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剣と魔法・・・時々超能力  作者: しう
超能力の章
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1章 4 落とし穴

「はあ・・・はあ・・・はあ・・・」


俺は今・・・山篭りをしている。何故って?もちろん自分を鍛える為だ


きっかけは数日前・・・よく晴れた日でいつもの如く俺とシーナは川で遊んでいた。魔物が出ても俺が守る・・・完全に魔物を舐めていた俺らの前に現れたのはでっかいクマ・・・しかも手負い


どうやら誰かが仕留め損なったらしく逃げて川までやって来たらしい


血だらけのクマは両手を広げ俺らを威嚇する


突然の出来事に固まっていると、クマは迷わずシーナの方へと突進し始めた


焦って念動力でシーナを突き飛ばし、ギリギリの所で致命傷は免れたが、腕に傷を負わせてしまった


クマは邪魔をしたのが俺だと分かると俺にロックオン・・・ダラダラとヨダレを垂らしながら向かって来る


足が竦んで動けない俺は終わったと目を閉じて走馬灯を初体験した


生まれてから5~6歳の頃の思い出に浸っていると、いつまでも来ない痛みに不思議に思い薄目を開けた。するとクマはうつ伏せで倒れており、その背中はプスプスと音を立て焼け焦げていた


どうやらクマを仕留め損ねた者達が追いかけて来て魔法を放ったらしい・・・寸での所で助けられ、俺は腰が砕け膝を地面についた


彼らは謝罪とか色々話しかけて来たけど何も返せなかった・・・ただただ自分の情けなさに呆然とシーナの傷付いた腕を見るしか出来なかったんだ


傷はすぐに治したが、服が破けている為に当然ハムナとレギーも気付く・・・そうしてシーナは唯一のお出掛けも禁止されてしまった


俺が守れていれば・・・こんな事にはならなかった・・・


念動力の強さは恐らく腕力の強さ・・・腕力を鍛えれば念動力の強さも上がりあんなクマなんかに負ける事はない・・・俺は部屋にこもり筋トレを開始する


・・・1・・・2・・・さぁん・・・しぃぃぃ・・・・・・マジか


腕立てくらい10回は余裕だろうと思っていたが、4回も出来ない・・・これは筋トレしてクマを倒せるまで年単位でかかるぞ・・・それまでシーナは外に出れない?そんなのダメだ!俺は・・・


と、言うわけで安直だが山篭りに来た


と言っても何するか分からずにとりあえず筋トレ・・・山に篭もる必要あるのか?これ


まあ、今はあの3人に顔を合わせづらい・・・特にシーナ・・・


せっかく川遊びを楽しみにしてくれてたのに・・・もしかしたらいずれ全裸に・・・いや、ごめんなさい


とにかくシーナの楽しみを奪ってしまった自分が情けなく、鍛え始めて初日・・・もう挫けそうです


と言うのも何をすれば良いのか分からない・・・筋力=念動力の強さなのかも定かではない・・・使えるようになって徐々に強くなった念動力・・・それがある時を境にぱったりと強くならなくなってしまった。恐らくそれが筋力のせいだろうと考えているけど・・・だったらヒカルのテレポーテーションや城さんのテレパシーはどう鍛えるんだって話になる


闇雲に鍛えても意味あるのかと悩みが生じて、フラフラと森の奥へと歩いて行く


そう言えば最初に飛ばされた場所もこの辺だったかな?変わらない風景なのでキョロキョロしながら歩いていると・・・


「!・・・あ、あなー!!?」


急激に感じた浮遊感・・・その後間髪入れずに俺は空いていた穴に落っこちてしまった


どれくらいの高さがあるか分からない・・・落とし穴なのか自然に出来た穴なのか、も


とりあえず穴から差し込む光を頼りに周りを見渡すと、あらヤダ変な音が聞こえて来る


グルルルル


あー、聞いた事がある。獣が喉を鳴らすとこんな音がする・・・しかも一匹じゃない・・・複数の気配を感じて俺は後退りした


次第に見えて来たのは犬か狼・・・大分お腹を減らしているみたいでヨダレダラダラ、喉はグルルルル・・・こちらをガン見しています


周囲を見渡しても何も無い・・・木の棒くらいあれば投げて・・・いや、興味は俺の肉か・・・暗闇から出て来るのは1・・・2・・・3・・・いっぱい


いやマジでシャレにならない・・・生きたまま食われるくらいならいっそう・・・つっても死ぬ勇気すらない


人生最大のピンチ・・・3回目


1回目は研究所


2回目はクマ


3回目は犬or狼


三度目の正直ってことわざが今は恨めしい・・・そんな事を考えている間にドンドン距離を詰めてくる


ジリジリと下がる・・・地上は遥か上・・・助けを呼んでも間に合わない・・・俺が何とかしなければ・・・と、あるものに気付いた。それは更に下に下がる事が出来そうな穴・・・暗くて底が見えないが、少しだけ見える先に横穴がある・・・下まではどこまで続くか分からないけど、あの横穴に入り込めればコイツらは諦めるかも・・・


しかし穴は直径3m・・・横穴はここから2mくらい下・・・横穴に届かなければ底の見えない下まで真っ逆さま・・・でも、やるしかない!


俺は警戒しながら穴の縁まで下がると一気に後ろを向いて横穴目指して飛んだ


後ろから飛びかかって来ている気配を感じるが、気にせず人生最大の大ジャンプ・・・斜めに落ちていき、何とか横穴の縁に手をかけると無我夢中でよじ登る


何匹か落ちて行く犬っころ・・・耳をすますが着地音は聞こえない・・・ゾッとして恐る恐る下を見るが、やはり何も見えなかった


しばらく上に残った犬っころは口惜しそうに俺を見つめるが、諦めたのか姿を消していく


何とか九死に一生を得たと安堵していると不意に声がして身体をびくつかせた



・・・殺して・・・殺して・・・殺して・・・



やめて欲しい・・・本当に



・・・殺して・・・殺して・・・殺して・・・



「あー、殺せるなら殺してやる!無理だっちゅうの!」



・・・あっ、繋がったか?・・・いきなり何言ってんだ?・・・



「そっちが何言ってんだって話だよ!こっちは今正に殺される所だったのに・・・」



・・・すまねえが・・・日本語でOK・・・



こっちの生活に慣れすぎた・・・言語を切り替えるべく1度深呼吸して息を整える


「あー、あー、聞こえますか?どうぞ」



・・・すっかり現地人だな・・・そっちはどうだ?・・・



「どうもこうも死にそうだよ!絶体絶命のピンチ真っ最中!」



・・・おお・・・そうか・・・超能力は?・・・



「それを鍛えようとしてこのザマだ!山篭りなんて慣れないことするもんじゃなかった・・・それよりなんでもっと早く連絡寄越さねえんだよ!心細いでしょうが!」



・・・すまねえ・・・どうもこの状態だと回復が遅くてな・・・



「回復?」



・・・いわゆるMPってやつだ・・・まあ、この身体じゃ新陳代謝もあったもんじゃねえ・・・それよりも・・・山篭りって何だ?・・・



「いや、だから身体を鍛えて超能力を強くしようと・・・」



・・・はあ?・・・それで山篭り?・・・ガッハッハッハッ・・・お前は大昔の空手家か!?・・・



「んぐっ・・・仕方ないだろ!?それしか手段が・・・」



・・・ふう・・・強くなりてえなら・・・超能力を使いまくれ・・・使って使って初めて能力は強くなる・・・まあ、身体は鍛えるのは止めねえがな・・・ぷぷ・・・



「使うと・・・強くなる?」



・・・そうだ・・・俺の周りは全員そうだった・・・例外はねえ・・・寝たきりの爺さんも・・・使いまくって服どころか相手の骨まで透視してたらしいぜ?・・・



「羨ましい・・・しくないな。そうか・・・使えば良いのか・・・」


それで合点がいった。初めは面白おかしく使いまくってた。それが親にバレ、ニュースを見るようになってどんどん使わなくなって力が成長を止めたんだ



・・・確か・・・君の能力は・・・念動力だっけか?・・・



「ああ」



・・・そうか・・・じゃあ、今のところ君が頼みの綱だな・・・



「?頼みの・・・綱?」



・・・いや、気にしなくていい・・・それよりピンチって?・・・



「あ、ああ・・・それは・・・」


俺は今の状況を城さんに話した。黙って聞いていた城さんは、俺が話終えると重い口を開く



・・・さようなら・・・



「おい!さっき頼みの綱とか言ってなかったか?」



・・・でもよー、それ無理だろ?・・・上は腹空かした野良犬、下は奈落の底・・・これなーんだってなぞかけか?・・・



役に立たんオッサンだ・・・そう言えば・・・


「なあ、初めに話しかけて来たサエグサヒカルは?」



・・・ん?寝てるぞ・・・



「・・・いやいや、さっきまで起きてだろ?いい加減話しかける時に『殺して・・・』とか止めて欲しいんだけど・・・」



・・・それ・・・着信音・・・



「は?着信音??」



・・・俺のテレパシーは開始する時に音が鳴るんだ・・・相手の1番印象に残ってる音・・・君の場合がたまたまヒカルのその言葉だったんだろうな・・・



「どんなホラー映画の携帯だよ!そんな着信音消してくれ!」



・・・いや、俺が設定した訳じゃ・・・あ、そろそろ・・・通信が・・・



「いや、待て!とりあえずかけ放題に契約変えろ!待て・・・ま・・・」


途切れてしまった。くそっ・・・貴重な時間を・・・せめてヒカルと話したかった・・・


だが有益な事も聞けたぞ・・・超能力は使う事によって強くなる・・・つまり身体を鍛えなくても・・・動かなくても鍛える事が出来る!


と、なれば・・・


俺は坐禅を組み、目を閉じた


そして念じる・・・自分の身体を浮かせようと


身体は少し浮き、すぐに力尽きて落ちる・・・だが、これを繰り返せばどんどんと強くなり、いずれは・・・




問題が2つ発生した


1つはあまり使い続けると頭が痛くなる・・・これがMP切れか?


もう1つは喉が乾いた・・・とにかく喉が乾いた


横穴はどこにも繋がっておらず、3mくらい進んだら行き止まり・・・手持ちには水などなく、もう干からびそうだ


そんなに簡単に能力が強くなるはずもなく、ジリ貧だと思ったけど気付いた事があった。それは超能力と腕力は別物・・・当たり前だけど改めて意識してみると大いに役に立ちそうだ


簡単な話、腕立て伏せを腕力だけでしようとすると4回が限界・・・念動力で手を使わずにやると10回出来る・・・だが、腕の力と念動力を合わせて使えば10数回出来るんだ


喉の乾きを潤す為にはここから出ないといけない


なので作戦を立て、とりあえずMPの回復に専念した


数値化出来れば分かりやすいのだが、とりあえず何もせずに1時間くらい目を閉じて坐禅を組み瞑想した


ゆっくりと目を開け、横穴から顔を出して上を見上げると日が差してるのが分かる


落ちてから1日が経過したのだろう・・・腹のすき具合もMAXだ


気合を入れて横穴から見た反対側の壁を睨みつける


「行ってやる!!」


力強く地面を蹴り、反対側まで飛んだ。もちろん蹴り足には念動力の力を加えて・・・すると斜め上の壁に着地し、更に同じように反対側の壁に向かってジャンプする。3角飛びの要領でもう一度横穴があった方の壁を蹴ると目の前に穴の縁が・・・縁に腕をかけ、何とか一個目の穴はクリア・・・為せば成る!!


某栄養ドリンクのCMよろしくファイト一発根性で登り切ると仰向けになりとりあえず休憩・・・しかし、時間はあまりない・・・俺の匂いに誘われて犬っころがやって来る可能性が高いからだ


今度は先程のように3回で戻れない・・・大体5mくらいあるだろうか・・・その縦穴をさっきと同じ要領で壁を蹴って登る・・・落ちた時には待ち受ける犬っころのエサとなるだろう


俺は息を大きく吐き、キッと上を睨みつけるとファイナルミッションを開始した


まずは大きく正面の壁にジャンプ・・・で、反対側に飛んでまたそれを繰り返す・・・徐々に蹴り足の力が弱くなり、上がる高さが低くなっている気がする・・・それでも何度か繰り返すと穴の縁がチラリと見えた


ガラッ


不味い・・・上の方は雨が染み込んでいたのか脆くなっており、足で蹴った瞬間に崩れ勢いが完全に止まる。一瞬下を見るとやはり犬っころが匂いを嗅ぎ付け待ち構えているのが見えた


このままでは反対側の壁に到達出来なくて落下・・・美味しく召し上がれ状態・・・そう言えばシーナに言って出て来なかったな・・・いきなり現れていきなり消えて・・・いずれは思い出してくれるかな・・・ああ、そんな人も居たっけ・・・みたいな・・・・・・・・・ふざけるな!!


そんなの我慢出来るか!ヒキニートだった俺が別世界で自然に話せるようになったのは全て彼女のおかげ!なんの恩返しもしないで・・・このまま犬っころのエサになんざなってたまるかよ!!


諦めかけた俺は自分に怒りをぶつけた。無我夢中で出口に手を伸ばし、歯を食いしばり強く願う


──────俺にシーナへの恩返しをさせてくれ──────


俺はあの時・・・クマに襲われた時に覚悟して目を閉じた・・・俺が襲われている間にシーナが助かる・・・そんなヒーローチックな考えも少しあった・・・怖くて動けなかったのが大半だけど・・・でも、俺が鍛えるようになった本当の理由は・・・その後の・・・俺が死んだ後のシーナの気持ちを考えなかった情けない自分を変えたかった為・・・死ぬ事で逃げるんじゃない・・・生きて・・・彼女を守れるようになる為に俺は強くなる!


「うおおおおお!!!」


何年ぶりだろうか・・・腹の底から声を出したのは・・・


気付くと俺は穴の外へと出ていた・・・壁を蹴らず念動力だけで身体を浮かせて2mほど上に上がったんだ・・・ほんの数cmしか浮けなかったこの俺が・・・


仰向けになり大の字に寝転がると陽の光を浴びる


たった一日やそこら地下に潜っただけでこの開放感だ・・・陽の光は人にとってかなり重要なのが分かる


部屋に閉じこもり、陽の光なんて浴びなくても生きていけると思ってた俺はもういない・・・帰ったら・・・謝ろう・・・母ちゃんと父ちゃんに・・・帰ったら謝ろう・・・シーナに・・・


まずはシーナに謝るべく、俺は立ち上がるとシーナに出会った川を目指す


ふらつきながら辿り着いた川に顔を突っ込み喉を潤すと大きく息を吐き気合を入れる


限界以上の力を使ったのに頭は痛くない・・・MP切れの頭痛に慣れたのか?


そんな事を考えながら俺は家路に着く・・・この世界の家・・・シーナの家に


俺は超能力を使ってこの世界で・・・生きてやる!

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