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ヒミツ君と、悪魔の友達?!

振り返ると、そこに居たのは、黒っぽい服を着た男性だ。……背も高くて、ガッチリしており立派な体格の、偉丈夫。キリリとして、とても整った顔立ちをしてる。ヒミツ君とはタイプが違うけど、かなりのイケメンさんだ。


この人が、ヒミツ君のお友達の悪魔さん???


「あ!来た!……やぁ、ひさしぶり!」


ヒミツ君がパッと顔を綻ばせる。


「……何の用だ。俺なんて大嫌いで絶交なんじゃなかったのか?……あのな、10年近く失踪しといて、ヘンテコな歌と踊りで呼び出された、俺の今の気持ちが分かるか……?」


悪魔さんは不機嫌そうにヒミツ君を睨む。


「えっと、僕に会えて幸せ!……的な?」


「はぁ。……本当にどうしようもないな、お前は。……で、何の用だ。どうせ何か困った事があったから呼び出したんだろ?……わざわざ、そんな懐かしい容姿の人型をしてまで……。」


そう言うと、ヒミツ君を上から下まで眺めて、呆れた様な溜息を吐いた。


「あー、分かる?……この容姿の人型が一番キミは好きかなーって。オシャレして待ってました!!!……どうかな、このスーツ!」


「悪くないが、ブカブカだな。サイズが合ってないぞ、その服。……で、本題に入れ。」


人型のヒミツ君は美形ではあるが、かなり細かった。身長はアーテル君とそう変わらないが、標準体型であるアーテル君の服がユルユルしている。


「ちぇー。オシャレしたのに褒めてもらえなかった。……ま、いっけどさ。あのね、あそこに寝てる男の子がいるだろ?あの子、アーテルって名前なんだ。苗字は秘密だよ?!僕は悪魔なんかにアーテルのフルネームを明かさないのだ!……ねえ、可愛いだろ?」


「お前がすでに悪魔だがな。……???……何者だ???」


「僕が育てた、僕の息子みたいなモンだよ!!!……良い子なんだよねぇ……。頭もいいし、運動神経も良くて、性格がなんとなく僕似なの。……しかも、なかなかのイケメンだろ?」


ヒミツ君は自慢げに、苦しげに眠るアーテル君を悪魔さんに見せた。


「そうか。……だが、なんだか具合が悪そうだな?」


「そうなんだ。だから助けたいんだよ!……アーテルは、僕の悪魔の力を封じてるんだよね?その力を返してもらったらアーテルは楽になるんだ。……ね、出来る???」


ヒミツ君がそう言うと、悪魔さんは目を細めて、アーテル君を見つめる。


「凄いな。……人間のくせに、お前の力を殆ど封じてるのか……。」


「まあね!!!アーテルは凄いから!」


「お前がドヤる意味が分からない。……あの子から力を返してもらうなら簡単だ。……そうだな、これを使え。」


悪魔さんはそう言うと、懐から短刀を取り出して、ヒミツ君に渡す。


「これ、どうすんの?」


「ん?それで心臓をグサってひと突きすればいい。かなり切れ味がいいから、苦しまないで逝ける。」


!!!


……ヒミツ君のお友達、やっぱり悪魔です!!!


私は思わず、眠ってるアーテル君を庇うように立った。


「ちょっと待った!……アーテルを殺すとかはナシで!!!もう、これ返すよ!……いいかな、僕はあの子を助けたいんだよ?子供みたいなモンって言ったよね?……それ、理解してます???……ねえ、なんとかしておくれよ〜!!!」


ナイフを返しながら、ヒミツ君は悪魔さんにねだる。


「まあ……出来なくもないが……。……根こそぎ持ってく感じになるぞ?……そいつ、かなり魔力があるよな。それも全部持っていっていいなら可能だ。……あと、やってやってもイイが、お前は大人しく俺の元に帰って来るのが条件だ。」


悪魔さんはそう言って、ヒミツ君を見つめる。


「うー……。分かったよ!!!アーテルが助かるなら……帰る。」


「あ、あの!……悪魔さん!!!……アーテル君は魔力が無いのは困るんです。」


私は思い切って、悪魔さんに話しかけてみた。……私の存在に、まるで気付いてないみたいなので。


「!!!……こ、この子は?」


「可愛いでしょ〜?!……ジョーヌちゃんだよ?」


「ああ……。こ、この子……すっごく可愛いな……。……かなり、俺の好みだ……。」


「……分かるぅ!ジョーヌちゃんて、やっぱりキミのタイプだよねぇ?昔から大好きだもんね、キミ……。背が小さくて、胸がデカくて、優しそうな顔立ちの、小動物系の女の子。……でもダメー!!!その子はアーテルのお嫁さんにする子だから、キミには連れて行かせません!」


悪魔さんは「……残念だ。」と呟いてから、私をジッと見つめる。


「あのな、悪魔の力だけを取り出すのは難しいんだ。あの子が魔力で絡めとっているから、全部取り出して、余計な部分を全部俺の力で燃やして、コイツに戻す事なら出来る。……残念だが、それ以外のやり方は俺には出来ない。」


「あ、あのっ!!!そしたら、私の魔力を、アーテル君にあげたり出来ますか?!……この国で魔力が無いのはとっても困るんです。……特にアーテル君の立場だと……。」


「……出来なくはないが、それをしたら、お嬢さんが困るんじゃないか?」


「良いんです!……私は、魔力なしで大丈夫なんです。特に困りませんから。……お願いします。必要なら、私もオジサンと一緒に行ってもかまいません!……だから、どうか私の魔力をアーテル君に移してくれませんか?!」


私が必死でお願いすると、悪魔さんは頭を掻いた。


「……オジサン……ねぇ。」


「まあ、ジョーヌちゃんは18歳だからね?……キミ、もう何歳だか分からないだろ???……ちなみに、僕もオジサン扱いされてるんだよ。……うわぁ、お揃いだね?!」


「嬉しくないお揃いだな、それ。……うーん……複雑な気分だよ。数百年ぶりに、好みの女の子に会えたのに、オジサン扱いかぁ……。長生きするのは微妙だな。……まあ良いか。可愛さに免じて、特別にオジサンがお嬢さんの、お願いを聞いてやろう!」


「あ、ありがとうございます!!!」


私はペコリと頭を下げた。


「では、始めるぞ。」


悪魔さんはそう言うと、アーテル君に手をかざした。




◇◇◇




「ヒミツ君、アーテル君に会わないで行っちゃうの?グライス先生にもお別れしない?」


ヒミツ君は再び猫に戻って、悪魔さんに抱っこされている。

アーテル君の服がブカブカで格好悪いと言われたので、拗ねて猫に戻ったのだ。


「僕さ、サヨナラって苦手なんだよ。……猫はみんなそうだよ?……だからフラッといなくなるんだ。それが丁度いいんだよ。」


「……。」


「ジョーヌちゃん、泣かないで。僕は悪魔だから……地獄から見守ってるよ。」


えっと……ちょっと縁起でもないよね……それ。


「また、会える?」


「うん。もしかしたらね?……それに、離れていてもアーテルもグライスもジョーヌちゃんも忘れない。ずーっと愛してるよ?悪魔の愛はしつこいからね?……あ、そうそう、グライスにはコレ餞別だって渡してあげて?」


ヒミツ君はそう言うと、どこからか自分の毛玉ボールを取り出した。……毛玉ボール……可愛いけどさ……虫が湧くんだよね。グライス先生に渡して大丈夫かな……???


ま、いっか……。


「そろそろ行こう。……お嬢さんは、髪色や目の色が変わってしまったが、大丈夫か?」


悪魔さんがちょっと心配そうに、私の顔を覗き込む。


……そう、私はアーテル君に魔力をあげたので……黄色ではなくなってしまったのだ。


どうやら魔力自体に色があり、それが髪や目に出ていたらしく、全ての魔力を失った私は、薄い茶色の髪に、やっぱり薄い茶色の目の、地味顔を引き立てる、地味カラーに変身したのだ。


ちなみに、私が魔力をあげたので、アーテル君は黄色くなってしまった。……寝てるからアーテル君はまだ気付いてないけどね?


目が覚めて、鏡を見たら驚くかな……?黄色いアーテル君もなかなかカッコいいよ?……だから、許してね?


「へへへ。……イマイチですかね?」


「いや、可愛い!!!すごいイイ!!!……その優しげな色合いが、さらに柔らかな雰囲気になってて、とても可愛い!!!実に好みだ……!!!……お嬢さん、やっぱり一緒に行かないか……?」


「おい!!!……ジョーヌちゃんは連れてかない約束だろ?もう、行こうよ!僕の気が変わらないうちにね!」


ヒミツ君はそう言って、悪魔さんの手をカプリと噛んだ。


悪魔さんは苦笑すると、ヒミツ君を抱いて……スウッと消えてしまった。




◇◇◇




ヒミツ君達が去って、私は眠っているアーテル君を見つめる。


顔色も良くなったし、寝息は安らかだ。


悪魔さんが、魔物を取り込みすぎて傷ついてしまっている身体を回復させるために、眠らせてくれたのだ。


『ほっぺにチュッてしてくれたら、やってやる……。』って言われたので、お願いした。悪魔さんのほっぺは、ちょっと脂っぽい感じで、ベタついていたけど……父さんだと思えば余裕だった!


アーテル君、起きたら黄色くなってて驚くかな???


アーテル君には及ばないけれど、私も魔力はある方だったし……それで我慢してね???


黄色くなってしまった、アーテル君の髪を撫でる。

色が変わっただけで、髪質は変わらないみたい。サラリとしたコシのある髪が、手から滑り落ちる。


「アーテル君、大好きだよ。……ジョーヌからの、最後のプレゼント、受け取ってね?……魔力の無い私はもう、アーテル君と一緒には居られないけれど、ジョーヌの魔力はずーっと一緒にいるからね?……立派な大公様になって……。」


最後にそっと口付けを落とす。

うっすらと、ハチミツの味を感じて……ちゃんと私の魔力がアーテル君に移行したんだなってのを、実感した。


「アーテル君、さようなら。」


私はそう小さく呟いて、アーテル君の寝室を後にした。



寝室を出ると、新館の入り口付近にグライス先生が居た。


「……ジョーヌ?!……何だ、その頭……。え、目の色も……?……どうしたんだ?!」


私はグライス先生に毛玉ボールを渡して、起きた事を掻い摘んで説明した。先生は驚いていたが、私の髪や目を見て納得したみたいだった。


「……なので先生、私はもう学園にはいられません。……退学手続きをしたいと思います。」


「……ジョーヌ。……ありがとう。……本当に、すまない。アーテルの為に……。お前の魔力まで……。」


「先生、私は……学園に入るまで魔術とは無関係で生きてきましたし、貴族社会も知りませんでした。だから、魔力なんて無くても困らないんですよ?……でも、アーテル君はそうはいきませんから……。いいんです、これで。私の代わりに、私の魔力がアーテル君とずっと一緒にいてくれます。」


「ジョーヌ……お前はこれからどうするつもりだ……?」


グライス先生の言葉に、私はしばらく考え込んだ。


「そうですね……。学園に入る前の予定どおり、アキシャル国へ留学したいと思います。もう治療の魔術も使えませんし。……私、父さんみたいな薬師になるのが夢だったんですよ!」


私は明るくそう言い切って、先生に背を向け、そのまま歩き始めた。


……だってさ、泣いてる所は見られたくなかったんだもの。







残り、あと3話になります。


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[一言] あと3話だなんてショックです!
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