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学年旅行も、波乱の予感?!

学年旅行は2泊3日で日程はこうだ。


1日目

午前中は列車で移動し、午後から団体で大聖堂と王宮跡を見学。


2日目

午前中は団体で伝統工芸品である魔力玉作りをし、午後から自由行動。


3日目

午前中は自由行動で、午後から列車で学園に戻る。


こんな感じだ。


到着した私達は、昼食を頂いた後に大聖堂を見学して回っているところだ。


「大聖堂……といえば、神官長の家系のリュイ様ですよね?」


班が同じなので団体行動だが隣に居るアーテル君に聞いた。


「うん。そうだね。……この大聖堂を取り仕切っている神官は、確かリュイの叔父だったと思うよ。」


「あー……。ジョーヌ、あのね、この国の神官って、ちょっと変わっているのよね?」


近くにいるヴィオレッタ様も私達の話が気になった様で、会話に参加してくる。


「え?そうなんですか?」


「ええ。……普通はこの宗教の神官って独身なのよ。でも、この国ではほとんど結婚しているの。修道院は男子禁制や女子禁制だけど、そこに居る間だけの話で、入ったら出られないって訳でもないのよ。本人が希望したら出て行けちゃうの。他の国の修道院はもっと厳格なんだけどね?」 


へえ……そうなんだ???


「まぁ、この国は……魔力がある人には、できる限り子供を産んでもらいたいからね?……宗教に人生を捧げるのは素晴らしいけど、機会があったり気が変わったら、是非ともよろしく!!!ってのが根底にあるんだよねぇ……。」


アーテル君が苦笑気味に言う。


「そうなんですか。私はてっきりこれが普通なのかと思ってました。」


「うーん、この国で育つとそうなるわよね。……でも、国外だと、独身が普通だから、この話をするとかなり驚かれるのよ。……外交なんかで他所の国に行く時は、ちょっと注意が必要なの。」


へええぇ……。タメになります!!!

アーテル君も、ウンウンと頷いている。


「……あれ、そう言えばリュイは?」


「あら……列車では別れてしまったけれど、団体行動の時はこっちに来るって言ってたのに、どうしたのかしら???」


アーテル君とヴィオレッタ様がキョロキョロとリュイ様を探す。

因みにシーニー様は先頭で誘導係として旗を持たされている。


「あ。あれ、リュイ様では???」


聖堂の見学ルートを進む私達の最後尾で、チビッコ王子の一団……いや『鉄道友の会』に囲まれているリュイ様を発見し、私は2人に声を掛けた。


「げ。厄介なのに捕まってるな。」


「何故、リュイが捕まったのかしら???」


私達はとりあえず、リュイ様の救出に向かった。


「!!!アーテル!ヴィオレッタ!ジョーヌさん!!!……助かった。こいつら、離してくれないんだよ!!!」


リュイ様は情けない声を上げるが、『鉄道友の会』のメンバーはリュイ様を手放す気は無いらしく、数人がリュイ様の上着を掴んでいる。


ちなみにメンバーはチビッコ王子、側近の3人と、うちのクラスの男の子の3人だ。


「「「リュイ先生!!!行かないで!!!一緒に回りましょう!!!」」」


「……ん。リュイも鉄道好きだったのかな?」


アーテル君はそう言って首を傾げる。


「ち、違うんだ!……別に嫌いでもないけど……。その……。ホームで彼らが機関車をスケッチしていたろ?それで僕も……ちょっと書いてみたんだ。そうしたら、見つかっちゃって……巨匠扱いされてるんだよ!!!」


リュイ様は器用で、確か絵も上手かった……。


「……模型作りも上手いですもんね……。」


思わず私がポロっと漏らした言葉に、『鉄道友の会』メンバーの顔色が変わる。


「「「鉄道……模型」」」」


「ひえ!!!ジョーヌさん?!なんて事を言うの?!……ちょ、ちょっと……やらないよ、やらない???鉄道の模型なんか……絶対に作らない!!!……とは……言わないけど!!!」


……。

……。

……。


えーと……。それ、ちょっと面白そうとか思ってないかい、リュイ様よ……。


「アーテル、ジョーヌ行きましょう。リュイは新たな友人とこの旅行を楽しむはずよ。……ねえ、リュイ。魔力で模型の機関車を動かしたらどうかしら???」


「え、それ……面白そうだね?何台か走らせて並走させたり、すれ違わせるのもいいかも……って、あ!!!」


リュイ様は目をキラキラさせた『鉄道友の会』メンバーに取り囲まれてしまう。


「……行こう、ジョーヌちゃん。もうリュイは救出できそうもないよ。」


「ええ。鉄道の沼って深いらしいわよ……。リュイは、私とシーニーが揉める原因も作ったし……まぁ、『ざまぁ』ってトコね。」


私はそれでも少し心配で、何度もリュイ様を振り返って見ていた。しかし、『鉄道友の会』メンバーが活発に模型作りのアイデア出しを始めると、リュイ様も目を輝かせはじめた。


魔力も使うならチビッコ王子達には勉強にもなるだろうし……ま、いいのかな???




◇◇◇




王宮跡の見学も終え、ホテルにやっと到着すると、ドッと疲れが出てしまった。

ホテルは2~3人が同室で、私はヴィオレッタ様と一緒のお部屋だ。


私は部屋に着くなりベッドに倒れ込んだ。


「ねえ、ジョーヌ。シーニー達の部屋に遊びに行きましょうよ。旅行のお楽しみと言えば、枕投げよ!!!一戦交えに行かない???」


「ええ???何ですか、ソレ???」


確かシーニー様はアーテル君とリュイ様と同じお部屋だったはず。……でも枕投げって???


「枕を投げ合うのよ!絶対に盛り上がるから行こう!」


「えー……。なんか疲れましたよ。」


「ジョーヌは疲れてないわよ?列車でグースカ寝ていたじゃない!」


……それはそうかもだけど、疲れたかどうか決めるのはヴィオレッタ様じゃなく私じゃ……?


そう言いかけたけど、ヴィオレッタ様は私を引きずるようにして、アーテル君たちの部屋にやって来てしまった。


……。

……。


コンコン。


ノックをすると、珍しくメガネをしていないシーニー様が顔を出した。お風呂上がりなのか、なんだかホカホカしている。


「シーニー、遊びに来たわ!」


「……遊び……ですか。……生憎ですが、今はアーテルがシャワーを浴びていますし、リュイはアウルム王子たちの一団が来て連れて行ってしまいましたよ?」


「ふーん。まあ、ちょうど良いわ。2対2のゲームで戦いましょう。」


シーニー様は眉根を寄せた。


「見回りも来ますし、ゲームなんて止めましょう。今回の旅行では部屋の行き来は禁止なんですよ。」


「……えー!……リュイは王子のトコに行ったんでしょ?なら私たちがシーニーのトコに来ても良いじゃない?コッソリやればバレないわよ。……それに私たち夫婦なんだし?……ね?あ・な・た?」


ヴィオレッタ様はそう言うとシーニー様にしなだれかかる。


「……ッ。……もう、見つかって怒られても知りませんからね。」


シーニー様は渋々ドアを開けると私たちを中に入れてくれた。


「3人部屋って、広いんですね。」


アーテル君もだが、シーニー様やリュイ様も育ちが良く部屋は片付いている。下手したら私たちの部屋の方が散らかってるかも?!?!


「まあ、ベッドが3台ありますから。……で何をするんですか。」


シーニー様は自分のベッドに腰をかけた。

枕元の机には列車で読んでいた小説とメガネが置かれている。


「枕投げよ。……アーテルが出てきたらやりましょう。」


「……何ですか……それ……。」


シーニー様も『枕投げ』が何なのか知らない様で、不思議そうな顔で首を傾げる。


「言葉の如く枕を投げるのよ。」


「なるほど、準備いたしましょう。」


シーニー様はそう言うと、3台のベッドから枕を集める。

ひとつのベッドには枕が2つあるから、合計で6個の枕を1箇所に置くと、床にテープを貼った。


「シーニー、何でテープなんて持っているの?」


「一応、文房具一式は持って来ています。ノリやハサミもありますよ?」


さすが世話焼きオカンだ。

準備万端なのである。


「……てかさ、そのテープ……なに???」


「え?枕を投げるんですよね?飛距離を競うゲームなのでは?……なのでこの位置から投げるという目印ですよ?」


「シーニー!!!違うわ!まるで違う!!!……枕はね、ぶつけ合うのよ。」


ヴィオレッタ様は呆れたようにそう言うが……。


「あの……ヴィオレッタ様。……私もシーニー様方式の枕投げが良いです。ぶつかったら痛いですし。」


「え?!……ジョーヌまで?!……枕だもの、ぶつかっても痛くないわよ。」


「そんな事はありませんよ。顔に当たれば多少は痛いです。……飛距離を競うんで良いではありませんか?」


「えー……。絶対に盛り上がらないわよ!」


ヴィオレッタ様は不満そうに私とシーニー様を睨むけど……。痛いの嫌だし、どうせなら平和に遊びたい。


「とりあえず、やってみませんか?アーテル君もまだシャワー浴びてるし……。一度やって、つまらなかったら、ぶつけるのをやるって事で……。」


「まあ、いいけど。」


そうして私たち3人で枕投げを始めたのだが……まあ、つまらない。あまり腕力のない女性である私とヴィオレッタ様の枕はたいして飛ばず、当たり前だが男性であるシーニー様の枕が1番飛距離を伸ばした。


「ほら!シーニー方式じゃつまらないって言ったでしょ?シーニーが勝つに決まっているんだもの。」


「……まあ、そうなりますか。あ!私が左手で投げるのはどうでしょう良い勝負になるのでは???」


シーニー様はそう言うと左手で枕を放り投げた。

左手でコントロールが効かなかったのか、枕はスポッとその手を抜け、後ろに飛んで行った。


「うわっ!!!……ちょ、ちょっと?!いきなり何?!」


背後から、アーテル君の驚いた声が聞こえる。

シャワーから出て来たところに枕が飛んで来て驚いたのだろう。


「あ!すみません、アーテル!……あっ!!!」


シーニー様が謝りながら、変な声を上げたので、そちらを振り向くと……アーテル君は……腰にバスタオルを巻いただけの姿だった。


「ひゃっ!!!」


「うわっ!!!……えっ?!な、何でジョーヌちゃんとヴィオレッタがいるの……。」


「へえ……。アーテル、なかなかイイ体してるわね……。」


ヴィオレッタ様はニヤニヤと上から下まで見つめてそう言った。……ヴィオレッタ様、そ、それ逆セクハラだよ?!?!


「僕を変な目で見るなよな、ヴィオレッタ!!!……シーニーしか居ないと思ったから、着替えがカバンの中なんだよ!ちょ、ちょっとシーニー僕のカバンを取ってよ!下着もその中なんだ!!!」


アーテル君が焦って声を上げたその時、部屋の入り口のドアがバンッと開いて、リュイ様が飛び込んで来た。


「大変だよ!!!先生が見回りにくるんだ!!!」


「「「「えっ?!」」」」










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