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第十三話


「さて、それじゃ残りもやっていこうか」

 テオドールは、泣いている二人を横目に、残りの呪われた武器の解呪に取り掛かろうとしていた。


「おいおい、少しくらい感傷に浸らせてくれてもいいだろ?」

「そ、そうですよ!」

 ジャーノとリザベルトは淡々と準備を進めていくテオドールを見て、そんなツッコミをいれる。


「あー、それは申し訳ないです。でも、こっちも色々とギリギリな状況なんですよ。リザベルトはわかっていると思うけど、明日までにある程度の金を用意しないと……」

「た、確かに、そうでした……」

 感動していたリザベルトはハッと我に返り、現実に引き戻されると、テオドールの借金と自分の借金の取り立てがあることを思い出す。


「この呪いの武器を解呪できたとしても、売り先がないことにはどうしようもないからね。でもまあ、まずは解呪してから考えようかなと――それじゃいくよ……」

 そこから、テオドールは今回手に入れた五本の武器の解呪を行っていく。


「一つ目、終わり」


「二つ目、完了」


「三つ目、完成」


「四つ目、終了」


「五つ目……はあ、疲れた」


 呪いの強さ、深さでいえばジャーノのナイフが最も手ごわかった。

 それに比べれば、こっちの五本は思ったほど苦労することなく解呪を行うことができた。


 しかしながら、さすがに合計六つの呪いを解呪するのはテオドールの負担になっている。

 記憶を取り戻して力を得たといってもこれだけの数の解呪をするとなるとそれ相応の魔力を一気に使うことになり、のしかかるような疲労を感じていた。


「お疲れさん。それで、さっきのはどういうことなのか聞かせてもらってもいいか? 金を用意しないといけないとかっていう……」

 テオドールとリザベルトの二人は若く、それほど急に金が必要になる場面があるように思えなかったため、ジャーノは疑問を投げかける。


「あー、まあ借金があるんですよ。明日払うのは最低金額の一万だから、一万ゴルドあればいいし、それくらいは手持ちでなんとかなるんですけど、ある程度まとまって返したいんですよね……」

 薬草類を大量に売り払った際の金がまだ残っているため、それは十分支払うことができるが、それでも今後のことを考えて余裕を持っておきたかった。


「その借金は全部でいくらなんだ?」

「四千万です」

 ジャーノの問いにテオドールは即答する。


「っ……よ、よんせんっ!?」

 その結果を聞いたジャーノは絶句してしまった。

 およそ年若い子どもが抱えるような金額ではない。


「僕の借金が三千万で、リザの分が一千万で合計四千万ですね」

 淡々と説明しながらも、テオドールは解呪した武器に傷がないか、特別な力がこもっているかをひとつひとつ丁寧に手に取り、確認する。


「リザも見ておいてくれるかな?」

「はい!」

 自分で確認を終えると、それをリザベルトに渡して鑑定してもらう。


「な、なぜそんなに大金を……いや、それを聞くのは野暮だな。それよりも今は力になるために俺ができることを考えよう」

「えっ?」

 思わぬジャーノの申し出にテオドールは驚いている。


 他言無用、呪いの武器を無料で譲ってくれる。


 この二つの条件をのんでくれた時点で、テオドールとしては対等であり、それ以上何かをしてもらおうとは思っていなかった。


「ずっと悩んでいた問題を解決してくれたからには、もっともっと力にならないと恩に報えない」

「いやいや、条件はさっき言ったものだけで十分ですよ!」

 交渉は済んでおり、報酬は平等に得られたと思っていただけに、テオドールはジャーノの言葉に抵抗する。


 しかし、ジャーノは頑として譲らないというように首を横に振った。


「いいんだ。これは俺が勝手に思っていることだから、気にしないでくれ……ちなみに、その解呪した武器はどうなんだ?」

 ジャーノ自身が見た限りではいい武器であることは間違いないが、詳細についてまでは把握できずにいる。


「そう、ですね。この片手剣はとてつもなくすごいものです。他の四つもマジックウェポンなので、かなりの値段がつくのではないでしょうか」

 そう答えたのはリザベルトだった。


 彼女は解呪された武器の鑑定を終えており、それぞれの武器の鑑定結果をメモしてテオドールに渡している。


「……なるほど、僕と同じ判断だね。ちなみに、ジャーノさんのほうでレアな武器の買取相手とか心当たりはないですか?」

 結果はテオドールにとっても満足のいくものであり、これが売れればかなりの金額が手に入ることは想像に難くない。


「そうだな。一人だけ心当たりがあるとすれば……冒険者ギルドのギルドマスターだ。他のギルドと比べても収入が多い。それに珍しいアイテムを手に入れれば、それを冒険者への報酬にも使えると聞いたことがある。だから、買ってくれる可能性は高いだろう」

 ジャーノは唯一のアテを一人あげる。彼と冒険者ギルドのギルドマスターは旧知の仲であり、交渉もしやすい。


「なるほどです。では、早速案内してもらってもいいですか?」

 言うが早いか、テオドールは立ち上がると武器をバッグにしまっていく。


「い、今からか? いや、急いでいるんだったな。よしわかった、行こう」

 急な申し出に驚くジャーノだったが、事情を聞いたからには動くしかないと自身も立ち上がる。


 戸締りを終えてから、三人は一路冒険者ギルドへと向かった。



 冒険者ギルドとは、街の住民や貴族などから依頼を受け、それを冒険者に斡旋する仲介業者のようなものである。

 リザベルトが働いていた錬金術師ギルドとは比にならないほどの人でギルド内は賑わいを見せていた。

 ジャーノが先頭でギルドの中に入ると、三人に視線が集まった。


「うわ……なんか、すごい見られてる気が……」

「ですね……」

 テオドールもリザベルトも実際に冒険者ギルドに入ったのは初めてであるため、慣れない状況に戸惑っている。


「気にするな。武器屋と子供とエルフが連れ立っているのが物珍しいだけだ……それより、俺たちは俺たちの用事を済ませるぞ」

 ふんと気に入らんと言わんばかりに鼻を鳴らしたジャーノはそう言うと周りに目もくれず、空いている受付へと移動する。


「すまない、俺は武器屋のジャーノだ。ギルドマスターに用事があってきた。俺の名前を出して取り次いでもらえるか?」

「は、はい、少々お待ち下さい!」

 背が低めの女性ドワーフ族の受付嬢はジャーノのことを知っているようで、すぐにギルドマスターのもとへ報告に向かっていった。


「ふう、これですぐに会ってもらえるだろ……まあ、また注目を集めたみたいだがな」

 ジャーノは、入った時以上に視線が自分たちに向いていることに気づいて、困ったような顔で頬を掻いていた。


「まあ、目的のためならこれくらいは」

「ですね!」

 ヘラりと笑ったテオドールは既に慣れてきており、ぐっと覚悟を決めた様子のリザベルトも自分がそんな甘えたことを言える立場ではないと自覚していた。


 数分後、受付嬢が戻ってきた。


「お、お待たせしました。こちらへどうぞ!」

「おう、二人とも行くぞ」

 注目されるなか、三人は階段を上がって二階にあるギルドマスタールームへと向かって行く。


借金:4000万

所持金:約30万



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