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剣と魔法・・・時々超能力  作者: しう
気功の章
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2章 2 対抗試合2

龍のジン


流拳派に彗星の如く現れた天才拳士


幼い頃、兄ジンガの影響で流拳道場に入門するとメキメキと頭角を現す


型を覚える前に気功を操り、型を覚えた頃には師範であるリュウゲンをも超える勢いだった


その実力があるにも関わらず、鼻にかけない人格者であり、誰からも好かれる性格の持ち主・・・唯一の欠点として挙げられたのは強過ぎる事・・・


・・・なんじゃそりゃ!


アイリンからジンの話を聞いて思ったのは、あーいるよねそういう奴、だった


スポーツ万能、友達思い、たまにおふざけもするクラスの人気者・・・唯一の欠点は優し過ぎる事・・・ってバカか!


「ン?聞いてるカ?それでジン兄はナ・・・」


まるで自分の自慢話のように話すアイリン。たまに遠い目をして、たまに思い出し笑いをして、随分と楽しそうに話している


すると、とうとう本題に入った


「1年前螺拳派が道場を建てハモト村の補助金を賭けて対抗試合をしようと持ちかけてきタ。暗黙のルールは所詮暗黙のルール・・・破た所で罰即もなイ・・・進出を咎めることが出来ず私達はその試合を受けるしかなかタ」


勝負を受けた後、期日等の細かい打ち合わせと称してアイリンの父リュウリとジンが螺拳道場に赴いた。要は敵情視察ってやつだ


その時のリュウゲンの予想としてはジンは確実に、成長著しいリュウシも恐らく、アイリンは半々の勝率と踏んでいた。より勝利を確実にする為の敵情視察・・・その行為が裏目となる


ジンは実力を読むのも得意で、相手を見ただけでどれほどの力量か見抜く。ジンが見て、こちらの陣営の力不足と判断すれば期日をギリギリまで延ばし、勝てそうであればすぐにでも試合の日程を決めようと考えていた。・・・ところが・・・


「ジン兄と父は帰らぬ人となってしまタ。螺拳道場に行た帰りにダ!恐らくジン兄の実力を見抜いたか知ていたカ・・・」


確かにそう考えるのが普通だな。流拳道場があるにも関わらず螺拳道場を建てた時点で計画していたってなるよな


「この国ハ・・・実力主義ヨ。もし螺拳派の仕業と分かてもそれをはね返せなかたジン兄と父が弱かタ・・・そう結論付けるはズ・・・でもナ・・・ジン兄は正面から来ればぜたいに負けなイ!たとえ何人来ようとモ・・・奴らが卑怯な手を使たに決まてル!」


「それも強さじゃないのか?」


「卑怯な真似のどこが強さヨ!」


「弱い者が強い者に勝つ手段だよ。それも強さになる・・・そう思ってないと負けるぞ?」


「・・・どういう意味ヨ?」


「そのままの意味だよ。相手が卑怯な手を使ってくると分かっていれば対処法もある。死んだら終わりなんだ。敵がいたら卑怯な手を使ってくる前に殺せばいい。いや、それかその卑怯な手を利用して・・・」


「アタル?」


「笑顔で近付いてくる奴は敵だ。何か裏がある。隙を見せるから奴らは襲ってくる。隙を見せなければいい。でもそんな奴らの為に窮屈な思いをするくらいなら・・・やっぱり殺そう。悪には・・・」


「アタル!」


「・・・え?」


「何を言いたいかさぱり分からないヨ・・・それになんカ・・・怖いヨ」


怖い?俺が?あれ・・・何を話してたっけ?思い出せない・・・確かジンって人が・・・


「アタル・・・少し疲れてるのヨ・・・今日はゆくり休んデ」


「あ、ああ・・・おやすみ・・・」


アイリンはそう言うと出て行ってしまった。寂しそうな顔が印象的で、俺が何か言ってしまったんではないかと心配になる


くそっ・・・俺は何を・・・頭が痛い・・・こんな時は・・・


「ヒール」


ああ・・・痛みが和らいでいく・・・スーッと痛みが引いて気持ちいいくらいだ・・・痛いなら治せばいい・・・殺せばいい・・・


首からかけた小瓶を懐から出した


これを眺めていると心が落ち着く


誰のか分からない髪の毛と願いの叶った事を知らせる星の砂・・・そして、その奥底に入っている指輪・・・神聖魔法とこの小瓶があれば俺は・・・




次の日、リュウゲンは神妙な面持ちで改めて対抗試合の日取りを俺達門下生に告げた


模擬戦はしばらく中止、出場メンバーは明日か明後日に告げると言う


門下生達は不安を掻き消す様に大きな声で返事をした


模擬戦中止は恐らく対抗試合までに怪我をしないように・・・別に怪我しても俺のヒールで治せるのに。まあ、リュウシから人前で魔法を使うなって言われてるから仕方ないか


いつも通りに修行を行い、今日一日があっという間に過ぎていく


修行を終えて片付けをしている時、ふとジンガを見た


いつも明るいジンガが暗い・・・対抗試合に恐らく選ばれるだろうから緊張してるのか?それなら・・・


「ジンガ、昨日は付き合えなかったけど、今日なら行けるよ。飲みに行くか?」


その言葉に周りが一斉に俺を見た。いや、ジンガに言ったんだけど・・・


「・・・悪ぃなアタル・・・そんな気分になれねえ・・・」


「そうか。じゃあ、また今度」


会話を聞いていた奴らの視線が痛い


あー、誘われなくてヤキモチ妬いてるのか?仕方ない、誰か他の奴と・・・


「アタル・・・少しいいか?」


「?・・・ああ」


リュウシに呼ばれた。付いて行くとみんなから見えない位置で立ち止まり、振り向くとため息をつく


「話してなかった俺が悪かった」


そう言うと1年前に殺されたジンの話をし始めたので、話を遮り昨日アイリンに聞いたと告げると驚いた顔をした後、「そうか」と呟いてどこかに行ってしまった・・・なんだったんだ?



それから2日が経ち、修行が終わるとリュウゲンが皆を道場内に集めた。普段の修行は中庭で、道場内に入るのは久々だったが板張りの床が冷たくて気持ちいい。なんでも道場を使うのは特別な時だけらしく、今回の対抗試合ですら使わないらしい


門下生総勢30名がズラリと並ぶ中、リュウゲンが前に立つと皆を見つめた


恐らく対抗試合のメンバーを発表するのだろうと固唾を呑んで待つとリュウゲンは咳払いをし口を開いた


「これより対抗試合のメンバーを発表する。呼ばれた者は前に出よ・・・先鋒ハナン!」


おおっ!とざわめく中、呼ばれたハナンが立ち上がり前に進む


ハナンは真面目でしっかり者。いつも朝1番に来て遅くまで頑張る頑張り屋さんでもある。強さも上位で今回の対抗試合に選ばれるだろうと言われてた。1度俺も模擬戦で手合わせしたが良く悪くも堅実な立ち回り・・・まあ、俺は手も足も出なかったけど・・・


「次鋒ジンガ!」


「おう!」


応えて勢いよく立ち上がるジンガ。誰もが納得のNO.3の実力者。面倒みがよく兄貴肌・・・ガタイが門下生一良くて破壊力だけで言えば1番かもと言われている


「中堅リュウシ!」


おおっ!?とざわめく門下生達。俺も正直驚いた。誰もが認めるNO.1・・・そのリュウシが中堅って・・・この世界だと中堅に1番強いヤツを持ってくるのか?


「副将アイリン!」


流拳のアイドル、アイリンが呼ばれる。見た目と実力を兼ね備えたアイリン。1度リュウシとの模擬戦を見たが、負けずとも劣らない戦いぶりに俺に対してどれだけ手加減しているか驚いたものだ。誰もが納得のメンバーに残るは大将の発表・・・アイリンが前に立つと道場内がシーンと静まり返る


「大将・・・コハン!」


ええっ!とおおっ!が入り交じる。驚きと納得のざわめきにコハンは申し訳なさそうに立ち上がると前に出る。小柄だがスピードは有り相手の背後を取るのが上手い。お調子者で度々冗談を言っては場な雰囲気を和ませるコハンが大将とは驚きだ


呼ばれた全員がリュウゲンの前に立ち俺らの方に振り向いた。ハナン、ジンガ、リュウシ、アイリン、コハン・・・これが対抗試合のメンバーか・・・


「螺拳との対抗試合はこのメンバーで行く。実力は皆も知る所だろう・・・3勝すれば我らの勝ち・・・3敗すれば我らの負け・・・流拳派の存亡がかかっている・・・選ばれなかった者達も・・・選ばれた者達も心してかかれ!」


「おう!!」


全員がリュウゲンの言葉に応え、道場が震える。負ければ道場は螺拳派に奪われる・・・ん?門下生達は全員螺拳派になるのか?そうだとしたら流拳派のアイリン達は?螺拳を学び始める?まさかな


この日から対抗試合当日まで選ばれたメンバーは道場内で最終調整に入り、選ばれなかった者達は中庭で試合会場造りを手伝う事になった。つっても某天下一な武道会みたいにしっかりとしたものを造る訳でもなくて、指定された広さに線を描き、四隅に杭を打ち込むだけ。別にロープを張るわけでもなく、大した作業ではなかった


試合は団体戦の星取り形式。先に3勝した方が勝ちで、3勝すればその時点で試合は終了となる。つまり最短で中堅が終わった時点で勝敗が決する。場外負けなどのルールはなく、引き分けも存在しない。殺し合いでは無い為に相手を殺してしまったら、殺した方の負けとなる


それと審判は他流派の人を呼んでくるらしい


今回は隣町の指拳の師範代に頼んだ。これも挑まれた方の特権だそうだ・・・まあ、贔屓などはしてくれないだろうけどね。他の流派も見に来るらしく、小細工なんかした日にはたとえ勝ったとしてもいい笑いものだ・・・審判もどちらかに肩入れしてしまうと同じように笑いものにされるだろうから、ぶっちゃけ誰に頼んでも問題は無いとリュウゲンは言ってたな



杭を打ち付けるのが終わり、ひと息ついた時に周りを見ると皆浮かない表情をしていた。選ばれたメンバーには見せなかったが、恐らく勝ち目が薄いのだろう・・・螺拳に負けたら、俺はこの道場を出なくてはならないのだろうか・・・それだけが気掛かりだった・・・

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