3章 5 旅の仲間
んまぁい!
少し硬いが新鮮さも手伝ってか肉の旨味が口いっぱいに広がる・・・イビルボア・・・侮り難し!
火を囲み無言で肉を食べる4人・・・決して肉が美味くて無言になっている訳ではなく、奇妙な関係になっているから無言になっている
ランラを襲おうと計画していた2人と襲われそうになっていたランラと聖女殺しの汚名を着せられている俺・・・和気あいあいと喋る気にはなれないよな
「・・・で?これからどうする訳?」
満腹になったのかランラが手を止めて俺に尋ねる。思えばランラは喋るようになったな・・・元々お喋りだけどわざとあまり関わらないように無口キャラ演じてたのかな?
「うーん・・・とりあえず、チラス・・・俺の事で知ってる事ないか?」
「あ?・・・荷物持ち?」
「違ぇよ!ほら、なんで俺が聖女殺しって言われてるか噂程度でも聞いた事ないか?」
「ねえな・・・そもそもその手配書すら記憶にねえ・・・ジョブは?」
「俺も知らない・・・手配書は見たがあまり気にも止めなかったし・・・」
収穫ゼロ・・・この分だと他の冒険者も大して期待出来ないな・・・
「自分の胸に聞いてみたらどうだ?」
「・・・どういう意味だよ?」
「人の玉潰そうとしたり槍を投げたり・・・あれだけの力を持ってるのに隠したり・・・性格悪いぜ?てめえはよ」
「玉を潰そうとしたのはランラを襲おうとしたから。槍はお前が襲って来たから・・・隠してたのは情報収集の為だ・・・おっと玉潰しは中途半端だったか・・・どれ」
「待て待て!分かった分かった!・・・てめえは悪魔か!」
俺が立ち上がろうとするとチラスは慌てた様子で手を前に出して俺が来るのを拒んだ。口が悪いのは直りそうにないなコイツ・・・
「潰すなら潰す、殺すなら殺す・・・さっさと決めないと戻るに戻れないわ。で、どうするの?」
「・・・ランラ・・・」
ハッキリと言うランラを青ざめた顔で見るジョブ・・・ランラにとって2人はどうでもいい存在のようだ。興味無さそうにどちらでもいいから早くしろと言っているように感じる
それはさておき、さて・・・困ったぞ。別に俺の事を言いふらしたりするのは構わない・・・口止めしても喋りそうだし・・・問題はランラを襲おうとした事・・・俺らが去った後に同じ事をしそうで・・・もし俺が知らない所でコイツらがやらかしたら・・・俺は後悔してもしきれない・・・今までは命を絶って防いでいたが、今はそうもいかない・・・シーナと約束したからな
改めて玉を潰すのは気が引けるが、コイツらのやろうとした事は許せない・・・やはり玉を潰すしか・・・いやもう、いっそうのこと・・・
「おいおい・・・不穏な言葉が洩れてるぞ?潰すとか殺すとか・・・冗談だよな?」
「・・・殺すか・・・」
「おっおい!てめえそんな事しやがったら・・・」
「お前らが考えてた事だろ?ギルドには魔物に俺らが殺られたって事にしてお前らは同じ事を繰り返すんだ・・・ずっと・・・ならここで殺した方が他の人の為か・・・」
心の中が黒ずんでいくのが分かる。この感情の主こそが『黒アタル』なんだろうな・・・全て委ねてしまいそうになり必死に抵抗する
「・・・決めるのは貴方よ・・・アタル。この場で貴方の決定に逆らえる者は居ない・・・それほど圧倒的な力を持っている・・・私は貴方の決定に従うわ」
「・・・ランラ・・・」
もし・・・もしここで俺がコイツらを見逃して・・・コイツらが俺の大事な人を傷付けたら俺は激しく後悔するだろう。でも、そんな事を考えてたらキリがない・・・でも、じゃあどうすればあの時シーナを守れた?ずっと一緒に居たら守れたか?ジャクスの町に寄らなければ?俺らが寄らなければ他の人が犠牲になってた?それで俺は満足?・・・てか俺自身が他の人の事を考える余裕があるのか?やる事は沢山ある。決めなきゃいけない事も・・・ただ流されているだけだから考えてしまうのでは?・・・俺は・・・どうすれば・・・・・・・・・
「あー・・・悩み過ぎて疲れたからそっちで決めてくれ・・・死ぬか玉潰されるか・・・俺達と共に来るか」
「は?・・・え?」
「おい!なんだそれ」
「3・・・2・・・1・・・」
「ちょっ・・・共にって・・・」
「3番だ!3番!」
カウントダウンを始めるとジョブは慌てふためきチラスは3番と連呼する・・・番号振った覚えはないが・・・まあ共に来るって事だろうな
「アタル・・・どこまで連れて行くつもり?」
「さあ・・・俺が改心したと思うまで?」
「・・・ハア・・・野蛮人が追加・・・頭痛いわ・・・」
決めろと言ったくせに文句言うなよ・・・ランラは帽子を深くかぶりため息をついた
納得出来ないのはランラだけではない。ジョブは呆けた顔をしてチラスは俺を睨みつけていた。選択の余地はなかったとはいえ何処に行くかも知らないままついて行くと決めざるを得なかったんだ・・・納得する方がおかしいか・・・
「で・・・何処に行くんだ?」
イラついているチラスが聞いてきたので、俺は大凡の方向を指してこう言った
「ブルデン王国・・・魔法を極めた国だ──────」
あれからイビルボアの討伐証明部位である牙を剥ぎ取り、全員で森から町に戻った
冒険者ギルドへの報告を済ませた後にジョブとチラスは家に度の準備をしに戻り、俺とランラは宿屋に自分の荷物を取りに帰る
その途中・・・ふとランラが立ち止まると視線をある方向へ。その視線を追うように俺は視線を動かすと協会の前に人だかりが出来ていた。あれは・・・
「へえ・・・ああいうの興味無いかと思ってた」
「・・・別に・・・何やってるのか気になっただけだし」
教会で行われていたのは紛れもない結婚式。若い男女を周りの人が祝している真っ最中だった
そう言えばシューリー国には結婚式を行う風習がないらしい。ユンとヤクモに何で呼んでくれなかったんだと問い詰めたら教えてくれた。結婚式とはどういうものか話したら意外にユンよりもヤクモの方が興味津々だったな・・・
「何目を細めてる訳?気持ち悪い・・・貴方の方こそ興味ありありじゃない」
「いや、俺は思い出してただけだ・・・まあ、興味がないって言えば嘘になるかな・・・」
いずれシーナと・・・そういう思いを込めて指輪を買ったのは間違いない・・・もしあの時渡せてたら・・・どうなってのだろう・・・
「・・・そっちこそ意外ね。女っ気なんかとてもあるように思えないけど・・・妄想?」
「妄想ちゃうわ!・・・まっ、今となっては妄想に近いけど・・・」
「そっ・・・どうでもいいわ。さっさと行きましょ・・・あまり遅れるとジョブ達が逃げるかもしれないし・・・」
「自分から話を振っといて素っ気ないな・・・結婚式はともかくランラは好きな人とか居ないのか?」
「・・・」
宿屋に向かおうと足を動かし始めたランラが再び立ち止まる。そして振り返るとニッコリと微笑んだ
「逆に聞きたいわ・・・誰がこんな女を好きになってくれる訳?」
言いながら帽子を取ると髪をかきあげる
「!・・・え?」
風が吹きランラの髪を揺らす
顔の右側は笑い、左側は・・・笑ってはいなかった
右側の綺麗な肌とは違い爛れたような痕・・・目玉はなく窪みだけがあり思わず視線を逸らしてしまった
「どうして・・・そんな・・・」
「別に私はもう気にしてないのだけど、そういう反応が面倒だから隠してる訳・・・貴方にもほじくられたくない過去はあるでしょ?」
「ああ・・・そうだな・・・」
聞かれたくない過去なんて山ほどある・・・ランラが髪で左側を隠して帽子をかぶるまで俺は何故かランラを見れずにいた
「さ、行きましょう・・・待ち合わせは西側の門前・・・だったわよね?」
「あ、ああ・・・」
その後、俺らは別れて各々の宿屋に向かった
借りている部屋に入り、ふと思い出すのはランラの顔・・・直視出来なかったのは見てはいけないと思ったからだけど・・・考えてみればそれは・・・ランラを傷付けてしまう行為だった。そういう反応が面倒と言ってたけど・・・気を遣われたり聞かれたりするのが嫌で隠しているのだろう
部屋に置いていた荷物を詰めながらどういう反応が正しかったのか考えたけど、正解なんてないのだろうと諦めてベッドに寝そべった
仰向けになりしまった荷物を念動力でいくつか浮かせる
日本で自分の部屋で考え事をしている時、よく念動力で物を浮かせていたな・・・母ちゃんが突然入って来てそれを見られて怒られた事もしばしば・・・それもいい思い出だ
浮かしている物の中に布袋がある
これはヤクモが別れ際に渡してくれた丸薬・・・『いざという時に飲むといいよ』って言ってたから魔力切れした時に使わせてもらおう
そう言えば今着ている服はアイリンとリュウシから貰ったんだったな・・・白の闘衣は四星拳のビャッコとして動く時に着るものらしいし、灰色の暗器使いは見てて恥ずかしくなるからってメイザーニクスで着ていた服に似たものをプレゼントしてくれた
みんな元気にしてるかな?誰かに相談出来れば楽なんだけど・・・今は俺・・・1人だ・・・
「キ?」
シールが服の隙間から顔を出し、不思議そうに浮いている物を見た。もしかして俺が1人だって考えてたから『俺がいるで?』って出てきたのか?
シールはしばらく浮いている物を見た後に一瞬俺を見るとまた服の中に潜り込む。モゾモゾと動かれてくすぐったくなり集中力が切れて浮いていた物が全て落ちた
考えても仕方ない・・・俺は急いで落ちた物を拾い上げると袋にしまい皆の待つ門へと向かうのだった──────




