雪宅
「あの…少しいいですか?」
珍しく雪の方から声を掛けられた、
何かあったのだろうか
「実は…夏芽さんと樹君に頼み事があって…」
「「?」」
声を揃えて疑問符をあげてしまう
「うちの親のことなんだけど…」
「あー…雪さんの親って厳格な方なんだよね」
「うん…そのことで…」
はぁ…とため息を吐きながら雪が続ける
「今まで厳格に育ててきたのはいいけどもしかして友人いない…?って思い始めたらしくて」
「あー…じゃあ安心させてあげたくて?」
「うん…」
「そう言うことなら大丈夫だよ、念のため他の人も呼ぼうか」
「あ…お願いしたいな」
ーーー放課後ーーー
ゾロゾロ
「雪ちゃん、人数揃えてきたよ」
ゾロゾロ
「ありがとう…!?…何人集めてきたの?」
「ざっと16人かな」
「そんなに!?」
「多い方が良いかなって」
それにしても多すぎだろう
雪はその言葉を飲み込む
「じゃ…じゃあ行こう…か」
「「うぇ〜〜い」」
ノリが異次元だな
ーーー雪宅ーーー
「そういえば雪ちゃんの家ってお寺だったね」
「うん…た、只今ー…」
「雪!!」
「あ…お母さん…ただ今…」
「学校は大丈夫だった?何かあったらすぐお母さんに言うのよ?」
「だ、大丈夫だって…それに今日は友達も連れてきてるんだ…」
雪がそう言った瞬間、母は優しい眼差しになる
「そうね…雪はお友達いっぱいだもんね…」
「憐む目で見るのはやめて!!」
「でも…あら?そちらの方々は…?」
「私の…友達」
「あらあらあらあら!!まぁまぁまぁまぁ!!こんなに沢山いらっしゃって!まずはお上がりになって、隣に講堂があるのでそちらに…!」
「もう…母さんったら…」
「「ちょりぃ〜っす!」」(ギャル勢
ーーー講堂ーーー
「あ、広いね〜」
「うんここで父さんが良く話してて…」
「机とかめっちゃあるじゃん」
ガラガラ
「失礼する…」
「「誰!?」」
「雪の父…雪海と言います…この度は雪の為にお集まり頂きー」
「長いって父さん!!」
「雪…お父さんに向かってその口の聞き方はー」
「ああもう分かったから!!」
「それに父さんと呼ぶのは止めろといつも言っているだろう」
「え…?で、でも今は友達もいるし」
「父の呼び名に友の有無は関係なかろう…さぁ…“だでぃ”と呼ぶのだ」
「「「ブッフォ」」」
ヤベェww
腹苦しいwww
岩石みたいな顔でwww
だでぃwww
平仮名でだでぃwww
キツいっすわwww
「い、いえ…なんにも」
やべぇ声が震えるw
「だ…だでぃ……」
めっちゃ赤面しとるやん…
だがそこが良い!!!!
「ふむ…随分と賑やかな若人が来ているな…では一つ話をしよう」
え?
説法ってやつ?
「これはお釈迦様がー」
「それ長くなるやつだし…いいよ」
まさかの娘内容理解してたパターン
「え?雪ちゃん内容覚えてるの?」
「うん…っていうか」
「おい止めろ雪」
「なんかお父さんめっちゃ止めてるよ?」
こういう所雪ちゃんに似てるな
「お前にお父さんと言われる筋合いは無い!」
何言ってんだこいつ
「お父さん修行僧時代に“この話大体応用効くしこれひとつ覚えれば良いや!”ってノリでこれしか覚えてないの…」
「あぁあああああああ!!」
おいおい…
マジかオッサン
それ坊さんとしてセーフか?
「もう良いもん!だでぃ拗ねちゃうもん!!」
突然のキャラ崩壊キター
「ちょ…父さん!!」
「父さんじゃ無いもん!だでぃだもん!」
「あぁぁあああ!もうこんな時に!!」
コンコン
「皆さん、お茶をー…ってあれ?あなた…一体これは」
「あぁ…登代実はこれはー」
お母さん登代さんって言うのか
「父さんが“だでぃって呼べ”って駄々こねてた」
「あぁああああああああ!このだでぃに尊厳を持たせてぇえええ!!」
こいつついに言いやがった
「尊厳…?あったかしら」
お母さん!?
「昔私に求婚してきた時も一つしか覚えてないつまらない説法を聞かせてきたし…」
お父さん…痛すぎるって
「えーだってかっこいいじゃん説法、説法できる男の人かっこよく無い!?」
「「別に」」
娘と嫁のシンクロ攻撃…決まったな
「もういい!だでぃこんな家でていってやるぅううううう!!」
「雪海さん!?」
「はぁ…」
「追いかけなくていいの?雪さんもお母様も」
「追いかけなくても夕飯までには戻ります…」
なんかめちゃくちゃなれた言い方だな
「あの人は雪が小さい頃から雪にベタベタで」
「もう…お母さん…」
「私も、まけない…いえ、それ以上に雪をずっと大事に思ってきております…なので…至らぬ所の多い娘ではありますが、どうかよろしくお願いします」
…
雪のご両親…
お父さんは変わってるけど…どちらも雪さんのことを大事に思ってるんだな
「はい、こちらこそです、これからも雪さんと一緒にいたいですし、むしろ此方からお願いしたいくらいです」
「まぁ…まぁまぁ…!」
?
「ちょっと涙が…外に藁人形打ちに行ってきますね」
ここは娘と同じかい
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