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剣と魔法・・・時々超能力  作者: しう
超能力の章
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1章 6 ゴブリン退治1

帰ってからというものシーナは今まで以上にベッタリと俺についてくるようになった。トイレの前でも待ち構えていた時は囚人にでもなった気分だ


またふらりと居なくなるのではと心配しての行動らしいのだが・・・これも身から出た錆か・・・


なので超能力を鍛えるのはこっそりやっている


歩く時は浮きながら、何か取る時は気付かれない程度に引き寄せて取ったりもした


この前歩いていたら、急に振り向いたオッサンがびっくりしてたな・・・浮いて歩いていたから足音が聞こえなかったらしく、後ろに人が居ないと思って驚いたとか・・・俺はサイレントキリングの称号を得た


とまあ、こんな感じで日々を過ごし、日に日に会話と超能力は上達していく・・・後は懐だな


俺みたいな流れ者で手っ取り早く稼ぐのはやはり冒険者になるのが良いらしい・・・身元はハムナが保証してくれるらしく、ギルドに登録すれば討伐依頼など受けれる


この前のクマを追ってたのも冒険者だったらしい


冒険者は基本チームを組んで依頼に向かうらしいのだが、そこが問題なんだよな


超能力は極力バレないようにしたい・・・日本の話を聞くと、この世界でもバレたら解剖されるのでは?と思えるからだ


そうなるとチームは組めない・・・かと言って1人でやる勇気は・・・ない!


図書館で図鑑を見ながら悩んでいるとシーナが顔を覗き込んできた


びっくりして顔を上げるとシーナは俺をじっーと見つめる


「何を悩んでるんですか?」


「あ、いや・・・色々と・・・」


シーナに冒険者やると言ったら止められそうだ。何せクマを前にして醜態を晒したばかりだし、武器もまともに扱えない事をシーナは知っている・・・てか、俺が白状したんだけどな


俺が一日居なくなった時のシーナの表情は今でも忘れられない・・・もうあんな悲しい顔はさせたくないけど、どうしたものやら・・・


「シーナ!いたいた・・・こっちだ!」


図書館ではお静かに・・・それは万国・・・異世界共通らしい


シーナを指さし大声を上げてドカドカと歩く男に図書館に居る人達は迷惑げな視線を送っていた


皮の鎧に剣を腰に差した如何にも冒険者風の男はローブを着た魔法使い風の女と弓を背中に担いだ・・・あれれ?あの耳・・・エルフ!?


尖った耳はよくファンタジーに出て来るエルフそのもの・・・男なのが残念だが、美形で少しムカつく


その3人がシーナの前に来ると立ち止まって頭を下げた


「シーナ!また討伐に付き合ってくれないか?ちょっと遠くて日帰りは無理そうなんだ・・・怪我をして身動き出来なくなったらと考えると神聖魔法の使えるシーナが居てくれると助かる!・・・なあ、頼むよ!」


馴れ馴れしい!図々しい!怪我して死んでまえ!


「うーん、ちょっと・・・お父さんに外出は止められてるし・・・」


シーナはチラチラと俺を見ながらやんわりと断る。ごめんな・・・俺が守れなかったばっかりに・・・


「・・・てか、誰このオッサン?」


オッサンちゃうわ!まあ、君は見た目シーナと同い年くらいだけど・・・10歳くらい離れてるけど・・・オッサンちゃうわ!


「アタルさんよ。記憶喪失で森に倒れてて・・・川でハチに襲われそうになってた私を助けてくれて・・・」


「ふーん、で、なんで一緒にいるの?」


「言葉も忘れちゃったみたいだから教えてたの。帰る場所もないから、ウチに寝泊まりしてて・・・」


「・・・言葉忘れてるのに名前は覚えてたんだ・・・ふーん」


グッ・・・そういうツッコミは止めてくれたまえ・・・


てか、何だコイツ・・・ねちっこく俺を見てやがる・・・もしやシーナに惚れてるのか?ふふーん、ざまーみろ・・・俺はシーナとひとつ屋根の下で寝てるんだぞ?何もしてないけど・・・


「まあ、オッサンの事はいいや・・・どうしてもダメか?山向こうの村が困ってるらしいんだ・・・ゴブリンが大量に発生して畑を荒らして女子供を・・・」


ゴブリン!?図鑑で見たけど背丈は低いけど醜悪な顔に性欲旺盛・・・人間が使う武器を奪って使いこなせる器用さを持つRPG定番の雑魚モンスター・・・それが大量にってヤバいんでない?


「山向こうの村ってアジダト?・・・あそこは駐在さんも居ないし畑が荒らされたら・・・他の冒険者さん達は?」


「最近森からよく魔物が近付いて来てて余裕が無い・・・俺らも近場が本当は良いけど、ほっとくと村が・・・」


近場なら怪我しても町に戻ってハムナさんやシーナに治してもらえる・・・けど離れた場所だとそうもいかない・・・しかもシーナはその村を知ってるらしいし・・・これは・・・


「・・・お父さんに聞いてみる!テムラ達の出発予定は?」


「助かる!出来れば今日中に出たい・・・装備は全部こちらで用意するよ」


「分かった・・・ギルドで待ってて!・・・アタルさん・・・ごめんなさい・・・私・・・」


「大丈夫・・・行ってきな」


「はい!」


シーナは俺に頭を下げると足早に教会に戻って行った


残された俺が立ち上がるとシーナにテムラと呼ばれた男の子が俺の肩に手を乗せて、俺を椅子に押し付けた


「なあ、オッサン・・・何が狙いだ?」


ストンと再び座った俺に顔を近付け凄むテムラ君・・・かなり強い力で押し付けられ、ペシャンコになりそうだ


「別に・・・何も・・・」


「はあ?ブツブツ言ってんじゃねえよ!何もないならさっさと教会から去れよ!クソ野郎が!」


え、何これ・・・なんで俺責められてるの?


「あ・・・いや・・・」


「討伐から戻って来た時、まだこの町にいやがったら今度はてめえが討伐対象だ・・・分かったらさっさと消えろ!」


テムラはそう言うと肩から手を離し行ってしまった


あのクソガキ・・・怖いじゃないか!


どうもまだシーナと鍛えたコミュ力はシーナ家族にしか通用しないみたいだ・・・言葉が出て来ない・・・


てか・・・シーナと昔から知ってる仲か・・・そりゃあ心配にもなるか・・・こんな胡散臭いオッサ・・・お兄さんが純新無垢なシーナとひとつ屋根の下で・・・まあ実際記憶喪失も嘘だし、異世界人だし・・・胡散臭さならトップクラス・・・受け入れてくれてるシーナ家族が優し過ぎる


それに甘えて俺は・・・うん、やっぱり・・・


俺は立ち上がると前に教えてもらった冒険者ギルドへと急いだ。そして、受付の前に立ち、意を決して口を開いた


「アタルです!冒険者になりたいのですが・・・」


ポカーンと口を開く受付嬢・・・あれ?俺変なこと言った?


「ぷっ・・・それでしたら・・・この申請書類にサインを・・・この辺では見かけない顔ですが・・・保証人は居ますか?・・・ぶっくっくっ」


くそう!プロなら笑うな!


「居ます!貰ってきます!」


俺は必死に笑いを堪えようとする受付嬢から書類をひったくり、足早に冒険者ギルドを出た


ギルド内では俺を見てクスクス笑っているのが分かる・・・何がおかしいんだ、こら?


教会に辿り着くとそっと中を覗いて見た。もう既にシーナは出掛けたらしく、ハムナが一人レーネ像に祈りを捧げていた


「あ、あのー・・・」


邪魔しちゃ悪いと思ったけど、時は一刻を争う・・・俺の声に反応したハムナは顔を上げるとゆっくりと振り向いた


「アタル君か・・・どうしたね?」


「あの・・・これ・・・」


俺が渡した書類に目を通すとこちらをジロリと見つめてくる。何かを探るような・・・そんな視線を受けながら俺は次の言葉を待った


「このタイミングで・・・か。ちょっと待ってなさい」


ハムナは書類を持ったまま奥の部屋に行くとすぐに戻って来た。その手には書類と袋と短剣を手に・・・


「これで申請は出来るだろう・・・娘を・・・頼む」


あらら・・・ハムラには筒抜けか・・・


「はい・・・必ず!」


俺は遠慮なく書類と袋・・・そして短剣を受け取った。袋の中身はお金だろう・・・これで旅の準備をしろって事だな。短剣は教会のシンボルであるレーネの顔が彫ってある・・・使った様子はないが抜くと切れ味は良さそうだ・・・キチンと手入れされていた


俺は短剣を鞘に収めてハムナに頷くと冒険者ギルドへと向かった


途中、シーナ達一行が遠くから見えたから隠れてやり過ごすと、足早にギルドへ


「これで・・・お願いします!」


「・・・は、はい。・・・ハムナさんとこの・・・分かりました。ギルドカードは後日発行になりますが、今日から依頼を受けますか?」


「いえ・・・その・・・アジダトの村はどっちですか?」


「は?・・・町を出て北になりますが・・・」


「・・・北ってどっち?」


「・・・アッチです!」


逆ギレ気味に指をさされ、怯みながらも頷いた。いつもの川とは反対側・・・そこにシーナ達は向かったはず


俺は受付嬢に礼を言うとギルドを出て食糧と水・・・そして、それらを入れるバックを買った


テントは・・・要らないだろう・・・とにかく付かず離れずシーナを守る為に町を出る


もう後悔はしたくないから・・・

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