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私は、ガン無視され男爵令嬢?!

あれから、アーテル君は私に「後で話そうね?」って言ってきたけど……「話すって、何を?昔、婚約者がいたって事?……もう知ったから、改めて聞く必要ないよ……。」って言ったら、黙ってしまった。


そうして、何となーく気まずいムードになってしまい、そのまま晩餐会は始まった……のだけど。


父さん、私ね。

父さんがガン無視男爵なら、娘の私はガン無視され男爵令嬢だよ……。


アーテル君の婚約者の為、私の席はかなりの上座だった。


船で会った、王子様を始め、取り巻きの赤、青、緑にさっきの紫の美女、そして王子様の婚約者っていう、ピンクの髪の可愛い子と、船で私を拘束した赤い青年の婚約者だという、オレンジの髪の気の強そうな子が近くに座った。


あんなに船では感じが悪かった、王子様と取り巻き一行だが、先生達との席が近いせいか、女の子達がいるせいか、アーテル君とは普通に話していた。


アーテル君はみんなに私を紹介してくれたけど、ピンクの髪の可愛い子……ローザ様が挨拶を返して下さった以外は、さっきの紫の美女……ヴィオレッタ様と同じ感じでスルーされた。……そうして、まるで私の知らない話で盛り上がりはじめたのだ。


……どうやら、アーテル君たちは幼馴染でもあるらしかった。


オレンジの髪の気の強そうな子……ラランジャ様だけは、いわゆる『メッキ』て呼ばれる、魔力の高さから数年前に養子に迎えられた子らしくって、やっぱり無視されがちだったが、頑張って話に食いついていっていた。


え……私?


泣き虫ジョーヌにそんなの、ある訳ないじゃないですか。


アーテル君は気を遣って、さかんに解説を入れたりしてくれたけど……。子供の頃に××侯爵の△△様が嫁がれた〇〇伯爵の□□領にあるサマーハウスに遊びに行った話とか……まるで良く分からないよ。××侯爵と※※伯爵は従兄弟で、〇〇伯爵とは同窓なんだって言われても……「そうなの……。」としか言えないし……。


それに、さっきからヴィオレッタ様の事が、気になって頭から離れなくて……。私は何となくアーテル君の顔が見れなくなってしまっていた。


……考えてみれば、アーテル君に婚約者がいたって事に不思議は無いのに……。


……公爵家ってすごい家柄だし、アーテル君は極めて詐欺師っぽいけど、面倒見も良いし、話しやすくて……とってもいい人だなって思う。だから、魔王とか、魔物が湧くとか置いといても、アーテル君と婚約しても良いって人が、まるで居なかったとは思えない。……あ、黙っていれば、見た目もカッコイイし。


だから、元々は、ヴィオレッタ様みたいな、()()()()()()()()婚約者がいて、何らかの理由でダメになってしまって……嫁不足の為に新しい婚約者に困窮してたってのはシックリきたし、そうだよね……って感じではあるんだけど。


だけど……。


アーテル君は、私にしてくれてるような親切を、ヴィオレッタ様にもしてたんだ……とか、いやいや、あのアーテル君だよ、あれだけの美女だよ、もっと色々……とか考えたら、急に胸の辺りが苦しくなってきて……ドレスのせいだと思うけど……息苦しいの。


それに、ヴィオレッタ様は、まだアーテル君に未練があるみたいな口ぶりだった……。


ヴィオレッタ様の新しい婚約者、青いメガネ……シーニー様は、なんだか冷たそうな感じで、睨まれたら怖かった。今もなんだか、ジットリした目でヴィオレッタ様を睨んで?見つめて?いるし……。そんなの、やっぱりアーテル君の方が、良いに決まってるよ!!!


「ジョーヌちゃん?大丈夫?」


「……えっ?……あ、うん?」


話に入れず、ボンヤリと考え込む私を、アーテル君が心配そうに覗き込んだ。


「……ごめん。あいつら……。でも席、移動出来ないし……。」


「アーテル君、大丈夫だよ。お料理を堪能してるし。……それに、こういうの、ちょっとは覚悟して来たつもりだから。」


私はそう言って、また出されたお料理を食べ始めた。

……テーブルマナーだけは、アーテル君に褒められたしね。


……。


この学校に来る事になった時、男爵家って言っても、ほぼ庶民な私は、きっと意地悪されたり無視されるんじゃないかって思って、覚悟はしてきた。


たから……まあ、他の人の態度がこんななのも、そうだよなぁって感じで……。


それに、私とアーテル君が、中身も見た目も家の格も、すべて不釣り合いなのは本当だし……。だって、私はアーテル君が仕方なく捕まえた野生?の婚約者だからさ……。


だ、だめだ。

泣きそう。


……でも、戦闘可能メイドさんたちに、晩餐会の間は泣きません!って宣言させられたから、我慢しなきゃ……。


私は曖昧な笑顔を貼り付けたまま、『晩餐会よ早く終われ!』と唱えつつ、その時間をやり過ごした。




◇◇◇




晩餐会から寮にもどり、お風呂に入ってパジャマに着替えると、私はベッドに入って、思う存分メソメソする事にした。


アーテル君はずっと私と話したいみたいだったけど、『ドレス苦しいから脱ぎたい』とか、『頭の中が痒いからお風呂に入りたい』とか、『ヒールでカカトが痛いから傷薬塗りたい』とか言って、避けまくった。


そうして、ベッドに潜り込み、布団を被って枕を抱えて……よし、これからいっぱい泣くぞって時に、コンコンとノックの音が聞こえた。


……。


ど、どうしよう?


無視したら『非常事態扱い』で入ってくるだろうし……返事をしても入ってくるよね?


あ!


「……すみません、うちのジョーヌはもう寝てしまいました。」


頑張って母さんの声真似で答える。


「いや、それ、起きてるでしょ?……ジョーヌちゃんしか居ないのに、なんだよ、それ?」


ガチャリと音がして、アーテル君が笑いながら入ってくる。……部屋着に着替えており、風呂上がりなのか、ちょっとだけまだ髪が濡れていた。


「……えっと……何……。」


「ん……。一緒に寝ようかなーって。……ジョーヌちゃんの狭いベッドで密着して寝る?……僕のベッドで広々と寝る?どっちか選ばせてあげる。」


……何その二択。


「……そんなの、どっちも選べないよ?!1人で寝るって選択は無いの?!」


「……無いよ?……だって、ヴィオレッタの事……ちゃんと話させてくれないだろ?……それに、ジョーヌちゃん、ずっと目も合わせてくれないし……どうせメソメソする気だったんだろ?……ならせめて、一緒に寝ようかなーって。」


……。


色々と見破られてる……。


私は諦めて、ポスンとベッドの端に腰を下ろすと、アーテル君がその隣に座った。


「……まず、今日はごめんね。みんなに無視されて、知らない話ばっかりされて……辛かったよね。」


「……。」


「僕なりに頑張って解説入れたけど……ジョーヌちゃんには、意味不明だったし、面白くなかったよね……。ごめんね、全然フォロー出来て無かった……。」


「そ……それは、別に……。私だって、オレンジの髪の子みたいに、食いついていけなかったし……。」


謝られただけなのに、なんだか涙が止まらなくなってきてしまった。アーテル君が、そっと肩を抱き寄せてくれる。


「……ヴィオレッタと僕は数年前まで婚約者だったんだ。……でも僕はヴィオレッタが苦手で、あまり良い婚約者とは言えなかったかも知れない。……ヴィオレッタは、僕の事情を知ってはいたけど、僕が国王になる可能性がある事や、公爵家の人間だし、顔も好みだからって、婚約してくれて……。でも、それを隠す気もなくて……。僕は、なんだか冷めてしまっていたんだ。」


……。


確かに、将来性と家柄狙いで、後は顔が好きって言われて、まるで隠す気もなかったら……ちょっと引くし冷めるかも。


「ヴィオレッタに限らず、貴族の女の子はみんなそうなんだけど、女の子が少ない故に周りからチヤホヤされすぎて、ちょっと我儘なんだ。……だからヴィオレッタは、僕がチヤホヤしない事が不満で……。青い髪のメガネ……シーニーと、コッソリ付き合いはじめたんだ……。だけどある日、それがヴィオレッタの父親に見つかってしまって……。だから、僕たちは婚約者を破棄し、ヴィオレッタはシーニーの婚約者になったんだ。」


そんな事があったんだ……。


「あ、あれ?……でも、その割に、ヴィオレッタ様はアーテル君に未練がありそうだったけど……?」


冷たいアーテル君に嫌気がさして浮気?して、シーニー様の所に行ったんだよね?……なのに、何でアーテル君に未練が???


「……あのさ……どう言ったら良いのかな……。」


不意にアーテル君が言い淀む。


「シーニーは……いわゆるヤンデレってやつ、なんだ。」


「は……い???」


「ヴィオレッタは、チヤホヤされたいが為に、1番刺激しちゃダメな奴に手を出しちゃったんだ。……シーニーは好きになった奴にはとことん尽くす……その代わりに、ものすっごい愛が重いタイプなんだ。」


……。


な、なにそれ、怖っ!!!


「僕とヴィオレッタが婚約を破棄する事になるよう仕向けたのはシーニーだよ。ヴィオレッタはそうは思ってなくて、たまたま自分の父親に見つかってしまったって思ってるけど、シーニーがわざと2人の関係を見せつけたんだ。」


「へ、へえ……。」


……婚約破棄になるような2人の関係を、見せつけた?それってつまり……。う、うん。……考えるの、やめとこ。


「……ヴィオレッタはチヤホヤされたかっただけで、結婚は僕とする気だったんだ。……ヴィオレッタは仲良くしてるけど、同格で幼馴染のローザをライバル視してるから、ローザが王子様の婚約者ってのが気に入らないんだ。だから僕と結婚する事で、自尊心を満たされたかったんだと思う。……でも、シーニーにガッチリ捕まってしまった。……僕が結婚相手に困ってたのは本当だから、僕に未練がありそうな事を言って、また戻って来たかったのかもね。シーニーの愛も重すぎだろうし……。」


「……。」


「でも、さっきホールで僕に未練ありそうな所を見られたから……。……今夜、ヴィオレッタがシーニーの重い愛に押し潰され無い事を、僕は元婚約者として、祈るしかないよ。」


アーテル君はそう言って、悲しげに横に首を振った。


晩餐会で、シーニー様がヴィオレッタ様をジットリ見てたのは、そういう事だったのか……。


不意に、アーテル君に強く抱きしめられる。


「ジョーヌちゃん、僕……ジョーヌちゃんみたいな婚約者が欲しかったんだ。家柄とか、将来とか、魔王とか魔物がって事じゃなく、ちゃんと僕を見てくれる人が……。だから、誰が何て言っても、僕の婚約者はジョーヌちゃんだよ。……それに、僕がこの3年間で、ジョーヌちゃんをビシビシと()()()()、誰もが認める()()()()()()()()婚約者にするから……頑張ってついて来てね?」


……え。







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アーテルの元婚約者、ヴィオレッタが主人公の前日譚はこちら↓↓↓
短編「悪役令嬢に転生したけど、心は入れ替えねーよ。だってヒロイン、マジムカつく!」
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