2章 49 シューリー国
ダルスと別れた後、すぐに旅立ちたかったけど数日間足止めを食らった
と言うのも四星拳だけが着る事を許される闘衣の完成を待てと言われたからだ。そんな訳で灰色の暗器使いは廃業となる
その間にもシューリー国の変化は如実に見られた
他国から魔法使いを招き魔法に対する知識を学ぶ魔法道場の設立
各流派の師範が一同に会す流派会議の開催
他にも細々変化はあったが、この二つはかなり劇的な変化らしい。魔法道場に関しては魔法許可が出てからすぐに案はあったらしいが、流派会議に関しては今回の螺拳が起こした騒動により放置気味であった各村の流派の管理のようなものらしい。1年に1回王都に集めての話し合いをさせ、国をより良くする為にどうするか意見を言い合う場らしいのだが、陰でコソコソ企むのを防止する為に互いに監視させる目的だとか
「今回の件で魔法の有難味が分かった。まあ回復魔法だけだけどな・・・それと螺拳のように良からぬ事を企む者達がいる事も・・・これに関しては王家の怠慢だが・・・」
城に呼ばれたから闘衣を渡されるのかと思って来てみればただのシュラの話し相手・・・いや、そりゃあ暇人だけどホイホイ呼ぶなよ
「今まで国としてよく成り立ってたな。謀反とか初めてなのか?」
「初めてだな。正確には企んだ流派もあるらしいが企むだけで実行に移してないだけだがな。一流派で国をどうにかしようなんて土台無理な話だ。かと言って流派同士で組むとどうしても軋轢が生まれる。今回の件はラモンという存在がいたから成り立ったようなものだ」
「つまりまたラモン級の化け物が存在したら謀反が起こる可能性があるって事か・・・」
「ああ。各村には『目』を放って監視はしているが、今回螺拳を放置していたのはまさか各流派が組むとは思っていなかったという考えが根底にあったからだ。その『まさか』が起こるのを認識した今は次に活かさねばただの間抜けだろ?当面は『目』の監視の強化と会議による抑止力で謀反を防ぐ・・・他にも色々考えているが取り急ぎはその辺だな」
「会議が抑止力になるのか?」
「怪しい動きをしていれば会議で言われるかもしれない・・・そう思わせるだけでも抑止力になるだろ?会議に参加しなくても怪しい、参加しても密告されるかも知れない・・・陰でコソコソはしにくくなるはずだ」
「・・・少しは考えているんだな」
「スザクが、な」
「だと思った。で?俺を今日呼んだ理由は?」
「暇だから」
「・・・おい」
「冗談だ。知っての通り我が国は他国との交流をほとんど絶っているのでな・・・他国の真似事をするつもりはないが、他国を知るアタルから意見を聞きたくてな」
「・・・スザクの姿が見えないが?」
「別にスザクが居らずとも話せるだろ?」
「・・・めんどい」
「なぬ?」
「どうせ考えるのはスザクだろ?俺がシュラに伝えてシュラがスザクに伝えると間違った解釈になる可能性が高い・・・だからスザクが同席するなら話はするが・・・」
「決定するのは俺だぞ?」
「なおタチが悪い・・・俺が変な事吹き込んだらどうするつもりだ?」
「俺はお前を信用してる」
「都合のいい信用だな・・・てか他国を知ってると言っても内部的な事は全く知らないぞ」
「それでもいい。我が国がこれから他国と・・・共存するにはどうすればいいか・・・忌憚なく言ってくれ」
渡り合うじゃなくて共存か・・・鎖国していた日本が開国するみたいなもんか・・・
ぶっちゃけシューリー国の事自体をあまり知らないので言いようがないと言ったら懇切丁寧に教えてくれた・・・もうお腹いっぱいです・・・四星拳となったからには知っとけと言われたが、勝手にしといてよく言うよ
シューリー国は王制となっているがビックリするほど単純な構造だった。って言うのも王がいて、四星拳がいて、国民がいる・・・ただそれだけだ。税を納めていれば基本自由・・・殺し合いをしようが盗みをしようが法で裁かれることはない・・・そもそも法なんてないのだから・・・。それでも無法地帯にならないのは天下六拳の存在が大きかったと言える。争い事があれば国から要請を受けて天下六拳の内、近くの流派がその争いを収める。その分天下六拳は少しだけ他の流派より補助金が多いらしいが・・・
何となく・・・シューリー国ってただの賃貸住宅なのかと思えてきた
オーナーの王、不動産屋の四星拳、管理人の天下六拳、住民の国民・・・うん、そのまんまだ。そう考えるとシュラが大地主に見えてきた
「・・・なんだよ」
「何でもない。よく今まで国として体裁を保てたなぁーと」
「そうか?これといって問題があるようには思えぬが・・・何か変か?」
「うーん、俺もそういうの詳しくないけど、例えば飢饉とか起きたらどうするの?国全体で」
「ききん?なんだそれは」
「・・・えっと・・・ほら、作物が育たなくて食料が少なくなって飢えちゃうみたいな」
「どうして作物が育たない?」
「台風とか水害とか・・・あるだろ?それで作物が全滅みたいな・・・」
「・・・記憶にないな。そんな事が起きるのか?」
「起きてない・・・のか?」
「俺が知る限りではな。そもそも『たいふう』とはなんだ?」
「そこから!?・・・凄い風と雨がザーッと・・・」
「凄い風・・・魔法か?」
「ちゃうわ!・・・うーん、じゃあ魔物が畑を荒らすとか?」
「討伐すればいいだろう」
「害虫が大量発生!」
「害虫・・・虫か?食べればいいだろう」
「無敵か!・・・つまり飢える事はない、と」
「飢えなどないな。まあ余る事も少ないと聞いているが・・・」
「それ・・・開国する必要あるか?」
「ふむ・・・確かに必要あるかと問われればないが・・・今のままで良いのならな」
「と言うと?」
「阿呆が・・・お前が原因だろう・・・魔法の使用・・・それが我が国に如何なる結果をもたらすか知らぬとは言わせぬぞ」
「・・・犯罪の増加?でもそれは開国とは・・・」
「違う・・・利便性だ。俺も魔法がどういうものかいまいち分かっていない・・・が、他国との差を見れば一目瞭然・・・魔法の有無で生活は劇的に変わる。例えば人数を入れ1週間を費やしていた工事が魔法使い1人で1日で終わってしまう・・・そうなるとどうなると思う?」
「べ、便利だなーと」
「ああ、便利だ。だが、その工事に携わっていた者が職を失う可能性がある。工期も人員も金も掛けなくていいのなら断然選ばれるのはそちらの方だ。利便性が向上したが故に起こる不利益・・・これをどうするか我らは知らない」
ああ、そうか・・・魔法のお陰で得する人がいる代わりに損する人もいる・・・人の手でやっていたのに重機投入したら、みんな重機使いたがるわな・・・
「我が国が魔法を忌避していたのはその辺もあるのかもな・・・変化による犠牲・・・それを考えると頭が痛い」
「発展を望まず現状維持なら魔法はいらない・・・か。かと言って今更やっぱり魔法はなしよってのも・・・」
「無理かもな。まだ日は浅いが魔法による成果は耳に入っている。これで魔法を禁止すれば暴動が起こるやも知れん・・・一度便利さを覚えてしまえば戻るのは難しいだろう」
「俺のせい?」
「・・・遅かれ早かれ魔法の件は考えていた・・・過去に囚われるのは好きではないからな・・・お前はきっかけに過ぎない・・・まあ、きっかけは重要だから責任があると言えばあるな」
「随分回りくどいな・・・俺に何をさせるつもりだ?」
「やっと察したか。魔法道場を設立した時点で察して欲しかったが・・・」
「俺に道場を営めと?」
「まさか・・・お前に向いてないのは分かっている。お前には魔法道場を任せられる人材を確保してきて欲しい」
「魔法道場を任せられる?」
「魔法に精通した人物・・・魔法をより良く使い、魔法を使った犯罪を抑制する事に長けた人材の発掘・・・今の環境では他国に頼るしかあるまい。それと同時に他国との交流・・・交易も進める。魔法で職を失う可能性がある者にも職が与えられるからな」
「なんか劇的な変化になりそうなんだけど・・・それって俺きっかけって事実は残るのか?」
「後世に語り継がれるだろうな。永く魔法を禁じてた国に魔法をもたらすきっかけとなったのだ・・・失敗しても成功しても・・・歴史には残るだろう」
「お前の発案で良いじゃねえか」
「そうもいかん。未だに国には魔法を毛嫌いする者が多い・・・俺が発案したとなったら反感が俺に向かうだろ?俺はあくまで従ったスタンス・・・慰霊碑の地に舞い降りた・・・オッサンのお告げに従っただけだ」
「オッサンちゃうわ!・・・その神秘的なお兄さんが四星拳ビャッコになったら一気に現実感丸出しじゃないのか?」
「どうせ国に滞在しないだろ?正体を知られなければ国民は勝手に想像する・・・お告げを下したオッサンが国の守護者たる四星拳となった・・・国の有事には必ず駆け付けてくれる守り神・・・神秘的だろ?」
「・・・詐欺じゃねえか」
「うむ。お前を知られると詐欺になるが、知られなければ詐欺にはならん。信じるものは救われる・・・だ」
「信じるものは騙されるじゃねえか・・・さっきから聞いてると早く俺を追い出したいみたいだな」
「みたいではなく追い出したい。お前が長くいればいるほどバレる可能性が高い」
「このっ・・・えらい言い様じゃないか・・・喧嘩売ってんのか?」
「買ってくれるか?」
「上等だ!」
この後道場で激しくやり合い・・・決着はつかなかったが2人とも道場で大の字で寝そべる。シュラは不意に起き上がると寝そべる俺に何かを投げて寄こした。それは・・・四星拳ビャッコの白の闘衣と丸い木で出来た手のひらサイズのプレート・・・なんだろ?
「そのプレートは我が国の地位を証明するものになっている。他国にも通じる有難い品物だ・・・無くすなよ。いつでも戻って来い・・・頼んだぞ・・・ビャッコ」
「ビャッコ言うな・・・体のいい首輪じゃねえか」
「獣を野に放つのだ・・・首輪は必要だろ?何かあれば助けに来い・・・あの時のように飛んでな」
「・・・俺が困った時は?」
「国を上げて助けてやる」
「なんともまあ・・・大袈裟だな」
「そうか?当然だろ?持ちつ持たれつ・・・それが友と言うものだ──────」




