1章 38 かごめかごめ4
・・・ダメだ・・・繋がらない・・・
・・・何かあったのかな?・・・もしかして・・・
・・・下手なこと言うもんじゃないぜ・・・アイツならきっと大丈夫だ・・・
・・・でも・・・
・・・こちら側の問題かも知れないし・・・何とも言えないが・・・なるべく声をかけてみるとしよう・・・
・・・うん・・・そう言えばもうそろそろ目を覚ますって本当?・・・
・・・ああ・・・もうとっくに覚ましてるかも知れないけど・・・恥ずかしがり屋なのかもな・・・
・・・そうなんだ・・・じゃあ目が覚めたら・・・今度は4人・・・じゃなくて5人で会話出来るね・・・
・・・ああ・・・そうだな・・・
・・・どうか・・・無事でいて・・・アタル・・・
「・・・正気か?彼を連れて行くなんて・・・」
「仕方ないだロ?リュウシはあの状態で放ておけるのカ?」
「放っておくも何も・・・元々関係ないだろう。成り行き上助けただけで・・・」
「は!冷たいネ!そんな兄を持た覚えはないヨ」
「俺はお前が心配なんだ、アイリン。結局誰もスカウト出来ず、戻る羽目になってしまった・・・このままでは・・・」
「あんなのに頼るくらいなら死んだ方がマシヨ!そもそも他人ニ・・・しかも他国に頼るのが間違てたヨ・・・あんな奴ら私の手デ・・・」
「奴らの強さは身に染みて分かっているはずだ・・・戦って死ぬのなら本望・・・だが・・・」
「もういいヨ・・・覚悟は出来てル・・・」
小刻みに揺れる中、誰かの言い争う声が聞こえていた
まどろみの中、その言葉の意味が理解出来ずにボーッと聞いていると、女性の声が俺に向けられる
「・・・起きたカ?」
そうか・・・寝てたのか・・・妙に頭が痛い・・・二日酔い?んなわけないか・・・
「黙て連れて来て悪かタ・・・宿屋に置いておく訳にもいかないシ、追われる身だから町に留まる訳にもいかなくテ・・・具合はどうダ?」
追われてる?・・・具合?・・・なんのことだ?
「ツッ!」
起き上がろうとすると腹に激痛が走る。触ると包帯が巻かれており、その包帯は血で真っ赤に染っていた
「応急処置しか出来てない。お前なら神聖魔法で治せると思ったが・・・」
神聖魔法?ああ、そうか・・・
「・・・ヒール」
痛む場所に手を当ててヒールを唱えた。すると痛みは嘘のように消え、触れても何事も無かったように痛みは感じなかった
「本当ニ・・・神聖魔法使いなのだナ」
「・・・最近覚えたんだ・・・って言ってもヒールとホーリーヒールしか使えない・・・け・・・ど・・・」
なんだ?話していると妙に身体がダルく感じる・・・まだ夢の中のようにフワフワして・・・気持ち悪い・・・
「無理するナ・・・血を流し過ぎていル」
一体何が起きたんだ?・・・どこでこんな傷を・・・てか、ここは?馬車の・・・中?
「勝手だと思ったが宿屋を引き払い連れて来させてもらった。荷物もそこにある・・・預けていた物も部屋にあった物も全て引き上げた」
なんだ・・・さっきから藪から棒に・・・全然話が見えてこないぞ?
「あんなクズ野郎でもいぱしの冒険者・・・目撃者もいるだろうからこの国には居られないだろうナ・・・そこで提案なんだガ、私達と来ないカ?」
クズ野郎?・・・国に居られないって・・・なんだよそれ・・・
「ビックスはアイリンがトドメを刺したが、他の5人は・・・。彼女を連れて行く余裕はなく、そのまま建物に火を付けた。運が良ければ火の不始末で火事になり・・・ってなるだろうが、無理だろうな・・・」
ビックス?他の5人・・・彼女?
「我が国では髪を切るイコール神を斬ると言われ不吉とされていル。唯一、切ていいのは別れの時だケ・・・かてだと思たガ、切てここに入れておいタ」
ははん、だからアイリンはともかくリュウシも髪が長いのか・・・髪洗うの大変そう・・・で、アイリンが俺に渡して来たのはあの時買った星の砂入りの小瓶・・・確かこの小瓶を買った後・・・他の店に寄って・・・雨が降ってきて・・・なんで髪の毛が入ってんだ?
「荷物の中に・・・手紙が入っている。君らが借りていた部屋のテーブルの上に置いてあった・・・」
手紙?誰からだろ?・・・置いてあった袋を漁り、手紙を見つけた
かわいい文字でこう書いてある
『アタルへ
先に戻っても待っててね
戻って来たら大事な話があります
シーナより』
ザザッ?・・・あれ?文章が頭に入って来ない・・・ザザッって誰だ?・・・何か大事な事を忘れているような・・・
「忘れろとは言わないヨ・・・ただ深く考えるのは良くなイ・・・自然に身を任せロ」
自然に身を任せろ?なんだそりゃ・・・
「まだ時間はある・・・俺達についてくるか、どうするか・・・自分で決めるのだな」
何を?そう言えば国に居られないって言ってたな・・・何がどうなってんだかさっぱりだ。目が覚めたら腹は痛いし、気持ち悪いし・・・アイリンとリュウシが居るし馬車に乗ってるし・・・
ガタン
馬車の振動で手に持っていた小瓶が手から零れ落ちた。小瓶は足元を転がり俺の足にぶつかって転がるのを止めた
小瓶を取ろうと手を伸ばすと底に何かが見える・・・銀色の輪っか・・・指輪?あっ、星の砂って確か・・・
「なあ・・・この小瓶の砂って入れ替えた?」
「いやそのままだガ?」
「そうか・・・じゃあ・・・」
「ン?どうしタ?」
「いや、これを買う時さ、店の人に言われたんだ・・・この砂は願いが叶うと色が変わるって・・・今見たら買った時と色が違うから・・・願い事が叶ったって事かなって」
「ソ、そうだナ・・・」
「・・・」
2人して黙りこくってしまった
願い事・・・何が叶ったのかな?
外を見ると見た事ない景色が広がる
ここが異世界であると改めて認識し外を眺めていると、ふと頭に歌が浮かんだ。懐かしい・・・子供の頃に歌ってた歌だ
歌詞は曖昧・・・でも何となくだが口ずさむ
~かーごめかごめ 籠の中の鳥は
いついつ出やる 昨日の晩に
ツルッと亀が滑った 後ろの正面だあれ~
──────アタル──────
ん?何か聞こえたような・・・気のせいか・・・
振り返っても当然何も無く、ただ木の板が目に入るだけ・・・あー、どこに行くにしても車だったら速いのにな・・・母ちゃん心配してっかな?父ちゃん元気にしてっかな?・・・会いてえなあ・・・会いてえ・・・なあ・・・
臨時ニュースです
昨夜未明、現在指名手配中の宮本中容疑者の自宅が火事で全焼しました。火は既に鎮火しており、警視庁と消防庁が出火の原因を調べております。家に居た宮本──────




