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第十五話


「実はとっておきの片手剣があって、それもよかったら見てもらえたらと……よいしょ」

 言いながら、テオドールはバッグから例の片手剣を取り出していく。


「こ、これは……」

 エイレムはその剣がテーブルに乗せられたと同時に声を失う。剣が放つ強い力を感じ取っていた。


「『魔剣バルムンク』、それがこの剣の名前になります。元々は呪われていた武器でした」

 その名前をリザベルトが口にする。


「……」

 名前を聞いたことはなかったが、その剣が発する力をエイレムは感じ取っていた。


「魔剣バルムンクが呪われた理由は、昔邪竜を斬った時にその血を浴びたせいで、持ち主もその剣も呪われてしまったんです。ただ、持ち主の家族が剣に聖水を長年かけ続けたことで呪いはかなり薄まっていました……まあ、だから比較的簡単に解呪できたんですが」

 テオドールはまるで見てきたことであるかのように語る。


「……なぜそこまで?」

 知っているのか。当然の疑問をエイレムは口にする。


「それは……、極秘です!」

 テオドールは冗談めかしたように言うが、実際のところは過去の記憶であるため、それをここで明かすわけにはいかなかった。


「なるほど、明かせないほどの秘密ということですか。わかりました……が、さすがにこれを買うわけにはいきませんね」

 エイレムは厳しい表情でバルムンクを見ている。


「えっ? それは、この剣について知っている情報を言わなかったからでしょうか?」

 テオドールは思い当たることがそれしかなかったため、質問する。


「ふふっ、さすがに言えないことを強要するようなことはしませんよ。そうではなくてですね……」

「――値段と需要だろ」

 答えたのは、ずっと黙っていたジャーノだった。


「そのとおり」

「まあ、そうだろうな。この剣は他の武器と比較して、格が違いすぎる。これほどの剣を買うとしたら、百万じゃきかない。それに、この剣をエイレムが持っていても有効活用できないだろ。騎士団を持っている領主や、それこそ実力のある冒険者に売るのがいいだろうな」

 ジャーノの説明にエイレムは何度も頷いている。


「なるほど……確かにそうですね。誰かアテがあるといいんですけど……」

 肩を落としながら、テオドールはチラリとエイレムのことを見る。


 冒険者ギルドのギルドマスターともなれば、様々な人脈を持っているはずであり、そこを引き出そうとテオドールは演技をする。


「……アテはなくもないですが」

「本当ですか!」

「え、えぇ……」

 食い気味なテオドールの反応に、エイレムは少し引きながら答える。


「是非、ご紹介下さい!」

 テオドールは深々と頭を下げる。


 人脈は商売にとって大事なものであり、それを手に入れられるなら頭を下げるくらい安いものだった。


「いやいや、頭をあげて下さい! はあ、これだけ色々と珍しい武器を持ちこんでくれて、その若い見た目で頭を下げられたら断れないじゃないですか……」

 その反応に頭を下げたままのテオドールはニヤリと笑い、頭をあげたところで今にも泣きそうな表情を作っている。


 テオドールは自分が子ども扱いされる年齢であることを理解しており、その見た目すらも有効に使おうと考えていた。


「ふう、なにかテオドールさんの手のひらで踊らされているような気がしますが……それでも、ジャーノが認めた相手で、相当な目利きのようですからね。私としても繋がりを持っておいて損はしないと判断したうえですよ」

 流されているだけではないことをエイレムは強調する。

 ただただ流されていると思われるのは、さすがにギルドマスターとして看過できるものではなかった。


「えぇ、もちろんですよ。それで、この剣を買ってもらえるかもしれないというアテはどなたになるのでしょうか?」

 テオドールの質問にエイレムは腕組みをして何やら考え込んでいる。


「……最初に一人思い浮かんだのですが、その人じゃないほうがいいような気がしています」

「その一人っていうのは、この街の領主か?」

 ジャーノの問いに、エイレムは頷く。


「なるほどな……俺もあいつはやめておいたほうがいいと思うぞ」

「やっぱり! そうだよねえ、あの人はテオドールさんとは合わない気がする。ただ……お金だけは持っているし、しかも美術品や価値のある武器防具の収集なんかもしているから、きっとこの剣にも興味を持つはずなんだ……なんだけど」

 テオドールはげんなりした様子の二人の会話を聞いて首を傾げる。その人物の条件を聞く限りでは願ってもない相手である。


「何か問題でもあるんですか?」

 当然の質問を投げかけたのはリザベルトだった。


「うーん、あんまり人のことを悪くは言いたくないんですが……」

「その剣に興味を持ったら、なにがなんでも手に入れようとしてくる、と思う。条件に折り合いがつかなかったとしてもな。それに、さっきエイレムが言ったが、あいつは収集することが目的だから、その剣が有効に使われることはない」

 テオドールが商人として頑張りたいという気持ちを聞いているジャーノは、武器を売って、そこから評判が広がるほうがいいのではないかと考えていた。


「なるほど、確かにその人に売ったのでは、そこからの広がりがないですね……その人を避けた場合、別の人を紹介してもらうことはできますか?」

 テオドール自身も領主にこだわりがないため、別の人物でも問題なかった。


「そうですね、ちょっと遠くになりますが王都の……」

 エイレムがそこまで言ったところで、扉がバタンと大きな音をたてて開かれた。


「失礼するぞ!」

 大きな声、大きな足音で部屋の中に入ってきた人物は、身なりのいい、およそ高級の部類に属する貴族服を身に着けている。


 人族の男性で恐らく年齢は三十過ぎ、サラサラの金髪ロングヘア―をたなびかせている。


「何やら、ジャーノが誰かを連れ立ってエイレムのところに行ったと下で聞いたぞ! む、そこのお前たちがその同行者だな! 何を俺のいないところで面白そうな話をしているんだ!」

 その人物はデカイ声で四人に声をかけてくる。


 彼の登場に対して、ジャーノとエイレムはがっくりとうなだれながら手で顔を覆っていた。


「やっぱり嗅ぎつけてきましたか……」

「あぁ、もっと早く話を進めればよかったな……」

「おいおい、私がいないと始まらないだろ? 今の話題はなんだったのだ……おぉ! もしかしなくても、この剣のことだな!」

 沈痛な面持ちのジャーノ、エイレムの両名に反して金髪の男性は快活そうな笑顔で、テーブルの上にのっているバルムンクを指さしている。


「お前のことだから食いつくとは思っていたが、どうせまたコレクションにしたいだけだろ?」

 ジャーノは剣のことを早速話題に出した相手に対して、呆れた表情になっている。


「い、いやいや、最近はそのへんは控えているんだぞ? なにせ妻がな……」

 金髪の男性は暗い表情で顔を落としている。


「えっと、そろそろ紹介してもらってもいいでしょうか? まあ、やりとりから予想はついていますが……」

 会話の流れが止まった瞬間を見計らって、なんとかテオドールが割り込んだ。


「あぁ、すみません。彼は……」

「私の名前はマルコ、マルコ=アルフレッソ。この街の領主をやっている!」

 紹介しようとしてくれたエイレムの言葉を遮って、マルコが力強く自己紹介をする。彼がエイレムが最初に挙げたアテだった。



借金:4000万

所持金:400万+約30万





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