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剣と魔法・・・時々超能力  作者: しう
剣の章
168/447

4章 9 王座奪還作戦5

強いのは分かっていた・・・しかしこれ程の差があるとは・・・


「シュラ!」


後ろで俺を心配して叫ぶジュラ


いつの間にか鬼化は解け、肩で息をしながら相手を睨みつける


リュクロンド国国王ファーロン


戦いの前に聞いていた『二槍のファーロン』の異名の意味を身に持って理解した


奴は手に持つ槍と尻から生えた尻尾を槍のように扱う『二槍』使い


槍を躱して懐に潜り込もうとすれば尻尾の槍が襲いかかってくる


距離を取ると槍が来て、距離を詰めると尻尾の槍が来る二段構えが『二槍のファーロン』と言う異名の由来・・・教えとけって言うんだクソババア!


「どうした?もう終いか・・・シューリー国国王よ」


「はて?それは誰の事かな?俺の名前はスラ・・・ケチな商売人さ」


「今更遅いわ・・・異国の王よ、ここで果てろ」


んなろ!簡単に信じんじゃねえよ


槍を身体の一部のように操り繰り出す突きはまるで伸びる正拳突き


武器使いとの対戦なんてほとんど経験のないが、これだけは分かる・・・こいつの槍技はかなりの域に達していると


人が3人横に並べる位の通路


狭さ的には俺の方が優位のはずなのにそれを全く感じさせずに怒涛の攻めを繰り返す


「リュウシにもっと流拳を教わるべきだったな」


全てを捌く事が出来ず槍に身体が削られていく


致命傷は避けているがそれがファーロンの手加減によるものなのかどうかすら分からない・・・もし手加減して今の状態なら勝つのは絶望的だ


「なんだ降参か?」


何を・・・ってまた鬼化が解けてる


クソッタレ・・・もう限界なのか?まだやれるはず・・・なのに・・・


「ほう?次はお前か?女」


「!ジュラ!待て・・・まだ俺は・・・」


「人の旦那に手を出しといて・・・ヘラヘラしてんじゃないよ!」


俺の静止を聞かずジュラは獣化しファーロンに飛び掛る


物凄い速度でフェイントを繰り返し、裏を取ると気功の爪がファーロンに振り下ろされた


「そうか・・・新婚旅行と言っていたな・・・お前が嫁か」


槍でジュラの爪を受け止めたファーロンはニヤリと笑いジュラの身体を舐めるように視線を這わす


「だったらどうした!?」


「赤子は・・・いるか?」


ゾクッと背筋に冷たいものが走る


尻尾が一瞬動いたかと思ったらジュラの腹部へと繰り出された


「くっ!」


ジュラは寸でのところで身体をよじり躱すが今度は槍を横に振り当てジュラを壁まで吹き飛ばした


「ジュラ!」


「必死だな・・・もしかして居るのか?それなら3()()まとめて仲良くあの世に送ってやろう」


「このっ!」


そうなのか?いや、今は後回しだ・・・今はこいつを・・・倒す事に集中するのみ!


三度の鬼化・・・もう気功を全て使い果たしても・・・ジュラを守る!


「来るか・・・ではお前から死ね」


力強く踏み込み身体を低くして突き出された槍を躱す。そして地面を蹴りファーロンの懐に潜り込んだ


尻尾の槍が回り込んで来る


それを地面スレスレまで態勢を低くして躱すとようやくファーロンの懐に入り込む事が出来た


地面を叩き反動で起き上がるとそこにはがら空きになったファーロンの腹部・・・この一撃に全てをかける!


拳を突き出すと拳は吸い込まれるようにファーロンの腹部に決まった・・・が


「こんなものか・・・シューリー国国王よ」


まるでダメージを受けてない口ぶりに顔を上げると平然とするファーロンの顔が目に映る


ありえない・・・鬼化した俺の拳を・・・こいつはわざと受けたのだ・・・


「これで分かったか?如何に我の攻撃を掻い潜り攻めようともお主の攻撃が我が竜鱗を通す事叶わぬ・・・さあ、絶望して死ね」


「くっ!・・・ガッ」


ファーロンは槍を回すと俺の顎に当てて身体を浮かせる


無防備な状態でファーロンの前に身体を晒しているのが分かるが身体はもうピクリとも動かなかった


このまま奴の槍で串刺しに・・・覚悟を決めて来たる痛みに耐えられるようにと歯を食いしばり目を閉じるが・・・痛みは来ず鈍い金属音が耳に響く


「お主に死なれては困るからのう・・・」


地面に落ち、態勢を崩しながらも薄く目を開けるとローラがファーロンの槍を剣で受ける姿が映った・・・俺を助けに・・・でもローラは・・・


「ムッ・・・ぐふっ・・・やはり見逃してはくれぬか・・・」


ズッという音と共に仮面の男が目の端に映り込む。その手には片刃の剣を持ち、剣先はローラの腹部に深く突き刺さる


「ロー・・・ラ・・・」


「お主は・・・ちぃと離れておけ・・・」


腹部に刺さった剣を手で掴み、顔を歪めながらその場で回転すると俺に蹴りを放ちその場から脱出させた


壁際まで飛んだ俺が見た光景は・・・ファーロンの槍がローラを穿つ瞬間だった


ファーロンの槍先がローラのその小さい身体を突き抜ける


ファーロンは満足気な表情で槍を引き抜くとローラはその場に倒れ込んだ


「馬鹿な奴だ・・・雑魚を助ける為にその身を投げ出すとは・・・成功率100%の暗殺者も地に落ちたな」


「妾の仕事は・・・未来を紡ぐ事・・・あやつを救う事が・・・正にそれだ・・・」


ローラは足に力が入らないのかフラフラになりながらゆっくりと立ち上がる。致命傷は避けたのか?それでもおびただしい程の血が足元に滴り落ちていた


「未来を?バカが!ならばなぜ我が命を狙う!?我はリュクロンドの未来を担う国王ファーロンであるぞ!」


「この国の未来を担うのは・・・お主の異母兄妹である・・・シャロンだ・・・お主ではない」


「ほざけコウモリ如きが!!」


もはや死に体のローラにファーロンが槍を構えた


次の一撃でローラは・・・動け・・・クソッタレ・・・動きやがれぇぇ!!


「ファーロンよ・・・歴史に名を刻め・・・リュクロンドの最後の王としてな」


ローラが呟いた瞬間にファーロンと仮面の男は炎に包まれる


炎が放たれた方向を見るとそこには今まで動かなかったリヴェンが居た


「良いのだな?」


「・・・仕方あるまいて・・・もう手遅れだ・・・」


ローラは後退りながら言うとリヴェンは頷いた


確かアリスとか言う女が言っていたな・・・最終的に失敗しそうになれば国を破壊すると・・・リヴェン・・・いやリヴェンダートと言うドラゴンの力を借りて・・・


「魔法?・・・いや、魔法とは少しばかり違う・・・貴様何者だ?」


炎に包まれたと思ったファーロンは生きていた・・・仮面の男が炎を斬ったのか?2人の居る場所だけ炎が避けるように分かれていた


「盟約によりこの国を滅ぼす・・・が、その前に少しばかり借りを返させてもらおう」


「なに?」


リヴェンは言うと2人の元へ駆け出す


爪が伸び仮面の男に斬り掛かると仮面の男は剣でそれを受け止めるが弾き飛ばされた


続けてファーロンに向かうがリヴェンはピタリと足を止め、何故か弾き飛ばした仮面の男に振り返る


「ほう・・・やはりやりおるわ」


腰に手を当てるリヴェン・・・その腰からは血が滴り落ちる


まさかさっきの攻防の間にリヴェンを斬りつけた?いつの間に・・・


「どんな借りか知らぬが・・・ほんの少しだけ望みが繋がれたか・・・ならばその望みに賭けてみようかのう・・・」


ローラは剣を握り締め、ファーロンに向けて構えた。傷はかなり深いはず・・・対するファーロンは無傷だ・・・勝負は見えてるのに・・・クソッタレ・・・


「老体に鞭打って最後は華々しく散るか?ローラ・・・ん?ほう・・・それとも2人がかりなら何とかなると思ったか?シューリー国国王よ」


ローラの横に並び身体をほぐす。ローラは俺の方に顔を向けると小さく首を振った


「気持ちは嬉しいが、こやつは妾が・・・」


「阿呆か・・・怪我人はすっこんでろ。俺はこいつに雑魚呼ばわりされたんだぞ?汚名返上くらいさせてくれや」


「お主に死なれると困るのだが・・・」


「他国の野郎に雑魚呼ばわりされて帰れると思うか?察しろよ」


ローラを押し退け前に出るとファーロンは俺を見て笑いやがった・・・完全に舐めている・・・俺が相手なら警戒する事もないってか


「・・・死ぬぞ?」


「汚名返上出来ねえくらいなら死んだ方がマシだ」


「お主の国の者も大変そうだのう・・・」


「なーに、事情を説明すればみんな分かってくれるさ・・・逆にこのまましっぽ巻いて逃げたら何言われるか分からん」


「・・・では少しばかり休ませてもらおうかのう・・・」


「ああ・・・後は任せろ・・・」


ローラはそのまま後退ると壁にもたれ掛かり腰を落とした


再びファーロンと対峙する・・・顎が少し痛むぐらいで他はかすり傷・・・さて、後はどうやってこいつの鉄壁の鱗を突破するか・・・


「懲りずにまた挑むか・・・先程ローラが割り込まなければ終わってたと理解していないのか?」


「理解してるさ・・・ただ王ってのは困難から背を向ける事が許されないんでね・・・分かるだろ?・・・いや、分からねえか・・・何せ王に選ばれなかったんだからな」


俺の言葉にファーロンの顔色が変わる。余裕の笑みは消え、怒りがありありと見て取れた


「貴様に何が分かる・・・片や9人の使徒に選ばれあまつさえ王位も・・・それを知らされた時の我の気持ちが・・・ぬくぬくと生きてきた貴様に分かるか!!」


「分からないね・・・分かるのは前王の目が確かだって事だけだ。シューリー国国王として断言してやる・・・お前は王に向いてないぜ?ファーロン」


「貴様ー!!」


怒りで真っ直ぐに突っ込んで来る・・・これが最後のチャンスだ・・・ありったけの力を拳に込めて・・・


槍を躱す・・・尻尾を警戒するが冷静さを失ってか尻尾は動いてはいなかった


槍を躱され隙だらけのファーロンに向けて拳を放つ・・・今度こそ!


「・・・力無き者が何を言っても詭弁にしかならぬ・・・貴様如きの言葉で心乱されると思ったか?」


ファーロンは冷静だった


怒り狂ったと見せかけて俺の攻撃を誘い込み・・・先程と同じようにわざと俺の拳を受けたのだ・・・


「もう助けは来ぬぞ?潔く散れ」


ローラとジュラは壁際に、リヴェンは仮面の男と激しい攻防を繰り広げている・・・助けなどない・・・もう死を受け入れるしか・・・


ファーロンの尻尾が俺に狙いを定めて止まった・・・後はそれを突くだけとなった時、通路の奥から誰かが向かって来る足音が聞こえた


空耳かと思ったがファーロンも警戒し足音の方に振り向くと、その足音の主はリヴェンと仮面の男の間をすり抜け一直線にこちらに向かって来た


「チッ!」


その者は飛び上がると俺とファーロンの間に剣を振り下ろす


ファーロンは舌打ちをして飛び退くと槍を構えその者を睨みつけた


「お前は・・・ローラの・・・」


飛び入り参加して来たのは執事服に身を包んだ仮面の男・・・確かローラの執事で名は・・・ルーカス?


「遅いわい・・・もう少しで穴だらけだ」


「悪かったな・・・徘徊老人を見つけるのに手間取った」


ローラに答えるルーカス・・・執事が駆け付けただけなのにローラの声は安心感に包まれているように感じる・・・何故だ・・・たとえ1人助太刀に来たとてこの状況は・・・


ルーカスは牽制するようにチラリとファーロンを見るとそのままローラの元に歩み寄り屈むと傷口に手をかざす


「ホーリーヒール」


ルーカスが呟くとその手は光り輝きローラを包み込む。すると傷口は塞がりローラは元気に立ち上がった


「うむ・・・少し血を流し過ぎたようだ・・・任せて良いか?」


「はいはい・・・お年寄りはそこで休んでろ」


「ムッ・・・人を年寄り扱いしおって・・・後で覚えてろ!」


ルーカスはローラと軽口を叩き合うと立ち上がり再びこちらに向かって歩いて来た


この感じ・・・いや、この声・・・仮面でくぐもっているが聞いた事のある声・・・


「本物の王が偽物の王に負けてどうする?お前の背負ってるもんはそんなに軽いのか?シュラ」


「・・・俺はもう死の世界に旅立ったのか?」


「まだピンピンしてるよ。お前も・・・俺もな。任せて良いか?あの偽物」


「ハッ・・・家臣が王に命令するとは・・・無礼にも程があるだろう」


「確かに・・・ではどう致しますか?国王様」


「・・・あやつは俺に任せてお前は仮面の男をやれ・・・どうやらこのままリヴェンに任せるとこの国が滅ぶらしい」


「仰せのままに」


大仰に一礼し振り返るとリヴェンと仮面の男に向けて歩き出す


「魔法・・・だと?・・・貴様蝙蝠種では・・・」


何が起きているのか分からない様子のファーロンが呟くと足を止め仮面に手をかける


「悪ぃ悪ぃ・・・勘違いさせちまったみたいだな」


仮面を外しおどけてみせるその憎たらしい顔は・・・どうやら俺の知る男に間違いないようだ


「貴様・・・何者だ?」


「あれ?ご存知ない?ある時はローラの執事、ある時はシューリー国の四星拳西のビャッコ、ある時はブルデン王国の四大組合『魔物』の組合長・・・うーん、肩書きが多すぎる・・・まっ、全部引っ括めてアタルだ。よろしくな──────」

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