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剣と魔法・・・時々超能力  作者: しう
アタルの章
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終章 130 ヒカリ輝く

清水を先頭に私達は研究所に入るとすぐにエレベーターホールに向かい地下に降りる


そこには超能力者の成れの果て・・・ホルマリン漬けの脳みそが並んでいるとか・・・ううっ・・・ホラーは苦手なのに・・・


「懐かしいな・・・また来るとは思わなかった」


ボソッとアタルが独り言を言うと清水はいちいち身体を震わせる。そりゃ目の前であんなの見せられたらビビるよね・・・私もちびりそうだったし・・・


「なあ・・・超能力を抑えている信号って消せないのか?」


「・・・せ、制御室に連絡すれば止めさせる事は出来る・・・ます」


「そいつは良かった・・・やっぱり使い慣れた力が使えないのは不便だからな。早速着いたら連絡してくれ」


「・・・はい」


清水の返事と同時にチンと音が鳴りエレベーターの扉が開いた


「あん?・・・お前誰だ?」


「あばよ・・・宮本中」


男は突然手のひらを向けると火が出て来た


慌てて隠れようとしたけどエレベーター内で隠れる場所がない・・・どうしよう!焼け死ぬなんていやよ!


「・・・なあ清水・・・この施設内では超能力は使えないんじゃ?」


アタルの声・・・あれ?・・・燃えてない・・・


「ヒィ・・・ヒィ・・・」


清水はエレベーターに座り込み恐怖で震えていた


聞いた相手を間違えたとアタルは正面にいる火を放った男に視線を移した


「なんでお前超能力使えんの?」


直球・・・ド直球・・・てか、さっきの火は?・・・あれ?いつの間にか床が濡れて・・・


「て、てめぇ・・・どうやって・・・」


「質問を質問で返すなよ・・・それと小学校で習わなかったか?エレベーター内で火は使っちゃいけませんって」


「・・・」


「・・・」


うわー・・・タイミング悪くエレベーターの扉が閉まっちゃったよ・・・多分アタルはドヤ顔で言ってたのだろうけどそれだけに今のエレベーターの空間がいたたまれない・・・開くボタン押した方がいいかな・・・


「んー・・・そう来るか・・・」


いや、時間だから!時間で閉まっただけだから!何あの男がやったような感じにしちゃってんの!?


何事も無かったようにアタルは開くボタンを押すと・・・


「あれ?いない・・・」


「はあ?切ってねえ!?だったらなんで超能力が使えてんだよ!」


奥から声がするので行ってみると備え付けの受話器を持ち相手を怒鳴り散らしていた


ガラス張りの部屋・・・ふと奥に目をやるとそこには・・・アタルの言ってた通りの光景が広がっていた


「・・・胸糞悪いな・・・まったく・・・」


アタルも見ているのは電話している男じゃなくて水の中に浮かぶ物体・・・人の脳・・・両目と背骨?が付いているだけの・・・脳みそ


シーナもその光景を見て険しい表情をしていた。ギュッとアタルの服を握って怒りに振るえているように見える


「清水・・・おい清水!」


「は、はい・・・」


「研究員が着る白衣でも布切れでもなんでもいい・・・10枚ほど持って来い」


「え?」


「早くしろ・・・行け!」


「は、はい!」


何に使うんだろ?


清水は慌ててエレベーター日戻ると上に上がって行ってしまった。それを横目にアタルはズンズンと進みガラスの奥で待ち構える男の元へ・・・てっきり自動ドアかと思ったらそうじゃないみたい・・・ガラスに阻まれ足を止めるアタルを見て男はニヤリと笑った


「はっ!そりゃ強化ガラスだ・・・入りたきゃカードキーを使わねえと・・・おい・・・聞いてんのか?」


「ちょ・・・アタル!」


強化ガラスって防弾ガラスみたいなやつ?だったら殴ったりなんかしたら・・・拳を握り殴ろうとしているアタルを止めようとしたけどシーナに止められた・・・私が


「シ、シーナ?ダメだって!凄い硬いガラス・・・あーもう!カタイガラスゥ!」


言葉が通じないってなんて不便なの!?


そうこうしている内にアタルは深く息を吐くと目の前のガラスを殴ってしまった


「バカ・・・め?」


ガンと大きな音が鳴るとガラス一面にヒビが入り・・・粉々に砕けてしまった・・・唖然とする男・・・実は普通のガラスだった?


「こんなものか・・・意外と脆いな」


「やっぱり!・・・クソっ!切ってんじゃねえか!」


さっき電話でも言ってたけど『切る』ってなんの事だろう?


「!・・・ああ、そういう事か・・・俺が超能力を使ってると?安心しろ・・・ちゃんと超能力は封じられてるよ」


そっか・・・切るって信号を切るの切るなんだ・・・


「だったらどうして・・・」


「そりゃこっちのセリフだ。なぜお前は超能力を使えるんだ?まさか特定のやつだけ?・・・いやそこまで技術が発達してるとは考えにくい・・・となると・・・封じ封じってところか」


アタルは独り言のように呟くと男に視線を向ける


封じ封じってなんだろう・・・封じ封じ・・・あっ、そうか・・・男は超能力を封じる信号を封じる何かをしている・・・だからあの男だけ・・・


「となると何がその効果を発揮している?ネックレスか?時計か?・・・それとも・・・」


P・C・Gが一般的に超能力を封じる武器・・・でも最近知ったのは手錠型のやつ・・・他にも私が知らない道具があってもおかしくない・・・アタルの言う通り超能力を封じる信号を着けている人だけ遮断する道具があっても・・・おかしくない


目の前の男の格好はアロハシャツに短パン・・・首にはジャラジャラとネックレスに金ピカの腕時計・・・道端で会ったら絶対に目を合わせないようにしないといけないタイプ・・・もしアタルの予想が正しければネックレスか腕時計がその装置?


「チッ・・・訳わかんねえぞ・・・てめぇなんなんだ?」


男はアタルを警戒し後退ると背後にはあの装置があり否応なしに目に入ってくる・・・気分が悪くなり少しよろけるとシーナがそっと支えてくれた


聞いていたのと実際に見るのとでは全然違う・・・想像していた通りの光景・・・でも想像を絶する()()()()()・・・アレの見た目とかそういう話じゃない・・・アレを研究とか言ってる人達全部・・・気持ち悪い


「・・・なあ、情報交換しねえか?こっちの持ってる情報はかなりのお宝情報だぜ?俺に聞きたい事が山ほどあんだろ?」


「いや特にないな」


即答するアタルに顔を顰めるアロハシャツ・・・両手が激しく燃え始める


「ならもういいや・・・死ね」


両手を前に突き出すと左右から炎が迫る。アタルは身動きひとつせずにその炎を水の膜を張って防いだ


さっきのエレベーターの時もこうやって防いだのだろう・・・水の精霊か・・・なんだが羨ましい・・・


「くっ・・・ガキィ・・・」


このアロハシャツは多分アタルには勝てない・・・たとえアタルが超能力を封じられてるとしても・・・でもなんでアタルは攻めないんだろう・・・いつもならすぐに・・・


「・・・なあ・・・俺が居ない間に家が火事になったんだが・・・何か知らないか?」


「・・・はっ!やっぱり興味あるんじゃねえか・・・俺の持ってるお宝情報に」


火事・・・炎を操る超能力・・・もしかして・・・


「・・・誰に命令された?」


「おいおい・・・俺が犯人って決めつけるなよ・・・まずは先に俺の質問に答えろ。そしたらお前の知りたい事を全て話してやるぜ?」


「何が聞きたい?」


「なぜ超能力が使える?この研究所内で俺以外は使えないはずなのに・・・どうなってやがる」


「そんな事か。簡単だ・・・俺は超能力を使ってない」


うわぁ・・・アロハシャツの顔が見る見るうちに険しくなってきた・・・もうこれただのチンピラ・・・


「・・・へえ・・・なら今の俺の炎を防いだ水はどっから取り出した?手品か?」


「頭チンパンそうなお前に話しても到底理解出来ない・・・そっちの質問に答えたのだから今度はこっちの・・・」


「答えになってねえんだよ!正直に話やがれ!てめぇバハッ!!」


あ・・・喚くアロハシャツに目にも留まらぬ速さで近付くと蹴り飛ばしてしまった・・・


「ったく・・・余計な魔力を使ったせいでシャレンの魔力量がかなり減っちまった・・・コイツには後で話を聞くとしよう・・・今は・・・」


アタルはそう呟くと振り返る


私達じゃなくて私達の後ろを見ていると気付いたので私も後ろを振り返るとちょうど清水が両手いっぱいに白衣を持ってエレベーターから降りて来た


「あの・・・これ・・・あっ!」


オドオドしながらアタルに近付く清水は倒れているアロハシャツに気が付くと顔を強ばらせる


「コイツがここに居ることを黙ってた事は許してやるよ・・・どうせ取るに足らない雑魚だったし」


「・・・あ、いや・・・」


「さっさと超能力を封じる信号を切らせろ」


「は、はい!」


清水はすぐにアロハシャツが使っていた備え付けの電話機に向かうとそこで信号を切るように伝えた


何も変わらない・・・けどアタルはニヤリと笑うと清水が持って来た白衣を超能力で浮かび上がらせた


「壊す手間が省けたな・・・さて・・・誰から始めようか」


誰から始める?・・・そうか・・・アタルは彼らを救いに来たんだった


「何をする気・・・ですか?」


「清水・・・お前は地上で起きた事を何も覚えてないのか?」


「え?」


「お前が頭を撃ち抜いたのにその傷口は跡形もなく消えた・・・あの平良航平を見て何も理解してないと?」


「・・・まさか・・・」


「助けに来たって言ったろ?俺はすぐに何度も唱えられないが・・・うちの聖女様は一味違うぜ?シーナ──────」


アタルがシーナに何か言うと頷いてアレの前に進み出る


そしてそっとガラスに触れるとガラスの中が光り輝く


魔法・・・何度も目にしてきたけど・・・これ程感動はしなかった・・・目の前のアレが瞬く間に人の姿に・・・


そしてアタルがすぐに手をかざすとガラスは割れ大量の水が流れ出る・・・と、同時に中の人が倒れそうになるのをアタルは優しく抱きとめた


「悪ぃな・・・少し見ちまった」


「・・・・・・責任取ってくれる?」


「そりゃ難しいな・・・頑張って忘れるよ・・・三枝ヒカル」


「ヒカ()よ・・・もうどっちでもいいけど」


アタルは目のやり場に困ったように視線を逸らしながら裸の彼女に白衣を渡す


三枝ヒカル・・・うん、そうだ・・・メジャーデビュー目前で車に轢かれそうになった子供を助けた・・・その時に超能力者というのがバレて・・・その三枝ヒカルが目の前にいる


何度もリピートしてました!デビューシングル『GOandGO!』


「さて・・・次は誰かな?シーナ!」


悪意の塊だったあの姿から次々に人の姿に戻る様子を見て思った・・・最悪な・・・気持ち悪いこの世界にもまだ救いはあると──────

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