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姉さんの、結婚式と両親の秘密?!・前編

学年旅行が終わると、秋も深まってきて、姉さんとモーブ様の結婚式がやってきた。


貴族の場合、小さな頃から婚約者がいる事が多いが、それでも普通は結婚すると決めてから、準備には1〜2年かけるそうなので、姉さん達の場合は、超がつくスピード婚だ。


それもあってなのか、式はモーブ様が格式高いパールス侯爵家の次期当主であるにも関わらず、こじんまりした身内だけのものであった。


……とはいえ、式を挙げる教会は、街によくある小さなものではなく、王族やら高位貴族が挙式に使う大教会だったし、その後の披露宴も親族とごく親しい人を呼ぶだけのこじんまりしたもの……とは言っていたが、パールス侯爵の広大な庭を使った大規模なガーデンパーティーになるそうなので……我が家からみたら、十分に豪華なものだったけれど。


ヴィオレッタ様によると、モーブ様なりの気遣いなんじゃないかって話だ。……全く社交界慣れしていない姉さんを、いきなり沢山の貴族が集まる式や披露宴で、いわれなき悪意に晒したくないのだろうと言う。


「うち、お母様が社交界では偉そうにしてるから、まずは根回ししてからにする気なんじゃないかしら?……お兄様はもちろんだけど、お父様もお母様も、お義姉様には余計な心労はかけたくないんだと思う。……ゾンビピッグマンと結婚してもいいなんて奇特な人はそうそう現れないし、何よりお義姉様は……お兄様を、お金や家柄だけじゃなくて、心から愛してくれる人だから……我が家としても、大切にしたいのよ……。」


私はヴィオレッタ様の言葉を聞いて、姉さんは本当に素敵な人と、素敵なご家族と、縁を結べたのだと思った。



挙式は、本当にアットホームな式だった。参列者はお互いの両親と家族、私の婚約者であるアーテル君とヴィオレッタ様の婚約者であるシーニー様のみで、和やかなムードで進められた。……ちなみに、モーブ様の計らいで、リッチーとエイミまで参列させていただきました。


寂しく無い様にと、教会の中には大量の花が飾られていて華やかだったし、新婦を連れた入場で、父さんが耐えきれずに号泣してしまっても、本当の身内しかいないから、みんな笑顔だった。


その後、姉さんを受け取ったモーブ様も号泣し、誓いの言葉が嗚咽混じりになっちゃったり、誓いのキスで躊躇うモーブ様に姉さんからキスしたり……メチャクチャといえばメチャクチャだけど……でも、心が温かくなるような、そんな素敵なお式だった。


ちなみに、最後に姉さんの投げたブーケは、アーテル君とヴィオレッタ様が、ものすごい火花を散らして争い、ヴィオレッタ様がアーテル君を転ばせてゲットした。


兄さん、私、シーニー様に、ヴィオレッタ様の弟さんのウェステリア君は、あまりにアツい小競り合いに呆然として、まるで動けませんでした……。


花嫁さんのブーケ、ちょっと欲しかったんだけどね……。




◇◇◇




「……素敵な結婚式だったね。」


身内だけの気の置けない披露宴とはいえ、やはり侯爵家のパーティーな訳で、私は人の多さによる疲れと、姉さんがお嫁に行ってしまったという寂しさとで、端に置かれたガーデンソファーでボンヤリとしていた。


「アーテル君……いいの?みんなアーテル君と話したそうにしてるよ?」


「ん。いいの。僕は、お疲れ気味な僕の婚約者が気になってるからね?」


そう言って、私の隣に腰を下ろす。


どうやらヴィオレッタ様の家とアーテル君の家は派閥というか、仲良くしている家が違うらしく、こういう私的なパーティーにアーテル君がいるのは珍しいそうで、みんなアーテル君と話したがっていたのだ。


「なんか、姉さんが結婚しちゃって、少し寂しくって。」


「ノランさんも向こうでウェステリア君と泣いてた。……なんか気が合うみたいで、あっちでずっと一緒にいるよ?ウェステリア君も猫が好きなんだって。ヴィオレッタはヒミツを毛嫌いしてたからちょっと意外。」


「兄さんは、子供と年配の方の扱いは得意なんだよね?……それにウェステリア君も寂しいんじゃないかな?ヴィオレッタ様によると、モーブ様の事、すっごく尊敬してるらしいから……。」


アーテル君が言っていた方を眺めると、ウェステリア君が兄さんとリッチーとエイミを連れて歩いていた。


式の後に、マナーやこうしたパーティーには縁がなくて、貴族だらけの披露宴への出席をビビる兄さんに『僕が助けてあげます!』とウェステリア君が言ってくれたのだが、本当に助けてくれているみたいだ。


見た目だけは貴族のご令息並みに良い兄さんに、ご令嬢が話しかけたそうに近寄ってくると、ウェステリア君の小さな背中に逃げ込んでいるらしく、堂々と歩くウェステリア君の後ろを、兄さんが猫たちを抱えてビクビクしながら付いていっている。


……ちょっと情けなさすぎる気もするが、それが兄さんなのだ。……ありがとうウェステリア君!


「……でもさ、兄弟っていいよね。僕、ひとりっこだから、寂しいってのすら羨ましいよ。まあ、正確には会ったことない兄弟は居るんだけどさ。……僕ね、それもあって、自分では3人くらい子供が欲しいって思ってるんだよね?ジョーヌちゃんはどう???」


「えー、私かぁ……そうだなぁ、私も自分が3人兄弟で楽しかったから、そのくらい子供が欲しいなって思ってるかも。」


「うわぁ!僕たち、気が合うね!……じゃあ、お互いに頑張ろうね?僕もすんごーーーく頑張るから!」


ん???


私がポカンとアーテル君を見つめると、アーテル君は嬉しそうに笑っている。


「頑張る???」


「だって、どうしたって産むのは母親になるジョーヌちゃんなんだし、そこは頑張るしかないじゃない?」


「あ、そう……だね?」


確かに3人も出産するのは、大変だし頑張らないとね。

夢とか希望の話だと思ってたから、何となく言ってしまっただけなんだけど……。


「でも、後は僕が頑張るから!……だってジョーヌちゃんは、僕の為に3人も赤ちゃんを産んでくれるでしょう?……だから、あとは父親になる僕が頑張らなきゃねっ!!!何があっても、3人とジョーヌちゃんは僕が守るよ!!!」


「えっ?!……今の、そういう話?!?!」


「そういう話。……いやぁ、早い段階で家族計画について話し合えて良かったよ。……ちゃんと支えるから、どうかなにとぞよろしくお願いします。」


アーテル君はそういうと、頭をペコッと下げた。


「えええっ!!!よろしくされないよーーー?!」


「えー?よろしくされてよー?」


うーむ……。


何気ない会話から、どうしてこうなっちゃうんだろ、いつも?!?!



……。


ふと見ると、母さんはヴィオレッタ様のお母様と楽しげに話しており、父さんも侯爵様と自然に話している。


……庶民上がりなはずなのに、母さんも父さんも、マナーが完璧なのは、ちょっとビックリだ。


詳しく話したがらないから不明だけど、駆け落ちして来たくらいだし、父さんと母さんはアキシャル国では良いお家の生まれだったのかも知れない。


「ん。……気になる?」


私が父さん達をジッと見ているのに気づいたアーテル君が声をかけてきた。


「あ、うん。……父さんと母さんが、意外な程に場慣れしてて、ちょっと驚いたって言うか……。アキシャル国から駆け落ちして来た事しか知らないし、駆け落ちする前の話はあまり詳しく話したがらないから……。でも、もしかして2人はあんなんだけど、良い家の生まれだったのかなーって思ったの。」


私がそう言うと、アーテル君は少し困った顔になる。


「あのさ……ジョーヌちゃん……やっぱりまだ、お父様とお母様から昔の事、聞いていない?……ご両親が話さないなら、僕から話さなきゃって思っているんだけど……。」


「え?……アーテル君は何か知ってるの?」


「……うん。それに、パールス侯爵もご存知だよ。今回の婚姻に向けて、アマレロ家を徹底的に調査したはずだからね。それから、シーニー達側近の家系の連中も知ってると思う。一応、僕は次期国王候補でもあるから、僕の側にいるジョーヌちゃんについては、調査済みじゃないかな。」


……そ、そうなんだ。


でも、きっと父さんたちの秘密って、さっき私が考えた様な事じゃないかな???


社交界に出てみたから分かるんだけど、父さんと母さんのあの感じ……付け焼き刃にはとても見えない。父さんはそこそこだけど、母さんは、かなり洗練されてて、ヴィオレッタ様のお母様とも遜色ないよね……。


高位貴族の娘だった母さんと、下位貴族だった父さんが恋に落ちて、認めて貰えずに2人で逃げた……とか、そんな感じなんじゃないだろうか?


「もしかして、父さんと母さんは……アキシャル国から駆け落ちしてきた、アキシャル国の元・貴族だったりするの?」


「うん、だいたい当たり。……あのね……ジョーヌちゃんのお父様はね、アキシャル国の伯爵家の出なんだ。」


「父さん……伯爵家の出なの?!?!」


伯爵家って、かなり偉いよね?!上位貴族では?!そうすると、母さんの家は……さらに上の……侯爵家とかって事?!


驚いてアーテル君を見つめると、アーテル君はコクンと頷いた。


「アマレロ家はね、アキシャル国で、代々薬草の栽培方法から、薬の処方に至るまでを研究してきた伯爵家だよ。……但し、欲がない家系だからお金持ちではないらしいけれど。それでも、あの国では無くてはならない家だし、とても尊敬されてる。ラランジャさんが留学中の薬師学部なんかは、お父様のご実家が私財を投げ売って設立された様なものらしいよ。」


「へえ……。」


伯爵家なんて聞いて、ちょっとビックリしたけど、説明を聞くと、なーんだって感じ……。


アーテル君は上手い言い方で褒めてくれているが、うん……。まさに父さんの実家って感じ。……きっと兄さんや父さんみたいなお人好しか、薬学バカしか生まれない家で、貧乏だけど、好きにやって楽しく暮らしてる様子が目に浮かんでくる。……学部の設立も、きっとお薬を好きに研究できるからって、勝手にお金をドンドン注ぎ込んじゃったとかなんじゃないかな?父さんの親兄弟ならありそうだよね……。


「それでその……。ジョーヌちゃんの……お母様はね……、アキシャル国の王族……今の国王の末の妹に当たる方なんだ。」


……え。


私はアーテル君が何を言っているのか理解できずに、アーテル君をポカンと見つめる。


「今……何て言ったの……?」


「ジョーヌちゃんのお母様は、アキシャル国のお姫様だったんだよ。」


母さんが……元・お姫様……。


「そしてね、君のお父様と駆け落ちしなければ、この国の国王の弟……僕の父に嫁入りするはずだった人なんだ……。」


私はアーテル君の言葉に……何も言えなくなってしまった。





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アーテルの元婚約者、ヴィオレッタが主人公の前日譚はこちら↓↓↓
短編「悪役令嬢に転生したけど、心は入れ替えねーよ。だってヒロイン、マジムカつく!」
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