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10/11

暗雲漂う川釣り

ミーンミンミン


ミーンミンミン


ミーンミンミンミン


ミーンミンミンミンミン


ミーンミンミンミンミン


ミーンミン


「あっずぅい!セミうるさい!!」


「どうしたの…?夏芽姉ぇ」


「いやもう今日も駄々暑くてやってらんないわよ」


「この暑さも含めて夏っぽいんだけどな」


「あんたすごいわー…見習いたいわ〜ってあれ?その格好樹どこか行くの?」


「うん、ちょっと山の中の大滝葉川に釣りに」


「へ〜……アクアリウム?」


「うん、ちょっと違うけど水槽増やしたからナマズでも飼おっかなって」


「ナマズゥゥゥ…又どうしてそんな妙な物を」


「え?カッコよくない?」


「うん、これは多分お互い分かり合えない境地だね」


「じゃあちょっと行ってくるね」


「あんまり遅くならないうちに帰るのよ」


「うぃー」


ーーー


さて…久々の釣りだなー


道具も揃ってるし始めるか


餌を付けて…と


せーの!!


大きな弧を描いて水面に吸い込まれていった釣り針


ポチャン


と小気味のいい音を立てたと思うと沈んで行く


さーて…何が釣れるかなと


ーーー


「あれ?樹まだ帰ってない?」


「まぁ…もう少しで帰ってくると思います」


「そうねぇ…」


その時、付けっぱなしにしていたTVの中ではニュースが始まった


「7月11日、お昼のニュースの時間です、強い雨雲を纏って北上してきた熱帯低気圧は奥羽山脈に沿って動き周辺の県では豪雨が予想されます、出来るだけ河川に近付かないようにー」


「「…え?」」


ーーー


ゴロゴロ


ゴロゴロゴロ


あー…なんか曇ってきたな…ナマズは釣れてないけどもう帰るかー…あれ?あれは…泣いてる子供?


「びええええええええええ!!」


「君ー、どうしたの?」


「びえええええええええ!!」


「落ち着いて、何かあったの?」


「ふえぇえ…虫取りに来たら道に迷っちゃったぁあああ…」


「そっか…おうちはどっちかわかる?」


子供は首を横に振り分からないと答える


「んー…君、名前は?」


「涼太…」


「そっか…涼太君、ここはもう直ぐ雨降りそうだから一旦お兄ちゃんと一緒に山を降りよう」


「ふぇ…?」


「そこから交番にでも行って迷子ですって、そうしない?」


「うん…そうする」


「じゃあちょっと急ごっか、もう大分曇って来たし、ここ結構山の奥だから急がないと」


ーーー


「結衣おばさん、私ちょっと迎えにー」


「いや、車で行った方がいいかも…ちょっと行ってくるね」


「でも私もー」


「夏芽ちゃん、雨降ってきて家で何かあったら困るから…お留守番頼めないかな」


でも、そう言おうとしたが口を継ぐんだ、結衣の意図する所を解したのだろう


「…はい」


「ありがとう…夏芽ちゃんは本当に良い子ね…じゃ、ちょっと行ってくるわね」


「行ってらっしゃい」


そういう時結衣は自らの愛車のフォルクスワーゲンに乗り込み山へと向かった


ーーー


ポツポツ


「あちゃー…降ってきっちまったな…」


「お兄ちゃん…大丈夫?」


そんな不安そうな目で見るな涼太


「大丈夫大丈夫、何回も通った道だし、少し足元悪いけどなんとか、ほら、折り畳みだから小さいけど傘もあるし」


そういうと樹は小さな傘を涼太に手渡す


「お兄ちゃんは…?」


「大丈夫、俺慣れてるから」


ニカッと笑い不安を気取らせないように努力をする


「あ…本降りになって来やがった…急ごう」


「うん!」


ーーー


一方結衣は車を運転しながら焦りを覚えていた


「昨日も雨降ったから相当地面が柔らかくなってるはず…土砂崩れとかないと良いけど…」


不安に思う結衣の心情を映したかのように天候は悪化の一途を辿る


ついに雨が降り出し結衣の不安を現実的なものへと変える


しかし現実は非常で…付けっぱなしのラジオで流れてくるニュースに耳を傾けながら運転していると結衣の最も恐れた情報が流れた


「郡山市を中心に大規模な土砂崩れ警報が発令された模様です、大滝葉川付近の赤池町、青ヶ丘、海老根町、他6の市町村を中心に大規模な豪雨が発生しています、自治体の避難指示に従ってー」


起こった…最悪だ


よりによって樹のいる場所が中心…


もう無事でいてくれるだけで良い、


いや、それでも贅沢を言っているかもしれない


そう思うほどに結衣は焦りを覚えていた


ーーー


不味い…どんどん強くなってやがる


涼太も疲れてヘトヘトだし…


おまけにまだ川が2つ残ってる…氾濫しないと良いが


「涼太、のれ」


「?」


「おぶってやる、早く」


「う…うん…!」


涼太が小さくて助かった、多少ペースは落ちるけど歩かせるよりはいいだろう


〜〜〜


涼太をおぶりながら走ってどれくらいが経っただろう…可笑しい、幾らなんでも時間がかかりすぎだ


俺が通って来た道はこんなだったか?


いや…これは…


完全に迷った


「涼太、どこかに小屋があるか?」


「えっと…遠くに小さな納屋っぽいのが!」


「そうか、ありがとう」


持ち主には悪いけど一夜を過ごさせてもらおう、おっと結衣さんに連絡もあったな


ーーー


車を走らせる結衣、その元に電話がかかって来た


直ぐに樹だと察し通話をオンにする


「樹?今どこにいるの?」


「ごめん、それがわからないんだ」


「え!?」


「小さな男の子と一緒で、おぶって走ってるうちに道に迷ったみたい」


「今はどこに居るの?」


「小さな納屋の中、とりあえず雨風を凌いでる」


「そう……じゃあ樹、今からやる事があるわ、夏とはいえ山の夜は冷える、出来るだけ体から水気を取って、それと水分だけはこまめに」


「わかった、あと何かアドバイスある?」


「…間違ってもあかりを付けたり、明るくならないうちに外に出ないで、その山…熊や猪が出るの、最近は事件もないけど…一応ね」


「……わかった」


「じゃ…スマホ、大事に充電使うのよ」


「うん…じゃあ切るね」


プツン…


電話は切れた、位置のわからない樹、それだけでも結衣の胸は張り裂けそうだが問題は山の中で一夜を過ごすという事、


結衣は思い詰めた顔で、最悪の事態を想定し警察に電話を入れた


この話が面白い、樹どうなる!?と思ったら


評価とブクマ、感想をいただけたら嬉しいです!

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