2章 18 次の作戦へ
「つ・ま・り・・・全部演技だったって事?」
「はい・・・誠に申し訳ございません」
「まあまあ、ユンもそこまで怒らなくても・・・」
ええ人やヤクモさん・・・俺は一生ついて行くぜ!イテッ
「ヤクモ・・・こういうのはきっちりやらないとダメよ・・・」
ヤクモに対して優しい声で言ってるが正座してる俺を腰に手を当てて見下ろしてる目が怖い・・・ヤクモに見えないように小突かれたし・・・
「反省してます・・・調子に乗りました」
俺が謝り倒してると部屋に誰かが入って来た。その方向を見て俺は入って来た人物を指してこう言った
「犯人はアイツです」
「ええ!?ちょっとアタルさん!何を言って・・・兄さん!違うんだ・・・これは・・・」
「どうなってんだ?声がしなくなったと思ったら・・・」
入って来たのはヤクマルとジャタン。これで俺は無罪放免・・・イテッ・・・なんで・・・
「ヤクマルまで巻き込んで・・・きっちり説明してもらいましょうか?」
全て説明するとユンとヤクモは難しい顔をしていた
俺がユンを襲おうとすればヤクモは動くはず・・・もし動かなかったら・・・俺はどうしてただろうな・・・でも、何となく確信があった。動いてくれるって。それは・・・
「ヤクモさんの気持ちを確かめるような真似してすみません・・・でも・・・ちょっと思う所があって・・・」
「思う所・・・ですか?」
「ええ・・・」
本当はあまり話したくないが・・・2人には・・・同じ思いをして欲しくないから・・・
「小瓶?・・・中は髪の毛と砂?」
俺が首から下げていた小瓶を取り出すとユンが中を覗き込む
「そう・・・俺がシューリー国に来る理由になった出来事と関係している・・・俺はメイザーニクス国内を旅していた・・・一人の女の子と。まだ・・・その・・・恋人同士って訳でもなくて・・・でもすごいいい子で大事にしたいと思ってた。ある町で俺は彼女にプレゼントをしようとした・・・最初はその小瓶に砂が入ったもの・・・彼女ならそんなものでも喜んでくれると思ってた・・・でも・・・その・・・気持ちを伝えようと思って・・・指輪を買ったんだ。その時彼女がどんな状況にいるかも知らずに・・・」
「指輪・・・あ・・・底に・・・」
「ああ、サプライズのつもりだったんだ・・・喜ぶ顔が見たくてドキドキしながら泊まる予定だった宿屋に戻ると彼女は居らず・・・俺は心配になって町を探し歩いた・・・夜から朝になり、彼女らしい人を見かけた人が居て・・・その場所に行ってみたら・・・彼女は・・・殺されていた」
「・・・そんな・・・」
「アイツらは彼女の髪を掴み俺に見せてきた・・・頭だけになった彼女をっ・・・アイツらはっ!」
「アタル・・・もういい!もういいよ!」
「・・・・・・大丈夫・・・・・・もう分かってると思うけど俺は神聖魔法が使える・・・でも、ホーリーヒールをかけても・・・彼女の傷は消えたけど当然生き返りはしない・・・何度も何度もかけても・・・生き返る事はなかった。そこからの記憶は曖昧で・・・俺はその場に居たヤツらを処分しその場に居合わせたアイリンとリュウシによってシューリー国に連れて来てもらった。多分だけどショックで一時的に記憶障害になったらしくて・・・彼女・・・シーナを思い出したのも最近だ」
「・・・」
「小瓶に入っているのはシーナの髪の毛・・・アイリンがその場から立ち去る時に持って来てくれた・・・。その・・・で・・・何を言いたかったかと言うと・・・俺はヤクモさんがすごいと思った・・・羨ましいと思った・・・彼女を助けられ、彼女が生きてるんだから・・・別に不幸自慢したいわけじゃない・・・両腕を失った悲しみは俺には分からないし・・・こんな事言ってもいいか分かんないけど・・・素直に羨ましかったんだ・・・」
「アタルさん・・・」
「だから今回・・・俺が言いたかったのは・・・自分の気持ちに素直になれバカヤロウ・・・って事」
あれ?ヤバい・・・俺泣いてる・・・くそっ・・・
「腕を失って・・・引け目を感じてるのは・・・分かるけど・・・もっと引け目を感じてんのはユンさんだろ!?悲劇のヒーロー気取ってんじゃねえよ!お前が悲しい顔したら原因となっちまったユンさんが悲しむくらい分かれボケ!お前は今やれることを必死に考えろよ!一人で立てなかったら壁使って立てよ!飯食えなかったら齧りつけよ!薬師だったんだろ?頭良いんだろ?知識を活かしてやれる事なんていくらでもあんだろ!甘えてんじゃねえ!2人とも生きてんだろうが!」
「アタル・・・」
「・・・すみません・・・生意気言って・・・俺もヤクモさんと同じように全部投げ出した時もあって・・・生きる気力なくて・・・そんな時にダルスのジジイに会って・・・ケンさんって人に会って・・・叱られて・・・ダルスのジジイなんてさ・・・言い切るんだ・・・『惚れた相手を守る為なら例え誰が相手でも負ける気はしない』ってさ・・・その時はバカだと思ったが・・・今なら分かる・・・ヤクモさんも・・・分かるんじゃないですか?」
「・・・ああ・・・いきなり閉じ込められて・・・ユンが襲われそうになっているのを見て身体が勝手に動いた・・・諦めたつもりだったのに・・・誰にも渡したくないと」
「・・・ヤクモ・・・」
「羨ましいよ・・・ヤクモさん」
何か全部吐き出して、2人の顔を見てたら落ち着いてきた。最近情緒不安定だな・・・俺。たまに自分が自分じゃないような・・・いや・・・実際本当の俺って一体・・・
「それと君が今回の件で言いたかった事がもう一つあるんじゃないのかな?」
ユンとイチャイチャしていたヤクモが声をかけてきた。うん・・・このままじゃ何も解決しない。解決する為には・・・
「ええ・・・イバラの道ですが行きますか?」
「ここで行かないと言うとひどく格好が悪いな」
「そうでもないですよ。引くにも勇気が必要だと思います。まっ、行くならとことん付き合いますが・・・」
「君にそう言ってもらえると心強いな」
「ちょ、ちょっと!2人して何の話?意味わからないんだけど・・・」
「アタル君は僕に最後何をしたか分かるかい?ユン」
「最後?・・・蹴りを・・・あっ、でも実際は蹴ってなくて・・・怪我が治って・・・まさか!?」
「そう・・・アタル君は僕を蹴るフリをして最後神聖魔法を使った・・・手ではなく足をかざしてね。つまりそれは僕にも出来るという事・・・」
「待って!だって魔法は・・・」
「誰かを救えるのに・・・力があるのに使えないなんておかしい!僕は君を救った事を・・・1ミリも後悔していない!でも君の負担になりたくなくて・・・でももう迷わない!僕は君の為に・・・傷付いている人の為に魔法を使う!」
「ダメよ!そんな事したら・・・」
「そこで作戦第二弾!名付けてNTB作戦!」
「なにそれ」
なんかヤクモに対する熱量と俺に対する熱量があからさまに違くて・・・泣ける
「ノータリンをぶん殴る・・・略してNTBだ!」
「・・・」
あれ?反応が薄いぞ?
「誰よノータリンって・・・誰を殴るって?」
「いや、決まってるでしょ?魔法を使わせないようにしてる元凶・・・シューリー国の王様」
「バッバカ言ってんじゃないわよ!あんた何言ってるか自分で分かってるの!?」
「無理かな?」
「あったり前でしょ!国王様よ、こ・く・お・う・様!そりゃあ私だってヤクモの事で・・・でも絶対無理!一族郎党皆殺しじゃ済まないわよ!村ごと消え去るわ!」
「いや、俺一人でやるから・・・」
「はあ!?不可能をより不可能にしてどうすんのよ!?私達全員がやっても無理なのに・・・」
「じゃあ一生ヤクモさんに魔法を使わせない?バレたら今度こそ殺されちゃうかもよ?」
「それは・・・」
「ユン・・・僕はもう迷わない。魔法を嫌う国王様の気持ちは分かる・・・けど、このままでは何も変わらない・・・誰かが動かないと何も変えられない」
「そうだけど・・・」
「何も暗殺しようって訳じゃないんだ。ちこーと話出来ればそれでいい。言う事聞かない時だけ殴るだけだから」
「それが物騒って言ってるの!」
「ユン姐さん僕からもお願いだよ・・・ヤクモ兄さんに魔法を使わせてやっておくれよ」
「ちょ、ヤクマルまで・・・」
「俺からも頼む」
「あんたは黙ってなさい」
ジャタン哀れ・・・少し涙目なのが笑える
目を閉じて何かを考えるユン。そして深くため息をつくと俺をキッと睨みつけた
「・・・あーもー分かったわよ!要は国王様と話せる場があればいいんでしょ!?そんな事考えた事もないから少し時間がかかるけどそれでいい!?」
さっすがユンさん男前!
「それと!ヤクモは今日からここに住むこと!迷わないって言っててウジウジしてたらぶっ飛ばすわよ!」
「ああ・・・君との事ももう迷わない」
「・・・それは今言わなくても・・・」
うわーいユンの顔が真っ赤っか~そんで2人はあっちっち~
「最後にアタル・・・」
えーなになに?もしかしてご褒美に何かくれるとか?
「あんた全部演技だったって言ってたけど・・・それなら胸を揉む必要あった?」
「・・・あった」
ポーカーフェイス発動・・・無心だ・・・無心になれ
「へえ・・・じゃあその必要性を私が納得するように説明してもらおうか?」
「・・・あいつが指示しました!じゃっ!」
ジャタンを犠牲に逃亡を図るも・・・失敗
この後ボコボコにされました・・・何気にヤクマルとジャタンも加わってたし・・・アイツら許さねえ・・・覚えてろ!




