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剣と魔法・・・時々超能力  作者: しう
超能力の章
38/447

1章 36 かごめかごめ2

店を出るとかなり雨が降っていた


この世界では傘はないらしく、みんな家路を急いでる


宿屋までは少し離れているから、どこかで雨宿り出来る場所はないかと見回すと正面に軽食屋みたいな店があった


覚悟を決めて土砂降りの中、道路を渡って反対側の店に駆け込む


店内に入ると小洒落た雰囲気・・・日本で言うと喫茶店みたいな感じだ


テーブルが4つほどあり、カウンターに椅子が備え付けてあるが、みんな考える事が一緒なようで満席・・・これは無理してでも宿屋に戻ろうかと思った時、見覚えのある顔を見つけた


「あっ!」


「・・・ン?なんネ・・・私達をつけてきたカ?」


河原で不意打ちを食らわせてきた暴力チャイナ女!とカンフー男!なんでジャクスに?てかつけてないし!


しかし、これはラッキーだ。店は満席だが、テーブルには3つ椅子がある・・・この世界に相席文化があるか知らないが、知り合いなら問題ないだろう


「・・・なんで座ル?」


「席が空いてないのと蹴られたお詫びをされてない・・・ので、ここに座る権利が俺にはある」


「ちゃんと謝たネ」


「謝って済むなら警察は要らないって言葉を君に贈ろう」


「殺すヨ?」


軽い!命が軽い!もっと大事にしていこうよ!


「アイリン・・・」


「・・・ハア、リュウシは甘いネ・・・とっとと注文して帰るといいネ」


なるほど・・・チャイナ女がアイリンで、カンフー男がリュウシか


ようやく許可を得る事が出来たので、忙しくしている店員を呼んでアイスコーヒーもどきを注文した


「・・・なんで君達はここに?」


注文したものが届く間の空気の重たさに耐え切れず、フレンドリーに話しかけてみたが、アイリンに睨まれた


「黙てロ、ハゲ」


ハゲてない!雨で髪がベチャッとなってるだけだ!


「アイリン・・・それに君も詮索はよしてくれ」


どうやらお呼びではないようだ。どうしよう・・・間が持たさない・・・混雑しているから来るのも遅そうだし・・・座らなきゃ良かった・・・いや、詮索しなきゃいいのか・・・ちょうど別の意見を聞きたかったとこだ


「あの・・・これどう思います?」


「なんダ?物で釣るつもりカ?生憎そんなものには興味ないネ」


「誰も君にあげるとは言ってないだろ・・・いや、年頃の女の子がこれを貰ってどう思うか知りたくて」


アイリンに感想を聞いたのは先程出店で買った星の砂が入った小瓶。アイリンはしばらく小瓶を見つめるとため息をついて見下ろしてきた


「お前バカカ?こんな子供だましの物貰って喜ぶのは幼児くらいダ。それともなにカ?お前の相手は幼児カ?」


うっ・・・やっぱりそうなのか・・・


「・・・そうでもないぞ?喜ぶ女性もいるだろう・・・要は気持ちだ」


「ハア!?修行に明け暮れて彼女も出来たことないお前が言うカ?」


「それはお前も一緒だろ?」


「お前と同じにするナ!私のモテ具合はお前も知てるだロ!?」


「ああ・・・余計なものにモテることをな」


「グギギギギ・・・」


「あの・・・2人は恋人同士では?」


「アホカ!兄妹に決まてるだロ?目腐てるのカ!?」


言われてみれば・・・っていやいや全然似てないし!


アイスコーヒーもどきが来る頃にようやく正式な自己紹介をした


アイリンとリュウシはシューリー国出身。兄妹でこのメイザーニクス共和国を訪れ旅をしているらしい。旅の理由を言えないのは怪しいが、俺には関係のない事なので別に興味も湧かなかった


アイスコーヒーもどきを飲み終える頃にはある程度打ち解け、2人から全く違うアドバイスをもらった


「いいカ?漢なら武を示セ!そしたら自然と女は付いてくル!」


「贈る物の価値など関係ない。要は心だ。何事もな」


うむ・・・全く参考にならなかった。外を見るとだいぶ雨足が弱まっていた。これなら平気そうだと立ち上がり、10ゴールドを机に置いた


「おイ・・・多過ぎるゾ」


「貴重な意見が聞けたから奢るよ・・・じゃっ、人待たせてるから!」


出掛けてからかなり経ってるよな・・・これは帰ったら2時間説教コースだ・・・渡すのは明日にしておくか


渡したらどんな顔するだろうか・・・驚くかな・・・顔真っ赤にしたりして・・・泣かれたら・・・どっちか分からないから困るな・・・


期待と不安を胸に宿屋に着くと一目散に部屋の前に


ノックをしてその返答の声色で怒っているか判断しようとしたが返事がない


寝ているのかと思いドアを開けると・・・もぬけの殻だった


「あれ?・・・シーナ?」


居ない・・・よな?


部屋に置いておいた荷物もないので受付に聞きに行くとシーナは荷物を預けて外に出たと言う


もしかしたら外に出て雨が降ってきたからどこかで雨宿りしてるのかも


雨に濡れて身体が冷えてきたので受付に言って預けた袋の中からローブを取り出すと残りは再度預けて外に出た


雨は止んだが、暗くなってきたのと雨が降ったせいで空気がひんやりしていた。もしシーナが雨で濡れてしまっていたら風邪を引いてしまうな・・・早く探そう


とりあえず通って来た道とは反対側を探しに歩き出した





「ン?おい・・・朝ぱらから何してル?」


「・・・」


「おイ!聞いてるのカ!?」


俺に・・・話しかけてる?確か・・・アイリン・・・


「・・・シーナが・・・居ない・・・どこにも・・・宿屋にも何度も確認した・・・でも戻ってないって・・・」


「はア?昨日の物をあげようとしていた女カ?逃げられたんじゃないのカ?」


「そんな訳ないだろ!!」


逃げられた・・・そんな訳ない・・・シーナは・・・そんな事しない・・・


「・・・すまなイ・・・」


突然大声を上げてしまい、驚いた表情でアイリンは固まった後に謝ってきた。俺は何をしているんだ・・・


「あっ・・・いや、こちらこそ怒鳴ってすまなかった・・・君達と別れてからずっと探してるのに見つからなくて・・・」


「なッ・・・本当かヨ!ずとてもう朝だゾ!?」


朝・・・?そうか・・・朝か・・・なんで?・・・俺が何かしたのか?気に入らなかったか?なんで・・・どうして・・・


「あのう・・・貴方が探している子はこれぐらいの背丈で髪を毛先の方で纏めてリボンを付けている女の子ですかな?」


「はい!シーナは!?シーナはどこに!?」


アイリンと話していると横から見知らぬ老人が話しかけてきた。その特徴・・・シーナだ・・・シーナに違いない!


「ちょ、ちょと落ち着くネ!」


「やはり・・・そうですか・・・彼女なら・・・あの建物の中に・・・昨日偶然見掛けて・・・町の者ではなかったので気になって・・・」


あの建物の中にシーナが?雨宿りしてそのまま寝ちゃったのか?


「リュウシ・・・あの建物・・・」


「ああ・・・まずいな・・・おい!待て!」


リュウシが何故か俺を止めようと声を張り上げた


何故待つ必要がある?


そこにシーナが居るんだろ?


もう雨は止んだんだ・・・濡れずに帰れるし、昨日から濡れたままで居たら可哀想だろ?


俺は脇目も振らず老人が指した建物を目指し、辿り着くとドアノブに手をかけた


ドアノブが回らない・・・鍵がかかっているのか?


目を閉じて念動力を使う・・・こっちの世界も鍵は日本と同じようなもの・・・内側からサムターンを回すか、外からカギを差して回すか・・・なら・・・


鍵はカチリと音を立て容易に解錠された


その流れでドアノブを回してドアを開けると外と同じくらい明るい室内が目に飛び込んでくる


乱雑に置かれたテーブルに見知らぬ誰かが5人・・・ドアを開けた俺を見て驚いた表情を浮かべていた


「おい、カギかけなかったのかよ」


「いや、かけたはずだぞ?・・・て言うかおい・・・どうやら向こうから来てくれたみたいだぜ」


「あん?アレが?マジかよ!探す手間省けたじゃん!」


「俺カシラに伝えてくるわ!それまで殺すなよ!」


「ああ、寝たばかりだから機嫌が悪ぃだろうし、こんな面白い事を勝手に進めちゃ更に機嫌が悪くなっちまう・・・いいから早く行ってこいよ」


何言ってんだ?コイツら・・・いやこんな奴らはどうでもいい・・・シーナは?シーナはどこに・・・


「あー、君アタル君だろ?彼女から名前は聞いてるよ・・・ここに何の用?」


彼女?え?何??


「シーナは・・・シーナ・・・」


「へぇー、彼女ってシーナって言うんだ」


「だからシーナは・・・」


「ちょっと待ってよ・・・あっ、来た来た」


シーナ?・・・違う・・・誰だ?・・・


「ふあああ・・・寝付いたばっかだってのによぉ・・・早過ぎんだろ・・・で、まだ見せてねえよな?」


「もちろん!どうします?もう見せますか?」


「んー、そうだな。眠気にはいい刺激になりそうだ・・・見せろ」


見せる?何を?・・・そんな事より・・・シーナを・・・


「じゃじゃーん!愛しのシーナちゃんでーす!」


ははっ、何言ってんだコイツ・・・人形の頭なんか持って・・・


「アタル~なんで助けてくれなかったのぉ?シーナショックゥー」


「ブハハハッ!その声色やめろ・・・全然似てねえし、その女はそんな事言わねえだろ」


「ですよねー。ずっと『アタル・・・アタル』って言ってましたから・・・俺のが奥に当たってるって事かと思いましたもん!」


「・・・シーナは?・・・シーナはどこだ?・・・」


「おいおい、目えついてんのか?目の前にぶら下がってんだろ?あー、それとも身体とセットになってないと見分けがつかねえのか?仕方ねえ・・・身体も起こしてやれよ・・・まあ、見れたもんじゃねえけどな」


「ええ・・・マジすか・・・小柄とは言え結構重いんッスよ?」


男が持ち上げたのは女性の身体・・・頭のない・・・傷だらけの・・・身体・・・


「最後に抱いとくか?それくらいなら待ってやってもいいぞ?使い古しだが、まだいけるだろ・・・もしやったら楽に死なせてやるよ・・・女とは違ってな」


違う違う違うチガウチガウ・・・アレはチガウ・・・チガウよ・・・絶対チガウ!!


「てめえは俺らの中じゃ有名人よ・・・何度も何度も繰り返しやがる・・・自分の名は言わねえくせに、てめえの名だけをずっと言ってやがった。泣きながら何度もな。あまりにも悲痛な叫びでよ・・・思わず興奮しちまったよ」







────────────あ゛────────────

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