1章 34 ジャクスの町へ
結論から言うとバレスの腕は繋がった
しかし初めて・・・ではないようだが、魔法を使う事に慣れてない俺は何度も失敗し、ようやく発動したのが4回目くらいだった
バレスは既に気絶しており、アベランが背負う事に
アベランがシーナも担いで行こうとするから、それを頑なに阻止して俺がシーナを背負い町に向かった
途中魔物と遭遇したりもしたが、バレットがすんなり倒し、事なきを得る
ボーガンいいなー楽そうだなー
そんな事をぼんやり考えていたらあっという間に町に辿り着く
処理は全てやっておくとバレットが言うので俺はシーナを背負って昨日泊まった宿に向かった
改めて一部屋借りてシーナをベッドに・・・寝息を聞いて安心すると俺にも睡魔が襲ってきた
色々と疲れたし寝ていいよな?
部屋に備え付けのもう一つのベッドに飛び込むと睡魔が瞼を下ろそうと必死になって行動を開始した。その睡魔に俺は・・・
んん??目を開けるとそこにはシーナの顔が・・・あれ?俺寝るとこ間違えた?
「おはよう♪夕食・・・食べ損なっちゃったね」
へ?もしかして寝落ちした?・・・確かに外を見ると明るいし、身体もスッキリしていた。それにかなり腹が減っている
シーナもお腹が空いているようで俺達は一昨日から預けていた荷物を宿屋で受け取った後、近くで空いている店を見つけて飛び込んだ
そこは異世界パン屋さん
トングで好きなパンを選び会計してその店の中で食べる形式のお店だった
とりあえずポンポンと美味しそうなパンを2人で選びいざ実食・・・見た目も日本で食べた事のある味で黙々と食べ続けた
「昨日は・・・ごめんね」
突然謝るシーナに対して口の中のパンを咀嚼しながら首を傾げる。するとシーナは苦笑しながら謝った理由を話し始めた
「あの時・・・フートスさんの悲鳴を聞いて私は怖くなったの・・・もしアタルが・・・そう考えた後に魔物がアタルを・・・アタルを助けなきゃと思ったら身体が勝手に動いて・・・本当は私が死んでしまったら次にアタルが傷付いたら治す人がいないのに・・・」
どんだけ・・・人が良いんだ・・・
「バレスさんがアタルを囮にしたのは理解してた・・・アタルが助けたくない気持ちも充分に分かってたのに私は・・・」
「・・・そこまで理解してなぜバレスを?」
「・・・もう誰かが死ぬのはイヤだったから・・・誰かが苦しんでいるのを見ているだけなのがイヤだったから・・・アタルが誰かを見殺しにするかも知れないのがイヤだったから・・・」
「・・・シーナ・・・」
そうか・・・あの時のシーナは俺が神聖魔法を使えると思ってて・・・使えるのに助けないと思ってしまったのか・・・でもあの時・・・自分が神聖魔法を使えると分かってたとしても・・・シーナに言われなきゃ俺はバレスを助けなかったと思う・・・俺を囮にしようとして、結果的にシーナを傷付けたバレスを許さなかったと思う・・・俺はそんないい人じゃない・・・俺は・・・
「アタルはいつも私を助けてくれる・・・いつも・・・いつも・・・だから・・・」
だから俺はそんないい人じゃ・・・バレスを助けたのだってシーナに無茶をさせたくなかったからで・・・シーナの期待に応えたかったからで・・・
お互い見つめ合い黙ってしまった
何故か距離が近付いているような感覚に陥る
2人共一歩も動いていないのに・・・
コンコン
部屋のドアがノックされ、ハサミムシが現れた時よりビックリした。心臓が喉から出そうになるって言うのはこういう事か!
「は、はい!」
「お客様・・・お客様を訪ねに来られた方がいらっしゃいますがいかが致しますか?」
「す、すぐに行きます!」
誰だこんな時に!・・・くそっ!・・・くそ?俺は何を期待して・・・
「ふふっ・・・残念」
何が!?一体何が残念なんだシーナ!!
モヤモヤしたまま宿屋の受付に行くとそこに居たのはアベランだった
くそっ・・・コイツが・・・
「おいおい、そう睨むなって・・・もしかして邪魔したか?」
「お前の存在がイラつくだけだ。気にすんな」
「気にするわ!せっかく持って来てやったのに・・・ったく・・・」
「持って来た?何を?」
「報酬だよ!イヤーウィッグ討伐のな。ほら、受け取れ」
ドカッと音が鳴り地面に置かれた袋。あれ?言ってた金額より多い気がする
「気付いたか?俺とバレス親子は受け取りを拒否した。フートスは家族が居たから分配し残りはお前ら2人にってのが俺らの意思だ。これで償えるとは思ってない・・・が、何かで返さないと気が済まないってのが本音だ」
フートス・・・家族居たのか・・・俺がシーナを見ると、シーナも同じ事を考えたのか目が合い頷いた
「じゃあ俺らも拒否します。全てフートスの家族に・・・」
「おいおい、そりゃあねえぜ。確かにフートスの家族にゃ同情するが、参加したのも逃げたのも自分の意思・・・そんな事してたら冒険者なんて務まらねえぜ?」
「別に同情だけで言ってる訳じゃなく、エイヤクノで稼いだお金もまだあるし、俺達はこの町に留まる訳じゃない・・・だから大金はかえって荷物になる・・・それだけだ」
「だがよー・・・それじゃあ・・・」
「お前達の気が済まないから荷物になる金を受け取れと?それじゃあ、あべこべじゃないか」
「アタル!・・・アベランさん、アタルの言う通り荷物になるって言うのも本当ですし、お金は十分持っています。もしフートスさんの家族が受け取らなければ教会にでも寄付して頂ければ・・・」
頑なに受け取らない姿勢を貫く俺ら2人にアベランは困ったように頭を掻くと置いた袋を再び担いだ
「んだよ・・・じゃあ、どうすれば借りを返せるってんだ?」
「貸したつもりはないから気にすんな。もしそれでも返したいならいずれ返してくれればいい・・・金以外でな」
「・・・でかい借りを作っちまったみたいだな・・・」
「もう二度と会わないかも知れないんだ・・・踏み倒すつもりくらいがちょうどいいかもな」
アベランは俺の言葉にフッと笑うと背を向けて宿屋を出て行った
本当にアベランには貸しを作った覚えはないし、バレス親子に対してもそうだ・・・バレスに関しては思い出す度にイライラするがな・・・
「アタル・・・今日町を出る?」
「・・・そうだな。特に用事はないし、ちゃちゃっと次の町に行こうか・・・何かやる事ある?あるなら別に明日でもいいけど」
「うううん。なんか天気が崩れそうって言ってたから、今日出るなら早目に出た方がいいかも」
「誰が?」
「バレットさん」
「いつ?」
「アタルが寝ている間に来て・・・ん?どうしたの?」
「・・・何でもない」
あの野郎・・・何しに来やがった・・・俺の寝ている間に・・・
「バレットさん、少し町を離れるんだって・・・バレスさんの元を離れて1人で冒険者をする為に・・・あの時の事が頭から離れなくて今朝早くに旅立ったの・・・アタルを起こそうかって聞いたら、まだ顔を合わせられないから・・・いずれ借りは返すって伝えといてくれって」
「・・・聞いてないな・・・」
「うん、今初めて言ったから」
「だよね・・・そっか・・・俺らも準備して出ようか」
「うん」
「次の町は?」
「ジャクスの町・・・あまり治安のいい町じゃないって話しだけど」
「『冒険野郎マクガー』の知識?」
「うん!」
んまあ、嬉しそうにして・・・今に見てろ!その自伝を超えるような経験をさせたる!
そっと心に誓い俺達は部屋に戻って準備をすると宿屋を出た
町を出て空を見上げると遠くの方が雲行きが怪しいようにも見えた。確かに一雨来そうだな・・・とっととジャクスの町に行くとするか
「アタル」
「ん?」
「・・・何でもない・・・」
???何か言おうとしてやめてしまったシーナを見つめ、気にはなったがしつこく聞くと嫌われると思い、聞かなかった
もし続きを聞いていたら、未来は変わっていたかもしれない
その時の俺はそんな事など考えもせず、別の事を考えていた──────




