけの、なんちゃってボランティアなんだよって教えてくれた。


「えー……それ、インチキじゃん……。」


「ほら、うちの班はヴァイスがいるからさ、しょーがないんだって。王子様のお手を煩わすなんて、駄目でしょ?」


「……アーテル君がいる時点で、煩わせてると思うよ?……ルージュ様とリュイ様から聞いたよ?アーテル君が王子様を煽って遊んでるって。」


「ええっ……?!僕なりのヴァイスへの王様教育だよ?煽りへの耐性を上げてあげてるつもりなんだけどなぁ。……素敵な王様になって欲しいじゃん?……煽られてカッとなるようじゃ、ヴァイスはまだまだだよね?」


アーテル君はそう言うと、ケラケラと笑った。


……何だか王子様にちょっと同情しそう。

こんなんで、自分より優秀なヤツがいたら、不機嫌にもなっちゃうわ……。


その後、私たちは一緒にお勉強をする事になった。


アーテル君が難しそうな魔術の本を読んでいる横で、私はさっき書いてもらった魔法陣を練習した。アーテル君の魔法陣はシンプルで書きやすかったので、すぐに「合格!」って言って貰えた。


やった!明日の水やり楽しみ!!!


その後、ルージュ様が苦手って言ってた算術と、リュイ様が苦手って言ってた外国語の、振り返りのテスト作った。……どこで躓いたのかを確認しておいた方が、教える上では良いって思ったからだ。


でも、こんな簡単なとこから出題したら、馬鹿にしてるって怒るかなぁ???


うーん……???


でも、大切なところだしなぁ……。


「……なーに、それ?」


私が問題を片手に悩んでいると、本を読んでいたアーテル君が顔を上げて聞いた。


「あ、あのね。2人が算術と外国語が苦手って言うから、どこで躓いたかを確認しようと思って、テストを作ったんだけど……。これって、簡単すぎかな?馬鹿にするなって、怒っちゃったり、するかな???」


基礎的な所ばかりで作ったテストをアーテル君に見せると、アーテル君はクスクスと笑った。


「いやー?……あの2人には、ピッタリのレベルじゃない?」


「もう!……意地悪じゃなく、真剣に聞いてるんだよ?」


ちょっとムッとして答える。

だって、なんか面白がってますよね?!


「んー……?別に意地悪してないよ?……基礎って言ってもさ、この辺のところから急に難しくなるし、分からなくなるならココからじゃないかなって僕も思うよ?だから、確認しておくのはイイんじゃない?……ジョーヌちゃんて、先生に向いてるかもね?……ま、一番向いてるのは、僕の奥さんだけど。」


アーテル君がテスト用紙を返してくれながら、ニコニコと答える。


……お、奥さん……。


ちょいちょいブチ込んできますよね……。


「えーっとね、それに向いてるかはともかく……。なんか、ちょっと面白がってはいるよね?」


「それは……まぁね。……プライドの高いあの2人が、ジョーヌちゃんに、コソコソ基礎の算術と外国語を教わるってのは、かなり面白いって思ってるよ?でも、基礎の大切なとこなのは本当だし『基本ですけど、大切な所なんで振り返りましょう?』って言えば、素直にやってくれるって。」


そう言うと、安心させるかのように、微笑む。


「そ、そうだよね……。うん、せっかく作ったし、明日やってもらおう!……アーテル君、ありがとうね?……あ、でも、テストの事で、2人を馬鹿にしちゃダメですよ?」


「えー?……2人の答案見せてくれたら、馬鹿にしないよ?」


「ダメですって!そこはプライバシーの侵害だし、ジョーヌ先生には、守秘義務があります!」


私が真剣な顔でそう言うと、アーテル君が吹き出した。


「分かったよ。……2人の馬鹿っぷりは、直接、答案を見るんじゃなくて、ジョーヌちゃんから2人の珍回答が漏れて来るのを待つ事にする。」


「だから、そんなの漏らさないよ?!」


「んー……?……お腹痛くなる程に笑える回答でも?」


「え……。そんな酷いの、あの2人?」


「どーかなぁ?……アーテル先生にも守秘義務があった気がする。」


……ええっ。

なんか、気安く引き受けちゃったけど、だ、大丈夫かな?!

ま、明日テストしてもらえば、分かるかぁ……。


「あ、そうそう……!それでね、代わりに2人が私に魔術を教えてくれるんですって!……アーテル君、最初は何を教えてもらうのが良いと思う?……教科書を見たけど、基本の古代語からかなぁ?それとも、何か魔法陣を描いてから古代語に入った方が、理解できるかなぁ……?」


……。

……。


あ、あれ???


また急にフリーズ???


笑ってるし、さっきまでと同じ表情なのに、やっぱり……なんか変、だよね???


う、うーん???……私が2人とお勉強会するのが嫌で、まさかのヤキモチ?!……って感じでは無いんだよね?さっきまで面白がっていたし……。


「……アーテル、君?あの……なんか、怒ってる?」


「え?……まさか、僕は全然怒ってないよ?どうして?」


……そう、かな。

なんか違和感を感じるんだけど……???


……そう言えば、ルージュ様とリュイ様は言ってた。「晩餐会はみんな不機嫌だった。」って……。私はまるで気付かなかったけど、貴族たちは、公式の場では感情を表に出さないようにするらしいし、そういうトレーニングもするらしいけど……。


アーテル君は、飄々としているようで、意外と感情を豊かに表現してたから、違うのかと思ってた……。でも……。


「アーテル君の、そういう顔、私なんか嫌い。」


「えっ?!……ジョーヌちゃん、何、いきなり。」


「だって、その顔、嘘だもん!……貴族だから、気持ちを抑えなきゃ駄目な場所や時間あるのは分かるよ?でも、それって今なのかな?婚約者の私にする事なのかな?……嫌だなって事や不満や不安があるなら、話し合おうよ?……嘘がいっぱいとか、気が抜けない関係じゃ……ラブラブ夫婦になれないんだよ?!」


私がそう言うと、アーテル君は目を見開いた。


「ジョーヌちゃん……。」


「うちの父さんと母さんね、ラブラブ夫婦だけど、いっぱい喧嘩もしてるよ?……だから、言いたい事は言って欲しい。もし、それで喧嘩になっても、仲直りしたら良いんだよ?」


アーテル君が私の手を握る。


「……そうだね。……僕、楽しそうにしてるジョーヌちゃんに水を差したくなかったし、ガキくさいって思われたくなくて、言えなかったんだ……。あ、あの……。笑うなよ……?ルージュとリュイにも言うなよ?……ジョーヌちゃんに魔術教えてあげるって、僕が先に約束してたのに、僕より数段下で、へたっぴな2人から魔術を教えてもらう!って聞いて、すごくムカついてたんだ。……リュイの下手くそな魔法陣を練習してたのも、なんか嫌で……。」


そうだ……そう言えば、アーテル君は私の魔術の勉強方法については、色々と考えて計画を立ててくれてるみたいだった……。


なのに私ったら……。


確かに、こう教えていこうって考えてて、それを別の人が全く違う方法で教えはじめたら、ちょっと嫌だなって思うよね……。


「……私の方こそごめん。なんか無神経だったね?……しかも嫌いって言っちゃった……。ごめんなさい……。2人には魔術はアーテル君に教えて貰うから、大丈夫ってお断りするね?」


アーテル君の顔が緩む。

……良かった。ちゃんと話せて……。


「……それにしても、嬉しかった。ジョーヌちゃんが、結婚に前向きどころか、ラブラブ夫婦まで目指してくれてたなんて……!!!」


あっ!!!


「そ、それは言ったけど……例えって言うか……。」


「嘘はダメなんだろ?」


「う、うーん……。」


ほんと、何やってんだろ、私……。

アーテル君の張り付けたみたいな笑顔がなんか嫌で、また変な事を言っちゃったよ……。なんか流されてるどころか、絆されてる???……いかん、いかん!!!3年後には、なんとか婚約を解消して、街に戻るんだから、しっかりせねば!!!


「ねえ、ジョーヌちゃん。」


「あ、え?……ごめん、考え込んじゃった。どうかした、アーテル君???」


声をかけられ、ハッてして顔を上げると、アーテル君の顔が間近にあった。


「あのさ、ジョーヌちゃんは2人にお勉強を教えてあげるんだろ???」


「そうだね?」


「……僕には?僕にも何か教えてくれる?」


え……?


えーっと……。


私がアーテル君に教えてあげられる事なんて、あるかなぁ???


「アーテル君も算術と外国語、教わる?」


「うーん、僕、そっちも得意なんだよね?……残念ながら。」


確かに、ルージュ様とリュイ様も、王子様とアーテル君とシーニー様は得意だって言ってたもんなぁ。


「えーっと、アーテル君は、なんで私に何か教えて欲しいの?」


「いやあ……。なんか『ジョーヌ先生!』って言ってみたくて。」


「なにそれ、それって楽しい???……じゃあ、私が『アーテル先生』って呼ぶんじゃダメ?私、アーテル君に教えてあげられるような事、何も思いつかないよ???……色々教えてもらってるし、アーテル君の方が先生じゃないかなぁ。」


私がそう言うと、アーテル君はちょっと考え込んで、ウンウンと頷いた。


「確かに、アーテル先生って呼ばれるの、ありかも知れない……!なんかイイ……!」


なんだそれ……。

でも、アーテル君が満足そうだし、まあ良いかな。


「じゃあ、ジョーヌちゃん……そろそろ行こうか?」


「え、何処に???こんな時間だよ?……何処か行く用事なんか、あったっけ?……アーテル君???」


もう夜の9時を過ぎている。

そろそろお風呂に入って寝ようかって時間だと思うけど?


「アーテル先生、ね?」


「じゃ、じゃあ、……アーテル先生、どこ行くの?」


「もちろん、僕のベッドルーム、だよ?……そろそろ、アーテル先生の特別授業の時間だからね???」


……は……い???






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短編「悪役令嬢に転生したけど、心は入れ替えねーよ。だってヒロイン、マジムカつく!」
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