2章 44 城決戦2
「シュラ・・・交代だ」
間に合った・・・何とかギリギリ間に合った。表でスザク達がやられているのを見た時は正直焦った。急いで城に入るとラモンはシュラの待つ道場に向かったと聞いて来たけど、道場に入るなりいきなりクライマックス・・・思わずシュラを念動力で操ってラモンから離した
東門と北門のみんなが無事か気になるが、さすがに王手を食らってる状態で見に行く事は出来ない・・・さっさと殺して見に行かないと・・・
シュラは何とか無事・・・だけどラモンって奴の足元付近には・・・くそっ・・・あとあれは西門に居た・・・ん?少年が抱えてるのはもしかして・・・ビャッコ?
「あなたは・・・」
俺が近付くと少年は少し警戒して抱えている人物・・・恐らくビャッコを守るように身体を入れる。まるで我が子を守る為に威嚇する虎みたいだ。そんな場面見た事ないが
「何を・・・よせ!!」
「!・・・これは・・・」
必死に守ろうとする少年の隙間から見えたビャッコの状態・・・最悪だ・・・チラリとしか見えなかったが顔が・・・これは出し惜しみしてる場合じゃないな・・・
「よせと・・・」
「動くな・・・すぐに終わる・・・」
脈を診る・・・良かった・・・かなり弱いがまだ脈はある。だけど身体が冷たい・・・もう時間がないな
「ホーリーヒール」
魔法を唱えるとビャッコのを身体は光に包まれ掴んでいる腕からは温もりを感じる。脈もさっきより速くなった気がする。これでもう大丈夫だろう
「え!?・・・姉さん?」
「・・・アタル・・・今のはあの時俺に掛けた・・・」
「そう回復魔法。慰霊碑の前でお前に掛けたよりも強力なやつだ・・・良かったな、お前が魔法を許可したからビャッコは助かった。かなりの大怪我だったみたいだから意識はまだ戻ってないが安心しろ・・・もう大丈夫だ。それとコイツを預かっておいてくれ」
いまいち状況が飲み込めていないシュラが肩で息をしながら近寄って来る。俺は立ち上がると歩き出しシュラの肩をポンと叩くとシールをシュラに預けお行儀良く道場の中心で待ってくれてるラスボスの前へと進み出た
「何をした?」
「耳が遠いのか?回復魔法だって・・・」
「そうではない・・・そこの王は不自然な動きで俺の拳を躱した・・・お前がやったのだろう?」
「そっちか・・・気功・・・って言ったら信じてくれるか?」
「ほざけ・・・分家の門下生を殺したのも王の暗殺を邪魔したのもお前か」
「・・・そう並び立てられると俺ってかなりお前らの邪魔してるな・・・でもお前らが悪いんだぞ?ぬかるみは地面に沈殿しとけって・・・表に出ようとするからそうなる」
「やはりそうか・・・まあいい・・・ここでお前を叩き潰し、全てを終わらせる」
「怖い怖い・・・お手柔らかに・・・なっ!」
先制の首ポキ・・・が、通じない。これで終われば楽だったのにな。ラモンは不思議そうに首に手を当てて眉をひそめる。鈍感か
「それならこれはどうだ?」
念動力で身体を浮かせて自由を奪う作戦・・・これも失敗・・・重いのか?物凄く重いのか??
「先程から何をしている・・・お前は・・・何者だ!」
ラモンが叫ぶと同時に床を踏み付ける。念動力で持ち上げられそうになったのが不快だったのか?にしても浮かないとなると正攻法で戦うしかないか・・・やばいな・・・
「答えろ!」
床を踏み抜いてそのまま落ちて死んじゃえば良いのに・・・シュラはともかくビャッコやスザクと戦って無傷ポイ相手に正攻法・・・普通に死ねるな。どうするか・・・とりあえず・・・
「むっ!」
足の指先で気功を練り爆発させる。縮地と言われる技法らしいがこれで懐に入って最強の一撃を!
「理力斬!」
斬れないものはない。念動力を使った殺傷能力が最も高い渾身の一撃・・・のはずだった。ドン!と音がして見てみると脇腹に手刀が当たりそこで動きを止めていた。振り抜けばラモンの上半身と下半身はおサラバのはず・・・が、ラモンの脇腹に当たり止まってしまって・・・
「縮地に手刀・・・で?」
まずいまずいまずい・・・見上げるとラモンが拳を振り上げてる!躱す為にもう一度足の指先に気功を練ろうとするが間に合わない!念動力を咄嗟に使うがそれよりも速くラモンの拳は俺の腹に振り下ろされる
意識が一瞬にして遠のく
身体がバラバラになったような感覚・・・少し浮遊感も感じる
ダメだ・・・意識を飛ばしたら・・・
「ホー・・・リー・・・ヒー・・・ル・・・」
意識が鮮明になる・・・何とか間に合ったみたいだ
念動力で後方に飛んでなければ危なかった・・・ラモンの一撃は受けた部分を中心に衝撃が身体全体へと広がり全てを破壊する・・・そんな凶悪な一撃だった。飛んでなければその場で治したとしても次の攻撃で確実に死んでいた・・・いつの間にか俺はシュラ達が居る場所まで戻っていた
「便利なものだな魔法というものは・・・次は一瞬で粉々にしてやろう。魔法を使う暇さえ与えずに、な」
冗談じゃない・・・もうホーリーヒールは打てないから次同じように食らっただけでも終わりなのに・・・
「アタル・・・気功を奴に読まれている・・・流れで使わねば奴には通用しない」
「・・・流れ?」
少年に代わりビャッコを抱いているシュラが俺に囁く
気功を読まれてる・・・確かに縮地を使った時、発動前にラモンは気付いていたみたいだった。そう言えばコクウだっけ?アイツにも・・・。気功を使えるようになって俺も相手の気功の流れが何となく分かるようになった・・・つまりラモンにも見えているって事か
てか流れの中で使うって事は・・・いやいや無理だろ!俺にラモンと殴り合う技量はない。一撃死する緊張感の中で躱し続ける事も・・・
「どうした?怖気付いたか?」
安い挑発に乗るな・・・近付けないなら近付かなければいい
手のひらをラモンに向けるとお得意の空圧拳でラモンを攻める
だが空圧拳の嵐を何処吹く風と言わんばかりに突っ切り平然と歩み寄るラモン・・・予想通りだがショックだな・・・空圧拳もまるで効かない
「手品はネタ切れか?」
「手品ならタネだろ?まっ、俺のは種も仕掛けもないけどな!」
どうして効かない!?更に繰り返すがやはり効いている様子はない。とうとうラモンは俺の前まで辿り着くとゆっくりと拳を振り上げた
「不思議な力だ・・・だが激流には逆らえなかったようだな」
なんだよ激流って!
ともかくあの拳が振り下ろされた瞬間に終わる・・・躱す?迎え撃つ?受け流す?・・・逃げる?・・・いや、ダメだ!ラモンの背後に見える物言わぬビャッコの隊員達・・・ラモンを倒さなきゃ同じように殺される人が増えるだけ・・・ここで止めないと・・・ここで殺しとかないと・・・
理力斬が効かないなら・・・空圧拳が効かないなら・・・いっそう合わせてぶち込むだけ!効くまで・・・何度でも!
「うおおおおぉ!理力拳!!」
わざと隙を作っているのは分かっている。ラモンは相手の攻撃を受けてから自分の攻撃を繰り出す。それだけ防御力に自信があるのだろうけど・・・これならどうだ!
拳がラモンの腹に少しだけ沈む。効いたかと顔を上げるとラモンは苦悶の表情を・・・浮かべてはいなかった
「いい拳だ・・・次は俺の番だな」
「ずっと俺の番だ!」
拳を引き、もう一度理力拳を打ち込もうとするとラモンが動いた気配がした。背筋が凍る・・・死を覚悟した時、不意にローブを引っ張られ後ろへと飛ばされた
ローブがはだけ視界が広がる。それと同時に形容し難い音が聞こてきた・・・肉が砕ける音?骨じゃない・・・肉が・・・
顔を上げると目の前に見えるのはラモンと向き合う見慣れた背中・・・
「ラカン!!!」
俺が叫ぶとラカンの背中はズズっと下がり遂には地面へと倒れてしまう。聞き慣れない女性の声がラカンと叫ぶが振り向いている余裕はなかった
「くだらぬ事を・・・お前なら俺の域まで来れたというのに・・・」
打ち終えたラモンは倒れたラカンを見下ろしそう呟くとラカンに背を向け道場の中央へ・・・そしてまるで仕切り直しと言わんばかりにこちらに振り向き佇んだ
見知らぬ女性がラカンに近付く・・・ダメだ・・・今俺が・・・
ホーリーヒールはもう使えない・・・ヒールならばとラカンに手のひらを向けるとその腕をラカンに掴まれた
「いらぬ!・・・俺を・・・起こせ・・・」
「何を言って・・・」
「いいから起こせ・・・時間がない・・・」
時間?何の時間だ?早く回復魔法を打たないと・・・
「ラカン!」
女性がラカンを抱き起こす。胸に螺旋状の傷・・・そこから大量の血が溢れ出ていた
「待ってろ!今すぐ・・・」
「お前では・・・ラモンに勝てぬ」
「!?・・・ああ、そうかもな・・・とにかく・・・」
「聞け!・・・お前では、な。だがアタルなら・・・勝てる」
「意味わからん事言ってんな!矛盾してんだろ!」
「矛盾・・・か・・・確かにな・・・お前は矛盾の塊だ・・・強くもあり弱くもある・・・お前は強い・・・が、アタル・・・お前は弱い」
「錯乱してんじゃねえよ!・・・ヒール!」
ヒールを掛けると螺旋状の傷は少しだけ消えた・・・けどすぐにまた元に戻る・・・ダメだヒールじゃ・・・
「グッ・・・聞けアタル・・・俺は生まれて初めてかも知れん・・・強くなる事以外で・・・咄嗟に動いたのは・・・」
「ああ、そうかよ!だったら次は生き残る為に必死になってみろ!」
「・・・悪くないもんだな・・・誰かに託すっていうのも・・・」
「お前聞いてんのか!?気功を回復に使え!お前の気功と俺の魔法なら・・・」
「俺に・・・見せてくれよ・・・俺が国一番の強さを手に入れる所を・・・」
「だから聞いてんのかって!国一番になりたきゃ自分でなれ!」
ラカンは再び俺の腕を掴む。その力は先程より弱い・・・振り解けば簡単に離れていってしまうくらい儚い程・・・
「お前に言ってんじゃない・・・アタルに言っているんだ・・・」
何を言ってんだ・・・俺がアタルだ・・・俺がラモンを殺さなきゃ・・・ラモンはいっぱい人を殺す・・・俺が・・・アタル・・・
「俺の知ってるアタルは・・・弱くて・・・それでいて他人の為に怒ったり泣いたり・・・する奴だ・・・」
違う!俺は念動力を使いぬかるみ野郎共を殺す・・・その為だけに生きる・・・
「でも・・・言った事を必ずやり遂げる・・・凄い奴だ・・・」
そんな事はない!俺は誰も守れない・・・今も・・・ラカンを・・・
「そんな奴と・・・友になれて良かった・・・」
友?・・・ラカンは俺の・・・友?
「さあ、見せてくれ・・・俺より弱い奴が・・・ラモンを倒す所を!」
ラカンに掴まれた腕が痛む・・・最後の力ってやつか?ふざけんな・・・そんなのは認めねえ・・・俺は・・・
──────選手交代だ──────
長い眠りから覚めたような感覚
目を開けると血だらけのラカン
そして・・・
「アタル!!」
懐かしい声・・・幻聴?いや・・・本物だな
俺の腕を掴んでいた手がスルリと抜け落ちる。まだだ・・・まだお前は一番になってない・・・
立ち上がり道場の中央にいるラモンを見て一歩踏み出す
「アタル!!!」
「聞こえてるってぇの・・・そこで見ていろクソジジイ・・・お前の一番弟子がシューリー国の二番目に強い奴になる所を──────」




