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剣と魔法・・・時々超能力  作者: しう
剣の章
202/447

4章 43 闇王②

「闇王様!!」


ジャブロの声が奈落に響き渡る


対して俺と体格が変わらない闇王の身体に所狭しと突き刺さる神剣十本・・・某オモチャの黒ひ○危機一髪なら100%飛び出してるだろう


「騒ぐなジャブロ。少々遊びが過ぎたようだ」


少々?強がりだろ?


だがそれが強がりではないことを闇王はすぐに証明してみせた


闇王から出ている黒いオーラが幾つも手の形に変わり突き刺さる神剣十本を次々に抜いていく。突き刺さっていた箇所の傷跡はシューシュー音を立てて塞がっていった


全ての傷跡が塞がると闇王は肩に手を置き首を左右に傾ける。まるで肩凝りでも気にしている様子・・・俺の攻撃は脅威ではないとでもアピールするように・・・


「無駄な・・・足掻きだったか?」


「そのようだね。神聖剣にこのような使い方があるとは思わなかったよ。しかも勇者以外が使いボクの身体に傷を付けるなんて驚きだ」


「ってーと世界の半分でもくれる気になったか?」


「?世界の半分?君は人類のいない世界の半分を貰って嬉しいのかい?」


「んな訳ないだろ・・・これから仲良くするってのはどうだ?」


「必要ない。もう十分だよ」


即答かよ・・・和平交渉は失敗だ。まああれだけプスプス剣を突き刺されて応じたら逆に怖いけど・・・


にしても言葉の端々がいちいち気になる


もう十分だ・・・って何が十分なんだ?この身体がアイオンとか言ったりなぞが多いこった


「では今度はこちらから行かせてもらおう。簡単に死なないでくれよ」


くっ!黒いオーラが触手みたいにウネウネして襲い来る。躱しながら理力斬で斬り付けると斬れはするけどすぐにまた元通り・・・捕まえられたら恥ずかしい格好をさせられそうだ


躱し続けてふと闇王を見ると姿を見失う。ついさっきまでそこに居たのに・・・


「余所見するとは関心しないな」


すぐ背後から声が聞こえた。慌てて振り返ろうとするとガツンと衝撃が顔面を襲い吹き飛ばされる


何を食らった?殴られた?顔は・・・ある!


まるで顔が無くなったような衝撃。殴られた頬を押さえるが特に何もなっていないので安心すると空中で体勢を変え地面に足をつく


地面を削りながら飛ばされた勢いを殺すとようやく止まりすぐに闇王の姿を確認すると殴ったまま動いてはいなかった


どうやら裏拳を食らったようだ


右腕を真横に突き出したまま動かない闇王を見てようやく攻撃手段が分かる


それだけの差が俺と闇王にはあるって事か・・・


今のところ闇王の攻撃手段は黒い触手と瞬間移動・・・凄い速く移動しているのかも知れないけど俺にとってはどっちでも同じ。試してみるか


ホーリーヒールで傷を癒しながら俺は闇王とは反対に向けて縮地を使い距離を稼ぐ。そして身体から抜かれて置き去りにされていた神剣を再び浮かせると闇王向けて放った


目にも止まらぬ速さで神剣を躱す闇王。遠くから見てるとよく分かる・・・瞬間移動って訳じゃなく速いだけ・・・桁違いに


「速過ぎるっての!」


右手で神剣を操作し左手で闇王の動きを封じる。やはり念動力は効くようで動きを止める事に成功したが神剣が届く前にあっさりと解かれてしまった


神剣が当たる直前で動きを封じれば・・・そう思った矢先に踊らされるのに飽きたのか離れていた俺に向かって突進して来た


「止まれ!!」


左手を突き出し闇王の動きを封じようとしたが・・・ウソだろ・・・念動力を躱した?・・・念動力が届く前に闇王は姿を消しすぐ目の前に突然現れた


「ぐふっ!」


鳩尾に拳がめり込む


身体がくの字に折れ曲がり身体の中から何かが逆流し吐き出すと血が地面に飛び散った


勝てない・・・油断していた闇王にすら・・・


「ようやく理解したかな?」


「・・・何を・・・」


「無駄な足掻きである事を。君は絶対にボクには勝てない。絶対だ」


くそっ・・・言い切りやがって・・・本当に勝てないのか?・・・勇者しか・・・闇王には・・・


「ああ・・・ひとつだけ勝つ方法があった・・・」


「へえ。見せてくれよ」


余裕ぶっこきやがって・・・これなら・・・どうだ!


「あっち向いて・・・ホイ!!」


勝った・・・闇王は俺の向けた方向に顔を向ける・・・まあ念動力でやったんだけど・・・


「・・・これは何かな?」


「俺の国に伝わる勝負の方法のひとつ・・・あっち向いてホイッ!」


酷い・・・決めゼリフのように言った瞬間に殴られた・・・


「おふざけはここまでにしよう。少し君の絶望する顔が見たくなった」


闇王は言うと遠く離れたジャブロに視線を送る。ジャブロは察したように頷くと門に向けて指を鳴らした


「てめえ・・・何を・・・」


「褒美の時間は終わりを告げた。さあ滅びの時間だ」


闇王の背後にある門が音を立てて徐々に開き、そして中からは無数のガーゴイルが飛び出し空に昇って行く


「やめ・・・ろ・・・」


ガーゴイルがまた黒い柱を形成する。このままだとみんなが・・・焦るな・・・もう少し・・・


「選べ。ここでボクに殺されるか勇者殺しの汚名を背負い人類に疎まれながら死を待つか」


「どっちも・・・お断りだ!リヴァイブ!」


勝負は一瞬


聖気が溜まった瞬間にリヴァイブを発動。完全回復した後に理力の鎧を身体に纏い手を伸ばす。神剣のひとつを選んで引き寄せる。少し気持ち悪いが神剣の柄から未だに離れないクルシスの手・・・それを上から掴んだ


「まだ足掻くか!」


叫びながら振り向こうとする闇王の首を反対方向に念動力で力をかけると動きが止まった。あっち向いてホイならぬあった向いてろ!だ。背中はがら空き・・・その背中に向けて超速剣を放った


神剣は闇王の脇腹にくい込む。そのままクルシスの手を強く握り締め一気に振り抜いた


闇王の身体が上下に離れた瞬間、勝ったと思った・・・が、噴き出すはずの血は出ず黒いオーラがふたつに分かれた身体を繋ぎ止めまるで磁石のようにくっ付いてしまう


「・・・化け物め・・・」


「褒め言葉だよ」


狙いは良かった


神剣なら闇王に刺さると分かった瞬間から組み立てた作戦。神剣の中で1本だけ俺が持てるであろうクルシスの手が死後硬直か何かでぶら下がったままのものがあった。その神剣で闇王を斬り付ける・・・それが最後の手段


ぶっつけ本番だったけど神剣は持てたし完全に背後も取れた。躱されないように超速剣も使い闇王を真っ二つにした・・・けど勝てないならもう・・・万策は尽きた


褒め言葉だと言いつつ少し機嫌を悪そうにする闇王は黒い触手を操ると俺の手足を貫く


「ぐああああああぁぁぁぁ!!」


ダメだ・・・意識を保たなきゃ・・・落ちれば・・・終わる・・・


終わる?・・・何が?・・・そうだ・・・俺のせいで・・・おれが我慢出来なかったせいで・・・この世界が・・・終わる・・・


諦めるな・・・足掻け・・・まだ手はあるはず・・・闇王を・・・この手で──────




「逃がしてもよろしかったのですか?」


ジャブロが闇王アイオンに近付き尋ねるとアイオンは振り向き微笑む


「構わない。どうせ滅びる運命だ。それに君達もただの作業よりはやり甲斐があるだろ?」


振り向いたアイオンの前にジャブロ以下8人の魔族が跪く。その姿を見た後、未だに門より出て来る魔物に視線を移した


「シャドウだけでは数が多いとはいえ時間がかかる。君達も行って処理して来てくれ」


「はっ!」


アイオンの命令にジャブロ以外の面々が一斉に飛び立つと残るジャブロを見てアイオンが首を傾げた


「どうした?ジャブロ。君もだよ」


「ひとつお願いがあります」


「ん?」


()の者を私に下さい」


「もしかして拳王か?使徒には思えなかったが・・・」


「拳王ではないと思うのですが・・・彼の者が近付いた時疼くのです・・・身体が・・・」


「そうか。好きにしろ」


アイオンは興味なさげに答えるとシャドウと呼ばれる魔物が用意した椅子に座り足を組み空を眺める


まだ昼間というのにシャドウが埋め尽くす空は真っ黒に染まる


「さあ、終わりの始まりだ──────」





身体が揺れる


これは・・・誰かに背負われている?闇王は?・・・俺は何をして・・・


「気付いたようだな」


この声に聞き覚えがある・・・そう確か・・・


「借りは返したぞ」


「お前に何か貸したっけ?・・・剣王サラン」


俺を背負って走っているのは剣王サラン。コイツとの関係はワッテート大陸でやりあったくらいだと思ったけど・・・借りって・・・


「あの時の俺はどうかしていた。口車に乗せられ勇者クルシスの興した宗教を広めようと・・・貴様に破れワッテート大陸から戻ってみると故郷が無くなっていた・・・俺は何の為に・・・」


揺れる度に手足に痛みが走る。闇王にやられた傷・・・そうか俺はサランに助けられたのか・・・でもどうやって?


「私も感謝しているわ。サランに聞いた時は私も貴方と同じようにクルシスを憎み殺してやろうかと・・・もし父上や母上が殺されていたら貴方の代わりに私がやってた」


誰?・・・サランと並走する女性・・・槍を持って・・・もしかして槍王シャロン?


「わたくしもあの勇者には辟易しておりました。このまま彼をのさばらせておけばいずれエルフ族の王であるリーシャル様も・・・決して褒められた結果ではありませんが貴方の行動は支持します」


エルフ?・・・もしかして風の精霊王か?


「お前らが・・・闇王から・・・助けてくれたのか?」


「闇王と言うのだな・・・そうだ。我ら3人は勇者が討たれた後、密かにお前を追いかけ黒い柱の元に向かった・・・」


ヴェルテから俺の行き先を聞いた3人は馬を走らせ寝る間も惜しんで黒い柱を目指した


剣王サラン、槍王シャロン、風の精霊王フェナスが黒い柱の根元・・・奈落に辿り着くと闇王にやられそうになっている俺を見つけ助け出したって訳だ


「よく・・・無事だったな・・・ホーリーヒール」


聖気が溜まりホーリーヒールを自分に向けて放つとようやく揺れても痛くなくなる。さすがに男に背負われているのは恥ずかしくなりサランの背中から脱出すると同じように走り始めた


「無事・・・か。あまり俺達に興味がないような素振りだったな。フェナスの風魔法で下に降り、魔王らしき男から出ている黒い触手を斬ってお前を救出した時・・・奴は微笑みすら浮かべていたぞ?」


「あれが魔王なの?闇王って貴方は呼んでるけど・・・」


「みたいだな・・・魔王・・・闇王・・・アイオン・・・好きに呼ぶといい」


「・・・アイオン?」


「アイツが名乗ったんだ。この身体の名はアイオンってな・・・名前がたまたま同じなのか・・・アイツが元勇者なのかよく分からんが・・・」


話を聞いてもよく理解出来なかった。嘘をついているようにも思えないし・・・かと言ってそのまま鵜呑みにするのも・・・


「にわかに信じ難いが・・・とにかく安全な所まで・・・おい!どうした!?」


あれ・・・身体は回復したはずなのに・・・血を流し過ぎたか?・・・なんだかとっても・・・


「おい!聞いているのか?おい・・・おい!」


ダメだ・・・身体が重い・・・そしてなんだか眠くなってきた・・・死ぬのかな・・・俺──────

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